
インドの若手専門職は深刻化する危機に直面している。テック、金融、サービス業界を問わず、長時間労働と容赦ない業績要求が常態化し、燃え尽き症候群や不安を助長している。業務負荷を軽減するどころか、生成AIの急速な普及がさらにプレッシャーを増大させている。従業員は、十分な支援なしに自動化システムの監視と修正を求めらている。
こうした背景のもと、タタ社会科学研究所(TISS)、UNI Apro専門職・監督職(P&M)委員会、全インド・バローダ銀行従業員協会(AIBOBOA)は、UNI世界P&M委員会の指導のもと、国際セミナー『インドの若手専門職のために、働き方を再構築しよう:有害な職場文化とデジタルストレスへの対処』を開催した。
2025年9月12日にインド・ムンバイのTISSキャンパスで開催された本イベントは、TISSの教員・学生・卒業生、労働組合指導者、若手専門職を結集し、職場の実情と学術研究の架け橋となるよう設計され、建設的な意見交換の場を提供した。
ラジェンドラ・アチャリャUNI Apro 地域書記長は、「UNI Aproは、インドにおける有害な職場文化に取組むため、TISSと連携できることを光栄に思う。TISSの卒業生として、この共同セミナーによって問題意識を高めることができ、誇りに思う」と述べるとともに、セミナー開催に向け多大な支援を提供した加盟組織AIBOBOAに感謝の意を表した。
ズビン・ムラTISS経営・労働学部長は、衝撃的な統計を提示した。それによると、従業員の約3分の2がバーンアウトを経験し、42%がストレスに駆られていると報告している。またデジタル機器が「注意とエネルギーを吸い取るヒル」となっていると警告し、AI導入への不安が組織を「幸福を犠牲にした超効率化」へ駆り立てていると指摘した。
ジャヤスリ・プリヤラルUNI Apro専門職・監督職委員会担当部長は、この課題を分岐点と位置付けた。そして個々の労働者が単独でこうした圧力に耐えることはできないとした上で、リスクが最も急速に高まっている高スキル分野での労働組合の強化を訴えた。そして地域的視点から、技術進歩により有期契約が深刻な影響を受けている一方、急速にインフォーマル雇用が広がっていることがアジア太平洋全域で労働組合を弱体化させていると警鐘を鳴らした。
UNI世界P&M委員会の副議長を務めるプレム・クマール・マッカルAIBOBOA書記長は、インド特有の職場課題について言及し、高まるメンタルヘルス問題に対処するため、労働組合・企業・政策立案者の連携が急務であると強調した。
本セミナーには多様な登壇者と参加者が参加したことで、議論が深まった。TISS教員は、過重労働が生産性向上をもたらさず回復力を損なうことを示す研究を発表した。卒業生と在校生は「ハッスルカルチャー(仕事は人生で最も重要であり、休日を取ることなく長時間働くことによってのみ成功を収めることができるという考え方)」について考察し、日本の過労死とインドの最近の事例を比較する意見も出た。インドの労働組合指導者は、業績が6倍向上したにもかかわらず銀行業界で過労による自殺が500件発生している件に言及し、現場の実情を強調した。
パネルディスカッションでは懸念すべき実態も明らかになった。インドの労働者のうち組合に加入しているのはわずか6%であり、新たな労働法が組合をさらに弱体化させる恐れがある。ギグエコノミーは課題をもたらしており、労働者が従業員ではなく「パートナー」として分類されることで、団体交渉が弱体化している。
サララ・ラオ博士TISS人材管理センター長は、このセミナーが「対話のための安全な場」を創出したと述べ、より広範な変革に向けた不可欠な第一歩であるとまとめた。
本セミナーの議論は、次世代の専門職がデジタル時代において尊厳とバランスを持って働けるよう、労働組合と学界が継続的に取組む基盤を築いた。UNI Aproは、この課題を推進するため、TISSおよびそのパートナー組織との今後の連携を期待している。