
2026年3月の国際女性月間を記念し、UNI Aproは、メイバンク・クラスワン・オフィサー協会(AMCO)の書記長であるビンドゥ・パテル氏へのインタビューを行った。 ビンドゥ同書記長は、2025年12月に締結した、23ヶ月にわたる困難な団体交渉においてAMCOを率いた。不確実な時代において、粘り強さと連帯、そして原則に基づいたリーダーシップが何を実現できるかを示す証となっている。
インタビューは、2026年3月26日にミシェル・ベリーノUNI Apro女性活動担当部長(以下、ミシェルと記載)が行った。
ミシェル:2026年の国際女性デーを記念して、このインタビューに応じてくださりありがとうございます。2025年12月にメイバンクとの新たな団体協約を締結されたこと、おめでとうございます。まずは、ご自身と組合について簡単にご紹介いただけますか?
ビンドゥ:私はビンドゥ・パテルと申します。AMCO(メイバンク・クラスワン・オフィサー協会)の書記長を務めています。書記長には2014年から就任しましたが、組合活動への関わりはそれよりずっと前から始まっています。2000年に組合員として加入し、2006年に組合活動に本格的に参加し始め、2010年にはAMCOの執行委員となりました。ですから組合活動に携わって約26年になります。
AMCOは西マレーシア全域のメイバンク職員を代表しており、現在8,000名強の組合員を擁しています。組合は、公平性、透明性、そして人間味のある職場方針を提唱しています。組合員の尊厳と生計の両方を守る協約を交渉しつつ、組合員間の団結を築くことに尽力しています。
ミシェル:今回の新しい団体協約の締結には2年を要したと伺っています。前回の協約が2023年12月に失効した際、AMCOの組合員はどのような状況に直面していたのでしょうか?
ビンドゥ:今回の協約締結に時間がかかった主な理由は、銀行の経営陣の交代でした。交渉の途中で人事担当責任者が退任し、新しい担当者が就任したことで、交渉の進展が著しく困難になりました。前任者は組合の貢献と苦労を理解してくれていたので、彼女が留任していれば、交渉はもっとスムーズに進んだと思います。人事異動があったことで、銀行側を説得するのに非常に長い時間がかかってしまいました。
同時に、現場の組合員が直面していたのは、生活費の高騰と不安定な雇用でした。デジタル・トランスフォーメーションによって銀行業界が大きく様変わりするなど、多くの変化が起きており、団体協約の更新がないことは大きな不安材料となっていました。主な懸念は賃金と保護に関するものでした。
ミシェル:交渉では、西マレーシアのと東マレーシアの間にある賃金格差への対応も含まれていました。その問題について説明していただけますか?
ビンドゥ:西マレーシアは、ケダ州やペルリス州からジョホールバルに至るマレー半島全域を指します。東マレーシアはサバ州とサラワク州です。歴史的に、東マレーシアは物資の輸送費がはるかに高かったため生活費が高く、賃金も高かった上、東マレーシア手当が支給されていました。東マレーシアの職員が最初の団体協約を締結し、生活費手当が基本給に組み込まれた際、両地域間の賃金格差がより顕著になりました。これはAMCOが自らの団体交渉において解決を目指した課題でした。
ミシェル:これほど長く困難なプロセスを通じて、あなたとチームはどのようにして組合員のやる気と関わりを維持したのですか? 交渉を進めつつ団結を維持することは困難でしたか?
ビンドゥ:一貫して、頻繁なコミュニケーションを維持しました。メールでニュースレターを配信し、Zoomによる意見交換会も開催しました。組合員のフィードバックを得るためにアンケート調査も行いました。各州を回って組合員と対面でも会いました。
私たちが実施した重要な取組みの一つは、徹底した情報共有です。なぜ我々がさらなる改善を求めているのかを理解してもらうため、銀行の財務諸表の読み方といった基本的なことを組合員に説明しました。組合員は、退職金への積立効果を考慮せずに、現在受け取っている金額だけに注目しがちです。1%の差が退職後の貯蓄に大きな影響を与えるのですが、特に若い労働者はそのことを必ずしも理解していません。
9%の給与調整案が提示された際、執行委員会の9名は個人的に納得していました。しかし、組合員の犠牲と貢献を考慮すれば、これは組合員にとって公平な提案ではないと理解していました。銀行の最大の収益源は組合員であり、利益が100億単位に達しているにもかかわらず、賞与は減少の一途をたどっていました。論理的には、会社が繁栄すれば賞与も改善されるはずです。しかし、私たちの場合は逆だったのです。
アンケート調査を行った結果、90%近い組合員が「まだ署名せずにさらに交渉を続けるべきだ」と回答しました。これが、私たちが交渉を継続する正当な根拠となりました。
異なる期待のバランスを取ることは、確かに容易ではありませんでした。苦境にあり、さらなる改善を求めてくる組合員もいれば、比較的恵まれた環境にあり、提示された条件で十分だと感じる組合員もいるのです。しかしこうした組合員に事情を説明することで、彼らの目と心が開かれたのです。そして、2年間も待たされたにもかかわらず、彼らは私たちと共にいてくれました。これは、エンゲージメントが極めて重要であることを示しています。
ミシェル:組合員の意向を把握するためにZoomでの投票を実施されましたが、連帯活動についてもお聞かせいただけますか?
ビンドゥ:Zoomによる投票を行ったのは、状況について相反する情報が飛び交っていたからです。中には「組合の指導部だけが提案に反対しており、組合員は概ね納得している」と示唆する声もありました。提案に反対しているのが私たち指導部だけの意見ではなく、組合員全体の声であることを証明するための証拠と記録が必要だったのです。
私たちが立ち上げた連帯活動は、今回の団体協約のキャンペーンにおいて重要な要素となりました。「ブラック・マンデー」のキャンペーンでは、全組合員が黒の服を着て出勤するよう呼びかけました。各部署やユニットで写真を撮り、私たちに共有するよう呼びかけました。その時点では、私たちは心から不安を感じていました。交渉はすでに長引いており、組合員がまだ私たちと共に行動してくれているのか分からなかったからです。
しかしキャンペーン初日を迎えて、銀行の営業時間が始まる前から、写真が送られてきたのです。私は座り込んで泣いてしまいました。「組合員は私たちを支持してくれている!」と確信したのです。そこから、後戻りはできませんでした。
組合員たちは、私たちが求めた以上のことをしてくれました。歌を作ったり、動画を作ったりしました。また私たちは広範なネットワークを築き、首相官邸にまで働きかけたのです。これは、以前には決して必要なかったことです。
このキャンペーン期間中に私は13キロ減量しました。眠れない夜が続きました。私たちが下した結論が8,000以上もの世帯に影響を与えることになるためです。
ミシェル:振り返ってみて、何が転機だったと思いますか?どのような戦略が最も効果的でしたか?
ビンドゥ:従来は、労使関係はもっと単純で、互いに譲り合いながら物事を解決できていました。今回は状況が異なり、初めて試すことも多くありました。どの段階でも新しいことを学び、限界を超えて前進しました。
連帯行動が転機となりました。それが行われ、銀行の至る所で黒服姿の職員を見かけた時、CEOは疑問を抱いてチームに戻ったはずです。その後、私たちの要求は非現実的なものではなかったにもかかわらず、状況はより緊迫したものになりました。
UNI Aproから取締役会宛てに送られた書簡も、大きな影響を与えました。中野UNI Apro金融部会議長とラジェンドラUNI Apro地域書記長が取締役会に書簡を送ったことで、AMCOへの支援が単なる地域的なものではなく、グローバルなものであることが経営陣に示されました。少なくとも今、経営陣は私たちがネットワークを持ち、世界中の人々が公正なことを求めて団結していることを認識しています。
ミシェル:組合リーダーとして、この経験から個人的にどんな教訓を得ましたか?
ビンドゥ:戦略よりも忍耐と粘り強さが重要だと学びました。リーダーシップとは、全員の声を聞き、組合員に対して心から気にかけていることを示すことです。そして、使命を見失うわけにはいきません。信頼され、期待され、すべてを託されているわけですから。
確かに、10人から15人ほどの非常に否定的な組合員のグループがいて、メールやWhatsAppのグループを通じて私たちを攻撃し、誤った情報を広めていました。ですが私たちも組合員にメッセージと情報を伝え、全員を正しい方向へとリードし続けました。
ミシェル: 銀行業界全体での人工知能(AI)の導入といった急速な変化に直面し、組合の役割はどのように進化していくとお考えですか?
ビンドゥ: AIが銀行業界を変革する中、労働組合は、テクノロジーが労働者を置き換えるのではなく、補完するものとなるようにしていかなければなりません。今後10年間で完全な置き換えが起こるとは思いません。AIができることは、人間の仕事を補完し、プロセスを容易にし、サービスを向上させることです。しかし、私たちは再教育、公正な移行、そして搾取からの保護を強化しなければならず、これらの課題が非常に重要です。
ミシェル:この団体協約での成功は、公正な合意を確保する上で労働組合がいかに重要かという点について、組合員にどのようなメッセージを送っているのでしょうか?
ビンドゥ:このキャンペーンは、団結が力になることを真に証明していると思います。団結こそが第一です。組合員の利益を確保する上で、労働組合が依然として不可欠な存在であることを示しています。多くの若い組合員は、自分たちが享受しているものが、組合が闘い、交渉して勝ち取ったものであることに気づいていません。彼らは、それが会社から与えられたものだと考えています。
UNI Aproからの支援も非常に重要でした。私たちがマニラを訪れて問題を提起し、中野UNI Apro金融部会議長とラジェンドラUNI Apro地域書記長が取締役会に書簡を送ったことで、これが単なるローカルな問題ではないことが示されました。世界中の人々が、公正なことを求めて団結しているのです。
ミシェル:今回のキャンペーンではジェンダーが中心的な問題ではありませんでしたが、女性リーダーは組合の闘争にどのような独自の視点をもたらすとお考えですか?
ビンドゥ:女性リーダーは、しばしば共感力、忍耐力、そして協調の精神をもたらします。女性が他と比べて劣っているとも、優れているとも思いませんが、共感こそが最も重要です。共感し、誰の声も聞き逃さないようにすることで、組合の活動が強化されるのです。
また女性は表面的な反応で即座に判断を下すよりも、深く理解してから決断を下そうとする傾向があります。そして、AMCOの組合員の約71%が女性であることから、その視点は私たちの組合にとって非常に重要なのです。
ミシェル:リーダーシップの役割を担うことに躊躇している一般の女性組合員へのアドバイスをお願いします。
ビンドゥ:常に勇気を持って一歩踏み出してください。リーダーシップとは完璧さを求めるものではありません。信念が重要なのです。自分の視点には価値があると信じ、連帯があなたを支えてくれることを知ってください。落ち込んだり不安になったりした時、周囲の連帯を感じれば、心が動かされるはずです。
ミシェル:新たな団体協約が締結された今、AMCOと組合員にとっての優先事項は何ですか?
ビンドゥ: 私たちの最優先事項は依然として団体協約です。今年末に再び期限切れとなるため、その取り組みは継続します。また、組合員の教育を強化し、デジタル・トランスフォーメーションへの備えを整え、将来の交渉に向けたレジリエンスを築いていきたいです。
ミシェル:マレーシアの銀行業界における将来の課題に立ち向かうため、組合の能力をどのように強化していくとお考えですか?
ビンドゥ:研修への投資は非常に重要です。また、デジタルツールへの投資や、より強固なネットワークの構築も必要です。すでに、各銀行労組のリーダー間には強力な地域ネットワークが築かれています。能力開発は、私たちが機敏かつ効果的に活動し続ける助けとなるでしょう。
また、組合活動を単なる座学の活動にとどまらず、若い組合員を惹きつけるチームビルディングや野外活動など、現実の生活に即したものにしようと努めています。徐々に、若手組合員が前に出てきて関心を示し始めています。時間はかかりますが、こうした次世代のリーダー層を育成することは、私たちにとって最優先事項です。
ミシェル:最後に、UNI Apro加盟組織でリーダーシップの役割を担うことを検討している女性組合員に向けて、激励の言葉をいただけますか?
ビンドゥ:リーダーシップを担うことを検討しているUNI Aproのすべての女性へ。あなたの勇気は、人々の生活を変える力があると知ってください。リーダーシップとは、恐れを知らないことではありません。恐れを抱きながらも一歩踏み出し、連帯があなたを支えてくれると信じることです。一人ひとりの声が私たちの集団的な力に強さを加え、あなたが踏み出す一歩一歩が、他の人々のための扉を開きます。
女性が立ち上がれば、組合も強くなるのです。そして組合が強くなれば、社会はより公平なものになります。ですから、ぜひ舞台に立ち、自分の立ち位置を確立し、あなたのリーダーシップを輝かせてください。共に力を合わせれば、尊厳、正義、平等が単なる願望ではなく、現実となる未来を築くことができます。
この2年間を経験していなければ、私はこのようなことは言えなかったでしょう。ここで共有しているのは、私の26年にわたる組合活動ではなく、まさにこの2年間の道のりです。そして何より重要なのは、自分の仕事に情熱を注ぐことです。情熱こそが、あなたを突き動かす原動力となるのです。










