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UNI Apro、APPU(アジア・太平洋郵便連合)が覚書署名式を開催

12月20日、2010年に初めて締結され、今回3回目となるUNI Apro郵便・ロジスティクス部会とAPPUの了解事項覚書の署名式が東京で開催された。アジア・太平洋郵便連合(APPU)からはリン・ホンリャン事務局長が出席、UNI側は増田光儀UNI Apro郵便・ロジスティクス部会議長、野田三七生UNI Apro会長、コーネリア・ブロースUNI郵便・ロジスティクス部会局長、クリストファー・ウンUNI Apro地域書記長、アリス・チャンUNI Apro商業部会担当部長、小川陽子UNI Apro東京事務所長、大崎佳奈子UNI Apro郵便・ロジスティクス部会担当部長、JP労組から八木和子国際部長、藤川ちぐさ国際スタッフ、情報労連から木村富美子国際担当部長が出席した。日本郵便本社国際事業部からは目時政彦執行役員が来賓として出席し、挨拶をいただいた。

新しい覚書では、社会対話とパートナーシップ労使関係の促進のために「APPU及びUNI Aproはそれぞれの責任領域の枠組み内で、共同行動を発展させる」と具体的な共同行動が新たに追加された。具体的には第4次産業革命時代の効果的な未来の労働力戦略、教育と情報提供、経験共有や変化に対応した新しい郵便サービスや活動の促進等が盛り込まれた。

署名式では、増田UNI Apro郵便・ロジスティクス部会議長が、「今回のAPPUとUNI Aproの覚書の締結によってアジア太平洋地域の郵政労働者と経営者の社会対話を前進させ、事業と社会の発展に貢献できる新しい基礎となることを期待する」と開会の挨拶を述べた。


2017年、UNIにおける「労働の未来」の取組み

2014年の第4回UNI世界大会以降、UNIは「労働の未来」について現状分析と課題への対応を検討してきた。2018年の第5回UNI世界大会の議題の1つとしても「労働の未来」が取り上げられる。

ここには、2017年の世界及びアジア太平洋地域における取組みと報告資料を掲載する。

UNI世界執行委員会における取組み

  • 第20回UNI世界執行委員会(2017年10月、スイス・ニヨン)における、「労働の未来へ向けた労働組合のイノベーション」背景文書
  • 動議5:労働の未来へ向けた労働組合のイノベーション
  • 労働者データのプライバシーと保護のための10大原則
  • 倫理的な人工知能のための10大原則

アジア太平洋地域組織の取組み(UNI Apro部会大会背景文書)

  1. 第5回UNI Apro ICTS部会大会   第4次産業革命における情報通信技術(ICT)産業    アジア太平洋地域の労働者にとっての展望と課題
  2. 第5回UNI Apro郵便・ロジスティクス部会大会  新たな経済における郵便事業
  3. 第2回UNI Aproメディア部会大会  デジタル時代のメディア
  4. 第5回UNI Apro金融部会大会  フィンテック革命 金融サービスの再改革
  5. UNI Apro合同部会大会 声明「経済統合と第4次産業革命の課題に取組むUNI Apro」

UNI Apro郵便・ロジスティクス部会組織化フォーラムを開催

UNI SCORE及びスウェーデンのユニオン・トゥー・ユニオンの後援を受け、組織内部で組織率の低い部分を引き上げることを目的に、UNI Apro郵便・ロジスティクス部会を対象に組織化フォーラムが2017年11月27~28日、マレーシア・クアラルンプールで開催され、約30人が参加した。

加盟組織からのケーススタディーとして、JP労組の原口陽一郎九州地本書記次長が出席し、九州地本での非正規郵政職員の組織化の取り組みについて、現場の視点からわかりやすく報告した。アンディ・スノッディUNI SCORE局長(組織化局長)と玉井諭UNI Apro組織化部長はフォーラム参加者を5人前後の小グループに分け、2日間の多くの時間をグループ別セッションを中心に進行した。「強い労働組合を作るには何が必要か」から始まり、組織化に必要な項目、優先すべき課題について話し合い、組織化につながる要素を見極め、参加者は積極的に議論に参加した。各グループからも積極的な発表が相次ぎ、グループは人数やメンバーを変え、翌日も同様のセッションを行った。最後に各参加者は、各国ごとに組織化計画を作成し、参加者自身の職場や組織率の低い地域など、如何に組織化を行うかそれぞれの組織化計画を発表し、閉会した。


JP労組後援 フィリピン郵便労組セミナー

JP労組後援フィリピン郵便労組セミナーが2017年11月10~11日、マニラ郊外のアンティポロで開催され、PEUP、KKKPより約25人が参加した。JP労組からは中央ユースネットワークの山本崇史・大城優斗常任幹事が出席した。

セミナー開催にあたり、PEUPのダド・グズマン委員長は、「このセミナーについては伊藤前UNI Apro郵便・ロジスティクス部会担当部長の時代に始められ、現在に至っている。今回の討論テーマは組織化であるが、伊藤前部長がこれまで努力してきた2労組の統一を見据えて進めていきたいと思う。どちらの労組に加盟していても同じフィルポストで働く郵便労働者である。労組は現在共通の方向性を持っている。セミナーでは組織化について話をするが、組織統一についてもぜひ皆さんに考えてもらいたい。」と述べ、参加者を激励した。

大崎佳奈子UNI Apro郵便・ロジスティクス部会担当部長からは、「交通機関に台風の影響が残る中、多くのみなさんに集まっていただき感謝している。これまでにUNI活動に参加経験のある方は少ないようだが、みなさんもUNIファミリーの一員である。UNIのセミナーにようこそ。そしてこの機会に多くを学んでほしい。ダド・グズマンPEUP委員長から提案のあった組織統一についても真剣に考えてほしい。JP労組は結成10年を迎えた。新組織になって以降、組合員は増加している。もちろん、強い交渉力も発揮して労働者の権利を守っている。ぜひとも日本の経験について知ってほしい。また今回両労組の協力に感謝する。」と述べた。

山本崇史・大城優斗両常任幹事からは、JP労組の活動及び、近畿・沖縄地本のユース活動についてプレゼンを行った。参加者からは「ユースのイベントはかなり大規模に行われているが、準備期間はどのくらい必要だったか」、「フィリピンでも20代の若者は組合イベントに関心を持つ人が少なく、どのように若い人たちを活動に引き込むか。」といった質問が出された。

セミナー終了後にKKKPのアルヴィン・フィデルソン委員長、PEUPのダド・グズマン委員長、ダニー・アベラナ書記長、マージー・グズマン会計監査及び女性委員会議長と今セミナーの評価を行った。次回セミナーのテーマを組織統合とし、開催については、フィリピン側からの提案書を踏まえ、JP労組とUNI Apro郵便・ロジスティクス部会で協議していくことを確認した。両労組は異なるナショナルセンターに所属しているが、次回はJP労組の経験を学ぶセミナーを開催し、その機会をてこに組織統合をさらに進めていきたい考えを両労組委員長から聞くことができた。

今回は、11月11日にパヤタス及び奨学生家庭訪問のほか、11月8日にCEMEC訪問(空港近くの郵便区分センター)、11月9日には中央郵便局見学及びPEUP労組事務所を訪問した。パヤタス地区はマニラなどの市街地から出されたごみの集積場となっており、地区に住む多くの人々がごみの中から換金できる物を集め、日々生活している。UNI-PLC青年委員会は同地区の子どもたちへの支援を長年続けている。今回の訪問の機会に、山本・大城両常任幹事はUNI-PLC青年委員会やボランティアたちとともに給食プログラムに参加し、子どもたちへ昼食を提供した。

 

 


第6回UNI Apro東アジア労組フォーラム

第6回UNI Apro東アジア労組フォーラムが、2017年10月26~27日、台湾・台北の中華電信本社体育館で開催された。日本、韓国、台湾、香港より136人(うち女性21人、女性参加率15%)が出席し、「第4次産業革命の時代に、包括的な成長を遂げるために」というメインテーマの下、報告・議論を行なった。日本からは、12加盟組合より総勢48人(うち女性17人、女性参加率35%)が参加した。

開会式では、ホスト国・台湾のUNI加盟3労組代表、中華電信社長等から歓迎挨拶を受けた。松浦昭彦UNI-LCJ議長は、フォーラム開催の準備に尽力した台湾の3加盟組織に感謝を述べ、「政労使の対話を通じ、我々の未来は我々が創るという意気込みでデジタル化のメリットを最大化し、デメリットを最小化する取組みを始めよう」と、東アジアにおいて建設的かつ有意義な意見交換ができることを期待した。

まず各国の最近の「政治・経済・社会的課題への対応」を共有した。日本については金子晃浩UNI-LCJ副議長が、先の衆議院議員選挙の結果を報告すると共に、労働力が不足する中、日本経済の持続可能性を高めるためには生産性の向上が喫緊の課題であり、政府の「働き方改革実現計画」の下、労働組合としても長時間労働の是正や多様な働き方への意識改革を推進していること等を説明した。韓国、台湾、香港からも、急激な少子高齢化、労働人口の減少、長時間労働、非正規労働の増加、男女間格差、若年労働者の失業問題等、類似の課題が挙げられた。韓国からは、労働組合や市民による「ろうそく革命」によって10年近く続いた保守政権を打倒し、革新系政権の下で労働者寄りの政策へと転換を図っていく決意が述べられた。一方、中国返還後20年が経過した香港では、団体交渉権をはじめとする労働者の基本的権利が侵害されている苦境が報告され、連帯支援が要請された。

「デジタル化の、雇用と仕事への影響:企業、産業、国レベルでの対応」のセッションでは、リウ・シーハオ銘伝大学教授が基調講演を行った。特にクラウドワークの増加により、多くの企業は新規採用の必要性がなくなり、雇用・労働形態の変化により、従来の労使関係の対象外の労働者が増加する。また、プライバシーの保護も課題であり、インターネットにアクセスすることにより個人情報が流出するリスクが高まっていると警鐘を鳴らした。梅原貴司全印刷委員長は、デジタル化による、日本の労働者や労働法制への影響について分析し、テレワークの普及等により、勤務時間や勤務場所の自由度が高まる反面、長時間労働が懸念される点や、複数企業に所属する場合の雇用・労使関係に課題を提起した。渡辺由美子JP労組書記次長は、支払審査業務やコールセンター業務へのAI(ワトソン)導入事例、作業負担軽減のためのロボットスーツ導入事例について紹介した。技術の進化により、労働力不足や労働時間短縮等、組合員が働きやすい環境づくりに役立つと期待するものの、働き方や労働力の在り方、価値観も大きな影響を受けることから、柔軟な対応が必要だと述べた。

韓国の、キム・ヨンスKPWU労使交渉部長は、無人郵便局等のAI導入事例や物流網の改変に伴う人員削減への反対、韓国政府による第4次産業革命への対応策について報告した。コン・クワンキュKFIU副委員長は、金融部門におけるフィンテックの拡大等、急激なデジタル化への移行状況と金融労働者の雇用危機、労働組合の対応について、シティ銀行の店舗閉鎖問題を例に報告した。台湾のハミルトン・チェンTPTSEU執行委員は、公共放送部門のデジタル化に関する投資及び労働者教育が不十分であることを懸念した。香港のキャロル・チャンRCCIGU委員長は、政府主導で進む小売業におけるデジタル化によって、雇用削減や返品不可能という消費者へのサービス低下等の弊害が発生していると指摘した。

「デジタル経済における組織化」と題するセッションの導入報告として、柴田謙司情報労連書記長は、日本に200万人以上存在するクラウドワーカーの現状について、2016年12月の連合による調査をもとに報告した。収入面に不満がありながらも、時間や場所を選ばず働ける点に魅力を感じている労働者が多いが、半数近くがトラブルを経験している。今後求められる対応として、政府による更なる実態把握と法整備、個人加盟ユニオンの設置、SNS等インターネットを活用した組織化等を提言した。中村正敏日放労委員長は、デジタル経済における新しい組織化について、産業、会社、個人の各レベルにおける持続可能性の視点から、ディーセントワークに基づく労働の概念の問い直しが求められていると提起した。

カン・ヨンベ韓国KHMU教育宣伝部長は、「高齢化が進み介護人材が不足する中、組合員拡大の機運は高まっており、組織拡大に注力している。SNS等を通じたデジタル化時代に対応した組織化が課題だ」と報告した。リン・シューフェン台湾CTWU執行委員は、中華電信の子会社「宏華会社」へのアウトソーシングによって雇用危機に直面したものの、会社との協議により解決した経験を挙げ、デジタル経済においても労働者の権利擁護と代弁という組合の基本理念と存在意義は変わらない、と地道な活動の重要性を訴えた。

「労働の未来未来に向けて労働者はいかに備えるべきか」のセッションは、ウンUNI Apro地域書記長が導入報告を行い、「デジタル化による変化や雇用代替は不可避だが、労働者がいかに包括的で公正かつ持続可能な方法で変化に対応し、長期的な雇用可能性(エンプロイアビリティー)を構築できるかが鍵だ」と強調した。安藤賢太UAゼンセン流通部門執行委員は、深刻な人手不足に直面する日本の流通産業におけるAIの活用事例として、レジの無人化や無人店舗、ロボットによる接客、気象データ分析を利用した効率的な発注等を紹介し、AI活用により産業全体を高度化させ、生産性と労働価値を向上させるためにも、産業の未来を創造できる人材育成を推進すべきだと述べた。谷知美損保労連中執は、損保産業や組合員を取り巻く環境変化や多様な価値観に対応するため、組合員自らが働き方を考え行動することが重要だとして、損保労連が推進する「めざす働き方」の実現に向けた取組みを紹介した。

ピーター・チョイUNI Aproインターン(仁川大学)は、技術革新による失業が一定程度発生することは避けられず、社会全体の問題として解決するための一つの方策として、ユニバーサル・ベーシック・インカム(UBI)の可能性を提起した。UBIは、政府が収入・仕事の有無に関わらず基本所得を無条件に全ての市民に支給する制度で、年金や生活保護等、既存の社会保障制度に比べ透明性が高く、行政の負担軽減、貧困削減効果といったメリットがある一方、働く意欲の喪失やインフレを引き起こす懸念といったデメリットも指摘されている。世界では試験的な導入も始まっており、格差が拡大し非正規労働者が増加する中で、一選択肢として検討の価値があるのではないかと提言した。続く質疑応答では、韓国の政権交代による今後の労働政策面での期待感や、日本の正規・非正規労働の格差、UBIの課題等について質問やコメントが出された。

閉会式では、フォーラム参加者は満場一致で共同宣言を採択した。第7回フォーラムは2018年に日本で開催する予定で、労組だけでなく社会パートナーを招待することが確認された。合わせて、韓国メディア労組/KBS労組及びMBC労組への連帯、香港の団体交渉法復活闘争への連帯を表明する声明を採択した。


第15回 UNI Apro東アジア郵便労組フォーラム

第15回UNI Apro東アジア郵便労組フォーラムは、2017年10月25日、台湾・台北で開催された。東アジア地域における郵便労組の友好・信頼関係の醸成と、事業を取り巻く情勢の共有のため、日本・韓国・台湾で開催しすでに15回目となる。3カ国の郵便労組から約60人が出席、日本・JP労組からは増田委員長はじめ7人の代表団が出席した。ホスト労組の中華郵政労組(CPWU)からは、台湾全土で組合活動を支える理事・監事が出席した。午後は、「労働災害、業務による健康被害、過労死などから労働者をどのように守るか」というテーマで、各労組からプレゼンテーションを受け討論を行った。また、フォーラム後に開催された運営委員会では、各労組代表団は、代表団への女性・青年の参加を促進する新しい協定書に署名した。また、来年は東アジア労組フォーラム開催に合わせ、日本での開催が確認された。

増田UNI Apro郵便・ロジスティクス部会議長は開会式で、8月にマレーシアで開催されたUNI Apro郵便・ロジスティクス部会大会において、全会一致で採択された4つの戦略的活動計画に向かってともに前進していこうと激励し、日本、韓国、台湾という部会の主要労組がそれぞれの母国語で自由に討論できる今フォーラムの重要性を強調した。


デジタル植民地化に対抗する解決策を議論

2017年10月9日、UNI本部において、昨年に続き「労働の未来」に関する組合幹部サミットが開催され、100人を超える加盟組織役員、専門家、研究者らが出席し、デジタル化の課題と解決策について議論した。

デジタル化の懸念―格差の拡大、デジタル植民地化

デジタル時代の格差の拡大を防ぐことは、今回のサミットにおいても繰り返し強調された点である。IEEEスタンダード・アソシエーション(IEEE-SA)のコンスタンチノス・カラチャリオス氏は、「デジタル化は1970年代に始まったが、国内においても国境を越えても、社会的公平性は改善されるどころか、格差は人類史上かつてないほどに高まっている」との分析を示した。富と力はごく一部の人に集中しており、統計を見れば、デジタル時代の始まりから、生産性向上と典型的な労働者の報酬と乖離が明らかだと述べた。

人権とテクノロジーを専門とするレナータ・アヴィラ・ピント弁護士は、「デジタル植民地主義」の高まりに警鐘を鳴らした。豊かな国の一握りのデジタル企業がそれ以外のデジタルの運命をコントロールすることである。「インターネットにつながれることによって民主主義につながると思っていたが、知らず知らずのうちにデジタル植民地に足を踏み入れていた。我々の情報が無意識に流通することで、これらの企業に力が蓄積されている。」

解決策は?

ルーヴェン・カトリック大学で労働法を専門とするヴァレリオ・デステファノ教授は、プラットホーム労働者が直面する問題の解決策を説明した。「誤解があるようだが、実は多くのプラットホーム労働者の生計はギグエコノミー(単発の仕事)にかかっている。単発の仕事では副収入どころか、必要最低限の収入にしかならない。これは仕事として規制されるべきである」と述べた。「結社の自由と団体交渉は人権であり、私の知る限り、自営業者も人間だ。つまり、だれもが組合に加入し、団体交渉に参加する資格がある。差別を受けないことも人権であり、それは全ての労働者について言える。しかし、労働者を評価するためにアルゴリズムや格付けを使う時、これらの格付けは偏見や先入観を反映する可能性がある。この点に注意する必要がある」と指摘した。格付けについて、デステファノ教授は、プラットホーム労働者の雇用条件に関して、彼らに、もっと力を与えるかもしれない改革を提案した。それは、たいてい何年もかけて構築される格付けを自らコントロールできるようにすることである。格付けは労働者をひとつのプラットホームに固定してしまうが、格付けは移動可能であるべきだ、と主張した。「プラットホーム経済において、格付けは労働者にとって最大の資本である。労働者が別のプラットホームに移動した場合、それまで蓄積した良い格付けを持ち運べるようにするべきだ。」

全米脚本家ギルド東地区のローエル・ピーターソン氏は、「デジタルプラットホームにおける根本的な課題は、分断された職場でいかに力を構築するか」だと語った。分断を克服するため、同ギルドは、組合員にとっての専門的かつ創造的なコミュニティであると位置づけた。ソーシャルメディア上でギルドへの関与を確立することと合わせ、オフライン会議も重要であると述べた。この手法により、全米脚本家ギルドはこの数年で25%を超える成長を遂げた。更に、全米脚本家ギルドの教訓から、短期契約が当たり前のこの業界以外も学ぶことができる。臨時労働により依存する業界においては、幅広い組織化キャンペーンを企画し、複数の使用者を同時に組織する必要がある。組織率が鍵となる。

UNI本部でプラットホーム、派遣、デジタル化、貿易等を担当するクリスティーナ・コルクロフ部長は、「将来、世界のGDPの15~20%がデータ関連によるものとなるだろう。使用者は労働者の詳細データをモニターし、追跡することができ、搾取につながる懸念がある。個人データを評価に用い、雇用や解雇に利用することもできる。デジタル化された職場において労働者及び組合の権利を守るため、データの扱いが新たな開拓すべき分野になる」と力説した。

レナータ・アヴィラ・ピント弁護士は、「組合は労働者を守るだけでなく、いかに労働者がデータを活用できるかを考えるべきだ。我々のデータが企業の利益のために使われるのではなく、我々のために使われるよう、我々は協力して抵抗と独創性の場をつくることができるだろう」と述べた。

国際電気通信連合(ITU)の「デジタルインクルージョン(デジタル技術が「空気」や「水」のように受け入れられ、経済社会全体を包摂し、暮らしの豊かさや、人と人とのつながりを実感できる社会)」プログラムを担当する上級役員、ロクサナ・ウィドマー氏は、技術が男女格差を縮める可能性について話し、「情報通信技術(ICT)は、人々の能力の格差を縮め、人々に力をつけさせる強力なツールになり得る。ひいては包摂社会の創造につながる」と述べた。

しかし、政策や解決策を実行に移すことは容易ではない。カーディフ大学のヘレン・ブラケリー教授は、「今我々が行なう選択次第で将来は変わってくる。将来の社会は、政治権力闘争によって左右されるだろう。組合は、組合員を擁護するため、これらの対話の最前線に立つべきだ」と述べた。

フィリップ・ジェニングスUNI書記長は、我々のデータ及びデジタル化のプロセスに、より主導権を取る重要性を訴え、サミットのまとめとして、「我々は、自分たちの組織のことだけ話しているわけではない。我々の生活、そしてコミュニティの将来がかかっているのだ」と強調した。


UNI Apro/JP労組 共同英語セミナー

2017年9月30~10月1日、東京で、UNI Apro/JP労組共同英語セミナーが開催された。全国から集まったJP労組の27人の若手組合役員・組合員が、韓国、ベトナム、ネパールの郵便労組からリソースパーソンを招き、英語で語り合い、UNIを通じた国際連帯活動について学ぶと共に、各国の郵便事業や組合活動を学んだ。

参加者は4つのグループに分かれ、英語での組織化のロールプレイを行った。各グループから英語で、組合加入のメリットを強調し話しかける、楽しいイベントから組合を知ってもらう、といった工夫したアプローチを披露した。

今年7月のUNI Apro/APPU/タイ郵便労組セミナーに参加した山本和紀JP労組東京地本支部女性フォーラム議長と、竹田茜北陸地本組合員から、APPUセミナーに参加した経験を報告した。

また、「郵便事業が生き残るためには」というテーマのグループワークでは、現在の職場で起こっている問題を話し合い、沖縄からの小包の遅延を解消するために自社の飛行機を購入する、小売ネットワーク強化のためコンビニを買収し集客力アップ、全国の職員からアイドルグループを、といった斬新なアイデアがたくさん出された。

セミナー参加者は、今回知り合った仲間とのネットワークを大切にし、経験を今後の活動に活かしていくことを最後に確認した。

 


UNIインド加盟協/UNI-LCJ共同セミナー

2015〜2018年度UNI-LCJ海外活動の方向性に沿って、3年目となるUNIインド加盟協(UNI-ILC)との共同セミナーが、インドのUNI組織化センター(UNI-DOC)の所在地ハイデラバードで開催された。UNI-LCJからは、宮井UNI-LCJ副議長(損保労連委員長、UNI Apro金融部会議長)を団長に、才木情報労連/KDDI労組副委員長、柴田UAゼンセン短時間組合員総合局副部長、岡田自動車総連政治局部長が講師として参加した。UNI-ILCからは、ミリンドUNI-ILC議長をはじめ加盟組織役員、銀行・保険労組、郵便労組、商業労組、IT労連(NCU)・ITを専攻する学生等総勢40人が参加した。

宮井UNI-LCJ副議長は、グローバルな政治・経済課題やデジタル化に対応するには、労働組合もグローバルに結束して情報・経験交換し、世界中の労働者の明るい未来のために英知を出し合うことが重要だと挨拶した。

UNI-DOCは、長年インドのIT労働者の組織化に取組んできた。IT業界の使用者は反労組的であり、IT労働者は組合に加入すれば解雇されると思っているため、組合結成は非常に難しかった。そのような中、ハイデラバード、バンガロール、ムンバイ等が存在する5州でIT労組を組織し、2013年に全国レベルのNCU(全国IT労連)を結成するに至った。今回初めて、商業労組、全国IT労連から多くの若手・女性組合員が参加した。プラサドUNI-DOC所長は、両国のIT労働者の現状と課題について活発な情報交換ができることを期待した。

開会式に続いて、ジャワハルワール・ネルー技術大学(ハイデラバード・エンジニアリング学部)のゴバルダン学長から「インドのIT産業における労働環境」について基調講演を受けた。欧米に比べIT人材の人件費が安いため、インドではIT関連の仕事が急成長し、若年層に雇用の機会を提供し、インド経済に大きく貢献してきた。しかし高給だが、ピラミッド型の労働力構成で、年齢を重ねるほどポジションが少なくなり、突然解雇通知をつきつけられることが多い。IT産業に就職する若者は、そのような将来を予測しておらず、60歳まで同じ仕事ができると思っていた。技術の進化によって、新しい機会が創出され、機械化・自動化により、人間の作業が楽になる反面、新しい技術を常に学び続け、マルチスキルでなければ、失職するプレッシャーもある。50歳になれば20代の若者と同じように学ぶことはできないが、経験を活かした別の機会もあるだろう。どのようなキャリアパスがあり、そのために何をすべきか予測ができれば、適切な対応も可能だ。ゴバルダン学長は、将来を予測する必要性とビジョンの重要性を強調し、2日間のセミナーでの議論が労働組合の政策提言に活かされることを期待すると共に、政府の諸機関でデジタル化が推進され、様々な公的サービスもオンライン化されているが、インフラとそれを使いこなす人材の研修が不十分である点も指摘した。

日本からは、宮井団長が「日本の労働運動の概要と今日的課題」、柴田講師が「職場や社会における格差の是正のために労働組合ができること」、才木講師が「デジタル化時代におけるデジタル化ツールを活用した組織化」、岡田講師が「日本のパートナーシップ労使関係」、小川UNI-LCJ事務局長が「UNIの紹介、労働組合の国際連帯・国際協力」についてそれぞれ講演した。また、講演を受けて、インド人参加者は産業別にグループ討論を行い、発表した。

今回は参加者構成が、既存の確立された国営企業労組(銀行、生保、郵便等)と、新たに結成された民間のITや流通部門の労組に分かれており、固有の課題をそれぞれ共有し、新たな視点から議論を行うことができた。例えば、「既存の労働法が適用されないIT産業で働く契約労働者や派遣労働者こそ組合に入るべき」であり、「彼らに組合に関する正しい情報を伝え、組合のブランディング(知名度向上)やマーケティング(勧誘)をするには、SNSのようなデジタルツールの活用は効果がある」という意見もあれば、「デジタルツールはあくまでも補完的なもので、対面する会議や紙のニュースは必要だ」という意見もあった。また、政府は、諸機関や国営企業でデジタル化を推進しているが、そのためにマルチタスクを要求されること、新しいソフトや導入されたシステムの使い方を習得しなければならないこと、そのための職員への訓練が不足していること、デジタル技術の習熟度に世代間で差があること、デジタル化のインフラが未整備であること、システムエラー等により労働時間が長時間化すること等の課題が挙げられた。

2日間という短い時間ではあったが、組合の歴史の異なる部門の青年男女が、組合の意義、身近な課題の認識から、日本のパートナーシップ労使関係に基づく労働組合運動、UNIを通じた組合のグローバルな連帯の必要性、デジタル化等、若い世代の雇用・労働に影響する課題等について、若い世代の視点から幅広く意見を交換し、「組合は保険ではなく投資だ」、「職場に変化を起こしたいなら、自分自身がまず変わらなければ」、「組合にどのような改革が必要かを、組合の中で議論にしなければ」といった前向きな議論が展開された。

宮井団長は最後に、「労働組合の役割は、現場から綺麗な情報だけ経営陣に伝えるのではなく、事実を伝えることだ」、「企業の発展無くして労働者の明るい未来はない」と、パートナーシップに基づく労使関係の意義を強調した。ミリンドUNI-ILC議長からは、UNI-LCJ講師陣の有益な情報提供に感謝が述べられた他、来年のセミナーをデリーで開催する提案を受けた。


ユースにとってデジタル化はチャンスだ!

 

第13回UNI Apro青年委員会が2017年8月23日、マレーシア・クアラルンプールで開催された。日本からは4人の委員が出席し、各国の委員及びオブザーバーと活発な情報交換を行った。

開会式では冒頭、ミシェル・ベリーノがUNI Apro青年委員会担当部長に就任したことが紹介された。ベリーノ部長はフィリピン銀行労組を昨年退職するまで、UNI Apro青年委員会議長を5年務めていた。開催国UNIマレーシア加盟協のシャフィー議長から歓迎の挨拶を受けた後、クリストファー・ウンUNI Apro地域書記長は、「急速に進展するデジタル化とグローバル化の動きに抵抗し止めることはできない」と断言した。労働者が不利益を被らないよう、手遅れにならないうちに、労働組合はもっと政策議論に参画しなければならないと強調し、「労働組合には政策に若い労働者の意見を反映するという重要な役割がある点を説得しなければ若い世代には入ってもらえない」と、青年委員を激励した。

委員会構成の変更として、日本・情報労連の齋藤久子中央執行委員と、JP労組の飯澤祐真中央ユースネットワーク議長が新たに委員に、東アジアを代表する副議長には日放労の釘本聖司中央執行委員が確認された他、他の地区の委員・副議長の変更も確認された。また、空席となっていた議長ポストには、南アジア選出のノリカ・ワルナスリヤ副議長(スリランカ郵便労組)の就任が確認された。

今次委員会の特別報告として、UNI Apro地域事務所の韓国人インターンから、韓国の若年労働者をめぐる課題が日本等との比較を含めて共有され、若者の組合が30分以内のピザ宅配を廃止に追い込んだ事例が報告された。

日本の委員からは、若者に人気がなく人材不足のIT産業や流通産業の課題や、魅力ある産業にするための組合の取組み、同世代の強みを発揮した組織化の取組み、デジタル化時代における青年労働者の課題等が報告された。また、釘本副議長からUNI–LCJユース英語セミナーで集められた寄付金がワルナスリヤ議長に渡された。

この他、フィリピン、マレーシア、インドネシア、シンガポール、ネパール、スリランカ、ニュージーランドの報告を受けた。委員会を傍聴した女性研修参加者等からも多くの質問が出され、積極的な意見交換が行われた。

最後に、ベリーノ部長から、2018年に開催予定のUNI世界大会における青年参加率を10%に引き上げるという課題の説明と、UNI Apro青年大会開催時期・場所についての提案があった。ワルナスリヤ議長は、「デジタル化を恐れるのではなく、若者にとっての武器と捉え、各国の青年の間の情報交換と経験交流を通じて、前進していこう。」とまとめた。


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