ブログアーカイブ

国際産業別労働組合組織はイラン・中東における即時停戦と軍事的エスカレーションの終結を求める

UNIは他の国際産業別労働組合組織(GUFs)と共に、米国及びイスラエルによるイランへの軍事攻撃、並びにこれらが招いた紛争の激化を非難する。共同声明は以下の通り:

共同声明に署名したGUFsは、米国とイスラエルによるイランへの最近の軍事攻撃、特に民間人の死傷や学校・医療施設を含む重要な公共インフラの破壊をもたらした空爆を非難する。

これらの行動は国連憲章及び国際人道法に対する重大な違反であり、その人的被害が圧倒的に労働者階級に押し付けられている紛争をさらに激化させるものである。

労働者、民間人、公共機関は軍事作戦の標的となってはならない。学生、教師、教育関係者の殺害・負傷、学校や病院などの保護された民間施設の破壊は許されず、断固として非難されねばならない。

GUFsは、イランによるその後の報復攻撃にも懸念を抱いている。エスカレーションは不安定化を助長し、民間人の生命を脅かすだけである。港湾・空港・海上における移民労働者や運輸労働者(既に地域全体に広がる暴力で死傷が報告されている)は交戦状態に巻き込まれており、地域をより広範で壊滅的な戦争に陥れる危険性がある。

世界の労働組合運動は、暴力の連鎖を助長し、平和・正義・多国間協力の基盤を損なう武力行使を拒否する点で結束している。武力衝突ではなく外交こそが、安全保障と恒久的な平和への唯一の正当な道である。

様々な部門・大陸の何百万もの労働者を代表する組合として、我々は国際社会に対し以下を要請する:

  • 全ての当事者による武力行使を非難し、さらなるエスカレーションを防止すること
  • 即時停戦と完全な緊張緩和を確保すること
  • 国連のより強化された調整機能を包む外交と対話を優先すること
  • 国連憲章や民間人保護を含む国際法を擁護すること
  • 学校、病院、職場などの重要な公共インフラを保護すること
  • 地域全体における人権、労働者の権利、民主的自由、結社の自由を擁護すること

GUFsは、イラン及び地域全体の労働者、独立した労働組合、コミュニティと揺るぎない連帯を表明する。権威主義的統治と軍事化の論理によってあまりにも頻繁に沈黙させられてきた労働者の声が、必ず聞き届けられるようにしなければならない。イランの未来、そして地域の未来は、外部からの侵略や内部の抑圧から解放された、その地域の人々自身によって決定されなければならない。

我々は、紛争が交渉によって解決され、多国間主義が強化され、全ての人々が安全と尊厳、民主主義と平和の中で暮らし働く権利を有する世界の構築にむけた揺るぎない決意を改めて確認する。

署名団体:

  • 教育インターナショナル
  • 国際家事労働者連盟
  • 国際公務労連
  • 国際ジャーナリスト連盟
  • 国際運輸労連
  • インダストリオール・グローバルユニオン
  • UNI グローバルユニオン
  • 国際食品関連産業労働組合連合会
  • 国際建設林業労働組合連盟

インドの若手専門職が直面する有害な職場環境とストレスに挑む

インドの若手専門職は深刻化する危機に直面している。テック、金融、サービス業界を問わず、長時間労働と容赦ない業績要求が常態化し、燃え尽き症候群や不安を助長している。業務負荷を軽減するどころか、生成AIの急速な普及がさらにプレッシャーを増大させている。従業員は、十分な支援なしに自動化システムの監視と修正を求めらている。

こうした背景のもと、タタ社会科学研究所(TISS)、UNI Apro専門職・監督職(P&M)委員会、全インド・バローダ銀行従業員協会(AIBOBOA)は、UNI世界P&M委員会の指導のもと、国際セミナー『インドの若手専門職のために、働き方を再構築しよう:有害な職場文化とデジタルストレスへの対処』を開催した。

2025年9月12日にインド・ムンバイのTISSキャンパスで開催された本イベントは、TISSの教員・学生・卒業生、労働組合指導者、若手専門職を結集し、職場の実情と学術研究の架け橋となるよう設計され、建設的な意見交換の場を提供した。

ラジェンドラ・アチャリャUNI Apro 地域書記長は、「UNI Aproは、インドにおける有害な職場文化に取組むため、TISSと連携できることを光栄に思う。TISSの卒業生として、この共同セミナーによって問題意識を高めることができ、誇りに思う」と述べるとともに、セミナー開催に向け多大な支援を提供した加盟組織AIBOBOAに感謝の意を表した。

ズビン・ムラTISS経営・労働学部長は、衝撃的な統計を提示した。それによると、従業員の約3分の2がバーンアウトを経験し、42%がストレスに駆られていると報告している。またデジタル機器が「注意とエネルギーを吸い取るヒル」となっていると警告し、AI導入への不安が組織を「幸福を犠牲にした超効率化」へ駆り立てていると指摘した。

ジャヤスリ・プリヤラルUNI Apro専門職・監督職委員会担当部長は、この課題を分岐点と位置付けた。そして個々の労働者が単独でこうした圧力に耐えることはできないとした上で、リスクが最も急速に高まっている高スキル分野での労働組合の強化を訴えた。そして地域的視点から、技術進歩により有期契約が深刻な影響を受けている一方、急速にインフォーマル雇用が広がっていることがアジア太平洋全域で労働組合を弱体化させていると警鐘を鳴らした。

UNI世界P&M委員会の副議長を務めるプレム・クマール・マッカルAIBOBOA書記長は、インド特有の職場課題について言及し、高まるメンタルヘルス問題に対処するため、労働組合・企業・政策立案者の連携が急務であると強調した。

本セミナーには多様な登壇者と参加者が参加したことで、議論が深まった。TISS教員は、過重労働が生産性向上をもたらさず回復力を損なうことを示す研究を発表した。卒業生と在校生は「ハッスルカルチャー(仕事は人生で最も重要であり、休日を取ることなく長時間働くことによってのみ成功を収めることができるという考え方)」について考察し、日本の過労死とインドの最近の事例を比較する意見も出た。インドの労働組合指導者は、業績が6倍向上したにもかかわらず銀行業界で過労による自殺が500件発生している件に言及し、現場の実情を強調した。

パネルディスカッションでは懸念すべき実態も明らかになった。インドの労働者のうち組合に加入しているのはわずか6%であり、新たな労働法が組合をさらに弱体化させる恐れがある。ギグエコノミーは課題をもたらしており、労働者が従業員ではなく「パートナー」として分類されることで、団体交渉が弱体化している。

サララ・ラオ博士TISS人材管理センター長は、このセミナーが「対話のための安全な場」を創出したと述べ、より広範な変革に向けた不可欠な第一歩であるとまとめた。

本セミナーの議論は、次世代の専門職がデジタル時代において尊厳とバランスを持って働けるよう、労働組合と学界が継続的に取組む基盤を築いた。UNI Aproは、この課題を推進するため、TISSおよびそのパートナー組織との今後の連携を期待している。


「EU は緊急に行動を起こすべき」:欧州労働組合連盟、EU-イスラエル連合協定の見直しを支持

2025年5月下旬、EU外務理事会は、残虐行為、人権侵害、人道法に対する重大な違反の証拠が相次ぐ中、EUとイスラエル間の広範な貿易・協力協定の見直しを決定した。EU 連合協定第 2 条は、両者の関係は「人権と民主主義の原則の尊重に基づくもの」であると規定している。

5月21日に欧州労働組合連盟(ETUC) 執行委員会はこの決定を歓迎し、欧州委員会に対して「協定の見直しが完了次第、適切な措置を講じる」よう求めた。ETUC は声明の中で次のように述べている。

この決定は、イスラエルによるガザ地区への破壊行為、その結果としての多数の死者とインフラや建物の破壊、ガザ住民追放に関する協議の継続などを背景に下されたものである。 (…中略…)EUは、ガザと占領下パレスチナで進行している状況に対し、緊急に行動を起こす必要がある。…信頼できる国際的な情報源による十分な証拠に基づき、EUはEU-イスラエル連合協定の第2条に違反があると結論付けることができる。(…中略…)ETUCは、イスラエルとパレスチナの間で交渉による合意に達し、持続可能で平和的な『二国家解決』を実現し、人道支援のための国境の開放と国際法への完全な尊重を伴う即時かつ永久的な停戦を改めて呼びかける。我々は強制的な移住を非難し、すべての捕虜の解放を求める声を支持する。(…中略…)ETUCは世界中で行われているあらゆる人権侵害を非難し、紛争地域における労働者および労働組合との連帯を表明する。ETUCとその加盟組織は、公正で持続可能な平和の基盤として、社会正義と国際法の尊重を追求し続ける。」

クリスティ・ホフマンUNI書記長は次のようにコメントした。「ETUCの行動呼びかけを歓迎する。EUでの前進は喜ばしいニュースだ。ガザで飢餓の脅威が迫る中、世界は危機的状況にあり、我々はこの危機が展開するのをリアルタイムで注視している。封鎖を非難する強い言葉が繰り返し表明され、深刻な人道危機の終結を求める多くの声が上がっている中、この動きは長年待ち望まれてきた具体的で必要な一歩だ。」


UNI Apro、ILO総会に対しミャンマーに対するILO憲章第33条の支持を要請

2025年5月21~22日にシンガポールで開催された第34回UNI Apro執行委員会で、ILO憲章第33条のミャンマーに対する措置の発動を求める国際的な呼びかけについて、強い支持を表明する連帯声明が採択された。この問題は、今年6月に開催される第113回ILO総会で議論される予定だ。

声明において、UNI Apro執行委員会は、2021年2月1日に発生した軍事クーデターにより被害を受け続けているミャンマー国民との連帯を再確認した。

同執行委員会はまた、2025年3月28日に発生したマグニチュード7.7の地震後に、援助の妨害や民間人に対する空爆の継続など、人道危機の悪化に対し深刻な懸念を表明した。

UNI Apro執行委員会は、2025年6月2日から13日まで開催される第113回ILO総会に参加するすべての政府、使用者団体、労働組合に対し、ILO憲章第33条措置に賛成票を投じるよう求める。また、国連システムや二国間・多国間機関を含む国際社会全体に対し、第33条に基づき採択される措置と政策・行動を一致させるよう呼びかける。


フランスで開催のAIアクションサミット:多くの使用者が団体交渉、研修、サプライチェーンの公正性に対する支持を示す

2025年2月中旬にフランス・パリで開催されたAI アクションサミットでは、70社以上の使用者が『Pledge for a Trustworthy AI in the World of Work(仕事の世界における信頼できるAIについての誓約)』に署名した。この誓約には、団体交渉や労働組合との協議、トレーニングやスキルアップ、さらにはAIのサプライチェーンにおける労働基準の向上といった重要なコミットメントが含まれている。

この文書は、サミットの重要な成果のひとつであり、企業によるコミットメントをOECD、国際労働機関(ILO)、G7の最新枠組みと整合させ、労働者を代替するのではなく支援するAIの推進を強化するものだ。

サミットにパネリストとして参加したクリスティ・ホフマンUNI書記長は、今回の署名を歓迎し、次のように述べている。

『今回の誓約は、労働者の権利を尊重し、公正な経済を促進する形で人工知能を活用する動きに近づくものであり、先駆的な署名者のリーダーシップを称賛したい。サミット後の数週間で、我々は協力してこれらの誓約を具体的な行動に移さなければならない。つまりAIの影響を受ける人々、およびそのデータサプライチェーンの労働者の両方に対して、社会対話と団体交渉を拡大する上で真の進歩を遂げるということだ。またAIが雇用に影響を与える中、トレーニング、専門知識、スキル構築への投資を増やすことも意味する。これは規制に取って代わるものではなく、公益のためのAIを推進する政策を補完するものだ。我々は今後、使用者、政府、国際機関と協力し、ここに定めたコミットメントを強化し、AIをディーセントワークと経済的正義の推進力とするよう努めていく。』

文書の全文はこちら(英文)から。


2025ダボス会議:UNI書記長、不平等なAIへの緊急対応とソーシャルメディアの説明責任を求める

労働者が参加しなければ、人工知能などの新しいテクノロジーは、世界的な不平等を深刻化させ、少数のエリート層に権力をさらに集中させるリスクがある ー クリスティ・ホフマンUNI書記長は、2025年1月に開催されるダボス会議(世界経済フォーラム)で、企業リーダーや政策立案者に対して厳しい警告を発する予定だ

同書記長は、「わずか2年の間に、多くの使用者の間で交わされるAIに関する会話は、労働者の能力を向上させることから労働者を代替することへと変化してきた。その間、ほんの一握りの企業が、この変革を推進するモデルを手中に収めつつある」と指摘し、「AIの導入方法を決定する会議に労働者が参加しなければ、AIは価値あるイノベーションではなく、不平等を助長するエンジンとなってしまうだろう。我々の民主主義、コミュニティ、経済は、新しい仕事の世界において労働者が発言権を持てるようにするため、労働者へのパワーシフトのない時間をもう1年も続ける余裕はない」と語気を強める。

同書記長にとってもう一つの重要な懸念は、ソーシャルメディアのプラットフォームが、サイト全体で正確で安全なコンテンツに対する責任を負うことを拒否する傾向が強まっていることだ。UNIの加盟組織は、メタやアルファベットなどの企業に直接雇用されているテック系従業員だけでなく、コンテンツの管理や大規模な言語モデルのトレーニングを行うデータサプライチェーンの労働者も代表している。

ホフマン書記長は「デマ、暴力、グロテスクなディープフェイクといった反民主主義的な勢力はますます強大化し、今まさに目前に迫ろうとしている。 プロフェッショナルで、十分な訓練を受け、十分な報酬を支払われたモデレーターの集団が、倫理的なAIによって強化されなければ、ソーシャルメディアの優れた機能の多くが奪われてしまうだろう。テック大手企業がこうした第一線で働く労働者たちに投資して我々を守ろうとしないのであれば、彼らは事実上、この混乱を招き入れているようなものだ」と懸念を表明した。そして、米国や欧州、その他の地域で規制や権利の後退を推し進めているイーロン・マスク、ジェフ・ベゾス、マーク・ザッカーバーグのようなテック界の大物の影響力を相殺するためには、労働組合が必要だと主張した。

デジタル時代のディーセントワークに関して世界レベルで議論をリードするホフマン書記長は、日々、新たなテクノロジーがもたらす影響に直面している労働者を代表する数少ないダボス会議参加者の一人でもある。

関連記事はこちらから: Why digital trust depends on workers | World Economic Forum


UNI Apro地域大会最終日、変革の原動力を生み出す

第6回UNI Apro地域大会において、UNI加盟組織は、次の4年間で変革を起こすべく、団結し、共に立ち上がった。2024 年11月20~22日にかけてタイ・バンコクで開催された第6回UNI Apro地域大会には、22カ国の組合からおよそ600名が参加した。

デジタル時代のディーセント・ワークのために、共に変革しよう(動議4)
地域大会の最終日は、デジタル時代におけるディーセントワークの実現に向けた、公正な移行に関する議論から始まった。

パネル討議に参加した鈴木克彦代議員(日本、情報労連)は、「日本では労働人口が減少する中、自動化やAIはプロセスを効率化し、労働力不足に直面する産業をサポートするツールとして期待されている」としつつ、倫理性の欠如によって労働者の権利を蔑ろにするリスクをはらんでいることを指摘した。そして、AIが労働者を支え、労働者の権利を守り、労働環境を改善するためのツールとなるよう、労働組合が積極的に関与し、会社と協議していかなければならない、とまとめた。

デニス・マガ代議員(ニュージーランド、FIRST Union)は、労働者がスキルアップや再技能教育プログラムを受けたり、つながらない権利を行使できるようにするための団体交渉の必要性を強調した。さらに、AI関連の移行を管理する上での労働組合と使用者間の強固な対話の重要性を強調し、AI主導の変化の影響を受ける労働者を保護するための社会所得保険や積極的労働市場プログラムなどの制度的な措置の必要性を訴えた。

フロアから発言した橋本大樹代議員(日本、損保労連)は、緊急性が高くない場合であっても、評価を気にして上司からの連絡に対応してしまう等、「つながらない」ことを選択しづらい状況が存在している実態を指摘し、勤務時間外のおけるコミュニケーションツールの使用等に関するルール策定の整備を進め、つながらないことを選択しやすい環境整備の重要性を訴えた。

暴力やハラスメントのない健康で安全な職場のために、共に変革しよう(動議5)
並木泰宗UNI Apro副会長(日本、自動車総連)がセッション司会を務め、「安全で衛生的な職場で働くことは基本的権利であり、UNIと加盟組織は、世界中でこの権利の実現に向けて立ち上がり続けなければならない」と挨拶した。

ILOバンコク事務所の氏田由可 労働安全衛生上席専門家が、2022年にILOが基本的人権として定めた労働安全衛生について、基調講演を行った。「労働安全衛生は、組合が職場における基本的人権の意識を高めるための非常に良い出発点となる」と述べた上で「毎年、過重労働が原因で、25万人が心臓病や脳卒中で命を落としている。アジア太平洋地域では、世界でも最も深刻な過重労働の問題に直面しており、この地域にとって喫緊の課題だ」と指摘した。

パネリストの永島智子代議員(日本、UAゼンセン)は、「サービスを受ける側も提供する側も共に尊重される社会を創る!」をコンセプトにしたカスタマーハラスメントの取組みについて報告した。アンケートによる実態調査を基に、厚労省や地方自治体行政への要請や、同組織出身の議員による国会での課題提起などを行った結果、2022年には厚労省のカスタマーハラスメント対策が予算化され、政府による広報ツール等が作成され、社会的にも認知されるようになったこと、東京都が日本初の「カスタマーハラスメント防止条例」を成立させ、2025年4月から施行されること等を共有した。

プレムカラ・サンバハンペ代議員(ネパール、NTEAN)は、労働組合が交渉によって、負傷した技術者の医療費負担を含む労働者の福祉の大幅な改善を実現した経緯を説明し、「安全な職場は、業績、評判、コンプライアンスを向上させ、労働安全衛生への投資を不可欠なものとする」と述べた。

また、熊谷芙美子代議員(日本、自動車総連)は、同組織による労働災害撲滅の取組みについて報告した。類似災害発生防止のために事例を共有し、加盟組織の安全衛生担当者と必要な対策を協議していると述べ、今後は重大災害の発生原因をさらに深く分析し、職場での再発防止意識を徹底するなど、より一層の取組みが必要だと発言した。

社会対話やパートナーシップ労使関係を通じて、持続可能な未来のために共に変革しよう(動議6)
最終セッションでは、技術革新と世界的な不確実性の時代における社会対話の重要性が強調された。

ゲストスピーカーとして参加したロドラ・ババランASEAN人材開発局長は、AI、自動化、リモートワークがもたらす変化は、使用者や政策立案者だけでなく、労働組合も適応する必要があり、そうすることで労働者が団体交渉権やディーセントワークを享受できると述べた。

スブラマニアム代議員(シンガポール、UTES)は、シンガポールの強固な三者構成の枠組みを紹介し、政労使が協力し、2025年の目標である2,500社を上回る2,700社以上の企業研修委員会を設立、労働者の研修プログラムを共同で策定していると報告した。また、「労働者にスキルアップや再教育を奨励することで、彼らの雇用可能性が将来の仕事にも対応できることを保証している」と付言した。

パネリストの市川勝也代議員(日本、生保労連)は、労使が連携して諸課題に対応していくことが重要との認識から、金融産業では初となる「働き方改革に向けた生保産業労使共同宣言」が採択され、また2024年には「社会的使命達成に向けた生保産業労使共同宣言」の採択が実現したことを報告した。そして地域社会の諸課題の解決に向けた「地域社会共創フォーラム」を開催し、労使共同宣言を共に交わした経営者団体である生命保険協会もパネラーとして参加、労使一体となって課題解決策を話し合ったことなどを共有した。

同じくパネルに登壇した深見正弘代議員(日本、全労金)は、同組織が参加する協同組織産別・単組連絡会の活動について説明するとともに、雇用創出や持続可能な開発に貢献し、UNI やUNI Aproの運動とも合致する協同組合の意義について語った。そして国連の定める2025年の国際協同組合年に向けて、協同組合の貢献について認知度を高め、持続可能な開発に向けて協同組合が発展するよう、政府や関係機関に働きかけていくことについて、ともに取組むことを提起した。

また、労済労連の上杉雄太代議員も、「協同組合は生活をより良くしたいと願う人びとが自主的に集まって事業を行い、その事業の利用を中心にしながら、みんなで活動を進めていく、営利を目的としない組織」であると説明した。また連絡会による今年のシンポジウムでは、協同組合の社会的責任と可能性をテーマに学んだことを報告し、最後に「2025国際協同組合年」を盛り上げていくことを大会に要請した。

磯山直樹代議員(日本、UAZ)は、職場の課題については、企業別労組がパートナーシップ労使関係に基づき、経営側と労使協議や団体交渉を行い、解決に取組んでいるとした上で、税金や社会保障、労働法制、カスタマーハラスメント等の社会課題については、政治活動に積極的に取組む必要があると発言した。ただし若い組合員の政治への関心の低さが課題であるとし、所属する企業別労組では、若手組合員を対象に、国会見学などの政治研修会を実施していることを紹介した。

全ての動議について採択が行われ、満場一致で承認された。最後に、UNI Aproの新たな執行部について選挙が行われ、過去5年にわたってこの地域におけるUNIの取組みを主導してきた成果と実績が認められ、UAゼンセンの松浦明彦UNI Apro会長と、ラジェンドラ・アチャリャUNI Apro地域書記長が再選された。また、UNI Apro執行委員会の新メンバーも大会で承認された。

安藤京一UNI副会長は、閉会挨拶の中で、気候変動や民主主義への脅威、一部の巨大多国籍企業による不当行為といったリスクにさらされ続ける中、すべての労働者が安心・安全に働けるようにするためには、グローバルな連帯が必要であり、UNI Aproに集う加盟組織がこれまで以上に一致団結しなければならないと訴えた。そして、新たに選出されたUNI Apro執行部を祝福し、UNI Aproの運動を牽引し、より良い将来の構築に向けてイニシアチブを発揮して頂きたいと述べ、締めくくった。


UNI Apro地域大会2日目:アジア太平洋地域における労働者の力を高める鍵は、連帯と組織化

激動する世界における国際連帯の緊急性は、UNI Apro地域大会2日目でも繰り返し取り上げられた。クリスティ・ホフマンUNI書記長は、基調講演の中で「我々は、AI、気候変動、労働組合を消滅させようとする圧政や少数独裁政治といった課題に直面し、今も組織化と成長という困難な闘いに立ち向かっている。地政学的な緊張関係が、あらゆる方向に発展する可能性がある。だからこそ、我々は互いを必要としている。世界はこれまで以上に労働組合運動の断固たる決意を必要としており、UNIはその中心となっていこう」と呼びかけた。

ラジェンドラ・アチャリヤUNI Apro地域書記長は、企業欲に駆られた市場主導の親企業政策の台頭、労働基準を弱体化させる多国籍企業の前例のない影響力など、この地域における多くの課題を指摘した。同時に、各国政府は団結権に対する規制を強めており、ギグエコノミーの急速な拡大により、この問題はさらに深刻化している。物流、配送、Eコマースなどの分野では、プラットフォームワーカーやギグワーカーが深刻な搾取に直面している。同書記長は「この地域が経済的に成長するにつれ、エリート層だけでなく、すべての人々がその恩恵を受けられるよう、我々は闘っていく」と力強く宣言した。

組合の力を高めるために、共に変革しよう(動議1)
Apro地域における組織化の成功例が、数多く紹介された。

ダルメンドラ・クマール代議員(インド、アマゾン労組)は、組合潰しにも負けず組合を結成し、州のデジタル決済システム入札へのアマゾンの参加阻止、アマゾンが施設を閉鎖した際に解雇された800人以上の労働者に対する5か月分の賃金獲得など、数多くの成果を挙げたことを強調した。

ニコール・マクファーソン代議員(オーストラリア、金融産業労組)は、デジタル時代における労働者保護に関する組合の取組みについて報告した。同労組は、データセキュリティ、雇用保護、AIに関する労働者を交えた協議について、業界初の権利を獲得し、これにより、組合員は職場でのAIの利用方法を確実に管理できるようになる、と述べた。

木村美咲代議員(日本、UAゼンセン)は、自身が中央副書記長を務めるスギ薬局ユニオンの組織化について報告した。従来パート社員の組織率は5%であったが、パート社員組織化の重要性について会社側に説明して協定書を締結、店長の協力を得てパート社員一人ずつに丁寧に説明した結果、昨年パートタイム社員全員の組織化が実現した。SMSで気軽に労働相談ができるよう環境を整え、パート組合員向けのイベントを新たに企画する等、組合活動参加・参画への入り口を広げる活動にも取組んでいる。

平等と包摂のために、共に変革しよう(動議2)
はじめに中田綾子女性委員会議長(日本、UAゼンセン)が、座長として前日の女性大会の成果を報告するとともに、動議2の概要を説明した。

UNI Apro女性委員会議長代行に選出されたバブニート・カウール・アラン代議員(インド、AIBOBOA)は、過去3年間で1,300人以上の女性を支援し、51人の女性リーダー誕生につながったUNIのメンタリング・プログラムの成果を強調し、「若い女性のリーダーシップに投資すれば、職場での平等を推進する有能なリーダーの強固なパイプラインを構築できる」と訴えた。

また、パネルに参加した山口由紀子代議員(日本、UAゼンセン)は、組合員の6割が女性であるにも関わらず、女性の組合リーダーが少ないという課題について、同組織が取組む『女性ネクストリーダー会議』について説明した。同会議では、ジェンダー平等の実現と、女性トップリーダーの育成に向けた課題と必要な対応について議論し、その結果を流通部門の執行委員会に提案している。また、働く女性の健康支援の取組みとして、加盟組合への啓発活動を進めており、その成果は積立有給休暇を不妊治療に適用拡大することや、生理休暇の名称を変更し、更年期症状にも使えるようにすることなど、団体交渉にも表れている、と発言した。

同じくパネリストの三﨑友香里代議員(日本、大日本印刷労組)は、「性別や働き方に関わらず、すべての人が誇りをもって働けるように」との思いから始まった同組織の「MiMoSa」プロジェクトについて共有した。女性だけに焦点を当てるのではなく、セミナーではマイノリティと言われる人たちが感じた壁や必要とするサポートに多くの人が耳を傾け、共感したり、気づきを得たりするような取組みを行っている。

また永渕達也代議員(日本、情報労連)は、若者の過労死や、いわゆるブラックバイト等の状況に触れ、学生に対する労働教育が重要であるとの観点から、同労連による「明日知恵塾」の取組みを紹介した。労働に対する想像と現実のギャップを埋めるため、社会に出ていく学生に対して労働者としての実体験を共有し、労働組合の存在や必要性について伝えている。今後も労働組合の立場から、若者に対するワークルール教育に携わっていきたいと語った。

フロアから発言した藤原達矢代議員(日本、大日本印刷労組)は、同組織における男性育休制度の理解促進と、育休取得満足度の向上にむけた活動について紹介した。男性育休取得率は大幅に増加しているとしつつ、取得期間については満足度の低い人もいることから、育休取得経験者の声をもとに、体験談のシェア、収入面や人事評価への影響、復帰後の働き方などを伝える活動をしている。

民主主義、人権、労働組合の権利のために、共に変革しよう(動議3)
石川幸德UNI Apro副会長(日本、JP労組)が司会を務めた本セッションでは、はじめにユユン・ワヒュニンラムASEAN人権政府間委員会インドネシア代表が基調講演を行った。「世界がアジア太平洋地域を世界的な成長の原動力として注目する中、この進歩が包摂的で公正なものとなるようにしていく必要がある。搾取ではなく公平性、排除ではなくエンパワーメントに根ざしてたものにしていかなければならない」と呼びかけ、議論の口火を切った。

フィル・ロバートソン・アジア人権労働擁護団体事務局長は、この地域の深刻な人権状況について説明し、国際労働組合総連合(ITUC)が2024年に発表した『グローバル・ライツ・インデックス』において、労働者の権利ワースト10の中にアジア3カ国が挙げられていることに言及した。その一つ、現在2万人以上の政治犯が収監されているミャンマーにおいては、労働組合は禁止され、何千人もの民間人が殺害され、数百万人が国外に流出しており、同氏はミャンマーの人々を支援するよう国際社会に強く求めた。

地域大会には、マウン・マウン・ミャンマー労働組合総連合(CTUM)会長からのビデオメッセージが寄せられ、ミャンマーの労働者と民主主義を支援するUNIの取組み、特に多国籍銀行に対して軍事政権に関与する企業から投資撤退を要請する取組みについて、感謝の意が表された。

ラジェンドラ・アチャリャUNI Apro地域書記長は、「組合の強さ、団結、正義への献身が、アジア太平洋地域のすべての労働者のより良い未来のために闘う我々を導いてくれる。皆さんのたゆまぬ努力、勇気、そして揺るぎない連帯に感謝したい。共に、すべての人にとって公平で公平な仕事の世界に向けて前進し続けよう、共に変革を!」と国際連帯の重要性を強く呼びかけた。

一方、フロアから発言した安達正美代議員(日本、JP労組)は、同労組が行っているウクライナ郵便労組へのカンパ活動や、「連合」を通じた平和4行動、平和についての次世代への継承活動、学習会などを通じた政治への関心を高め民主主義を守る取組み等を紹介し、民主主義・人権・労働組合の権利のために、引き続き尽力していきたいと語った。


変革のために、共に立ち上がろう!第6回UNI Apro地域大会がバンコクで開幕

2024年11月20日、『変革のために、共に立ち上がろう』(Rising Together to Transform)をテーマに開催された第6回UNI Apro地域大会の開幕に合わせ、Apro地域全体から600人を超える労働組合のリーダーが、タイ・バンコクに集結した。

11月20~22日まで開催される地域大会は、地域全体のUNI加盟組織が、連帯、組織化、団体交渉を通じて経済を変革するための舞台を整えるものとなる。

開会式では、タイ現代舞踊の美しいパフォーマンスに続き、スウィット・ミンモルUNIタイ加盟協議会議長が、タイのUNI加盟組織を代表して、参加者を歓迎した。

満員の会場でクリスティ・ホフマンUNI書記長は、「『トランスフォーム』という言葉は、我々がただ変化を望んでいるのではなく、もっと大きな変革を望んでいるということを意味する。経済を変革しなければなりません。組合の役割と力を変革しなければならない。そして、組合そのものを変革し、若者や女性をより多く受け入れられるよう、組合そのものを変革していかなければならない」と呼びかけた。

来賓のシラポップ・ドゥアンソッドスリ労働副大臣は 、デジタル経済がもたらす変革の中で、スキルアップ、リスキリング、労働者福祉の向上に関する政府の取組みを強調した。また、法制化によって労働者の権利を向上させる計画についても言及し、「現在策定中の独立労働法の草案は、タイを国際労働基準に沿った労働基準を持つ国にし、すべての人にディーセント・ワークを創出することを目的として いる。(…中略…)タイ政府を代表し、三者構成で労働団体と協力し、タイの労働問題に関わるミッションを着実かつ持続的に推進していく」と述べた。

松浦昭彦UNI Apro会長は 、パンデミック、政情不安、気候危機、経済格差の拡大など、かつてない激動の時代を乗り切るには、連帯が不可欠だと強調し、「労働組合は、団結し、共に変革を目指すことで労働者の権利を守ることができる。仲間を増やし、各国の組合同士が連帯することで、私たちの声を社会に響かせることができる。組織化を通じた労働者の権利の保護と労働条件の向上を実現しよう」と力強く呼びかけた。

パヌッダ・ブーンパラILOアジア太平洋地域事務所副事務局長は基調講演の中で、すべての労働者は暴力やハラスメントから解放されるべきだと述べ、「ILOは、特に移民労働者、非正規労働者、若年労働者がハラスメントの被害を最も受けやすい産業において、安全で包摂的な環境づくりに向けて継続的に取組んでいるUNI Aproの活動を称賛する」と述べ、職場における差別、ハラスメント、虐待の撲滅に向けた組合の取組みに対するILOの支援継続を約束した。

吉田昌哉ITUC-AP書記長は、 この地域の民主化闘争と組合の勝利に注目し、ミャンマーで軍事政権に抵抗する国民統一政府が前進したこと、インドネシアで労働法の改善を新たに提唱した組合が成功したこと、タイがOECD加盟を申請したことを称賛した。しかし、香港ではリー・チャクヤンのような活動家や組合指導者が不当に投獄されていることを非難し、「逆境の時こそ、我々は背筋を伸ばし、歴史から力を引き出し、前進しなければならない」と強調した。

もう一人の講演者、ヘニング・エフナー・フリードリッヒ・エーベルト財団タイ事務所長は、同財団がこの地域で長年にわたって築いてきたパートナーシップについて語り、「FESは皆さんと連帯し、社会正義、ディーセント・ワーク、労働組合の権利のために、アジア太平洋地域および世界中で組合の闘いを支援し続ける」と述べた。

マノップ・クエラットタイ国営企業労連委員長は、グローバルな自由市場の資本主義が悪化させた不平等の拡大について懸念を表明し、「短期雇用、雇用不安、労働権侵害、不当な賃金は、不平等の拡大につながっている。貧困層と富裕層の格差は拡大し続けている」と述べた。

ジェラルド・ドワイヤーUNI会長は、 タイ労働省の三者構成による取組みについて、「政府、使用者、労働者が協力し合うことができれば、それこそが最高の社会だ」称え、開会式を締めくくった。


UNI世界金融部会/UNI世界専門職・監督職委員会共催シンポジウム『デジタル化とAIがもたらす労働の未来』を開催

2024年9月26~27日、全電通労働会館ホール(東京都千代田区)において、UNI世界金融部会、UNI世界専門職・監督職(P&M)委員会共催シンポジウム『デジタル化とAIがもたらす労働の未来』を開催した。1日目は全部門対象に「生成AIについて」をテーマに、2日目は金融部門対象に「銀行業界と保険業界におけるAI」をテーマに開催し、UNI-LCJ加盟組織や未加盟の金融労組他、2日間で延べ約120人が参加した。

本シンポジウム開催に伴い、海外より、アンジェロ・ディクリストUNI世界金融部会担当局長、マッシモ・メンシUNI世界専門職・監督職(P&M)委員会担当局長兼UNI Aproデジタル・テクノロジー政策アドバイザー、ジャヤスリ・プリヤラルUNI Apro金融部会担当部長兼UNI Apro専門職・監督職委員会担当部長を、また日本より、独立法人労働政策研究・研修機構の岩月信也研究員を招聘し、最新の事例と研究が共有された。

昨年より生成AIの台頭によって、仕事の世界においても様々な機会に、AIやデジタル化についての議論が関心を集めてきた。激動の変化の中で、労働の世界はどのように変化し、公正な移行に向けて労働組合はどのように対応していくべきか、活発な議論が展開された。

1日目-UNIの部門横断的視野から、仕事の世界における生成AIの現状と組合の取組みについて、議論がなされた。

 冒頭の挨拶でディクリストUNI世界金融部会担当局長は、新技術が労働に与える影響について触れ「特にデジタル化とAIは労働者にとって機会と課題の両面の意味を持つ。AI技術が労働者の仕事を奪う可能性がある一方で、労働環境の改善にもつながる可能性がある。UNIとしてはAIに関する政策検証が重要であり、これに対応する準備が必要だと」強調した。

 次に挨拶した安藤京一UNI-LCJ副議長(情報労連中央執行委員長)は、デジタル化とAIの進展が労働市場に与える影響を指摘し「多くの職業が自動化されるリスクがあり、労働者が新しいスキルを習得し、増々変化に適応することが必要だ」と述べ、労働時間の柔軟性やリモートワークの普及に伴い、労働組合が従来の枠組みを再構築する必要性を強調した。

■基調講演「生成AIが労働力に与える影響」

 メンシUNI P&M委員会担当局長は、生成AIの現状と今後の動向、生成AIが各部門や労働力に与える影響について基調講演を行い、生成AIなどの新技術が生産性を向上させる一方で、労働者の雇用や権利を侵害するリスクを指摘した。特にアルゴリズム管理が労働者を過度に監視し、労働環境を悪化させる可能性があるとした上で、労働組合がこうした技術の導入に対して労働者の権利を守るための交渉を行う重要性を強調した。

■パネル・ディスカッション「生成AIの部門横断的影響について」

 プリヤラルUNI Apro金融部会担当部長がセッションの司会を務め、4組織(UAゼンセン、JP労組、大日本印刷株式会社、情報労連(※発表順))の報告が共有された。

  • 松井健 UAゼンセン常任中央執行委員/労働条件局長/政策サポートセンター長は、デジタル技術革新への対応と人材育成強化の取組みについて説明した。「2019年から労働条件交渉にAI導入を要求項目に加えた。AIとDXの推進が労働者にとって必要不可欠であり、人材育成と技術導入による生産性向上が重要だ」と強調した。
  • 吉野充 JP労組特別中央執行委員は、物流業務の自動化や無人搬送車、ドローンを使った配送など、労働力不足への対応策を具体例として挙げ、日本郵政グループにおけるAI活用と省力化、省人化の取組みや組合としてAI技術の活用を支持する理由を説明した。
  • 大竹宏之 大日本印刷株式会社 技術・研究開発本部ICT統括室室長は、同社のDX戦略と生成AIの取組みについて発表し、「社内にAI利用環境を整備し、全社員へのリテラシー教育を推進している。またAIの活用に伴う倫理的問題にも配慮し、高セキュリティな運用を行っている」と説明した。
  • 春川徹 情報労連副中央執行委員長/KDDI労組中央執行委員長は、生成AIの導入が職場で進行している事例を紹介し、AIの活用が労働者のサポートとなり、効率向上に寄与している点を強調した。またAIが人事評価に利用される可能性に対して懸念を示し、人間中心のAI活用の必要性を主張した。

■アルゴリズム管理「労働組合役員のためのUNIガイド」

 メンシUNI世界P&M担当局長は、アルゴリズム管理(作業プロセスをコンピュータで調整する技術で、リアルタイムのモニタリングや職場の意思決定に活用されている)と生成AIが労働環境に与える影響について説明をした。特にアマゾンの倉庫労働者が過剰な監視を受けている事例を挙げ、労働者の生産性や健康に悪影響を及ぼすことを指摘し「労働組合が透明性を確保し、労働者の権利を守るための団体交渉を実施すること、そして今後の生成AIの進化に対応するためのスキルアップとトレーニングの重要だ」と強調した。

 講演を受けて、フロアからは多くの意見や質問が出た(以下❶~❺) 

❶ 春川徹 情報労連 副中央執行委員長:「労働組合がビッグデータを活用して組合員のエンゲージメントを高め、組織活動を改善する事例を知りたい」という質問に、メンシ局長は「欧州の労働組合では生成AIを活用して団体交渉データを分析し、労働協約を改善する取り組みが進行中である」とし、労働組合が生成AIに関する研修を実施して情報格差に対抗し、組織活動の効率化を図る計画が進められている事例を紹介した。

❷ 岩月信也 労働政策研究・研修機構研究員 :「多くの労働者がAmazonで働き続ける理由やストライキなど対応手段を取る可能性はあるか?」という質問に、メンシ局長は、 同社は失業率や貧困率が高い地域において他に選択肢がない労働者を雇用しているため、過酷な環境でも労働者が辞められない現状が続いていることを説明し「労働組合が結成され対抗措置が取られたた事例はあるが企業の影響力が強い中での闘いは厳しい」と言及した

❸ 北村聡太 UNI Apro金融部会議長/損保労連中央執行委員長 :「アルゴリズム管理の厳しさに非常に懸念を感じる。団体協商や労使協議を通じて労働者の健康や労働条件に配慮された形でアルゴリズム管理が導入されるケースがあるのか?」という質問に、メンシ局長は「アルゴリズム管理が労使協議によって労働者に有益な形で使われるケースは可能である」と回答し、イタリアの事例等を紹介した。

❹ 許晃 全労金書記次長 :「企業側がビッグデータとアルゴリズムを導入する中、労使の情報量の差がさらに広がる状況にどのように対応していくべきか、またオープンソースや廉価なアルゴリズムを労働者や協同組合が共有財産として運営している事例を知りたい」という質問に、メンシ局長は「技術を労働組合が活用することが情報格差への対策である」と回答し、米国で清掃スタッフがソフトウェアの不具合を明らかにし、訴訟を通じて解決した事例を紹介した。

❺ 大津郁美 大日本印刷労組常任執行委員:「労働者自身は職場でAIとどのように向き合うべきか?」という質問に、メンシ局長は「労働者はAIを拒絶するのではなく知識と経験を活かして慎重に活用すべきだ。AIは統計技術に基づくものであり、労働者自身が判断する姿勢が必要だ」と述べた。

※UNIが2023年に発表した報告書 『アルゴリズム管理:集団行動のチャンス』に関する記事と日本語前文はこちらのリンクよりお読みいただけます。

2日目 -銀行業界と保険業界におけるAIの影響やILOでの取組み、OECD諸国と日本の比較研究の成果などが共有された。 

 前日に続いて2日目シンポジウムの挨拶をしたディクリスト局長に続き、北村聡太 UNI Apro金融部会議長(損保労連中央執行委員長)が挨拶をした。北村井議長はデジタル技術やAIが金融業界に与える影響について触れ「今こそ労働組合の役割が重要であり、スキルアップの強化が必要だ」と強調した。

■金融部門のデジタル化に関するILO三者会合結論文書

 ディクリスト局長は、ILO三者会合の結論文書を紹介し、デジタル化が金融業界における雇用の安定や労働者のスキル向上に大きな影響を与える一方で、雇用の自動化によるリスクも伴うと指摘していることに言及した。また、労働組合がこの変革に対応して労働者の権利を守るための社会対話を行う重要性を強調した。

 講演を受けて、フロアよりいくつか質問や意見があった。(以下❻~❾)

❻ 荻原周 損保労連事務局次長:「今後DXが進展する中で、労働組合として雇用リスクを未然に防ぐために取るべき対策を聞きたい」という質問に対し、ディクリスト局長は「リスキリング再教育や技能向上が重要であるが、特に高齢労働者に対しては早期退職などの手当を設ける必要がある」と回答した。

❼ 山本洋子 JP労組中央執行委員:「デジタル競争力ランキングで日本が順位を下げた。デジタル化に対して労働組合が果たすべき役割について聞きたい」という質問に対し、ディクリスト局長は「労働組合が規制の枠組み作りにおいて役割を果たすことが重要であり、新技術導入に対する組合の発言権を確保する必要がある。デジタル化による職の喪失に対し、労働者が威厳を保ちつつ職を離れられるよう、適切な対応策を講じるべきだ」と強調した。

❽ 許晃 全労金書記次長:「金融産業における企業がビッグテック企業の提供する技術基盤に依存している現状がある。労働組合がビッグテック企業に行動を起こした事例について聞きたい」という質問に対し、ディクリスト局長は「労働組合は、市場を独占しているビッグテックに社会的視点を持つよう働きかけるべきだ。労働者の権利を守るための規制を進める必要がある」と回答した。

■銀行部門のEU社会パートナーによる「金融部門におけるAIに関するEU共同宣言」

 「金融部門におけるAIに関するEU共同宣言」について、メンシ担当局長が経緯を含めて概説した。「共同宣言は、銀行業界におけるAIの影響を広範に取上げ、透明性、公平性、差別禁止、プライバシー保護の原則を重視している」と説明し、金融部門における具体的なAIの適用状況に触れた上で「特にAIのアルゴリズムによる意思決定は人間が管理すべきであり、AIの導入とモニタリングに際しては、AIが倫理的に使用され、全てのステークホルダーに利益をもたらされるよう、社会パートナーを参加させることが必須だ」と強調した。

❾ 櫻井大介 全労金書記長:「AIと人間の管理のバランスを保つことの困難さを感じている」と意見したのに対し、マッシモ局長は「AIがもたらす変化と倫理的側面についての重要性を認識したうえで、AIの導入には労働者の権利保護を確実に行う必要がある」と応答した。

■講演「職場におけるAI技術の活用と従業員への影響-OECDとの国際比較研究に基づく日本の位置づけ-

労働政策研究・研修機構の岩月信也研究員が、2021~2022年に実施した上記調査の概要を報告し、日本と多国の共通性や差異について概説した。そして職場への影響は、技術が一義的に決定するのではなく、組織の方針や介入によって大きく左右されると指摘した。特に、タスク変化やスキル向上、雇用への影響が重要視され、AIが必ずしも従業員の職務を全面的に自動化するわけではないとする見解を示した。また、欧州でAI導入に関して労使協議がなされている場合でも組合側の持つ情報や知識が十分でないため、協約の文言について組合が十分にコントロールできていない状況であり、労働者側の知識の蓄積や労使当事者の主体性が重要だと言及した。

 報告を受けて、活発な意見交換がなされた。

 木下宏樹 全信連書記長は、信託銀行業界では個別性の強い業務が多いためAIの活用領域は相対的に少なく、またAI導入が直ちに雇用喪失や処遇低下に繋がるわけではないが、業務効率化と生産性向上を図るため、労使共通の戦略でAIを推進する必要があるのとの認識を示した。

 松田惣佑 生保労連書記長は、生保産業においてAIは事務や営業の支援として活用されているが、今後も女性の雇用を支えつつAIの影響を注意深く見守るべきであるとの見解を示した。

 川岸正徳 全国農団労代表は、人手不足が深刻化しており農協ではデジタル化を打ち出している。新技術に関して高齢層は手を出したがらず、業務が若い世代に集中して負担となっている現状があり、適切な技術導入の必要性を感じていると発言した。

 榎本直人 労済労連中央執行委員は、日本でAI技術の活用方針が労働条件に大きな影響を与えていない要因や背景について質問した。これに対し、日本では解雇が難しい点や日本の賃金制度が挙げられた他、日本のサービス産業ではAIに対応できない細かな業務が多いため、AIの費用対効果が薄いのではないかとの見解が示された。

■グローバル視点から見た金融部門におけるAIの影響
 メンシ担当局長は講演の中で、AI技術は銀行業務の中で高頻度取引や不正の検知、マーケティング最適化などに利用されており、効率性の向上やリスクの低減に貢献している一方で、AI人材の維持確保が課題であり、特に高度なAI専門家の需要が高まっている点などを指摘した。また各職業・職種についてのAIの影響に関するILOの研究を紹介した。

■閉会
 安達正美JP労組書記長が、シンポジウムを通じて議論されたAI技術の進展と労働環境への影響について振り返るとともに、AIが労働環境に大きな変化をもたらすことは不可避であり、労働組合としてその変化に適切に対応する必要があると強調した。続いて、プリヤラル担当部長が2日間のワークショップを総括し、技術をどのように管理し活用していくかが重要な課題であるとし、労働者の権利を守るために組合の果たす役割を再確認した。最後に、ディクリスト担当局長が、日本での経験を持ち帰り今後の活動に活かしていきたいと述べ、シンポジウムを締めくくった。




uni logo
最近のコメント
    アーカイブ