
フランスで電話マーケティングに関する新法が施行されたことを受け、モロッコとチュニジアでは、コールセンターで働く数千人の労働者が職を失っている。今回の事態は、規制や技術の変化によって産業全体が大きく変わる際に、社会対話と労働者を中心に据えた移行措置がいかに急務であるかを浮き彫りにしている。
2026年8月11日に新法が施行され、フランスの消費者に商業目的で電話をかける企業は、原則として事前に消費者から明示的な同意を得ることが義務付けられた。この変更は、モロッコとチュニジアに大きな影響を及ぼしている。両国では、フランス市場がこれまでオフショアのコンタクトセンター産業において大きな割合を占めてきたためである。特に、電話によるアウトバウンド・マーケティングに大きく依存していた小規模企業が、深刻な影響を受けている。
UNI加盟組織である全国コールセンター・オフショアリング労働者・役員連盟(FNCAMO-UMT)は、モロッコではすでに約1万人の雇用が失われた可能性があると推計している。一方で、信頼できるデータが不足していることや、非公式に事業を行う事業者が存在することから、今回の影響の全容を把握することは難しいとしている。複数の企業では、労働者が突然仕事を失い、未払い賃金の回収や失業給付の受給に苦慮しているケースも報告されている。
アユーブ・サウードFNCAMOの書記長は、「本来なら予測し、備えておくべきだった移行のコストを、労働者が負担させられるべきではない。フランスの新法は2025年に成立しており、業界と政府には準備するための1年以上の時間があった。しかし、雇用が失われ始める前に、適切な再訓練や雇用移行のための制度は整備されなかった。」
FNCAMOは現在、雇用のより強力な保護、技能習得・再訓練への投資、そしてより持続可能で付加価値の高い事業への移行を求める覚書をモロッコ政府に提出している。また、再訓練を受ける労働者についても、自ら移行の費用を負担することを求められるのではなく、十分な所得保障を受けられるよう求めている。
影響は電話マーケティングにとどまらない。人工知能(AI)や自動化によって、カスタマーサービス、バックオフィス、その他のビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)の業務もすでに変化している。大手アウトソーシング企業は、労働者を別の業務へ配置転換できる可能性が高いものの、配置転換によって賃金が低下する場合もある。FNCAMOは、アウトバウンド営業の仕事とカスタマーサービス業務との間には、大きな賃金格差があるケースも指摘している。
今回の法改正はモロッコだけでなく、フランス向けにBPOサービスを提供しているフランス語圏アフリカ諸国の数多くの労働者にも影響を及ぼしている。その一つがチュニジアであり、同国では約3万~3万5,000人がこの業界で働いており、事業の90%がフランス向けとなっている。
UNI加盟組織のチュニジア労働総同盟(UGTT)のサレム・ルタイエフ氏によると、すでに約5,000人の労働者が職を失っており、そのうち3,000人は小規模事業者に違法な形で雇用されていた労働者だという。これらの労働者には正式な雇用契約がなく、歩合制の賃金が現金で支払われており、解雇から身を守るための保障もない。
これに対して、同氏の組合は、コンセントリクスやTPなどの大手多国籍企業で働く組合員について、会社側と交渉することができた。
「これらは解雇ではなく、双方の合意による退職となった。従業員に提示された退職プランはあくまで本人の任意によるものであった。また雇用をできる限り維持するため、アウトバウンドの電話業務からインバウンドの電話業務への配置転換も行われた。インバウンド業務では、一般的にアフターサービス、技術サポート、債権回収などを担当している」
ベンジャミン・パートンUNI世界 ICTS部会担当局長は、「モロッコとチュニジアの労働者に対するフランスの法律の影響は、世界的につながったBPO産業において、一つの国で行われた規制や技術に関する決定が、数千キロ離れた場所で働く労働者に直ちに影響を及ぼし得ることを改めて示している。こうした労働者とその組合は、移行のあり方を決める過程において、必ず発言権を持たなければならない。政府、使用者、労働組合は、雇用が失われてしまう前に協力し、雇用へのリスクを特定し、移行計画について交渉し、質の高い再訓練を提供するとともに、労働者の所得と権利を守らなければならない」と述べた。
(2026年9月30日)









