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労働の未来をジェンダーの視点から議論

マルタ・オチョアUNI機会均等局スタッフは、SFの世界が現実のものとなり、急激なデジタル化によって生活が便利になると同時に、労働の世界でも求められる仕事のスキルが変わり、職場や働き方も変わりつつある中、組合においてジェンダーの視点からの議論が欠けていないか、問題提起した。デジタル化によって、情報を左右できる人に権力が集中していく。デジタル格差は、地域間、年齢間、経済レベル間だけでなく男女間でも起きていないか?デジタルの世界でも性差による偏見があるのではないか?

これらの課題認識を受け、フロアからは、「デジタル化の影響を女性労働者の立場から交渉課題に入れるため、より多くの女性労働者を組織する必要がある」、「労働の未来に関わる課題に、女性労働者が備えることができるよう、研修や啓発活動を強化するべきだ」、「同一価値労働同一賃金の実現に向け、多くの女性がこれまで担ってきた仕事の価値を適切に評価しなければならない」といった意見が出された。

大会代議員は、ICTS部会と連携したIT分野の女性労働者の更なる組織化や、デジタル男女格差を目指す他の組織との協力、女性労働者のための訓練や生涯学習の奨励、デジタル化で影響を受ける女性労働者の保護と適切な支援策を使用者に交渉すること等を含む、動議6を全会一致で採択し、UNIの女性メンバー間でのこの問題に関する情報共有・経験交流の重要性を確認した。


女性に対する暴力の根絶

UNIは、全ての個人が、尊厳のある公平な扱いを受ける権利があると確信している。特に、職場における暴力・ハラスメントは、あらゆる人々の尊厳を脅かし、被害者の生産性や健康、労働環境が損なわれる可能性があること、そして被害者本人だけでなく家族や地域社会、経済・社会全体に対しても悪影響を及ぼすと認識している。そこで、職場や社会全体で、セクハラ等のハラスメントや暴力を根絶するには、UNIが模範を示す必要がある。そこで、「UNI諸行事におけるプロフェッショナルで礼儀正しいふるまい」という方針が採択された。

UNI世界女性委員会は、特に職場で職位が低い、または仕事上の評価が低い労働者は被害を受けやすいこと、その多くが女性であることを認識し、ビデオやポスター、ポストカード等を使った様々な意識啓発キャンペーンを展開してきた。

オーストラリアの代議員は、小売・ファストフード業界の組合員6,000人に調査したところ、85%以上が顧客から暴言や暴力を受けていることがわかり、使用者と連携し社会全体の意識を変えるための啓発キャンペーンを始めたことを紹介した。小売・ファストフード業界には、女性や若い労働者が多い。「仕事の一環だと我慢してはならない」と労働者に伝え、会社にも労働者を保護するよう、セキュリティ、人材配置等の適切な措置を要求した。ソーシャルメディア等を通じて「店舗で働く人に八つ当たりしてはならない」という強いメッセージを社会にも訴えている。業界全体の問題であるととらえ、組合だけでなく、使用者・社会を巻き込んだ多面的な取組みを行っている。

杉山真裕子代議員(全印刷)は、日本でもセクハラが連日報道される等、社会の関心は高まってきたが、2次被害を恐れたり、声をあげても改善されない現状を報告し、加害者側にセクハラをしている認識がないことが問題だと述べた。組合でも、使用者側に職場環境改善の一環として要請し、組合員との対話を通じ、ハラスメントに関する実態調査や啓発活動等を行っている。ハラスメントを受けた2人のうち1人が何も行動を起こしていないことを問題視し、働きやすい、また相談しやすい職場づくりに努めていると報告した。

この他、家庭内暴力を受けている女性労働者の精神的・経済的支援も組合の取組むべき課題であるとの意見や、リプロダクティブヘルスを含む女性の健康問題における不平等の改善(中絶の合法化、女性が自らの健康について選択する権利を持てること)等、このテーマでは20人を超えるフロア発言があった。

大会代議員は、今後も、伝統や文化的慣習の下、女性や子供に向けられるあらゆる形態の暴力をなくすため、啓発活動を継続すること、「職場における男女労働者への暴力・ハラスメント撲滅」を目指すILO条約制定に向け、各国政府や使用者にロビー活動を継続することを含む動議5を、満場一致で採択した。


日本の女性代表団、リバプールで活躍

第5回UNI世界女性大会には、日本の6組織から22人が参加している。

UNI Apro女性委員の濵﨑香代議員(UAゼンセン)は資格審査委員、杉山真裕子代議員(全印刷)は時間管理者(タイムキーパー)、新田真帆代議員(損保労連)は、ハラスメント対策委員をそれぞれ務めた。

議題8「力強い女性」のフロア発言で、秋山庸子代議員(UAゼンセン)は、日本の流通業で働く女性が職場のリーダーや管理職として働く上での障害は、長時間労働を当たり前とする男性中心の労働慣行と、周囲だけでなく女性自身が抱く不安であるとし、女性だけでなく男性もワークライフバランスを重視し、働き方を変えていくことによって女性の活躍推進が前進すると述べた。また、日本ではまだ性別役割分担意識が根強く、男性の家事や育児への参画率が極めて低いことが、少子高齢化や女性活躍を阻む要因の1つと考えられており、男性の育児休業取得者の経験談を共有し、男性が育児休業を取得する意義やその効果について伝えること等の工夫を披露した。

 


女性比率の向上とジェンダー格差の解消に向けた取組みを共有

デニス・マクガイアUNI世界女性委員会議長は、UNIにおけるジェンダー平等ルールを設定した背景を次の通り説明した。「女性は世界の労働力の50%を占める。UNIに加盟する2000万人のうち、1000万人が女性組合員であるにもかかわらず、意思決定機関をはじめ、会議、研修、パネルディスカッション等、様々な場面で一般的に女性の代表は少なかった。そこで第3回UNI世界大会(2010年、日本・長崎)において、“ブレイキングスルー(突破)戦略”立ち上げの一環として、UNI世界女性委員会は世界大会に、あらゆるUNIの機構及び意思決定機関において女性代表を40%まで増やす勧告を提案した。これは満場一致で採択されたが、未だ継続中の長い道のりの第1歩だった。UNI世界執行委員会における女性代表比率は、2010年の17.3%から2016年には35%に上昇した。各地域においても、目標達成まであとわずかのところまできている。それでも、まだ前進の余地はある。そこで、2016年、UNI世界女性委員会は、このルールを徹底するための実施手続きを採択した。

ベロニカ・フェルナンデス・メンデスUNI機会均等局長は、「なぜ女性のクォータ(割り当て)制が必要なのか」、「なぜ女性だけの会議をする必要があるのか」との問いかけに対し、逆に「パネリストが全員男性であるパネルディスカッションを何度目にしたか」、「男性が女性の問題を議論するのを何度目にしたか」、「女性が不在の交渉チームを何度目にしたか」、「男性だけの代表団または男性役員しかいない組合を何度目にしたか」と投げかけた。

フロア発言では、久保田昭子代議員(JP労組)が、非正規雇用社員から正社員への登用と、合理的ではない処遇差の撤廃、更には女性社員活躍に関する支援として、女性採用比率・勤続年数・労働時間・女性管理職比率等の状況分析と組合員意識調査結果を反映した取組みを会社に求めていることを報告した。

韓国の代議員は、金融産業における採用・昇進のジェンダー不平等の実態を指摘し、組合は正式な調査を要求していると報告した。女性は有期契約労働が多い。アファーマティブアクションを行い、女性管理職を増やす取組みを継続し、理想が現実になるように活動していくと述べた。

英国の代議員は、「時間がかかり過ぎだ」と憤慨し、「ジェンダー平等は、ワークライフバランス、家事分担、ジェンダーに基づく偏見等とも密接に結びついており、男性も女性の参画について発言すべきだ」と主張した。

大会代議員は、動議2を採択した。


UNI世界女性大会、2018~2022年度戦略的優先課題を採択

第4回UNI世界女性大会(2014年、南アフリカ・ケープタウン)のハイライトをビデオで振り返った後、ベロニカ・フェルナンデス・メンデスUNI機会均等局長から、加盟組織の協力により2014~2018年度の取組みが実施できたことに感謝の言葉が述べられた。特に、メンタリング・プログラムの構築や女性・女児への暴力及びハラスメントに対する闘い、平等賃金に向けた取組み、労働組合における女性労働者の代表を増やすこと等に継続して取組み、着実に成果を挙げてきたことを強調した。

2018~2022年度の戦略的優先課題としては、UNIにおける女性代表40%ルールの徹底及び2022年の世界大会で50%へ引き上げるための取組み、仕事の世界における暴力と嫌がらせ(ハラスメント)に関する新たなILO条約の制定に向けた取組み、組合強化・女性の組織化及び女性リーダー育成・女性ネットワークの拡大、男女間賃金格差・年金格差を解消する取組み、ジェンダーの視点から「労働の未来」を議論すること、LGBTQIへの意識喚起等に重点的に取組むことが提案された。

フロアからは、泰中沙織代議員(UAゼンセン)が、女性組合員の声を積極的に取り入れるための女性委員会の設置と、上司及び組合員に育児・介護休業法の知識・理解を深めてもらうことを通じて、取得できる職場環境づくりに推進した経験を報告した。子育てに限らず、様々な事情を抱えながらも、全ての労働者がイキイキと働ける環境づくりに今後も取組んでいきたいと述べた。

イタリアの代議員は、「UNIの掲げる40%の目標にまだ届かない状況は受け入れられない。男女賃金格差、労働者代表制、女性の健康問題等の取組みは、女性の意思決定機関への参画なしには成しえない」と発言した。

マレーシアの代議員は、女性の組合役員を育成し増やすための研修の重要性を訴えた。また、マレーシアのホテル業界の使用者が、イスラム教徒の女性に宗教上のスカーフ着用を禁じたことを差別だとし、最近、そうした差別的慣行をやめさせることができたと報告した。

大会代議員は、2018~2022年度戦略的優先課題を満場一致で採択した。


リバプールは力強い女性の街

2018年6月14日、第5回UNI世界女性大会が英国・リバプールで開幕し、66か国、160加盟組織から451人(代議員231人、オブ79人、ゲスト89人、スタッフ、通訳等52人)が出席した。日本からは6組織22人が参加した。

リバプール出身の2人の女性による力強いパフォーマンスに続き、英国労働組合を代表し、ジェイン・ロフタス通信労組委員長が歓迎挨拶を行った。彼女は、リバプールにおける労働運動の歴史を振り返り、労働者階級が連帯して闘い、大量に失業者が発生した時代を乗り越えると共に、人種差別、労働者差別や男女差別と闘ってきたと述べた。また、多くの女性が社会正義を求める活動に携わってきたことも紹介し、「職場やコミュニティで男女格差や人種差別に挑み続ける、目に見えない多くの女性がいる。彼女たちを代表していると意識して大会に参加してほしい」と期待した。最後に、アイルランドが国民投票で中絶の権利を認めたことを称賛し、「Yes, we can!(そうだ、我々は変化を起こすことができる!)」と共に声を上げた。

クリスティ・ホフマンUNI副書記長は、UNI初の女性書記長候補である。女優らが過去のセクハラ被害を公表したことをきっかけに、映画監督や政治家等を辞職に追い込んだ。低賃金のサービス産業の労働者が最も被害に遭いやすい。UNIは10年に渡り、職場における暴力やセクハラを根絶するため、「悪循環を断ち切れ」キャンペーンを展開し、拘束力のあるILO条約の制定を目指しロビー活動を続けてきた。男性だけの組合ではセクハラ対策は前進しない。労働運動に携わる女性として、セクハラを許さない文化へと変えていかなければならないと訴えた。

続いて、アクロニム軍縮外交研究所所長で、昨年ノーベル平和賞を受賞したICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)の共同議長も務めるレベッカ・ジョンソン博士に、アン・セリンUNI会長より「恐怖からの解放」賞が贈られた。ジョンソン博士は、全ての人の生存のための権利のみならず、雇用の安定、産業界の発展、環境保護のためにも、政治家にただ決定を委ねるのではなく、国民、とりわけ女性が、平和と軍縮の議論にもっと関わり、核兵器廃絶に取組むことが重要であると訴えた。また、労働組合が取組むにあたり、年金基金が兵器産業に投資されていないかチェックする等、核兵器廃絶に向けて連帯するよう要請した。「平和と軍縮の実現に向け、UNIのような組織と今後も連携していく。誰もが、安全で倫理的責任のある職場で働くべきだ。」ジョンソン博士は、全ての核兵器が無くなるまで、核兵器禁止条約に署名・実行するよう各国政府に圧力をかけていく、と誓った。


女性役員の育成には共感力が必要!

2018年4月24日、東京で、UNI-LCJ女性ネットワーク会議が開催され、10組織から40人が出席した。

目的は、UNI及びそのアジア太平洋地域組織(UNI Apro)の女性委員会が取組むジェンダー平等促進活動について、理解を深めることと、UNI-LCJ構成組織で活躍する女性役員から経験を聞き、UNI-LCJ構成組織の女性のネットワークを広げることであった。

第1部ではまず、小川UNI Apro機会均等担当部長が、UNI/UNI Aproのジェンダー平等促進活動及び6月のUNI世界女性大会について簡単に紹介した。

続いて、UNI Apro女性委員を務める、杉山真裕子全印刷中央執行委員と、新田真帆損保労連中央執行委員から、昨年11月のUNI Apro女性委員会での議論や出席した感想、組織における女性を含めた役員の育成等についての有益な経験を聞いた。

第2部では、UNI-LCJ構成組織の中央本部で役員を務める、古賀初代印刷労連副中央書記長、高橋桂子生保労連中央副執行委員長、小出真理子全労金書記次長、三木佳世子日放労中央執行委員をパネリストに迎え、組合役員になったきっかけから、ワークライフバランスの秘訣、政府が進める女性活躍推進政策に対する意見、労働組合における女性の参画の進展、更にはデジタル化によって女性労働者の働き方はどう変わるか、まで示唆に富んだ経験や意見を聞いた。また、自らの経験から、組合役員としての苦労や良かった点についても共有し、最後に後輩女性へのアドバイスがあった。

また、UNI世界女性委員会の議長を務める、英国Prospectのデニス・マクガイア委員長から、参加者にビデオメッセージが届いた。冒頭、2010年、長崎でのUNI世界大会に参加した経験を懐かしみ、リバプールでも良い思い出をつくってほしいと述べた。リバプールは「労働組合の街、強い女性の街」であると紹介し、UNI世界女性大会・世界大会で、日本の多くの女性代議員が大会議論に積極的に参加することを期待した。


UNIの新たな未来に、ブレイキングスルー!

2018年2月27日、第19回UNI-LCJ年次総会が東京で開催され、各加盟組織より運営委員及び総会代議員、オブザーバー等約80人が出席した。2017年度活動報告、会計報告に続き、「UNIの新たな未来に、ブレイキングスルー!」をコンセプトとした2018年度活動計画及び予算が承認された。また、新メンバーを歓迎した。

UNI本部からフィリップ・ジェニングスUNI書記長、UNI Aproからクリストファー・ウン地域書記長が来賓として出席した。今年6月にリバプールで開催される第5回UNI世界大会で退任予定のジェニングスUNI書記長は、他の友誼組織からの参加者も含めた約130人を前に、「労働の未来を私たちの手に」と題して講演を行った。松浦議長が司会を務め、釘本UNI Apro青年委員会副議長(日放労中央執行委員)、杉山UNI Apro女性委員(全印刷企画部長)がインタビューする形で進められた。ジェニングスUNI書記長は、UNI世界大会の舞台となる英国・リバプールの街と世界大会の概要、英国の労働運動が直面する課題、UNIの『労働の未来』の取組み等について熱く語った。

リバプールは、英国の北西部に位置し、綿や機械製品輸出の拠点であり、新大陸への移民を乗せた船が出発し、アフリカからの奴隷貿易の中継港として発展してきた世界遺産にも登録されている歴史的な都市。世界大会は港近くのコンベンションセンターで開催され、大会テーマ「Making It Happen!(実現しよう)」の下、組織化、労働の未来、平和等について議論が行われる。また、ネルソン・マンデラ生誕100周年、女性参政権獲得100周年、英国ナショナルセンターTUC設立150周年等を祝い、コービン労働党党首やノーベル平和賞を受賞したICAN代表等、多彩な来賓を迎える予定である。

英国の労働運動は18世紀の産業革命がきっかけで発展し、今年はTUC設立150周年にあたる。TUCが強さを誇るのは公共部門で、民間部門は20%の組織率に留まり、労働協約で守られている労働者は30%に過ぎない。こうした状況を打破するため英国の労働組合は組織化に力を入れ、公共部門では17万人、民間部門では、一般労働者10万人、運輸労働者12万人、小売店労働者8万人の組織化に成功している。現在、英国はEU離脱がもたらす経済の影響や、ゼロ時間契約(オンコール労働)、格差拡大などの課題に直面している。

「労働の未来」は非常に重要な問題であるが、そもそも国際社会において「労働」を政治的な議論の場の中心におくこと自体が困難であり、「賃上げがなければ経済回復はない」という国際労働運動のメッセージは長年軽視されてきた。そうした中で、UNIは「労働の未来」について他に先駆けて取組みを始め、AIの倫理的活用、労働者/消費者データの保護の必要性等を訴えてきた。ジェニングスUNI書記長は退任後も2019年まで、ILOの仕事の未来世界委員会の委員として、デジタル化が進む中で労働者が「誰一人取り残されない社会」を目指していく、と抱負を述べた。

最後に、日本の加盟組合へのメッセージとして、「UNI-LCJの皆さんには今後もいっそう国際労働運動に積極的に取組み、UNI、UNI Aproにおいてリーダーシップを発揮してほしい」と、アジアおよび世界の労働運動の牽引役としての役割を期待した。また、2010年の長崎世界大会以来UNIとしても力を入れている平和の取組みの重要性にも言及し、「日本から世界へ平和のメッセージを発信し続けてほしい」と訴えた。

レセプションでは、本多厚生労働省総合政策・政策評価審議官、逢見連合会長代行、ウンUNI Apro地域書記長から連帯挨拶を受けた。また、ジェニングスUNI書記長の長年の功績に感謝し、野田UNI-LCJ副議長から記念品が贈呈された。2010年のUNI世界大会の長崎開催にあたり、地元の取りまとめ役を務めた宮崎連合長崎会長(元情報労連長崎県連絡協議会議長)は、長崎大会開催にまつわるジェニングスUNI書記長との思い出を振り返り、国際労働運動に直に触れることができた貴重な体験だったと感謝した。


UNIインド加盟協/UNI-LCJ共同セミナー

2015〜2018年度UNI-LCJ海外活動の方向性に沿って、3年目となるUNIインド加盟協(UNI-ILC)との共同セミナーが、インドのUNI組織化センター(UNI-DOC)の所在地ハイデラバードで開催された。UNI-LCJからは、宮井UNI-LCJ副議長(損保労連委員長、UNI Apro金融部会議長)を団長に、才木情報労連/KDDI労組副委員長、柴田UAゼンセン短時間組合員総合局副部長、岡田自動車総連政治局部長が講師として参加した。UNI-ILCからは、ミリンドUNI-ILC議長をはじめ加盟組織役員、銀行・保険労組、郵便労組、商業労組、IT労連(NCU)・ITを専攻する学生等総勢40人が参加した。

宮井UNI-LCJ副議長は、グローバルな政治・経済課題やデジタル化に対応するには、労働組合もグローバルに結束して情報・経験交換し、世界中の労働者の明るい未来のために英知を出し合うことが重要だと挨拶した。

UNI-DOCは、長年インドのIT労働者の組織化に取組んできた。IT業界の使用者は反労組的であり、IT労働者は組合に加入すれば解雇されると思っているため、組合結成は非常に難しかった。そのような中、ハイデラバード、バンガロール、ムンバイ等が存在する5州でIT労組を組織し、2013年に全国レベルのNCU(全国IT労連)を結成するに至った。今回初めて、商業労組、全国IT労連から多くの若手・女性組合員が参加した。プラサドUNI-DOC所長は、両国のIT労働者の現状と課題について活発な情報交換ができることを期待した。

開会式に続いて、ジャワハルワール・ネルー技術大学(ハイデラバード・エンジニアリング学部)のゴバルダン学長から「インドのIT産業における労働環境」について基調講演を受けた。欧米に比べIT人材の人件費が安いため、インドではIT関連の仕事が急成長し、若年層に雇用の機会を提供し、インド経済に大きく貢献してきた。しかし高給だが、ピラミッド型の労働力構成で、年齢を重ねるほどポジションが少なくなり、突然解雇通知をつきつけられることが多い。IT産業に就職する若者は、そのような将来を予測しておらず、60歳まで同じ仕事ができると思っていた。技術の進化によって、新しい機会が創出され、機械化・自動化により、人間の作業が楽になる反面、新しい技術を常に学び続け、マルチスキルでなければ、失職するプレッシャーもある。50歳になれば20代の若者と同じように学ぶことはできないが、経験を活かした別の機会もあるだろう。どのようなキャリアパスがあり、そのために何をすべきか予測ができれば、適切な対応も可能だ。ゴバルダン学長は、将来を予測する必要性とビジョンの重要性を強調し、2日間のセミナーでの議論が労働組合の政策提言に活かされることを期待すると共に、政府の諸機関でデジタル化が推進され、様々な公的サービスもオンライン化されているが、インフラとそれを使いこなす人材の研修が不十分である点も指摘した。

日本からは、宮井団長が「日本の労働運動の概要と今日的課題」、柴田講師が「職場や社会における格差の是正のために労働組合ができること」、才木講師が「デジタル化時代におけるデジタル化ツールを活用した組織化」、岡田講師が「日本のパートナーシップ労使関係」、小川UNI-LCJ事務局長が「UNIの紹介、労働組合の国際連帯・国際協力」についてそれぞれ講演した。また、講演を受けて、インド人参加者は産業別にグループ討論を行い、発表した。

今回は参加者構成が、既存の確立された国営企業労組(銀行、生保、郵便等)と、新たに結成された民間のITや流通部門の労組に分かれており、固有の課題をそれぞれ共有し、新たな視点から議論を行うことができた。例えば、「既存の労働法が適用されないIT産業で働く契約労働者や派遣労働者こそ組合に入るべき」であり、「彼らに組合に関する正しい情報を伝え、組合のブランディング(知名度向上)やマーケティング(勧誘)をするには、SNSのようなデジタルツールの活用は効果がある」という意見もあれば、「デジタルツールはあくまでも補完的なもので、対面する会議や紙のニュースは必要だ」という意見もあった。また、政府は、諸機関や国営企業でデジタル化を推進しているが、そのためにマルチタスクを要求されること、新しいソフトや導入されたシステムの使い方を習得しなければならないこと、そのための職員への訓練が不足していること、デジタル技術の習熟度に世代間で差があること、デジタル化のインフラが未整備であること、システムエラー等により労働時間が長時間化すること等の課題が挙げられた。

2日間という短い時間ではあったが、組合の歴史の異なる部門の青年男女が、組合の意義、身近な課題の認識から、日本のパートナーシップ労使関係に基づく労働組合運動、UNIを通じた組合のグローバルな連帯の必要性、デジタル化等、若い世代の雇用・労働に影響する課題等について、若い世代の視点から幅広く意見を交換し、「組合は保険ではなく投資だ」、「職場に変化を起こしたいなら、自分自身がまず変わらなければ」、「組合にどのような改革が必要かを、組合の中で議論にしなければ」といった前向きな議論が展開された。

宮井団長は最後に、「労働組合の役割は、現場から綺麗な情報だけ経営陣に伝えるのではなく、事実を伝えることだ」、「企業の発展無くして労働者の明るい未来はない」と、パートナーシップに基づく労使関係の意義を強調した。ミリンドUNI-ILC議長からは、UNI-LCJ講師陣の有益な情報提供に感謝が述べられた他、来年のセミナーをデリーで開催する提案を受けた。


UNI-LCJ「労働の未来」フォーラム

2017年8月1日、UNI-LCJは「労働の未来」フォーラムを開催し、UNI-LCJ加盟組織から役員をはじめ、連合、JILAF、GUF等80人を超える労働組合関係者が出席した。UNI本部から、デジタル化及び貿易協定等の部会横断的課題を担当するクリスティーナ・コルクロフ担当部長が来日し、人工知能(AI)、ビッグデータ、ロボット化等によって、いかに仕事や求められるスキル、働き方が変わるかを中心に講演を行なった。コルクロフ部長は、データ保護の重要性を強調し、なぜUNIが従業員のデータに関する使用者のガバナンスを定める国際基準づくりについて、IEEEと協力し始めたかを説明した。

「多くの企業が従業員から引き出したデータを使い、モニターし、蓄積している。個人が識別できる情報だ。業務の流れやパターンをモニターすることによって得られるデータもある。世界のどこでも、従業員は自分達に関するデータへのアクセス権がない。会社を辞める場合に個人データの消去を依頼することもできない。これは変えなければならない。IEEEと協力し、望ましい職場におけるデータのガバナンスに関する、世界中で適用可能な基準づくりができれば、と期待している。」

コルクロフ部長は、日本で非正規労働者が4割に達していることに驚愕し、世界中で同じように非正規雇用が拡大しているが、我々は一丸となって現行の社会保障システムの改変を要求していくべきだと述べた。

「多くの労働者が、ただ自営業であるということだけで、或いは標準的でない働き方をせざるを得ないというだけで、社会保障システムの対象から部分的に、或いは完全に外れている。これも我々は変えていかねばならない。全ての労働者が、雇用形態に関わらず、しっかりした同じ社会的・基本的権利を持たなければならない。デジタル経済の進展によって、労働市場の門戸がまさにグローバルに開かれ、未来の労働が更に流動的で柔軟になる中、社会保障制度を改革し、現状に合わせなければ、破壊的な結果をもたらすだろう。それは容認できない。」

コルクロフ部長のプレゼン資料

コルクロフ部長の講演に続き、経済産業省産業人材政策室の伊藤参事官から、「第4次産業革命と『働き方改革』をめぐる動向」について講演を受けた。デジタル化時代に向けて、日本政府は多くの取組みを行なっている。とりわけ伊藤参事官は、正規社員の労働時間短縮の必要性を強調した。一方で、収入が不安定で断片的な仕事に就く非正規労働者も増えていることは矛盾しているように見える。

日本における急速な人口減少が、日本企業や労働者が職場におけるロボットやAIの導入に前向きな理由の1つである。しかし、多くの中小企業が直面する課題は山積しており、伊藤参事官は良き解決策を見出すために、労使の建設的な協力が不可欠だと述べた。デジタル化が労働者に及ぼす影響についての政府の取組みはこれからである。

これらの講演を受けて、フロアからは多くの意見や質問が出た。将来の社会契約はどのようなものであるべきか?という質問に、コルクロフ部長は「全ての労働者が社会的・基本的権利によって守られるようにしなければならない。自営業であろうと、雇用形態に関わらず、全ての労働者に訓練の権利と機会が与えられるよう要求すべきだ。労働者の要求が尊重されるには、労使関係においてパワーバランスが図られなければならない。そのためには組織化、組織化、組織化だ!」と繰り返した。

伊藤参事官には、TiSA(新サービス貿易協定)への日本政府の立場についての質問が出された。UNIの最近の報告書は、TiSAが及ぼす労働者及び労働条件への影響だけでなく、データ保護やデータの権利に対する負の影響について警鐘を鳴らしている。なぜ日本政府は、WTOをはじめ様々な貿易交渉において、データの自由な流通に異議を唱えないかについては明確な答弁はなかった。

「労働の未来」はUNIの重点課題の1つである。UNIは世界のサービス産業で働く仲間の声を代弁しており、常に新たな分野に踏み出してきた。ビッグ6と言われる世界の大手テクノロジー企業との新たな展開があるかもしれないので、UNIの「労働の未来」ウェブサイトにご注目を!


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