2016年9月19~21日、ミャンマーのサービス部門労働者の組織化を検討するための関係各所からのヒアリング及びUNI Aproの活動・理念浸透を目的とし、野田UNI Apro地域会長、ウン地域書記長、玉井組織化部長、ワルダナICTS部長等から成るUNI Aproミッションがネピドー及びヤンゴンを訪問した。

訪問先と概要は以下の通り。
労働・移民・人口省
U Myo Aung氏(Permanent Secretary)他と面会。政労使各9人ら構成される国家三者構成委員会が設置されており、2014年以降4回開催されている。新政権となって初めて9月28日に開催予定で、労使関係の在り方、労働法、労働安全衛生の3点について議論が行われる。ここで議論された内容が9月29~30日に開催される第2回ステークホルダーフォーラムに示される。2015年9月に地域最賃法が導入されたが(1日3,600チャット)、実施が難しい状況である。現在、様々な法律が改正議論されており、外国人労働者法、工場法、労働安全衛生法が議論されている。また、外資の流入が増える中、一般的に労務管理は良好であるが、労使紛争が増えている。課題の一つとして、労働組合間の協力があげられる。ナショナルセンター、産別間の互いの協力が求められる、労働組合の役割について議論を深めてほしい。
運輸・通信省
Win Khant氏(Permanent Secretary)、Ye Naing Moe氏(Director of National Cyber Security Center)他と面会。通信インフラ及び制度は遅れており、ICTマスタープランに従って取組んでいる。携帯普及率は96%(SIMカードの販売枚数で計算した数字)。通信カバー率は国土の90%。2013年に通信法を制定し、テレノールとオレドにライセンスを供与した。MPTは政府保有の事業者で、より良いサービス提供を目指している。E-Governmentも目標の一つで、ICT技術と知識の理解促進に取組んでいる。やがてはオンラインでの政府サービスを普及させたい。
ミャンマー・コンピュータ協会(MCIA)
Mr.Zaw Min Oo氏(Secretary General)他と面会。1,000社以上のIT、コンピューター関連会社が加盟する事業者協会で、ミャンマーのIT企業が自主的に加盟している。現在、情報通信部門にはおよそ20,000人が従事している。国内24大学にICTに関連する学科があり、毎年5,000人が市場に入ってくる。2020年にはICT関連労働者は50,000人にのぼると予想される。課題は、賃金の上昇圧力が強まる一方で資格やスキルが伴わない、転職が多い、技術者への訓練等である。
MWRN(移民労働者の権利ネットワーク)
Phyoe Wai Htun氏(General Administration)他と面会。2009年に移民労働者の条件改善のために設立された組織。現在、人口の10%が移民労働者である。MWRNは、移民労働者の生活水準向上、雇用確保、法的支援、教育・訓練、社会保障、政府や市民組織との対話などの活動を行っている。メディアを通じた意識啓発にも取組んでおり、一般市民の移民労働者問題への認識向上につながっている。タイの工場で「ゼロ・リクルートメント・フィー」というプロジェクトを実施、ブローカーの中間搾取を防ぐために健康診断や労働許可申請にかかる費用(1,950タイバーツ)を工場で負担するもの。労組とも連携しており、CTUMやAFFMと覚書を結び、特に縫製、農業、水産などの分野で協力して活動をしている。
CTUM(ミャンマー労働組合総連合会)
Maung Maung氏、Rony氏他と面会。9セクターで779組合、組合員数64,952人(2013年は314組合、組合員数28,840人)を組織する唯一のナショナルセンター。ミャンマーの労働人口2,300万人に対し組織率は0.3%に過ぎない。農業・農民(607組合、31,841人)、工業、運輸(53組合、15,101人)、建設・木材、水産、鉱業、サービス(5組合、187人)、メディア、教育。サービス部門については、公立病院の看護士、清掃労働者を組織化している。政治とは関わりを持っておらず、労働組合活動に専念している。オルグの育成と職場環境のレベル向上が課題、法制度は未熟である。労組結成後にリーダーが解雇されてしまうという問題もある。労働者の権利に関する研修を行う中でリーダーを発掘し、ILO、ITUC-APのワークショップやセミナーへ派遣して人材を育成している。
AFFM(Agriculture & Farmer Federation of Myanmar)
Zarni Thwe氏(General Secretary)他と面会。主に農業部門労働者を組織し、IUFに加盟。現在の課題は労働環境を国際水準まで高めていくことだと考えている、労働者の知識向上が求められる。労組の役割と労働者に伝えていくためにも国際組織からの支援が不可欠であり、次世代の育成にも力を入れていく。
MICS(Myanmar Industries Craft & Services Trade Unions Federation)
食品、日常製品、縫製、水産、サービス(ケータリング・ホテル・荷揚げ等)、天然資源、建設、溶接の8部門を組織。AFFMの兄弟組織で、協力に関する覚書を締結している。通信部門も組合を結成したいと考えているが、まだ組織化されていない。社会協同組合の仕組み作りが必要。賃金の引き上げだけでなく、支出を抑えることで可処分所得を増やすことが可能になると考えている。なお、AFFMとMICSは国家三者構成会議に3人ずつ代表を出しており、他兄弟関係にある組織の声も代弁する。残り3人はCTUMから出ている。