ヒューマン・ライツ・ウォッチの報告書が示す、人権デュー・ディリジェンスの必要性と社会的監査の空虚

バングラデシュのタズリーン工場火災によって100人以上の縫製労働者が死亡し、200人以上が重症を負ってから10年が経過した。 多国籍企業の利益の源泉であるグローバルな事業展開とバリューチェーンは、あまりにも長い間、野放しの状態であった。企業は、世界中の労働者の状況に対する説明責任を果たすことなく、複雑で不明瞭なバリューチェーン、そして軟弱で一方的な企業の社会的責任(CSR)の取組みの陰に隠れてしまうことができたのである。

世界で最も信頼のおける人権団体の1つであるヒューマン・ライツ・ウォッチによる新たな報告書が暴くのは、企業の社会的監査ツールの多くがいかに空虚なものであるか、ということだ。 報告書『目標なき監査ツール:社会的監査がグローバル・サプライチェーンにおける労働者の人権侵害を解決できない理由』は、「社会的監査や認証プロセスには、利害対立や抜け穴などの問題が山積しており、人権や環境基準が尊重されるようにするためのツールとして、不適切である」と指摘している。

アルケ・べシガーUNI副書記長は、「ヒューマン・ライツ・ウォッチの報告書は、我々が何年も前から言ってきたこと、つまり、社会的監査業界は、多国籍バリューチェーンにおける人権侵害のリスクについて正しい洞察を得る上で、当てにならないものだということを強調している。 今や数百万ドル規模の産業であるにもかかわらず、悲しいことに、人権侵害が発見されても、それが軽減あるいは是正されることは、ほとんどない。デュー・ディリジェンスの法律が策定されている場合には、我々は各国政府に対し、企業が単に責任を外部委託するのではなく、デュー・ディリジェンスの全段階で権利の主体、特に労働者とその労働組合に関与するよう、要請していく」と述べた。

幸いにも、デュー・ディリジェンスに関する企業の動きには、変化が出始めている。ドイツなど数か国で人権デュー・ディリジェンスの義務化が法制度として導入され始め、ようやく多国籍企業は、そのバリューチェーン内で生じた権利侵害に対し、責任を持つようになり得たのだ。

しかし、こうした重要な法律以外にも、バングラデシュのタズリーンとラナプラザの災害後、衣料品労働者の安全衛生の改善に大きく貢献した『繊維・衣料品産業の安全衛生に関する国際アコード』の成果からも、学ぶことができる。アコードを創設した署名組織としてUNIは、間近に迫ったパキスタンへの拡大も同様に効果的なものにすべく、取組んでいく。

UNIが重視している点は、デュー・ディリジェンスが労働者のために機能し、企業が良い評判を得るための皮肉なPRにならないようにすることだ。 UNIの経験が示すのは、中身のない空虚なCSRから、人権に関する真摯な説明責任へと移行するための核となるのは、デュー・ディリジェンスの各段階における労働組合の全面的な関与である。

これにより、国内および国際レベルの労働組合を含め、利害関係者を代表する人々の席が設けられ、プロセス全体を通じて労働者が尊重されるようになる。これこそが、デュー・ディリジェンスに正当性と透明性を与え、バリューチェーン内の労働者に、問題が起きても自身の懸念は対処されるのだという確信を与えることになる。

しかし、UNIや加盟組織が関わっている企業は、その責任を社会的監査企業に委託していることがあまりにも多い。こうした企業は、非常に多くの場合、労働者が日常的に直面している現実とはほぼ無縁の認証や賞の紙吹雪をばらまいているように見受けられる。 労働組合の権利を侵害してきた過去があり、特にリスクの高い国で事業を展開している企業が、なぜか社会的責任のある使用者として、認証や賞を獲得しているのである。

べシガーUNI副書記長は、「我々は今、過去の過ちから立ち直り、人権侵害から利益を得ることはもはや許されないという岐路に立っている。 UNIは、加盟組織や先進的な企業とともに、国際アコードのパキスタンへの拡大を成功させ、人権デュー・ディリジェンスが労働者の声を中心に据えたものとなるよう、引続き取組んでいく」と締めくくった。


商業部門の女性労働者に対する暴力と性的暴行の根絶を目指す ver.diのキャンペーン

ドイツのUNI加盟組織ver.diは、仕事の世界における女性への暴力や性的暴行について保護の強化を図るため、新たな取組みを開始した。ver.diの女性執行委員会によって立ち上げられたこのキャンペーンの名前は、「共に強く−小売業における暴力に反対」だ。

女性や機会均等を担当するステファニー・ナツェンベルガーver.di執行委員は、「小売業で働く女性は、ますます多くのハラスメントに晒されている。女性の従業員は、レジにいる時であれ、スタッフが少なすぎる時であれ、ハラスメントはパンデミックで悪化したと訴えている。日々、侮辱や言葉の暴力を浴びている。この状況は止めなければならない」と語気を強める。

取組みの一環としてver.diは、暴力の問題について包括的なデータを収集する予定であり、そのために今年初め、商業・商品運輸業協同組合(BGHW)と共同で、研究プロジェクトを開始した。プロジェクトには、小売業における暴力やハラスメントに関するドイツ初の調査が含まれ、調査結果は2023年初めに公表される。

同執行委員は、「企業が暴力に対して必要な対策を講じることは、極めて重要だ。女性の労働者や労使協議会による自衛策だけに任せていてはならない。企業や経営者にも責任がある。これは、商業労働者に対する敬意、感謝、認識の問題だ」と指摘するとともに、「女性の全般的な労働環境を改善するために、我々はドイツ政府に対し、ILOの『仕事の世界における暴力とハラスメントの撤廃に関する条約』の批准と実施を要請していく。ドイツで働く女性は、性的その他あらゆる形態の暴力から保護されなければならない」と加えた。

残念ながら、小売労働者、特に女性に対する暴力の問題は、ドイツに限ったことではない。

マタイアス・ボルトンUNI世界商業部会担当局長は、「世界中の小売労働者が、特に女性労働者に対する深刻な暴力の増加を目の当たりにしている。だからこそ、我々はver.diのような各国のキャンペーンを支援するとともに、世界中の組合を結集してこの問題にグローバルに取組んでいる」と述べた。

UNIは最近、小売業における暴力に反対する世界行動デーを実施し、その一環として、組合向けにオンラインのリソース・センターを立ち上げた。また今年、「ジェンダーに基づく暴力に反対する16日間の活動」の一環として、第三者による暴力に焦点を当てている。


Make Amazon Pay(アマゾンに支払わせる):世界30か国以上で、ブラックフライデーのストライキと抗議行動の新しい波

2022年11月25日、1年で最もショッピングが盛んになるブラックフライデーに合わせて、フランスとドイツでは少なくとも18のアマゾン倉庫でストライキが決行され、世界30か国以上で抗議行動が予定されるなど、Make Amazon Pay 連合(略称:MAP)は、大規模な世界行動デーを実施する。このキャンペーンは、生活費の高騰、世界的な債務危機、気候変動という緊急事態に直面する中で、アマゾンが「労働者、地域社会、地球」から、「搾り取れる最後の一滴まで」搾り取っている状況を告発するものだ。

UNIとプログレッシブ・インターナショナルが共同で設立したMAPは、両組織のほか、オックスファム、グリーンピース、350.ORG、タックス・ジャスティス・ネットワーク、アマゾン労組など80以上の労働組合、市民社会団体、環境活動家、税金監視団等で構成され、アマゾンが労働者に公正な賃金を支払い、労働組合に加入する権利を尊重し、公正な税負担を行い、環境面における真の持続可能性に向けて取組むことを要求している。

MAPがブラックフライデーにグローバル行動デーを開催するのは、今年で3回目となる。過去には、ドイツ全土の施設での数千人規模のストライキ、バングラデシュでの労働者の大規模な抗議行動、世界中のアマゾン本社での「Make Amazon Pay」ロゴ投影、ジェフ・ベゾス邸宅への「Pandemic Profiteer(パンデミックで暴利を貪る者)」の文字投影、環境保護団体『Extinction Rebellion』による英国の同社流通センターの封鎖などが実施されてきた。

2022年の「Make Amazon Pay Day」で予定されている主な行動は、以下の通り:
●フランス、ドイツ:労働組合であるVer.diとCGTが組織する18の倉庫でストライキ
●米国:倉庫労働者がストライキを決行。ジェフ・ベゾスの所有するマンハッタン・ペントハウス前を含む、沿岸部の10以上の都市で抗議と集会
●インド:ニューデリーの国会前を含む20以上の都市で、 数千人の労働者、露天商、支援者らによる集会
●アイルランド:ダブリンのアマゾン本社前で、 環境保護活動家らによる、新たに計画されている2つのデータセンターに反対する抗議デモ
●南アフリカ:先住民の聖地に建設されるアマゾンの新しいアフリカ支社に抗議するアクション・キャンペーン
●バングラデシュ:組合承認、賃金・労働条件の改善、アマゾンのバングラデシュ・アコードへの署名を求め、 アマゾンのサプライチェーンで働く数千人の衣料品関係の労働者による集会とデモ行進

クリスティ・ホフマンUNI書記長は、「#MakeAmazonPayデーと名付けられたブラックフライデーのこの日、労働組合、市民社会、進歩的な議員たちは、肩を並べて大規模なグローバル行動デーに参加し、労働者主導の組合活動を潰そうとする、アマゾンによる卑劣な数百万ドル規模のキャンペーンを糾弾する。この巨大ハイテク企業は、劣悪で危険な労働慣行を直ちにやめ、法を尊重し、より良い仕事を作っていきたいと願う労働者との交渉を行う時だ」と述べた。

プログレッシブ・インターナショナルの諮問委員を務める、バングラデシュのソミリト衣料品労連のナズマ・アクタル委員長は、「我々の組合が代表する衣料品労働者は、多くの場合、アマゾン労働者であることを認識すらされないまま働き、アマゾンの蓄えを膨らませている。アマゾンは世界で3番目に大きな使用者と言われているが、サプライチェーンで働く我々を数に含めれば、その規模はさらに大きくなる。職場では、経営側からセクハラを受けることもあれば、暴力に反対したり、賃金や労働条件の改善を求めて組合で組織化しようとすると、被害を受けることもある」と訴えた。また、「バングラデシュという、気候変動の影響の最前線にいる我々には、気候正義と社会正義は切り離すことができない」とし、「我々はアマゾンに、すべての労働者に対し、尊厳ある職場でまっとうな賃金を支払わせ、また環境破壊の代償を支払わせなければならない」と力を込めた。

プログレッシブ・インターナショナルのダニエル・コップMAPコーディネーターは、「我々は皆、あらゆるものの価格、そして地球の温度が上昇していることを知っている。アマゾンは、労働者に公正な報酬を与えず、税金を全納せず、環境破壊の代償を支払うこともしない代わりに、労働者、地域社会そして地球から、最後の一滴まで搾り取っている」と非難し、「世界中の労働者が生活危機に苦しむ中、アマゾンは莫大な利益を上げているにもかかわらず、労働者に実質的な賃下げを強要している。税金を逃れ、CO2排出量も急増している。アマゾンは販売した商品の1%分の排出量しかカウントしていないにもかかわらず、2021年のCO2排出量は18%も増加している」と指摘した。そして「生活費危機、世界的な債務危機、気候変動による緊急事態に直面する中、我々全員が一丸となって、アマゾンに支払わせなければならない」と意気込んだ。


グリーンとデジタル:欧州で双子の移行プロジェクト

グリーンとデジタルの双子の移行は、EUの優先課題として認識されている。「欧州社会権の柱」アクションプランの中では、「社会対話、情報、協議、そして様々なレベル(企業や産別を含む)における労働者と労働者代表の参加は、特に進行中の2つの移行と仕事の世界の変化を視野に入れ、経済の移行を形作り、職場の革新を促進する上で、重要な役割を果たす」と説明されている。

これを実現するため、UNI 欧州は、EUから資金を得た 2年間の プロジェクト「双子の移行を実現する:商業部門における2つの移行に関する社会対話の強化方法」を立ち上げた。このプロジェクトの一環として、商業部門におけるグリーンおよびデジタルの移行をどのように形成するかについて、組合に対する指針と提言を盛り込んだツールキットを作成予定である。

またこのプロジェクトは、2つの移行が、新たな雇用機会、生産性の向上、労働条件の改善、新たな業務編成など、労使に明確な利益をもたらすようにすることを目的としている。

このプロジェクトでは、イタリア、ハンガリー、スウェーデン、オランダの4つの対象国に焦点を当てているが、2024年に完成予定のツールキットは、すべての欧州加盟組織、社会パートナー、商業部門の主要ステークホルダーを対象とし、使用者、労働者とその代表者を動機付け、指針となって支えるものとなる。

2022年10月24日に開催されたプロジェクト運営グループの第 1 回会合に続いて、UNI欧州商業部会加盟組織に対するオンライン調査が間もなく開始する。調査では、2つの移行を扱う社会対話と団体協約に関するこれまでの事例、課題、戦略に関して、情報提供を求める。調査結果は、専門家の政策報告とともに、2023年春に予定されている対象国における一連の国内ワークショップにおいて、概要報告書として示される予定だ。ワークショップでは、参加者は優良事例を共有し、ツールキットの原案作成に必要な情報を提供していく。

プロジェクトの活動は、グリーンおよびデジタルの移行がもたらす仕事の世界におけるリスク、機会、課題について、使用者、労働者とその代表の意識を啓発し、理解を向上させることにつながるだろう。同時に、このプロジェクトの重要なメッセージは、今後の政策決定プロセスにおいて 社会対話は 不可欠な要素であるということだ。


暴力廃絶活動の16日間-今年UNIは、第三者からの暴力に焦点

11月25日の「女性に対する暴力撤廃の国際デー」は、性差別に基づく暴力廃絶活動の16日間(11月25~12月10日)の最初の一日だ。

今年UNIは、機会均等局を通じて、第三者による暴力と、それを止めるために必要なことについて、認識を高めていく。

第三者からの暴力とは、顧客、取引先、利用者やその家族等から振るわれる暴力のことで、あらゆる部門の労働者に影響を及ぼしうる。

欠勤、高い離職率、生産性と収入の低下から、失業、長期的な心理的影響に至るまで、第三者からの暴力やハラスメントが労働者に与える被害は計り知れない。米国では、職場の暴力による経済的損失は、法律業務や医療、回復費用などのために、1,200億ドル以上に上ると推定されている。

商業部門では、小売業で働く10人のうち9人が、何らかの暴力を経験しており、コールセンターでは、従業員が電話口の相手から日常的に虐待を受けている。

英国のコールセンターで働く匿名希望の労働者は、「レイプする、撃つ、刺す、といった言葉で直接的に脅され、非常に露骨な性的・暴力的表現を浴びてきた。これは初めてのことではなく、1年半以上続いている」と嘆く。

UNI機会均等局は、11月25日から12月10日までの16日間のために、ソーシャルメディア用のツールキットとポスターを作成した。

UNIは、加盟組織がこのツールキットを活用・共有し、仕事の世界における暴力とハラスメントをなくすためにILO第190号条約と第206号勧告の批准を求め続けるとともに、組合の政策と団体協約の中に、この基準の文言と条項を盛り込むことを推奨する。

ポスター等ツールのダウンロードはこちらから。

ベロニカ・フェルナンデス・メンデスUNI機会均等局長は、「第三者による暴力は、労働者、使用者、そして全ての人々に影響を及ぼす。職場の暴力がもたらす心理的・精神的な影響は、数値化できない。少なくとも労働者は、職場で安全であると感じられなければならない。今こそ労働組合がともに行動を起こし、ILO第190号条約の精神を明記した、より強力な政策や協約を確立する時だ。そうすることで、人々の暮らしを変えることができるからだ」と呼びかけた。


商業部門における暴力とハラスメントの撲滅に向け、商業労組が結集

2022年11月17日の世界行動デーにおいて、 UNIと商業部会加盟組織が各国政府および小売業者に対し、商業労働者に対する暴力とハラスメントの根絶を呼びかけた。

20か国から約75人の組合代表者が、UNI世界商業部会が主催したグローバル・ウェビナーに参加し、商業部門における暴力やハラスメントに対する取組みの成功事例に焦点を当てた。

ルーベン・コルティナUNI会長は、職場での暴力とハラスメントに関するILO第190号条約の採択において女性が果たした重要な役割を強調し、「#MeToo運動や、世界中の街頭に立った女性たちのおかげで、我々は反撃のための強力なツールを手に入れることができた。今こそ、条約を批准し、実践に反映させる時だ」と力を込めた。

参加者は、日本、オーストラリア、フィンランド、モザンビーク、イタリア、米国、トルコからの報告を受け、各組合によるキャンペーンやアクション、団体交渉、法整備、意識啓発やトレーニング、ガイドライン等の成果を共有した。

スウェーデンのリンダ・パルメツホファーHandels委員長は、 「労働者に暴力やハラスメントのないワークライフを実現するため、キャンペーンを実施している。まだまだ道のりは長いが、力を合わせれば実現できる」と意欲を語った。

ピーター・ヘルバーグUnionen副会長は、「商業部門の第三者による暴力は、小売業者が適切に対処しなければならない。安全な職場環境を持つことは基本的権利であり、EUの法改正が必要だ」と指摘した。

キャンペーンの情報ハブとして設計されたUNIの新しいウェブページ「Stop Violence and Harassment in Commerce」も、このウェビナーで初公開された。職場における暴力と闘う特定の部会キャンペーンに関するものとしては初のウェブページであり、すでに30以上の記事、報告書、キャンペーン資料が公開されている。

ウェブページでは、「No One Deserves a Serve=誰も叱責されるいわれはない」キャンペーン(オーストラリア、SDA)、悪質クレームに対する取組み(日本、UAゼンセン)、「行動しよう」キャンペーン(フィンランド、PAM)など、UNI世界商業部会加盟組織が展開してきたキャンペーン等の情報を集め、具体的な成果について情報を提供している。

マタイアス・ボルトンUNI世界商業部会担当局長は、「アトランタのUNI世界商業部会大会では、成功事例を取り上げるラウンドテーブルも実施する」と述べ、「商業部門における暴力、ハラスメント、差別、虐待をなくすという我々の取組みを強調する決議案を議論し、採択する予定だ」とコメントした。

今回のウェビナーは、Union to Union及びスウェーデンのUNI加盟組織Handels およびUnionenの支援の下、開催された。


リモートワーカーの権利を守るには、グローバルな解決策が必要

OECDのグローバルディール・フォーラムの中で行われた「ポストコロナの仕事の世界におけるテレワークに関する取組み:社会対話の役割」と題するハイレベルパネルにおいて、クリスティ・ホフマンUNI書記長は、リモートワークという新たな現実に対応するためには、団体交渉の拡大、社会対話の改善、雇用法の強化が明確に必要であると指摘した。

ホフマン書記長は、すべての在宅勤務の形態が一様ではないことを踏まえ、十分なスペースと人間工学に基づいた家具、安定したインターネットを備え、比較的快適かつフレキシブルに在宅勤務ができる従業員もいるが、他方で、コロンビアやフィリピンのような国では、例えば低賃金で不安定な仕事であるコールセンター業界では、フルタイムでリモートで業務を行う労働者も存在すると指摘し、「組合や団体交渉があるところでは、あらゆる種類のリモートワーカーの状況に進展が見られるが、大多数を占めている組合のない労働者には、深刻な問題が残っている」と、強調した。

11月中旬にUNIは、25か国のリモートワークに関する約120の団体協約のデータを分析し、公表する予定だ。この報告書では、パンデミック時に爆発的に増加したリモートワークに対し、世界中の組合が確固たる対応をとってきたことが示されている。つながらない権利など、ますます普遍的になっている課題もあるが、他方で、DVや監視など、労働組合の交渉として新たな分野も浮上して生きている。

同書記長は、「つながらない権利にどのように対処するか、使用者はどのように安全なリモートワーク空間を確保するか、監視が労働者の心理社会的な健康に与える影響は何か、カメラやアルゴリズムによって収集された労働者のデータを誰が管理するか、などの課題がある。これらに加え、ジェンダー平等への取組みや、若い労働者が必要な指導を受けられるようにする取組みも必要」と指摘し、「こうした問題には、グローバルな解決策が必要だ。 新しい仕事の世界とはどのようなものか?という問いに答えるためには、規制、結社の自由、社会対話が必要」と訴えた。

ホフマン書記長の指摘は、ヌールディン・タブビ・チュニジア労働総同盟(UGTT)書記長をはじめとする他のパネリストからも支持を得た。タブビ書記長は、チュニジアのリモートワーカーに対して、より公正な成果をもたらす社会対話における組合の役割について、詳しく説明した。また、BNPパリバのスペイン統括責任者であるセシリア・ボネッド氏は、欧州労使協議会や組合と協力し、より広範なデジタル化の一環としてリモートワークを導入していることを説明した。


団体交渉の復活:成功に向けた必要条件とは

1938年に著名な経済学者ジョン・メイナード・ケインズは、ルーズベルト米大統領に宛てた書簡の中で、「団体交渉の拡大を不可欠なものと考えます。最低賃金と労働時間に関する規制を支持します」と述べている。

それから80年を待たずして、団体交渉が不可欠なものであることについて、さらに多くの人々が同意している。近年、EU委員会のフォン・デア・ライエン委員長は、団体交渉の「強力な擁護者」であると宣言しており、また最近のOECD、ILO、欧州労働組合研究所(ETUI)の調査では、団体交渉は危機に強い経済と適正な賃金水準の構築に貢献すると同時に、平等かつ民主的社会の実現に不可欠であることが示されている。

欧州で団体交渉制度を強化・再構築するためのコンセンサスが確立された今、明確なターゲットが盛り込まれた適正な最低賃金に関するEU指令により、政治的突破口も開かれている。すべての加盟国は、自国の労働者の80%が団体協約の適用対象となることを目指さなければならないのである。現時点でこの野心的目標を達成できているのは、ほんの一握りの国だけである。この水準に達しない場合は、団体交渉の強化方法を示す国別行動計画を策定しなければならず、EU加盟国27か国のうち19か国が、これに該当する。

国別行動計画が効果的なものであるためには、まず複数使用者交渉制度の構築に集中し、次にサービス部門における団体交渉の具体的な課題に対処する必要がある。このような重点的な取組みなしには、国別行動計画は無駄に終わってしまうだろう。

複数使用者交渉:目標達成のための必要条件
団体交渉は、1ないし複数の労働組合と1企業との間で行われることもあるが、 同時に複数企業との間で実施されることもある。よくあるのは、同じ部門(例えば、すべての小売企業)または特定の場所(例えば、空港)で事業を展開する使用者との間での交渉である。後者のタイプの団体交渉(複数使用者間交渉または部門別交渉)には、明確な利点がある。必要となる交渉の回数が減ること、より多くの従業員が団体協約に適用されるようになること、そして何よりも、企業間競争によって、労働条件に不利益が生じないようにできる、という点だ。部門別交渉によって、事実上、賃金は競争から切り離される。

そのため、多くのEU諸国が、法制度または部門レベルの労働組合・使用者団体に対する積極的支援を通じて、この種の制度を支援している。

この図が明確に示すのは、団体交渉の適用範囲を80%に到達させる上で、複数使用者による交渉が必要条件であるということだ。その結果は自明である。国別行動計画には、法整備、行政による促進、社会パートナーの自主的な能力開発を通じて、複数使用者間交渉を強化または(再)構築するための何らかの措置が盛り込まれなければならないだろう。

成功の鍵を握るのは、サービス部門
国別行動計画を成功させるには、さらにサービス部門の団体交渉に焦点を当てる必要があるだろう。過去数十年間、サービス部門の従業員数は増加し、製造業・農業部門の労働者数は減少している。2020年には、欧州の労働者のほぼ 2 人に 1 人が、何らかのサービス部門に従事している。

さらに、サービス部門の団体交渉の適用範囲は、例えば製造業や公共部門などと比べて低い。ETUIの研究者ウーター・ズワイセン氏の調査によると、すべてのサービス部門で適用率は平均以下であり、例えばIT部門では、適用率が欧州の平均を20%下回っている。

団体交渉に関する国別行動計画は、必然的にサービス部門に焦点を当て、これらの部門が直面する、以下のような特有の課題に対処しなければならない。
●リモートワーク環境における団体交渉:パンデミック以降のリモートワークの急増により、労働組合がリモートワーカー、特に常時、在宅で勤務する労働者に接触を図り、連絡を取り、組織化し、動員する上での具体的な課題が明らかになった。
●分散型雇用における団体交渉:従業員が無数の場所で少人数チームまたは単独で働く部門(小売業や清掃業など)でも、労働者に接触して組織化することは、労働者を団体交渉に参加させることと同様、特に困難である。
●個人事業主の団体交渉:ほぼ同じ業務を行う一般従業員と同じ職場で肩を並べて働く個人事業主が増加する中、団体交渉は必然的に包摂的なものになる必要があり、その結果、特定の法的および実務的な問題への対処が必要になってくる。
●予測不可能なシフトを組む部門における団体交渉:従業員の勤務時間やシフトが直前に知らされるような環境では、統一した団体交渉要求や交渉の場を設けることが非常に困難である。
●低賃金部門における団体交渉:最後になるが、一部のサービス部門は特に低賃金であり、労働者が組合費を支払ったり、自発的な組合活動に時間を割いたりする余裕は、ほとんどない。

実効的な国内行動計画を策定するための明確な条件
適正な最低賃金に関する指令において、行動計画は80%の目標に向けて団体交渉適用率を漸進的に引き上げるべきであることが明記されている。加盟国がこの目標に真剣に取組むのであれば、行動計画には部門別交渉に向けた明確なステップを盛り込み、サービス部門における団体交渉に特有の課題に取組んでいく必要があるだろう。こうした要素が盛り込まれない場合、加盟国は指令に沿った形で計画を修正するため、振り出しに戻されるべきである。


今年のUNIブレイキングスルー賞 、インドネシアのニンジャバン配送労働者に

2022年11月9~10日にスイス・ニヨンで開催されたUNI世界執行委員会で、インドネシアのUNI加盟組合SPPD に対し、同国のフードデリバリー労働者を代表する優れた取組みについて、UNIブレイキングスルー賞が授与された。

SPPDは、ラストワンマイル配送の業務を行う労働者を組織化するインドネシア初の組合である。こうした労働者は、不当にも自営業者として分類されている。同労組は、ロジスティクスに携わる全てのプラットフォーム労働者を対象としているが、特にDPDジオポストが株式の一部を所有する配送会社、ニンジャバンで働く労働者とともに成長してきた。組合は、労働者が休日も週末もなく14時間シフトで働いている部門であるにもかかわらず、組合員数の着実な増加を牽引してきた。

ラジェンドラ・アチャリャUNI Apro地域書記長は、「配送労働者を孤立した状況から救い出す強力なキャンペーンを展開するSPPDは、最も厳しい状況下においても、組合は人々の生活に真の変化をもたらしうるのだということを、示してくれている」と語った。

UNIブレイキングスルー賞は、革新的な組織化キャンペーンを通じて逆境の中にあっても組合を強化してきた組合を表彰している。今年はSPPDのほかにルーマニアとコロンビアの組合が受賞した。


UNI、モンテネグロのテレコム労働者に連帯

ドイツテレコムの子会社であるモンテネグロのツルノゴルスキ・テレコム(CT)の労働者が、行動を起こしている。2022年10月31日に警告ストを実施後、モンテネグロ・テレコム労組は、同社が妥当な賃上げや公正な団体協約といった基本要求を拒否し続ける場合、さらなる争議行動を実施する構えだ。

組合は10月のストライキに際し、「団体協約を廃止し、社会対話を排除しようとする経営陣の悪質な企てを、組合は断固として容認しない。以前もそうであったし、今もそうである。平和的な抗議行動を通じて、その事実に経営側の注意を向けさせるべく、組合とツルノゴルスキ・テレコムの従業員は、本日、CT本社前に結集せざるを得なくなった」と述べている。

組合は、CTが利益を上げて成長していることを指摘した上で、組合の要求する賃上げがインフレ率を上回っていないにもかかわらず、経営陣がこれを拒否していることについて、特に憤慨している。

ドイツテレコムを代表するドイツのUNI加盟組織ver.diは、モンテネグロの仲間の闘争を支援している。フランク・ソアランド同労組ICT部門団体交渉政策担当は、「CTグループは再び利益予測を上方修正したが、労働者に公正な分け前を与えなければならない。高いインフレとグループの積極的な利益展開を背景に、物価上昇に苦しむ従業員のために納得できる解決策を講じるべきだ」と指摘し、「労働組合として我々ver.diは、連帯してモンテネグロ・テレコム労組の正当な闘いを支持し、使用者側とのさらなる交渉や争議の進展を願っている」と語った。

UNIも、同テレコム労組の闘いを支持している。ベンジャミン・パートンUNI世界ICTS部会担当局長は、「テレコム従業員の働きによって、会社は利益をあげ、成長することができた。成功した企業が従業員に報いることなく、彼らの組合を攻撃し、公正な賃金を求める合理的な要求を無視するのは、言語道断だ」と非難し、「我々はVER.DIや世界中の労働組合とともに、モンテネグロ・テレコム労組に連帯する。我々は、あるべき公正な待遇を獲得するための闘いを支援していく」と、エールを送った。


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