
激動する世界における国際連帯の緊急性は、UNI Apro地域大会2日目でも繰り返し取り上げられた。クリスティ・ホフマンUNI書記長は、基調講演の中で「我々は、AI、気候変動、労働組合を消滅させようとする圧政や少数独裁政治といった課題に直面し、今も組織化と成長という困難な闘いに立ち向かっている。地政学的な緊張関係が、あらゆる方向に発展する可能性がある。だからこそ、我々は互いを必要としている。世界はこれまで以上に労働組合運動の断固たる決意を必要としており、UNIはその中心となっていこう」と呼びかけた。
ラジェンドラ・アチャリヤUNI Apro地域書記長は、企業欲に駆られた市場主導の親企業政策の台頭、労働基準を弱体化させる多国籍企業の前例のない影響力など、この地域における多くの課題を指摘した。同時に、各国政府は団結権に対する規制を強めており、ギグエコノミーの急速な拡大により、この問題はさらに深刻化している。物流、配送、Eコマースなどの分野では、プラットフォームワーカーやギグワーカーが深刻な搾取に直面している。同書記長は「この地域が経済的に成長するにつれ、エリート層だけでなく、すべての人々がその恩恵を受けられるよう、我々は闘っていく」と力強く宣言した。
組合の力を高めるために、共に変革しよう(動議1)
Apro地域における組織化の成功例が、数多く紹介された。
ダルメンドラ・クマール代議員(インド、アマゾン労組)は、組合潰しにも負けず組合を結成し、州のデジタル決済システム入札へのアマゾンの参加阻止、アマゾンが施設を閉鎖した際に解雇された800人以上の労働者に対する5か月分の賃金獲得など、数多くの成果を挙げたことを強調した。
ニコール・マクファーソン代議員(オーストラリア、金融産業労組)は、デジタル時代における労働者保護に関する組合の取組みについて報告した。同労組は、データセキュリティ、雇用保護、AIに関する労働者を交えた協議について、業界初の権利を獲得し、これにより、組合員は職場でのAIの利用方法を確実に管理できるようになる、と述べた。
木村美咲代議員(日本、UAゼンセン)は、自身が中央副書記長を務めるスギ薬局ユニオンの組織化について報告した。従来パート社員の組織率は5%であったが、パート社員組織化の重要性について会社側に説明して協定書を締結、店長の協力を得てパート社員一人ずつに丁寧に説明した結果、昨年パートタイム社員全員の組織化が実現した。SMSで気軽に労働相談ができるよう環境を整え、パート組合員向けのイベントを新たに企画する等、組合活動参加・参画への入り口を広げる活動にも取組んでいる。
平等と包摂のために、共に変革しよう(動議2)
はじめに中田綾子女性委員会議長(日本、UAゼンセン)が、座長として前日の女性大会の成果を報告するとともに、動議2の概要を説明した。
UNI Apro女性委員会議長代行に選出されたバブニート・カウール・アラン代議員(インド、AIBOBOA)は、過去3年間で1,300人以上の女性を支援し、51人の女性リーダー誕生につながったUNIのメンタリング・プログラムの成果を強調し、「若い女性のリーダーシップに投資すれば、職場での平等を推進する有能なリーダーの強固なパイプラインを構築できる」と訴えた。
また、パネルに参加した山口由紀子代議員(日本、UAゼンセン)は、組合員の6割が女性であるにも関わらず、女性の組合リーダーが少ないという課題について、同組織が取組む『女性ネクストリーダー会議』について説明した。同会議では、ジェンダー平等の実現と、女性トップリーダーの育成に向けた課題と必要な対応について議論し、その結果を流通部門の執行委員会に提案している。また、働く女性の健康支援の取組みとして、加盟組合への啓発活動を進めており、その成果は積立有給休暇を不妊治療に適用拡大することや、生理休暇の名称を変更し、更年期症状にも使えるようにすることなど、団体交渉にも表れている、と発言した。
同じくパネリストの三﨑友香里代議員(日本、大日本印刷労組)は、「性別や働き方に関わらず、すべての人が誇りをもって働けるように」との思いから始まった同組織の「MiMoSa」プロジェクトについて共有した。女性だけに焦点を当てるのではなく、セミナーではマイノリティと言われる人たちが感じた壁や必要とするサポートに多くの人が耳を傾け、共感したり、気づきを得たりするような取組みを行っている。
また永渕達也代議員(日本、情報労連)は、若者の過労死や、いわゆるブラックバイト等の状況に触れ、学生に対する労働教育が重要であるとの観点から、同労連による「明日知恵塾」の取組みを紹介した。労働に対する想像と現実のギャップを埋めるため、社会に出ていく学生に対して労働者としての実体験を共有し、労働組合の存在や必要性について伝えている。今後も労働組合の立場から、若者に対するワークルール教育に携わっていきたいと語った。
フロアから発言した藤原達矢代議員(日本、大日本印刷労組)は、同組織における男性育休制度の理解促進と、育休取得満足度の向上にむけた活動について紹介した。男性育休取得率は大幅に増加しているとしつつ、取得期間については満足度の低い人もいることから、育休取得経験者の声をもとに、体験談のシェア、収入面や人事評価への影響、復帰後の働き方などを伝える活動をしている。
民主主義、人権、労働組合の権利のために、共に変革しよう(動議3)
石川幸德UNI Apro副会長(日本、JP労組)が司会を務めた本セッションでは、はじめにユユン・ワヒュニンラムASEAN人権政府間委員会インドネシア代表が基調講演を行った。「世界がアジア太平洋地域を世界的な成長の原動力として注目する中、この進歩が包摂的で公正なものとなるようにしていく必要がある。搾取ではなく公平性、排除ではなくエンパワーメントに根ざしてたものにしていかなければならない」と呼びかけ、議論の口火を切った。
フィル・ロバートソン・アジア人権労働擁護団体事務局長は、この地域の深刻な人権状況について説明し、国際労働組合総連合(ITUC)が2024年に発表した『グローバル・ライツ・インデックス』において、労働者の権利ワースト10の中にアジア3カ国が挙げられていることに言及した。その一つ、現在2万人以上の政治犯が収監されているミャンマーにおいては、労働組合は禁止され、何千人もの民間人が殺害され、数百万人が国外に流出しており、同氏はミャンマーの人々を支援するよう国際社会に強く求めた。
地域大会には、マウン・マウン・ミャンマー労働組合総連合(CTUM)会長からのビデオメッセージが寄せられ、ミャンマーの労働者と民主主義を支援するUNIの取組み、特に多国籍銀行に対して軍事政権に関与する企業から投資撤退を要請する取組みについて、感謝の意が表された。
ラジェンドラ・アチャリャUNI Apro地域書記長は、「組合の強さ、団結、正義への献身が、アジア太平洋地域のすべての労働者のより良い未来のために闘う我々を導いてくれる。皆さんのたゆまぬ努力、勇気、そして揺るぎない連帯に感謝したい。共に、すべての人にとって公平で公平な仕事の世界に向けて前進し続けよう、共に変革を!」と国際連帯の重要性を強く呼びかけた。
一方、フロアから発言した安達正美代議員(日本、JP労組)は、同労組が行っているウクライナ郵便労組へのカンパ活動や、「連合」を通じた平和4行動、平和についての次世代への継承活動、学習会などを通じた政治への関心を高め民主主義を守る取組み等を紹介し、民主主義・人権・労働組合の権利のために、引き続き尽力していきたいと語った。