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UNI-LCJタイ・セミナー

2013年12月6~7日、反政府デモが収拾しない中、UNI-LCJ部会合同セミナーとしては2008年2月以来約6年ぶりにタイ加盟協支援セミナーをバンコクで開催した。タイ側からは、ニライモンUNIタイ加盟協(UNI-TLC)議長、ソンブーンUNI組合強化・組織化センター所長はじめ、加盟組合及び未加盟労組から20人が参加した。日本からは、情報労連の高梨NTT労組中執を団長に下記8人の講師が出席した。

 

情報労連          NTT労組中央執行委員                                         高梨真貴子

全信連              三菱UFJ信託銀行従業員組合書記長                   飛田健二郎

全信連              三菱UFJ信託銀行従業員組合副書記長                西村美咲

全信連              三井住友信託銀行従業員組合副書記長               坂田絵梨子

UAゼンセン      流通部門産業政策部長                                          川橋学

自動車総連       労働条件局部長                                                    横田芳治

自動車総連       業種政策局部長                                                    矢澤猛俊

JP労組              中央執行委員                                                       北﨑衛

開会式に先立ち、ソンブーン所長から反政府デモについて説明があり、国営企業労組メンバーの一部はデモに参加しているが、暴力に訴えるものではないと述べると共に、政治が安定しないと経済も安定しないと懸念した。ニライモン議長の歓迎挨拶に続き、高梨団長は開会挨拶の中で、本年8月のUNI Apro6部会大会を成功に導いたUNI-TLCに敬意を表した。更にUNI-LCJの13年を振り返り、UNI統合後の日本加盟組合の統合・融和が討論の積み重ねで成し遂げられたことと、長崎UNI世界大会までに明確な目標を設定し全員で実現したことにより連帯が強化された点を強調した。

また、ソンブーン所長からタイ労働事情及び労働運動の概要が報告され、ニライモン議長からはUNI-TLCの課題について数点概説された。

 

「労働組合の役割と責任」のテーマでは、日本から飛田講師が目的と機能、単組の具体的活動事例を紹介した。

「団体協約交渉」のテーマでは、矢澤講師から団体交渉と労使協議の違いや“対立”と“協力”を併存する労使関係が概説され、北﨑講師からはJP労組の様々なコミュニケーションチャンネルを通じた労使対話が例示された。タイからはワスパット郵便労組書記長が「団交は経営側との戦争」と表現し、録音しない、交渉経緯を公表しない、経営側の立場でも考える、互いを理解する努力をする、因果関係・利益と不利益を具体的に提示するといった交渉の手法と、最近の交渉の成果を報告した。

「賃金交渉」については、横田講師が日本の賃金の特徴とその遍歴、賃金交渉を説明し、ワイティットBFUN(銀行金融労組ネットワーク)議長は、組合側は感情的にならず労使双方に有益となる要求をしようと努力するも、タイの労働法が労働者を保護するというより使用者に有利である点を指摘した。

「組織化・新規組合員獲得」のテーマでは、高梨団長が日本全体の組織率の変遷を非正規労働者の増加を主要因として報告した他、川橋講師はいくつかの事例を挙げて具体的手法を説明した。ワイティットBFUN議長は、7単組で今年4月に発足したBFUNの現状を説明し、25000人のメンバーのうち80%が加盟費未払いであると述べた。

最後に日本人講師から、青年メンバーの活性化(チームワーク醸成、次世代役員育成);生産性向上で会社に協力していることを示す;同じ産業内でライバルでも労組どうしは定期的に情報交換し連携する;連合も違いを乗り越え様々な組織が統一を成し遂げた;勉強会・セミナー・家族参加イベントの開催;他業種とのネットワーク;女性の活躍促進など様々なアドバイスがあった。ニライモン議長は、日本とタイのUNI加盟組合の交流の歴史は長く、今後も継続していきたいと希望すると共に、「労働者の力で世界を変えたい」との決意をもってセミナーを閉会した。

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UNI-LCJラオス・セミナー

昨年UNI-LCJとして初めて首都ビエンチャンにおいてLFTU(ラオス労働組合連盟)支援セミナーを開催した。今年は2013年12月3~4日、第2回目として、LFTU地方組織の役員向けにルアンパバーンでセミナーを開催した。ラオス側からは、LFTU本部よりオンカム労働保護局長、ブーンタン同部長、ビライ国際局副部長はじめ、地方6県より郵便、テレコム、銀行、水道局、学校、商工会等の労働者及びLFTU地方組織役員等、計28人が参加した。日本からは、情報労連の高梨NTT労組中執を団長に、10人の講師が出席した。

開会式で高梨団長は、ラオスがグローバル経済に統合されようとしている中、グローバル化には光と影がある点を指摘し、労働組合も政府や特に民間企業の素早い動きに対応し、労働者の視点から建設的な意見をタイムリーに提言・要求していく必要があると警鐘した。この点で、UNIと日本加盟組合は、サービス産業労働組合のグローバルなネットワークとパートナーシップ労使関係の経験を活かし、ラオス労働運動に有益な情報を提供できるだろうと述べた。

オンカム局長は最初にLFTUの概要、労働組合の役割と責任について説明し、社会経済の発展に伴い、関係法に曖昧な点や現状に合わない点も出てきており、改善の必要があると指摘した。ラオス統計局(2012年)データによると、成長率は8.2%を記録し、農民が人口の8割を占めるものの、サービス業はGDPの約37%と農業(約26%)、工業(約31%)より高い。また、LFTUの課題としては主に以下の点が挙げられた。

・LFTUは法改正委員会のメンバーになっており、労働に関する各種法律が現状に即しているかを組合員に調査しつつ検証し、労働者の立場から提言を行っていく。

・現在、民営化が進み、国営企業と民間企業の比率は30%・70%だが、民間企業、特に外資企業や中小企業の組織率及び協約締結率が低い。

・社会保険の低加入率。社保で受けられる医療レベルが良くないため、労働者(給与の4.5%負担)も加入するメリットを感じず、企業側(5%負担)も無駄と感じていることが原因。

高梨団長のUNI及びUNI-LCJ紹介に続き、「労働組合の役割と責任」というテーマで日本から、立川馨三講師(損保労連あいおいニッセイ同和損害保険労組・執行委員長)が産別労組とナショナルセンターそれぞれの役割について、飛田健二講師(全信連三菱UFJ信託銀行従業員組合・書記長)は目的と機能、単組の具体的活動事例を紹介した。「団体協約交渉」のテーマでは、矢澤猛俊講師(自動車総連・業種政策局部長)から団体交渉と労使協議の違いや“対立”と“協力”を併存する労使関係が概説され、北﨑衛講師(JP労組・中央執行委員)からはJP労組の様々なコミュニケーションチャンネルを通じた労使対話が例示された。「賃金交渉」については、横田芳治講師(自動車総連・労働条件局部長)が日本の賃金の特徴とその遍歴、賃金交渉を説明し、田中祐介講師(損保労連エイアイユー労組・執行委員長)は外資保険会社の世界共通の職務基準・職務等級・評価システムを紹介した。「組織化・新規組合員獲得」のテーマでは、高梨団長が日本全体の組織率の変遷を非正規労働者の増加を主要因として報告した他、川橋学講師(UAゼンセン・流通部門産業政策部長)はいくつかの事例を挙げて具体的手法を説明した。

オンカム局長は最後に、「労働は商品ではない」と強調し、状況は異なるがラオスも日本も労働者の条件・福祉向上という同じ目標に向かって、情報交換しながら努力していこうとまとめた。3年目の来年は、ラオス側代表を招いて日本でのセミナー開催を検討する。

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UNI Apro/ICTJ青年ワークショップ

 2013年11月27日~12月1日、マレーシア・クアラルンプールで青年労働組合活動家を対象にしたワークショップが開催され、10カ国41名が参加した(日本、マレーシア、フィリピン、シンガポール、インドネシア、ベトナム、ネパール、スリランカ、ナイジェリア、ケニア)。また、講師としてUNI-Aproウン地域書記長、アリス・チャン商業担当部長、小川機会均等部長、玉井組織化担当部長を迎え、国際労働運動の基礎知識を学習するとともに、委員会活動やグループワークを通じて、チームワーク精神を学び、国境を越えたヒューマンネットワークを構築した。

 開会式では、UNIマレーシア加盟協・モハメド・シャフィー議長および情報労連・後藤副委員長(KDDI労組委員長)が連帯挨拶。後藤副委員長は、「今の社会・労働問題に対して誰も解決策を見つけられずにいるが、青年には、『自分たちの未来は自ら作る』との気持ちを持って、様々な活動に取り組んで欲しい」と激励した。

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参加者は、①リポート委員会(毎日の活動報告を作成)、②ソーシャル・ファン委員会(プログラムの合間に行うゲームの企画・運営)、③マーケティング委員会(UNIフィリピン加盟協青年委員会のパヤタス給食プロジェクトの資金集めの取り組み)――のいずれかに所属し、グループワークと並行して活動した。

また、各国の代表者が、青年を取り巻く課題を報告した。日本からは情報労連・NTT労組コミュニケーションズ本部・齋藤執行委員が、組織率の低下や若者の組合離れの現状と、組織化に向けた地道な説得やSNSを使った情報提供を行い、青年が興味を持つイベントの開催等に取り組んでいると報告した。また、シンガポールやマレーシアでも、若者の組合離れが見られるが、知恵を出し合いながら組織化に取り組んでいると報告があった。

三日目には、グループごとに中央郵便局やモスク(イスラム教寺院)、チャイナタウン等を回り、①クアラルンプール市民へ労働組合の印象についてインタビュー、②市内のグローバル化調査――を行った。終了後のグループ発表では、組合の認知度の低さや、増加する出稼ぎ労働者が十分に組織化されていない現状が報告された。

5日間の活動を通じて、参加者は、国際労働運動やUNIの活動はもちろん、各国参加者との共同作業を通じ、リーダーシップやチームワークの重要性を学習した。参加者は、今回築いたネットワークを継続し、国際労働運動の発展に貢献していくことを確認し、終了した。

写真はFlickr参照。


第3回UNI Apro/JP労組共同英語セミナー

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2013年11月23~24日、かんぽの宿青梅において第3回UNI Apro/JP労組共同英語セミナーが開催された。このセミナーでは、スリランカ、マレーシア、台湾から招待した講師が、各国の郵政事業や労働組合の取組みについてプレゼンテーションをし、それを受けて参加者がグループディスカッション、プレゼンテーションをした。また、基本的には全日程を英語で進行していくことで、JP労組組合員の英語力向上と、国際労働運動への参画意識の向上を図った。全国より様々な英語レベルの参加者36人が集まり、参加者同士がサポートしながらセミナーを運営した。

講演

UNIスリランカ加盟協のサマン・アルーナシャンテ氏は、 JP労組東京地方本部の活動である郵便労働者の子供に対するスリランカ奨学金プログラムの活動や、スマトラ津波災害支援の活動などについて紹介した。次に、マレーシア郵便内勤労組のアフマード・ファイルーツ・ビン・シャレデン副委員長は、マレーシアの労働組合運動や郵便サービスについて講演した。台湾のアリス・ツァイ氏は、中華郵政工会の活動と、中華郵政の事業展開などについて講演した。その他、UNI global union’s worldとして伊藤UNI-LCJ事務局長、森川スタッフがApro地域における活動について紹介し、JP労組栗原職員(元UNI郵便・ロジスティクス部会プロジェクト・オフィサー)がUNI本部役割として本部があるニヨンの紹介や自由貿易協定における郵便サービスのへの影響についてプレゼンテーションをした。

グループワーク・プレゼンテーション

参加者を5つのグループに分け、「JP労組における情報発信と共有化」について討議した。参加者は英語でのコミュニケーションに苦労しながら討議を進め、最終日には、リソースパーソンの助けを借りて報告書をまとめ、英語で自分達の発表をした。

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その他

夕食時にはグループごとに即興の演芸を英語でおこなった。漫才やゲーム、劇などを短い時間で準備し表現することで、より実践的な英語の学習となるとともに、セミナー参加者全体の一体感を醸成することとなった。

その他の写真はFlickr参照


UNI世界執行委員会

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2013年11月12~13日、アイルランド・ダブリンで開催されたUNI世界執行委員会は、来年開催される第4回UNI世界大会(ケープタウン)の準備として、大会の3つの議題の確認、大会のプログラムと決議、加盟費の調整等を取り上げた。さらに印刷労連の加盟が受理され、UNIブレイキングスルー賞がUNI-LCJ金融部会に贈られる等、この間のUNI-LCJの躍進を祝した。また、今回アイルランドでの開催に合わせ、11月11日「金融恐慌から5年」セミナーが開催され、問題の背景を勉強した。開会式ではジョー・デブリュンUNI会長が「この間UNIの存在価値を高めたのは、バングラデシュのビル倒壊に伴う安全衛生協定だった」と挨拶した。

 

2014年ケープタウン世界大会

ケープタウンUNI世界大会について、ジェニングス書記長は次のように述べた。「アパルトヘイトからの解放20周年を迎える2014年、南アフリカ社会はどの程度前進しただろうか。GDPは3倍に増え、インフラ整備も進んでいる。ANC政権が作り出した素晴らしい成果である。しかし格差は大きい。現場で働く労働者とCEOの給料の差は450倍である。失業率も(公の数字は23%となっているが)35%であり、そのほとんどは若者である。まだまだ問題は多い。ここに光を当てる大会として、大会テーマは『インクルーディング・ユー!』である」

世界大会での議題は、「組合の成長を勝ち取ろう:ブレイキングスルー戦略計画(2014~2018)」、「我々の経済を取り戻そう」、「ともに新しい労働の世界で闘おう」であり、ゲストスピーカーとして、ズマ南アフリカ大統領、ルラ元ブラジル大統領、オーエン・ジョーンズ氏(政治評論家)、シャロン・バローITUC書記長、ガイ・ライダーILO事務総長等が予定されている。

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ブレイキングスルー賞

フィリピンのバンコデオロ労組と、UNI-LCJ金融部会が受賞した。田原UNI-LCJ金融部会議長は、日本の金融労組中心に、金融部門の未加盟労組のUNI加盟を勝ち取るべく前進している様子を報告した。

 

バングラデシュにおける安全協定

今年5月13日にH&Mが初の協定調印企業となって以降、現在まで112社が調印している。バングラデシュの繊維工場の約半数が協定の対象となっている。

 

最後に、印刷労連の加盟が受理され、閉会した。

 

写真はFlickr参照。


第2回UNI Apro東アジア労組フォーラム開催

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昨年初めて東京で開催されたUNI Apro東アジア労組フォーラムの第2回会議が、2013年10月30~31日、韓国・ソウルで開催された。テーマは「低出生率、高齢化社会における雇用政策」であり、日本、韓国、台湾、香港において、この問題がいかに取り扱われ、解決策は何であるかということを、労働組合の立場から議論した。

開会式では、まずリー・ハングUNI韓国加盟協(UNI-KLC)議長が「今回のテーマは時宜に即しており、東アジア各国が同じ問題に直面している」と述べた。

逢見直人UNI Apro会長は、今後の人口動向について「65歳以上の人々が総人口の7%以上を占める国を高齢化国、これが14%以上を超えると高齢国と言う。日本は、最近の統計で65歳以上の高齢者が初めて総人口の25%を越えた。2024年に高齢者数は30%を突破し、2035年には3人に1人が高齢者になる。これに対し、韓国は2010年が11%、2020年が15%、台湾は今年が11%、2018年に14%を超えると言う。香港は、今年が13%、あと数年で、東アジア各国は全て高齢国となる」と報告した。その上で、発想の転換を呼びかけ、長寿自体は祝うべきことであるが、国としては「人口の高齢化に対する戦略が不可欠」と述べた。

相原康伸UNI-LCJ議長は、少子化の実態を示し、若年層の非正規労働者増大がこの事態の背景にあるのではないかと問題提起した。

続いてウンUNI Apro地域書記長は「私自身が高齢化を前に何も準備していないことに気がついたように、アジア太平洋の労働組合も殆どこの問題に対する備えができていない」と警鐘を鳴らした。アン・ズヨプ韓国労働研究院研究員が、メインテーマの低出生率、高齢化社会における雇用政策について講演した。

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本フォーラムにおける日本からの報告

テーマ1「低出生率、高齢化社会における組合戦略」では、藤吉大輔UAゼンセン副会長が「日本の低出生率、高齢化社会の現状」を分析し、続いて東英幸自動車総連労働法制局部長が「政府の方針・討論状況の概要」を説明した。そして産別の実例として、北野眞一情報労連中執が「少子・高齢化に対応する雇用政策」について報告を行った。

テーマ2では、「退職年齢引き上げによる成長・社会福祉政策」を取り上げた。まず日下芳朗全信連中執が「日本における年金制度と政府の対応策」について説明し、続いて井上繭子日放労中執が「仕事と介護の問題」として、仕事と介護の両立のための取組みについて発表した。さらに藤畠正明労済労連中執が「公助・自助・共助」として、特に協同組合運動に

おける共助の取組みについて説明を行った。そして倉橋政史全印刷中執が、退職年齢引き上げに対する取組みの実例を報告した。

テーマ3では、「ワーク・ファミリー・バランスのための子育て政策」として、福島秀紀JP労組中執が「日本におけるワーク・ファミリー・バランスの現状と政府の対応策」を説明した。続いて個別企業では具体的にどのような取組みを行い、組合がいかに関わっているのかという点から、川田裕之損保労連中執と宮井淳同中執、神崎剛全労金書記長が発表を行った。

テーマ4では、UNI-LCJ2013年度の主要な活動と課題について、相原UNI-LCJ議長が説明した。なお、各テーマにおいて、韓国、台湾、香港の各労組から対応するプレゼンが行われ、各国の現状と課題が共有された。

また30日には、UNI-KLC主催のレセプションが開催され、各国参加者によるダンスや歌を通じて交流が図られた。

東アジア各国の共通点として特に強調されたのは、非正規労働者の増加が少子化の背景にある点、さらにワークライフバランスの確立がこの問題を解決する鍵になるという点である。相原UNI-LCJ議長が、「高齢化について、UNI-LCJとして議論するのは今回が初めての機会である」と述べたように、UNI-LCJにとっても本フォーラムの価値は高まっている。UNI-LCJのイニシアチブで開始した本フォーラムは、今回が2回目の開催となり、いよいよ軌道に乗ってきた。来年は9月に台湾で開催予定である。UNI-LCJからの今年の参加者数は49人であった。今後もこの勢いを持続しつつ、より一層内容の充実を図っていきたい。

写真はFlickr参照。


緊縮財政下のギリシャで、UNI世界金融部会運営委員会



UNI世界金融部会運営委員会は、UNI欧州金融部会大会に先立ち2013年10月23日、アテネで開催され、約40名が出席した。委員会は、「規制の影 響」と「組織拡大」を中心に議論を行った。イオジア議長は各地域からの参加者と、特に新たに就任したUNI Apro金融部会の田原議長及び新たに加盟した全信連の田中氏、西村氏の出席を歓迎した。開会の挨拶でホフマンUNI副書記長は、欧州の緊縮財政で非常に 困難な時期にギリシャで開催する本委員会の意義を述べた。特に金融産業で大規模なリストラやアウトソーシングが進み、雇用喪失による組合員減少傾向にある 中で、コロンビアで新たに組合が結成されたこと、ブラジルやアルゼンチンの強い組合が米国の金融労働者組織化を支援していること、アジア太平洋地域では日 本で全信連がUNIに加盟し組織拡大に貢献したことなど、この間大きな成果も見られたと喜んだ。

「規制の影響」に関して、まずUNI本部のマッケンジー同部会政策担当から失業調査第2版(2013年10月出版)の結果として、地域で程度の差はあれ金 融危機という理由でリストラは継続していることと、成果給と連動し厳しい販売ノルマを課されていること、雇用の海外移転、心理的圧力(失職の不安や顧客か らの怒りなど)による金融労働者の健康悪化などの傾向が概説され、リアルバンキングの促進と団体交渉を通じた雇用・労働条件維持の重要性が強調された。モ ンザネ同部会担当局長は、2012年に世界経済フォーラム(WEF)が開始したマルチステークホルダーによる金融システムの規制改革プロセスを補完する取 組みを紹介した。WEFの場では経済危機以降2008年から金融産業の社会における役割―社会に対するコミットメント―について、大企業のCEO、金融政 策立案者、エコノミスト、学者、労働組合や消費者団体などの市民団体がいっしょになって議論を始めた。第1ステップとして金融システムが社会に提供すべき 点を、金融・経済の回復、安全な貯蓄・金融契約へのアクセス、経済成長を支える効率的な資本の配分、金融サービス・商品への広範なアクセス、安価で安全で 信頼性ある送金、金融リスクマネジメント、顧客の経済的意思決定に有益な情報・アドバイスの提供などであると確認した。

続いて各地域からの報告・意見提起では、プリヤラルUNI Apro金融部会担当部長が、金融包摂の重要性を訴えた。「アジアでは未だ15億人が銀行口座を持たない。欧米では金融安定化を重視しているが、アジアで は開発目標を満たすための資本の獲得も必要で、規制が障害となってはならない。欧米でうまくいく規制が他の地域にそのまま当てはまるとは限らない。社会の 発展や貧困削減について配慮が少ない。監督機関を作るのであれば組合も関与すべき」と述べた。コケラ委員(南ア)も、単一の規制を一律に適用するアプロー チに疑問を呈した。イオジア議長は、「金融規制は国際問題であり、金融安定化委員会、バーゼル委員会、欧州司令など様々な国際レベルで議論されている。 我々は有効な規制には賛成するが、社会的責任を忘れてはならない。職場を守っていかなければならない。消費者団体などとの連携も考えられるだろう」と、消 費者インターナショナルのオレリー氏を紹介した。オレリー氏は組織の活動と、UNI金融部会の行動目標との共通点を紹介し、「販売と適切なアドバイス」 キャンペーンの分野で協力していけるのではないかと述べた。

「組織拡大」について各地域から報告した。米国には金融部会加盟組織が無いが、通信労組(CWA)のステファン氏が、ブラジルやアルゼンチンの金融労組の 支援を得ながら、NGOとも連携し、主要都市をターゲットに展開している米国金融産業の組織化状況について説明し、引続きUNI金融部会を通じた世界の金 融労組の連帯支援が必要だと協力を要請した。田原UNI Apro金融部会議長は、全信連の加盟による同地域の組織人員が増大したこと、インドのステート銀行労組の再加盟を促進していること、その他、バングラデ シュ、マレーシア、ネパール、パキスタン、スリランカ、タイ、パプアニューギニア等で組織拡大が見込まれることを報告した。また途上国では加盟費徴収率が 低く、また為替の影響を受けることから、加盟費支払い人数は、実際の組合員数より少ないと説明した。UNIアフリカ地域金融部会は、39組織、16万 2000人を擁する。能力開発プロジェクトを通じて組織拡大を目指すと共に、アフリカの多くの国で事業を行う多国籍銀行エコバンクをターゲットとした組織 化にも取組んでいる。UNI欧州地域は2011年以降、組織化作業部会を設置し、毎年「組織化フォーラム」を開催し、東欧や中東での組合結成の成功事例も 紹介した。

最後にUNI世界金融部会運営委員会として、行動計画を実施するために、分野毎に作業部会を設置し、各地域の委員で責任分担することが提案された。 「CSR」作業部会はアフリカ、「組織化」作業部会は米州、「コミュニケーション」作業部会はUNIApro、「規制」作業部会は欧州が主担当となり、各 地域代表と協力していくこととなった。イオジア議長は、「欧州地域では既に各副議長が責任を分担して欧州行動計画を実施している。このアプローチを世界レ ベルに適用するということだ」と述べ、委員の協力を要請した。

欧州以外の参加者は、翌24~25日のUNI欧州地域金融部会大会を傍聴する。


UNIアフリカ地域大会

2013年10月16~18日に開催されたUNIアフリカ地域大会では、UNIアフリカの4年間の活動を振り返るとともに、来年ケープタウンで開催されるUNI世界大会を展望した。日本からは伊藤栄一UNI-LCJ事務局長が、2010年に長崎で開催されたUNI世界大会の経験を伝える目的で招待された。

大会は「UNIアフリカ、立ち上がれ」をスローガンに開催されたが、現在の経済の急成長、内戦等の減少、組合活動の前進を受け、極めて楽観的なものであった。とはいえ、社会状況は深刻である。ナイロビにはアフリカ第2の巨大スラムと言われるキベラがある一方で、富裕層の地域がすぐ近くの丘の上にあるという状況が象徴するように、貧富の差は大きい。若者たちの失業率も高い。しかし、大会では、歌や踊りを通じた躍動的なコミュニケーションがあり、来年ケープタウンで開催される世界大会も、歌や踊りが主体の楽しい大会となるだろう。アフリカの人々は非常に親日的である。このように対日感情が良い地域を私たちは大切にしなければならない。世界大会という機会を利用し、日本とアフリカの結びつきがもっと強まるように努力したい。

写真はFlickr参照。


UNIゲーム部会アジア太平洋地域会議

UNIゲーム部会アジア太平洋地域会議が2013年10月7~8日、マニラで開催され、UNI加盟のゲーム労組に加え、IUF加盟のホテル労組が招待された。日本からは、UAゼンセンの古川大総合サービス部門副事務局長、林万喜マルハンユニオン委員長、佐藤瑞樹ダイナムユニオン書記長が参加した。

開会式では、ウマリUNI-PLC(フィリピン加盟協)事務局長が挨拶し、フィリピンでの会議開催に感謝の意を表した。また、フィリピンでも新しくゲーム産業が進出し、マニラ湾岸にホテル、テーマパーク、カジノ等を統合した一大統合リゾート(エンターテイメント・シティー)を建設する方向で進んでいることを説明し、このような中、フィリピン労働運動は、イデオロギーの差を乗り越えて進むことが重要であるとコメントした。ヒダヤット・グリーンフィールズ IUFアジア太平洋地域書記長は、「今回の会議の参加者の多くはIUFとUNIに加盟しており、今日の会議は共同行動の良いスタートだ。UNIとIUFはゲーム業界の組織化で連帯していくべきである。ただし、我々は質的に高い組合を求めており、量が問題ではない」と述べた。

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UNIゲーム部会及び他地域の活動

ギエドラ・レリテUNIゲーム部会担当局長は、スペインのカジノの会社であるコードレとグローバル協定を結んだ意義を強調した。新しい組合を作り、教育を与えることが重要なので、組織化に力を尽くしているとした。

アフリカのゲーム部会は、6カ国で会議を開始したところである。2014年世界大会を契機に組織化を行い、グローバル協定の締結努力を進めたい。また、集められたチップのホテル労働者を含めた分配が一つの論点となっていることが紹介された。

北米におけるカジノ収益は、64億ドルがラスベガス、31億ドルが太平洋地域、228億ドルがその他の地域と、ラスベガスの力が大きい。また原住民運営のカジノもある。3,970万人がラスベガスを訪れているが、2007年と比べて収入、客数とも落ちている。以前MGM社は、利潤の90%をラスベガスから得ていたが、今では50%となり、替わってマカオが収入を支えている。新しい小さなカジノを各国に分散していこうという流れがあり、これはステーション・カジノと呼ばれている。ラスベガスを中心に存在し、映画館、スポーツ施設等、コミュニティーセンター的な要素を持つ。他方、南米では、カジノの組合の力は強く、アルゼンチンの組合の力で、米国UNITE-HEREの組合結成が合意に至った。

 

アジア太平洋地域からの報告

UAゼンセンの古川総合サービス部門副事務局長が日本の状況について報告し、「五輪開催は、カジノ合法化と関係があるか」、「非正規労働者の組織化と言う時、正規労働者との間に方法上の違いはあるか?」、「日本で統合リゾートを作るとすれば、1兆円以上の収入があると言われているが、本当か?」、「五輪開催までに正規労働者の数を上げるという方針はどうか?」等、多数の質問が活発に出された。

ゲンティングループは1965年に開始した。マレーシアは回教国であり、ギャンブルは禁止されている。そこで政府を説得するため、外国人観光客を呼び寄せるという理屈を使った。共産ゲリラや虎等と戦いながらも、まず道路を作り、そして山頂に20テーブルのカジノを作った。1980年から増築し、今では9,000の客室と1万3,000人の従業員を擁する大企業となった。

組合は1978年に結成され、当初はピケ、逮捕等があった。しかし政府の介入も有り、企業内労組として、カジノ労働者の組織化に成功し、最初の団体協約が結ばれた。

その後、企業は多角化し、ホテルリゾート、不動産、電力、石油、ガス、カジノ、クルーズ等を持つに至った。英国、米国、バハマ、ラスベガス、マニラ等、過去数年で進出してきた。リゾートワールドというブランドは、ゲンティングループが運営している。

組合は、健康、労働安全、負けた顧客への対応等に力を入れている。ホテル労働者の給料は安く、退職手当の充実等も課題の一つだ。

最後に、デビー・アンダーソンIUF副会長(UNITE-HERE)が、ホテルが統合リゾート化していく中、カジノ部分を取り込んでいくことが重要と述べた。ラスベガス労働者への支援等の決議を採択し、会議を終えた。

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UNIゲーム部会会議

続いて、日本、マレーシア、ネパールのUNI加盟組合だけの会議が持たれた。マグダレン・コーン・アジア太平洋地域担当部長が、今回の会議は、最初のステップとして重要であると述べた。一大統合リゾートの性質を考えると、今後もIUFの協力が必要であろう。ギエドラ担当局長は、2015年にグローバル会議を行う予定であると強調した。

ゲンティン労組は、「今後、日本、韓国、台湾等がカジノ合法化のターゲットになるとすれば、連携して行くことが重要。喫煙等、悪い労働環境があり、政府の規制等が重要である」とし、UNIとしての活動がまだ不十分であると指摘した。

古川副事務局長は、「今回初めて参加し、各国の状況をよく知ることができた。日本でカジノが合法化されるかは不透明だが、各国のカジノの状況を聞けて良かった。それぞれ状況は違うが、良い事例を共有することは重要である」と述べた。

最後に、二次喫煙等の安全衛生問題を今後のテーマに取り上げることを確認して、会議を終了した。

 


東京からトーゴへ

UNI Apro金融部会議長を關裕氏から引き継いだ田原將一損保労連委員長は、UNI金融部会のエコバンク・グローバルキャンペーンに参加した。
アフリカのエコバンク労働者の報告によると、彼らはローカル経営者による解雇や突然の望まない異動といった弾圧的な行為を恐れ、組合に入りたがらないという。また、ローカル経営者は、労働問題を巡る組合からの対話の要求を巧妙に拒み、社会対話を避けようとしているという。
こうしたことから、労働者はエコバンクの繁栄に寄与する、献身的で重要な資産であるにもかかわらず、ローカル経営者に労働者の権利を尊重する意識が欠けていることがわかる。
エコバンクは、アフリカ最大の大手銀行で、国際金融公社(IFC)のパートナーとして、アフリカ諸国の開発と貧困削減のため、世界銀行によって策定された政策を実施している。エコバンクは社会対話の発展を受け入れやすいカルチャーを持っている。
UNI金融部会は、世界中の加盟組合を動員し、エコバンク労働者が団結権を認められ、団体交渉ができるよう、彼らの闘いに連帯を示すグローバル・キャンペーンを立ち上げた。
UNI金融部会加盟組合は、各国のトーゴ大使館を訪問し、エコバンク経営者がアフリカの全ての事業所で労働者の権利と労働組合権を尊重することを求める書簡を、大使に届けるよう要請された。
田原UNI Apro金融部会議長は10月17日、東京のトーゴ共和国大使館を訪問し、スティーブ・アクレソ・ボジョナ臨時大使に、トーゴ政府がエコバンクの不当労働行為に注意喚起するよう求める連帯の書簡を手渡した。ボジョナ臨時大使は、UNI金融部会からのメッセージをトーゴ政府に伝えると約束し、エコバンクはもともとトーゴとナイジェリアによって設立されたと説明した。同銀行はアフリカ33カ国に支店を持つまで成長し、西アフリカ最大の銀行となった。

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