2013年12月6~7日、反政府デモが収拾しない中、UNI-LCJ部会合同セミナーとしては2008年2月以来約6年ぶりにタイ加盟協支援セミナーをバンコクで開催した。タイ側からは、ニライモンUNIタイ加盟協(UNI-TLC)議長、ソンブーンUNI組合強化・組織化センター所長はじめ、加盟組合及び未加盟労組から20人が参加した。日本からは、情報労連の高梨NTT労組中執を団長に下記8人の講師が出席した。
情報労連 NTT労組中央執行委員 高梨真貴子
全信連 三菱UFJ信託銀行従業員組合書記長 飛田健二郎
全信連 三菱UFJ信託銀行従業員組合副書記長 西村美咲
全信連 三井住友信託銀行従業員組合副書記長 坂田絵梨子
UAゼンセン 流通部門産業政策部長 川橋学
自動車総連 労働条件局部長 横田芳治
自動車総連 業種政策局部長 矢澤猛俊
JP労組 中央執行委員 北﨑衛
開会式に先立ち、ソンブーン所長から反政府デモについて説明があり、国営企業労組メンバーの一部はデモに参加しているが、暴力に訴えるものではないと述べると共に、政治が安定しないと経済も安定しないと懸念した。ニライモン議長の歓迎挨拶に続き、高梨団長は開会挨拶の中で、本年8月のUNI Apro6部会大会を成功に導いたUNI-TLCに敬意を表した。更にUNI-LCJの13年を振り返り、UNI統合後の日本加盟組合の統合・融和が討論の積み重ねで成し遂げられたことと、長崎UNI世界大会までに明確な目標を設定し全員で実現したことにより連帯が強化された点を強調した。
また、ソンブーン所長からタイ労働事情及び労働運動の概要が報告され、ニライモン議長からはUNI-TLCの課題について数点概説された。
「労働組合の役割と責任」のテーマでは、日本から飛田講師が目的と機能、単組の具体的活動事例を紹介した。
「団体協約交渉」のテーマでは、矢澤講師から団体交渉と労使協議の違いや“対立”と“協力”を併存する労使関係が概説され、北﨑講師からはJP労組の様々なコミュニケーションチャンネルを通じた労使対話が例示された。タイからはワスパット郵便労組書記長が「団交は経営側との戦争」と表現し、録音しない、交渉経緯を公表しない、経営側の立場でも考える、互いを理解する努力をする、因果関係・利益と不利益を具体的に提示するといった交渉の手法と、最近の交渉の成果を報告した。
「賃金交渉」については、横田講師が日本の賃金の特徴とその遍歴、賃金交渉を説明し、ワイティットBFUN(銀行金融労組ネットワーク)議長は、組合側は感情的にならず労使双方に有益となる要求をしようと努力するも、タイの労働法が労働者を保護するというより使用者に有利である点を指摘した。
「組織化・新規組合員獲得」のテーマでは、高梨団長が日本全体の組織率の変遷を非正規労働者の増加を主要因として報告した他、川橋講師はいくつかの事例を挙げて具体的手法を説明した。ワイティットBFUN議長は、7単組で今年4月に発足したBFUNの現状を説明し、25000人のメンバーのうち80%が加盟費未払いであると述べた。
最後に日本人講師から、青年メンバーの活性化(チームワーク醸成、次世代役員育成);生産性向上で会社に協力していることを示す;同じ産業内でライバルでも労組どうしは定期的に情報交換し連携する;連合も違いを乗り越え様々な組織が統一を成し遂げた;勉強会・セミナー・家族参加イベントの開催;他業種とのネットワーク;女性の活躍促進など様々なアドバイスがあった。ニライモン議長は、日本とタイのUNI加盟組合の交流の歴史は長く、今後も継続していきたいと希望すると共に、「労働者の力で世界を変えたい」との決意をもってセミナーを閉会した。