ブログアーカイブ

2025ダボス会議:UNI書記長、不平等なAIへの緊急対応とソーシャルメディアの説明責任を求める

労働者が参加しなければ、人工知能などの新しいテクノロジーは、世界的な不平等を深刻化させ、少数のエリート層に権力をさらに集中させるリスクがある ー クリスティ・ホフマンUNI書記長は、2025年1月に開催されるダボス会議(世界経済フォーラム)で、企業リーダーや政策立案者に対して厳しい警告を発する予定だ

同書記長は、「わずか2年の間に、多くの使用者の間で交わされるAIに関する会話は、労働者の能力を向上させることから労働者を代替することへと変化してきた。その間、ほんの一握りの企業が、この変革を推進するモデルを手中に収めつつある」と指摘し、「AIの導入方法を決定する会議に労働者が参加しなければ、AIは価値あるイノベーションではなく、不平等を助長するエンジンとなってしまうだろう。我々の民主主義、コミュニティ、経済は、新しい仕事の世界において労働者が発言権を持てるようにするため、労働者へのパワーシフトのない時間をもう1年も続ける余裕はない」と語気を強める。

同書記長にとってもう一つの重要な懸念は、ソーシャルメディアのプラットフォームが、サイト全体で正確で安全なコンテンツに対する責任を負うことを拒否する傾向が強まっていることだ。UNIの加盟組織は、メタやアルファベットなどの企業に直接雇用されているテック系従業員だけでなく、コンテンツの管理や大規模な言語モデルのトレーニングを行うデータサプライチェーンの労働者も代表している。

ホフマン書記長は「デマ、暴力、グロテスクなディープフェイクといった反民主主義的な勢力はますます強大化し、今まさに目前に迫ろうとしている。 プロフェッショナルで、十分な訓練を受け、十分な報酬を支払われたモデレーターの集団が、倫理的なAIによって強化されなければ、ソーシャルメディアの優れた機能の多くが奪われてしまうだろう。テック大手企業がこうした第一線で働く労働者たちに投資して我々を守ろうとしないのであれば、彼らは事実上、この混乱を招き入れているようなものだ」と懸念を表明した。そして、米国や欧州、その他の地域で規制や権利の後退を推し進めているイーロン・マスク、ジェフ・ベゾス、マーク・ザッカーバーグのようなテック界の大物の影響力を相殺するためには、労働組合が必要だと主張した。

デジタル時代のディーセントワークに関して世界レベルで議論をリードするホフマン書記長は、日々、新たなテクノロジーがもたらす影響に直面している労働者を代表する数少ないダボス会議参加者の一人でもある。

関連記事はこちらから: Why digital trust depends on workers | World Economic Forum


韓国における民主主義の危機に関するUNI Apro声明

UNIアジア太平洋地域組織(UNI Apro)は、アジア太平洋地域全域のサービス産業の労働組合の組合員を代表し、2024年12月3日午後10時30分(現地時間)に韓国のユン・ソンニョル政権が発令した前例のない戒厳令について、深い懸念を表明する。国会の断固たる行動により、12月4日午前4時30分(韓国標準時)に戒厳令は撤回されたものの、民主的諸制度に対するこの攻撃の重大性を軽視することはできない。

戒厳令の宣言は、韓国の権威主義的な過去、特に韓国が今日誇らしく体現している民主主義のために人々が闘い、犠牲を払った1980年代の悲劇的な出来事を想起させる悪夢のような記憶を呼び起こした。夜のソウル上空を飛び交う軍用ヘリコプターの不気味で鋭い音が、暗黒時代の不穏な響きを強く呼び起こした。

国会議員たちが慌ただしく国会に向かうという劇的な場面が繰り広げられ、国会職員や補佐官等が、議会開催を阻止しようとする警察や軍人らに対して人間のバリケードを張った。韓国の民主主義を守るべく、早朝からおよそ3万人の人々が国会議事堂に押し寄せたが、武装した部隊が国会議事堂に侵入しようとしている憂慮すべき映像も流れた。

この宣言は、憲法上のいかなる正当な根拠も欠いており、アジアおよび国際社会全体に衝撃を与えた。この危機は国内外で、経済的不確実性と市場の不安定化を招いた。

アジア太平洋地域が民主的統治に対する数々の課題に直面する中、韓国の堅固な民主主義は、世界中の国々にとってインスピレーションの源であった。アジアで最も堅固な民主主義国家の一つにおけるこの前例のない行動は、地域の安定と民主主義制度に対する深刻な懸念を引き起こしている。

韓国のUNI加盟組織は、ユン政権に対して、反組合政策を放棄し、国会で可決された法案の拒否など、民主的手続きを無視するやり方を断つよう、一貫して求めてきた。戒厳令の宣言は、大統領権限が民主的決定を覆し、労働者や一般市民の声を封じこめるために行使されたことを示す明白な証拠である。

イ・ジェジン議長が率いる、韓国のUNI加盟組織の連合体であるUNI韓国加盟組織連絡協議会(UNI KLC)の組合は、戒厳令の宣布にあたり、迅速かつ断固とした対応を示した。組合は、この違憲行為を民主的機関と労働者の権利に対する重大な脅威として非難し、憲法秩序を回復し民主的自由を守るための即時措置を共同で求めた。

11月20日から22日にタイ・バンコクで開催された第6回UNI Apro地域大会では、代表団が、基本的権利の保護と労働条件の改善を求める韓国のUNI加盟組織の闘いを支援する声明を採択した。この地域的な連帯の表明は、特に最近の出来事を鑑みて、より重要性を増している。

ラジェンドラ・アチャリャUNI Apro地域書記長は、次のように表明している。「戒厳令の宣言は、労働者の権利と自由に対する直接的な攻撃である。この布告は、あらゆるストライキと集会を明確に禁止しており、合法的な組合活動を一夜にして事実上犯罪化するものだ。民主的制度を守るために韓国の労働運動が市民社会とともに迅速に対応したことは、民主主義を守る上で組織化された労働者が果たす重要な役割を示している。UNI Aproと地域の加盟組織は、韓国の仲間と連帯して動員する用意を整えている」

多大な犠牲を払って勝ち取ったこの民主主義が、無責任な政治的駆け引きによって損なわれてはならない。我々は、結社の自由や表現の自由の保証を含む真の民主的統治の回復を求める韓国の加盟組織を断固として支持する。

我々は韓国政府に対し、独裁的な道から離れ、平和的かつ民主的な手段によって社会を正常化するよう迅速に動くことを強く求める。韓国の民主的機関を維持する余地はまだ残されているが、早急な対応が不可欠である。


UNI Apro地域大会最終日、変革の原動力を生み出す

第6回UNI Apro地域大会において、UNI加盟組織は、次の4年間で変革を起こすべく、団結し、共に立ち上がった。2024 年11月20~22日にかけてタイ・バンコクで開催された第6回UNI Apro地域大会には、22カ国の組合からおよそ600名が参加した。

デジタル時代のディーセント・ワークのために、共に変革しよう(動議4)
地域大会の最終日は、デジタル時代におけるディーセントワークの実現に向けた、公正な移行に関する議論から始まった。

パネル討議に参加した鈴木克彦代議員(日本、情報労連)は、「日本では労働人口が減少する中、自動化やAIはプロセスを効率化し、労働力不足に直面する産業をサポートするツールとして期待されている」としつつ、倫理性の欠如によって労働者の権利を蔑ろにするリスクをはらんでいることを指摘した。そして、AIが労働者を支え、労働者の権利を守り、労働環境を改善するためのツールとなるよう、労働組合が積極的に関与し、会社と協議していかなければならない、とまとめた。

デニス・マガ代議員(ニュージーランド、FIRST Union)は、労働者がスキルアップや再技能教育プログラムを受けたり、つながらない権利を行使できるようにするための団体交渉の必要性を強調した。さらに、AI関連の移行を管理する上での労働組合と使用者間の強固な対話の重要性を強調し、AI主導の変化の影響を受ける労働者を保護するための社会所得保険や積極的労働市場プログラムなどの制度的な措置の必要性を訴えた。

フロアから発言した橋本大樹代議員(日本、損保労連)は、緊急性が高くない場合であっても、評価を気にして上司からの連絡に対応してしまう等、「つながらない」ことを選択しづらい状況が存在している実態を指摘し、勤務時間外のおけるコミュニケーションツールの使用等に関するルール策定の整備を進め、つながらないことを選択しやすい環境整備の重要性を訴えた。

暴力やハラスメントのない健康で安全な職場のために、共に変革しよう(動議5)
並木泰宗UNI Apro副会長(日本、自動車総連)がセッション司会を務め、「安全で衛生的な職場で働くことは基本的権利であり、UNIと加盟組織は、世界中でこの権利の実現に向けて立ち上がり続けなければならない」と挨拶した。

ILOバンコク事務所の氏田由可 労働安全衛生上席専門家が、2022年にILOが基本的人権として定めた労働安全衛生について、基調講演を行った。「労働安全衛生は、組合が職場における基本的人権の意識を高めるための非常に良い出発点となる」と述べた上で「毎年、過重労働が原因で、25万人が心臓病や脳卒中で命を落としている。アジア太平洋地域では、世界でも最も深刻な過重労働の問題に直面しており、この地域にとって喫緊の課題だ」と指摘した。

パネリストの永島智子代議員(日本、UAゼンセン)は、「サービスを受ける側も提供する側も共に尊重される社会を創る!」をコンセプトにしたカスタマーハラスメントの取組みについて報告した。アンケートによる実態調査を基に、厚労省や地方自治体行政への要請や、同組織出身の議員による国会での課題提起などを行った結果、2022年には厚労省のカスタマーハラスメント対策が予算化され、政府による広報ツール等が作成され、社会的にも認知されるようになったこと、東京都が日本初の「カスタマーハラスメント防止条例」を成立させ、2025年4月から施行されること等を共有した。

プレムカラ・サンバハンペ代議員(ネパール、NTEAN)は、労働組合が交渉によって、負傷した技術者の医療費負担を含む労働者の福祉の大幅な改善を実現した経緯を説明し、「安全な職場は、業績、評判、コンプライアンスを向上させ、労働安全衛生への投資を不可欠なものとする」と述べた。

また、熊谷芙美子代議員(日本、自動車総連)は、同組織による労働災害撲滅の取組みについて報告した。類似災害発生防止のために事例を共有し、加盟組織の安全衛生担当者と必要な対策を協議していると述べ、今後は重大災害の発生原因をさらに深く分析し、職場での再発防止意識を徹底するなど、より一層の取組みが必要だと発言した。

社会対話やパートナーシップ労使関係を通じて、持続可能な未来のために共に変革しよう(動議6)
最終セッションでは、技術革新と世界的な不確実性の時代における社会対話の重要性が強調された。

ゲストスピーカーとして参加したロドラ・ババランASEAN人材開発局長は、AI、自動化、リモートワークがもたらす変化は、使用者や政策立案者だけでなく、労働組合も適応する必要があり、そうすることで労働者が団体交渉権やディーセントワークを享受できると述べた。

スブラマニアム代議員(シンガポール、UTES)は、シンガポールの強固な三者構成の枠組みを紹介し、政労使が協力し、2025年の目標である2,500社を上回る2,700社以上の企業研修委員会を設立、労働者の研修プログラムを共同で策定していると報告した。また、「労働者にスキルアップや再教育を奨励することで、彼らの雇用可能性が将来の仕事にも対応できることを保証している」と付言した。

パネリストの市川勝也代議員(日本、生保労連)は、労使が連携して諸課題に対応していくことが重要との認識から、金融産業では初となる「働き方改革に向けた生保産業労使共同宣言」が採択され、また2024年には「社会的使命達成に向けた生保産業労使共同宣言」の採択が実現したことを報告した。そして地域社会の諸課題の解決に向けた「地域社会共創フォーラム」を開催し、労使共同宣言を共に交わした経営者団体である生命保険協会もパネラーとして参加、労使一体となって課題解決策を話し合ったことなどを共有した。

同じくパネルに登壇した深見正弘代議員(日本、全労金)は、同組織が参加する協同組織産別・単組連絡会の活動について説明するとともに、雇用創出や持続可能な開発に貢献し、UNI やUNI Aproの運動とも合致する協同組合の意義について語った。そして国連の定める2025年の国際協同組合年に向けて、協同組合の貢献について認知度を高め、持続可能な開発に向けて協同組合が発展するよう、政府や関係機関に働きかけていくことについて、ともに取組むことを提起した。

また、労済労連の上杉雄太代議員も、「協同組合は生活をより良くしたいと願う人びとが自主的に集まって事業を行い、その事業の利用を中心にしながら、みんなで活動を進めていく、営利を目的としない組織」であると説明した。また連絡会による今年のシンポジウムでは、協同組合の社会的責任と可能性をテーマに学んだことを報告し、最後に「2025国際協同組合年」を盛り上げていくことを大会に要請した。

磯山直樹代議員(日本、UAZ)は、職場の課題については、企業別労組がパートナーシップ労使関係に基づき、経営側と労使協議や団体交渉を行い、解決に取組んでいるとした上で、税金や社会保障、労働法制、カスタマーハラスメント等の社会課題については、政治活動に積極的に取組む必要があると発言した。ただし若い組合員の政治への関心の低さが課題であるとし、所属する企業別労組では、若手組合員を対象に、国会見学などの政治研修会を実施していることを紹介した。

全ての動議について採択が行われ、満場一致で承認された。最後に、UNI Aproの新たな執行部について選挙が行われ、過去5年にわたってこの地域におけるUNIの取組みを主導してきた成果と実績が認められ、UAゼンセンの松浦明彦UNI Apro会長と、ラジェンドラ・アチャリャUNI Apro地域書記長が再選された。また、UNI Apro執行委員会の新メンバーも大会で承認された。

安藤京一UNI副会長は、閉会挨拶の中で、気候変動や民主主義への脅威、一部の巨大多国籍企業による不当行為といったリスクにさらされ続ける中、すべての労働者が安心・安全に働けるようにするためには、グローバルな連帯が必要であり、UNI Aproに集う加盟組織がこれまで以上に一致団結しなければならないと訴えた。そして、新たに選出されたUNI Apro執行部を祝福し、UNI Aproの運動を牽引し、より良い将来の構築に向けてイニシアチブを発揮して頂きたいと述べ、締めくくった。


UNI Apro地域大会2日目:アジア太平洋地域における労働者の力を高める鍵は、連帯と組織化

激動する世界における国際連帯の緊急性は、UNI Apro地域大会2日目でも繰り返し取り上げられた。クリスティ・ホフマンUNI書記長は、基調講演の中で「我々は、AI、気候変動、労働組合を消滅させようとする圧政や少数独裁政治といった課題に直面し、今も組織化と成長という困難な闘いに立ち向かっている。地政学的な緊張関係が、あらゆる方向に発展する可能性がある。だからこそ、我々は互いを必要としている。世界はこれまで以上に労働組合運動の断固たる決意を必要としており、UNIはその中心となっていこう」と呼びかけた。

ラジェンドラ・アチャリヤUNI Apro地域書記長は、企業欲に駆られた市場主導の親企業政策の台頭、労働基準を弱体化させる多国籍企業の前例のない影響力など、この地域における多くの課題を指摘した。同時に、各国政府は団結権に対する規制を強めており、ギグエコノミーの急速な拡大により、この問題はさらに深刻化している。物流、配送、Eコマースなどの分野では、プラットフォームワーカーやギグワーカーが深刻な搾取に直面している。同書記長は「この地域が経済的に成長するにつれ、エリート層だけでなく、すべての人々がその恩恵を受けられるよう、我々は闘っていく」と力強く宣言した。

組合の力を高めるために、共に変革しよう(動議1)
Apro地域における組織化の成功例が、数多く紹介された。

ダルメンドラ・クマール代議員(インド、アマゾン労組)は、組合潰しにも負けず組合を結成し、州のデジタル決済システム入札へのアマゾンの参加阻止、アマゾンが施設を閉鎖した際に解雇された800人以上の労働者に対する5か月分の賃金獲得など、数多くの成果を挙げたことを強調した。

ニコール・マクファーソン代議員(オーストラリア、金融産業労組)は、デジタル時代における労働者保護に関する組合の取組みについて報告した。同労組は、データセキュリティ、雇用保護、AIに関する労働者を交えた協議について、業界初の権利を獲得し、これにより、組合員は職場でのAIの利用方法を確実に管理できるようになる、と述べた。

木村美咲代議員(日本、UAゼンセン)は、自身が中央副書記長を務めるスギ薬局ユニオンの組織化について報告した。従来パート社員の組織率は5%であったが、パート社員組織化の重要性について会社側に説明して協定書を締結、店長の協力を得てパート社員一人ずつに丁寧に説明した結果、昨年パートタイム社員全員の組織化が実現した。SMSで気軽に労働相談ができるよう環境を整え、パート組合員向けのイベントを新たに企画する等、組合活動参加・参画への入り口を広げる活動にも取組んでいる。

平等と包摂のために、共に変革しよう(動議2)
はじめに中田綾子女性委員会議長(日本、UAゼンセン)が、座長として前日の女性大会の成果を報告するとともに、動議2の概要を説明した。

UNI Apro女性委員会議長代行に選出されたバブニート・カウール・アラン代議員(インド、AIBOBOA)は、過去3年間で1,300人以上の女性を支援し、51人の女性リーダー誕生につながったUNIのメンタリング・プログラムの成果を強調し、「若い女性のリーダーシップに投資すれば、職場での平等を推進する有能なリーダーの強固なパイプラインを構築できる」と訴えた。

また、パネルに参加した山口由紀子代議員(日本、UAゼンセン)は、組合員の6割が女性であるにも関わらず、女性の組合リーダーが少ないという課題について、同組織が取組む『女性ネクストリーダー会議』について説明した。同会議では、ジェンダー平等の実現と、女性トップリーダーの育成に向けた課題と必要な対応について議論し、その結果を流通部門の執行委員会に提案している。また、働く女性の健康支援の取組みとして、加盟組合への啓発活動を進めており、その成果は積立有給休暇を不妊治療に適用拡大することや、生理休暇の名称を変更し、更年期症状にも使えるようにすることなど、団体交渉にも表れている、と発言した。

同じくパネリストの三﨑友香里代議員(日本、大日本印刷労組)は、「性別や働き方に関わらず、すべての人が誇りをもって働けるように」との思いから始まった同組織の「MiMoSa」プロジェクトについて共有した。女性だけに焦点を当てるのではなく、セミナーではマイノリティと言われる人たちが感じた壁や必要とするサポートに多くの人が耳を傾け、共感したり、気づきを得たりするような取組みを行っている。

また永渕達也代議員(日本、情報労連)は、若者の過労死や、いわゆるブラックバイト等の状況に触れ、学生に対する労働教育が重要であるとの観点から、同労連による「明日知恵塾」の取組みを紹介した。労働に対する想像と現実のギャップを埋めるため、社会に出ていく学生に対して労働者としての実体験を共有し、労働組合の存在や必要性について伝えている。今後も労働組合の立場から、若者に対するワークルール教育に携わっていきたいと語った。

フロアから発言した藤原達矢代議員(日本、大日本印刷労組)は、同組織における男性育休制度の理解促進と、育休取得満足度の向上にむけた活動について紹介した。男性育休取得率は大幅に増加しているとしつつ、取得期間については満足度の低い人もいることから、育休取得経験者の声をもとに、体験談のシェア、収入面や人事評価への影響、復帰後の働き方などを伝える活動をしている。

民主主義、人権、労働組合の権利のために、共に変革しよう(動議3)
石川幸德UNI Apro副会長(日本、JP労組)が司会を務めた本セッションでは、はじめにユユン・ワヒュニンラムASEAN人権政府間委員会インドネシア代表が基調講演を行った。「世界がアジア太平洋地域を世界的な成長の原動力として注目する中、この進歩が包摂的で公正なものとなるようにしていく必要がある。搾取ではなく公平性、排除ではなくエンパワーメントに根ざしてたものにしていかなければならない」と呼びかけ、議論の口火を切った。

フィル・ロバートソン・アジア人権労働擁護団体事務局長は、この地域の深刻な人権状況について説明し、国際労働組合総連合(ITUC)が2024年に発表した『グローバル・ライツ・インデックス』において、労働者の権利ワースト10の中にアジア3カ国が挙げられていることに言及した。その一つ、現在2万人以上の政治犯が収監されているミャンマーにおいては、労働組合は禁止され、何千人もの民間人が殺害され、数百万人が国外に流出しており、同氏はミャンマーの人々を支援するよう国際社会に強く求めた。

地域大会には、マウン・マウン・ミャンマー労働組合総連合(CTUM)会長からのビデオメッセージが寄せられ、ミャンマーの労働者と民主主義を支援するUNIの取組み、特に多国籍銀行に対して軍事政権に関与する企業から投資撤退を要請する取組みについて、感謝の意が表された。

ラジェンドラ・アチャリャUNI Apro地域書記長は、「組合の強さ、団結、正義への献身が、アジア太平洋地域のすべての労働者のより良い未来のために闘う我々を導いてくれる。皆さんのたゆまぬ努力、勇気、そして揺るぎない連帯に感謝したい。共に、すべての人にとって公平で公平な仕事の世界に向けて前進し続けよう、共に変革を!」と国際連帯の重要性を強く呼びかけた。

一方、フロアから発言した安達正美代議員(日本、JP労組)は、同労組が行っているウクライナ郵便労組へのカンパ活動や、「連合」を通じた平和4行動、平和についての次世代への継承活動、学習会などを通じた政治への関心を高め民主主義を守る取組み等を紹介し、民主主義・人権・労働組合の権利のために、引き続き尽力していきたいと語った。


変革のために、共に立ち上がろう!第6回UNI Apro地域大会がバンコクで開幕

2024年11月20日、『変革のために、共に立ち上がろう』(Rising Together to Transform)をテーマに開催された第6回UNI Apro地域大会の開幕に合わせ、Apro地域全体から600人を超える労働組合のリーダーが、タイ・バンコクに集結した。

11月20~22日まで開催される地域大会は、地域全体のUNI加盟組織が、連帯、組織化、団体交渉を通じて経済を変革するための舞台を整えるものとなる。

開会式では、タイ現代舞踊の美しいパフォーマンスに続き、スウィット・ミンモルUNIタイ加盟協議会議長が、タイのUNI加盟組織を代表して、参加者を歓迎した。

満員の会場でクリスティ・ホフマンUNI書記長は、「『トランスフォーム』という言葉は、我々がただ変化を望んでいるのではなく、もっと大きな変革を望んでいるということを意味する。経済を変革しなければなりません。組合の役割と力を変革しなければならない。そして、組合そのものを変革し、若者や女性をより多く受け入れられるよう、組合そのものを変革していかなければならない」と呼びかけた。

来賓のシラポップ・ドゥアンソッドスリ労働副大臣は 、デジタル経済がもたらす変革の中で、スキルアップ、リスキリング、労働者福祉の向上に関する政府の取組みを強調した。また、法制化によって労働者の権利を向上させる計画についても言及し、「現在策定中の独立労働法の草案は、タイを国際労働基準に沿った労働基準を持つ国にし、すべての人にディーセント・ワークを創出することを目的として いる。(…中略…)タイ政府を代表し、三者構成で労働団体と協力し、タイの労働問題に関わるミッションを着実かつ持続的に推進していく」と述べた。

松浦昭彦UNI Apro会長は 、パンデミック、政情不安、気候危機、経済格差の拡大など、かつてない激動の時代を乗り切るには、連帯が不可欠だと強調し、「労働組合は、団結し、共に変革を目指すことで労働者の権利を守ることができる。仲間を増やし、各国の組合同士が連帯することで、私たちの声を社会に響かせることができる。組織化を通じた労働者の権利の保護と労働条件の向上を実現しよう」と力強く呼びかけた。

パヌッダ・ブーンパラILOアジア太平洋地域事務所副事務局長は基調講演の中で、すべての労働者は暴力やハラスメントから解放されるべきだと述べ、「ILOは、特に移民労働者、非正規労働者、若年労働者がハラスメントの被害を最も受けやすい産業において、安全で包摂的な環境づくりに向けて継続的に取組んでいるUNI Aproの活動を称賛する」と述べ、職場における差別、ハラスメント、虐待の撲滅に向けた組合の取組みに対するILOの支援継続を約束した。

吉田昌哉ITUC-AP書記長は、 この地域の民主化闘争と組合の勝利に注目し、ミャンマーで軍事政権に抵抗する国民統一政府が前進したこと、インドネシアで労働法の改善を新たに提唱した組合が成功したこと、タイがOECD加盟を申請したことを称賛した。しかし、香港ではリー・チャクヤンのような活動家や組合指導者が不当に投獄されていることを非難し、「逆境の時こそ、我々は背筋を伸ばし、歴史から力を引き出し、前進しなければならない」と強調した。

もう一人の講演者、ヘニング・エフナー・フリードリッヒ・エーベルト財団タイ事務所長は、同財団がこの地域で長年にわたって築いてきたパートナーシップについて語り、「FESは皆さんと連帯し、社会正義、ディーセント・ワーク、労働組合の権利のために、アジア太平洋地域および世界中で組合の闘いを支援し続ける」と述べた。

マノップ・クエラットタイ国営企業労連委員長は、グローバルな自由市場の資本主義が悪化させた不平等の拡大について懸念を表明し、「短期雇用、雇用不安、労働権侵害、不当な賃金は、不平等の拡大につながっている。貧困層と富裕層の格差は拡大し続けている」と述べた。

ジェラルド・ドワイヤーUNI会長は、 タイ労働省の三者構成による取組みについて、「政府、使用者、労働者が協力し合うことができれば、それこそが最高の社会だ」称え、開会式を締めくくった。


英国議会、団結権と団体交渉権に関する労働者保護強化に向けた法案を可決

2024年10月10日、英国議会は、職場における労働組合の強いプレゼンスは労働者と経済にとって有益であり、団体交渉は生産性、産業改革、平等性と雇用に利益をもたらすという認識が高まっていることを受け、法案を提出した。この法案は10月21日、下院の2回目の読会で委員会段階に進められた。

主なポイントは以下:

  • 労働組合が職場にアクセスし、労働者の組織化、集会、代表を行う権利の確立。
  • 組合承認手続きの簡素化、基準の引き下げ、組合員が過半数を超える組合の自動承認。
  • ストライキを行う労働組合員の保護。
  • 組合選挙および労働争議の決定に関する投票ルールの公平化。
  • 平等な代表性のための施設利用時間を含む新たな権利。

声明で、英国労働組合会議(TUC、ナショナルセンター)は次のように述べている。

「この法案は、労働組合が現代の職場において活動するためのより良い環境を整備するものとなる。労働組合を通じて賃金や労働条件を守る上で、労働者の地位が改善されることになる。(…中略…)多くの使用者が、労働組合が労働者と事業にもたらす利益を認識している一方で、AmazonがGMBの最近の組合承認キャンペーンに反応したように、労働組合が労働者と話すことさえ妨げる異常な手段を取る使用者もいる。この法案は、労働組合が職場に入り、労働者と面会し、労働者を代表し、組織化し、労働者を勧誘し、団体交渉を促進することを可能にすることで、こうした状況を変えていくものだ」

労働者のためのニューディールキャンペーンを立ち上げたデーブ・ウォード英国通信労組書記長は、「これは前向きな展開であり、労働の世界の再均衡化に向けた第一歩だ。欧州の他地域では一般的となっている労働者の権利を拡大するこれらの提案を、一部のメディアや大企業が攻撃していることは恥ずべきこと。我々は今、労働党に対し、これらの計画の完全実施を迅速に進めるよう強く要請する。保守党による数十年にわたる労働者への攻撃を経て、この変更を遅らせることはできない。また、法律を骨抜きにする大企業の要求に屈することもできない」と強い決意を見せる。

UNIとUNI欧州は、TUCおよび英国の労働組合とともに、これらの進展を歓迎する。

クリスティ・ホフマンUNI書記長は、「この法案は、労働組合の活動家にとって明るい話題であり、職場で団結力を高めたいと願う労働者が直面する障壁を低くするための現実的な前進策を提供するものだ。現行の規則では、アマゾンのような反組合キャンペーンを打ち負かすことはほぼ不可能だ。だが、この新法は、長らく待ち望まれていた転換点となるだろう。新しい法律には、常に細部に問題が潜んでいるが、この法案には大きな期待が持てる」と歓迎した。

オリバー・レティクUNI欧州地域書記長は、「団体交渉は労働組合活動の基盤であり、職場におけるより公平で透明性の高い強力な代表を通じてのみ、労働者は自らの状況を改善することができる。この法案は、労働者とその組合が職場において真の意見表明と賃上げを実現するための組織化を可能にするものであり、我々はこれを歓迎する。この新法はまた、欧州全域における団体交渉の強化に焦点を当てるUNI欧州の機関会議(2025年3月にアイルランド・ベルファストで開催予定)に向けて、重要なメッセージを発信するものだ」とコメントした。


UNI世界金融部会/UNI世界専門職・監督職委員会共催シンポジウム『デジタル化とAIがもたらす労働の未来』を開催

2024年9月26~27日、全電通労働会館ホール(東京都千代田区)において、UNI世界金融部会、UNI世界専門職・監督職(P&M)委員会共催シンポジウム『デジタル化とAIがもたらす労働の未来』を開催した。1日目は全部門対象に「生成AIについて」をテーマに、2日目は金融部門対象に「銀行業界と保険業界におけるAI」をテーマに開催し、UNI-LCJ加盟組織や未加盟の金融労組他、2日間で延べ約120人が参加した。

本シンポジウム開催に伴い、海外より、アンジェロ・ディクリストUNI世界金融部会担当局長、マッシモ・メンシUNI世界専門職・監督職(P&M)委員会担当局長兼UNI Aproデジタル・テクノロジー政策アドバイザー、ジャヤスリ・プリヤラルUNI Apro金融部会担当部長兼UNI Apro専門職・監督職委員会担当部長を、また日本より、独立法人労働政策研究・研修機構の岩月信也研究員を招聘し、最新の事例と研究が共有された。

昨年より生成AIの台頭によって、仕事の世界においても様々な機会に、AIやデジタル化についての議論が関心を集めてきた。激動の変化の中で、労働の世界はどのように変化し、公正な移行に向けて労働組合はどのように対応していくべきか、活発な議論が展開された。

1日目-UNIの部門横断的視野から、仕事の世界における生成AIの現状と組合の取組みについて、議論がなされた。

 冒頭の挨拶でディクリストUNI世界金融部会担当局長は、新技術が労働に与える影響について触れ「特にデジタル化とAIは労働者にとって機会と課題の両面の意味を持つ。AI技術が労働者の仕事を奪う可能性がある一方で、労働環境の改善にもつながる可能性がある。UNIとしてはAIに関する政策検証が重要であり、これに対応する準備が必要だと」強調した。

 次に挨拶した安藤京一UNI-LCJ副議長(情報労連中央執行委員長)は、デジタル化とAIの進展が労働市場に与える影響を指摘し「多くの職業が自動化されるリスクがあり、労働者が新しいスキルを習得し、増々変化に適応することが必要だ」と述べ、労働時間の柔軟性やリモートワークの普及に伴い、労働組合が従来の枠組みを再構築する必要性を強調した。

■基調講演「生成AIが労働力に与える影響」

 メンシUNI P&M委員会担当局長は、生成AIの現状と今後の動向、生成AIが各部門や労働力に与える影響について基調講演を行い、生成AIなどの新技術が生産性を向上させる一方で、労働者の雇用や権利を侵害するリスクを指摘した。特にアルゴリズム管理が労働者を過度に監視し、労働環境を悪化させる可能性があるとした上で、労働組合がこうした技術の導入に対して労働者の権利を守るための交渉を行う重要性を強調した。

■パネル・ディスカッション「生成AIの部門横断的影響について」

 プリヤラルUNI Apro金融部会担当部長がセッションの司会を務め、4組織(UAゼンセン、JP労組、大日本印刷株式会社、情報労連(※発表順))の報告が共有された。

  • 松井健 UAゼンセン常任中央執行委員/労働条件局長/政策サポートセンター長は、デジタル技術革新への対応と人材育成強化の取組みについて説明した。「2019年から労働条件交渉にAI導入を要求項目に加えた。AIとDXの推進が労働者にとって必要不可欠であり、人材育成と技術導入による生産性向上が重要だ」と強調した。
  • 吉野充 JP労組特別中央執行委員は、物流業務の自動化や無人搬送車、ドローンを使った配送など、労働力不足への対応策を具体例として挙げ、日本郵政グループにおけるAI活用と省力化、省人化の取組みや組合としてAI技術の活用を支持する理由を説明した。
  • 大竹宏之 大日本印刷株式会社 技術・研究開発本部ICT統括室室長は、同社のDX戦略と生成AIの取組みについて発表し、「社内にAI利用環境を整備し、全社員へのリテラシー教育を推進している。またAIの活用に伴う倫理的問題にも配慮し、高セキュリティな運用を行っている」と説明した。
  • 春川徹 情報労連副中央執行委員長/KDDI労組中央執行委員長は、生成AIの導入が職場で進行している事例を紹介し、AIの活用が労働者のサポートとなり、効率向上に寄与している点を強調した。またAIが人事評価に利用される可能性に対して懸念を示し、人間中心のAI活用の必要性を主張した。

■アルゴリズム管理「労働組合役員のためのUNIガイド」

 メンシUNI世界P&M担当局長は、アルゴリズム管理(作業プロセスをコンピュータで調整する技術で、リアルタイムのモニタリングや職場の意思決定に活用されている)と生成AIが労働環境に与える影響について説明をした。特にアマゾンの倉庫労働者が過剰な監視を受けている事例を挙げ、労働者の生産性や健康に悪影響を及ぼすことを指摘し「労働組合が透明性を確保し、労働者の権利を守るための団体交渉を実施すること、そして今後の生成AIの進化に対応するためのスキルアップとトレーニングの重要だ」と強調した。

 講演を受けて、フロアからは多くの意見や質問が出た(以下❶~❺) 

❶ 春川徹 情報労連 副中央執行委員長:「労働組合がビッグデータを活用して組合員のエンゲージメントを高め、組織活動を改善する事例を知りたい」という質問に、メンシ局長は「欧州の労働組合では生成AIを活用して団体交渉データを分析し、労働協約を改善する取り組みが進行中である」とし、労働組合が生成AIに関する研修を実施して情報格差に対抗し、組織活動の効率化を図る計画が進められている事例を紹介した。

❷ 岩月信也 労働政策研究・研修機構研究員 :「多くの労働者がAmazonで働き続ける理由やストライキなど対応手段を取る可能性はあるか?」という質問に、メンシ局長は、 同社は失業率や貧困率が高い地域において他に選択肢がない労働者を雇用しているため、過酷な環境でも労働者が辞められない現状が続いていることを説明し「労働組合が結成され対抗措置が取られたた事例はあるが企業の影響力が強い中での闘いは厳しい」と言及した

❸ 北村聡太 UNI Apro金融部会議長/損保労連中央執行委員長 :「アルゴリズム管理の厳しさに非常に懸念を感じる。団体協商や労使協議を通じて労働者の健康や労働条件に配慮された形でアルゴリズム管理が導入されるケースがあるのか?」という質問に、メンシ局長は「アルゴリズム管理が労使協議によって労働者に有益な形で使われるケースは可能である」と回答し、イタリアの事例等を紹介した。

❹ 許晃 全労金書記次長 :「企業側がビッグデータとアルゴリズムを導入する中、労使の情報量の差がさらに広がる状況にどのように対応していくべきか、またオープンソースや廉価なアルゴリズムを労働者や協同組合が共有財産として運営している事例を知りたい」という質問に、メンシ局長は「技術を労働組合が活用することが情報格差への対策である」と回答し、米国で清掃スタッフがソフトウェアの不具合を明らかにし、訴訟を通じて解決した事例を紹介した。

❺ 大津郁美 大日本印刷労組常任執行委員:「労働者自身は職場でAIとどのように向き合うべきか?」という質問に、メンシ局長は「労働者はAIを拒絶するのではなく知識と経験を活かして慎重に活用すべきだ。AIは統計技術に基づくものであり、労働者自身が判断する姿勢が必要だ」と述べた。

※UNIが2023年に発表した報告書 『アルゴリズム管理:集団行動のチャンス』に関する記事と日本語前文はこちらのリンクよりお読みいただけます。

2日目 -銀行業界と保険業界におけるAIの影響やILOでの取組み、OECD諸国と日本の比較研究の成果などが共有された。 

 前日に続いて2日目シンポジウムの挨拶をしたディクリスト局長に続き、北村聡太 UNI Apro金融部会議長(損保労連中央執行委員長)が挨拶をした。北村井議長はデジタル技術やAIが金融業界に与える影響について触れ「今こそ労働組合の役割が重要であり、スキルアップの強化が必要だ」と強調した。

■金融部門のデジタル化に関するILO三者会合結論文書

 ディクリスト局長は、ILO三者会合の結論文書を紹介し、デジタル化が金融業界における雇用の安定や労働者のスキル向上に大きな影響を与える一方で、雇用の自動化によるリスクも伴うと指摘していることに言及した。また、労働組合がこの変革に対応して労働者の権利を守るための社会対話を行う重要性を強調した。

 講演を受けて、フロアよりいくつか質問や意見があった。(以下❻~❾)

❻ 荻原周 損保労連事務局次長:「今後DXが進展する中で、労働組合として雇用リスクを未然に防ぐために取るべき対策を聞きたい」という質問に対し、ディクリスト局長は「リスキリング再教育や技能向上が重要であるが、特に高齢労働者に対しては早期退職などの手当を設ける必要がある」と回答した。

❼ 山本洋子 JP労組中央執行委員:「デジタル競争力ランキングで日本が順位を下げた。デジタル化に対して労働組合が果たすべき役割について聞きたい」という質問に対し、ディクリスト局長は「労働組合が規制の枠組み作りにおいて役割を果たすことが重要であり、新技術導入に対する組合の発言権を確保する必要がある。デジタル化による職の喪失に対し、労働者が威厳を保ちつつ職を離れられるよう、適切な対応策を講じるべきだ」と強調した。

❽ 許晃 全労金書記次長:「金融産業における企業がビッグテック企業の提供する技術基盤に依存している現状がある。労働組合がビッグテック企業に行動を起こした事例について聞きたい」という質問に対し、ディクリスト局長は「労働組合は、市場を独占しているビッグテックに社会的視点を持つよう働きかけるべきだ。労働者の権利を守るための規制を進める必要がある」と回答した。

■銀行部門のEU社会パートナーによる「金融部門におけるAIに関するEU共同宣言」

 「金融部門におけるAIに関するEU共同宣言」について、メンシ担当局長が経緯を含めて概説した。「共同宣言は、銀行業界におけるAIの影響を広範に取上げ、透明性、公平性、差別禁止、プライバシー保護の原則を重視している」と説明し、金融部門における具体的なAIの適用状況に触れた上で「特にAIのアルゴリズムによる意思決定は人間が管理すべきであり、AIの導入とモニタリングに際しては、AIが倫理的に使用され、全てのステークホルダーに利益をもたらされるよう、社会パートナーを参加させることが必須だ」と強調した。

❾ 櫻井大介 全労金書記長:「AIと人間の管理のバランスを保つことの困難さを感じている」と意見したのに対し、マッシモ局長は「AIがもたらす変化と倫理的側面についての重要性を認識したうえで、AIの導入には労働者の権利保護を確実に行う必要がある」と応答した。

■講演「職場におけるAI技術の活用と従業員への影響-OECDとの国際比較研究に基づく日本の位置づけ-

労働政策研究・研修機構の岩月信也研究員が、2021~2022年に実施した上記調査の概要を報告し、日本と多国の共通性や差異について概説した。そして職場への影響は、技術が一義的に決定するのではなく、組織の方針や介入によって大きく左右されると指摘した。特に、タスク変化やスキル向上、雇用への影響が重要視され、AIが必ずしも従業員の職務を全面的に自動化するわけではないとする見解を示した。また、欧州でAI導入に関して労使協議がなされている場合でも組合側の持つ情報や知識が十分でないため、協約の文言について組合が十分にコントロールできていない状況であり、労働者側の知識の蓄積や労使当事者の主体性が重要だと言及した。

 報告を受けて、活発な意見交換がなされた。

 木下宏樹 全信連書記長は、信託銀行業界では個別性の強い業務が多いためAIの活用領域は相対的に少なく、またAI導入が直ちに雇用喪失や処遇低下に繋がるわけではないが、業務効率化と生産性向上を図るため、労使共通の戦略でAIを推進する必要があるのとの認識を示した。

 松田惣佑 生保労連書記長は、生保産業においてAIは事務や営業の支援として活用されているが、今後も女性の雇用を支えつつAIの影響を注意深く見守るべきであるとの見解を示した。

 川岸正徳 全国農団労代表は、人手不足が深刻化しており農協ではデジタル化を打ち出している。新技術に関して高齢層は手を出したがらず、業務が若い世代に集中して負担となっている現状があり、適切な技術導入の必要性を感じていると発言した。

 榎本直人 労済労連中央執行委員は、日本でAI技術の活用方針が労働条件に大きな影響を与えていない要因や背景について質問した。これに対し、日本では解雇が難しい点や日本の賃金制度が挙げられた他、日本のサービス産業ではAIに対応できない細かな業務が多いため、AIの費用対効果が薄いのではないかとの見解が示された。

■グローバル視点から見た金融部門におけるAIの影響
 メンシ担当局長は講演の中で、AI技術は銀行業務の中で高頻度取引や不正の検知、マーケティング最適化などに利用されており、効率性の向上やリスクの低減に貢献している一方で、AI人材の維持確保が課題であり、特に高度なAI専門家の需要が高まっている点などを指摘した。また各職業・職種についてのAIの影響に関するILOの研究を紹介した。

■閉会
 安達正美JP労組書記長が、シンポジウムを通じて議論されたAI技術の進展と労働環境への影響について振り返るとともに、AIが労働環境に大きな変化をもたらすことは不可避であり、労働組合としてその変化に適切に対応する必要があると強調した。続いて、プリヤラル担当部長が2日間のワークショップを総括し、技術をどのように管理し活用していくかが重要な課題であるとし、労働者の権利を守るために組合の果たす役割を再確認した。最後に、ディクリスト担当局長が、日本での経験を持ち帰り今後の活動に活かしていきたいと述べ、シンポジウムを締めくくった。




世界郵便デー:郵便サービスを受ける権利を守ろう

2024年10月9日の世界郵便デーを迎え、UNIはデンマークの郵便労働者と連帯した。デンマーク議会が、すべての人々に安価で利用しやすい定期的な郵便配達を提供するユニバーサル・サービス義務(USO)を議会が撤回したのである。

欧州のUNI加盟の郵便労組が採択した宣言は、ポストノルド・デンマークと政府に対し、郵便労働者の雇用と条件を保護し、スキルアップ・プログラムを実施し、小包市場を規制して賃金・労働条件の引き下げを防ぐよう求めている。今年初めに新たな郵便法が施行されて以来、700人以上の雇用が失われた。

UNIに加盟するデンマークの郵便労組3Fが支持するこの宣言は、「こうした改革は、農村地域や社会的弱者を含め、郵便サービスに頼る人々に非常に大きな影響を与えている」と指摘し、郵便サービスは、デジタル・コミュニケーションに容易にアクセスできない多くの人々にとって生命線であることを強調している。

今回の法改正により、ポストノルド・デンマークによる全国的な書簡配達サービスは、小島、視覚障害者、国際郵便を除いて終了した。新制度の下では、サービス頻度の減少、不平等の拡大、国内書簡配達費用の100%値上げという料金の上昇がもたらされた。

同宣言は、この改革が準独占状態を生み出し、サービスを悪化させ、デンマーク国民に郵便の将来不安を残す危険性があると警告している。

2024年10月8~9日にコペンハーゲンの3F事務所で開催されたUNI欧州郵便・ロジスティクス部会の会議では、11カ国のUNI郵便労組の代表が集まり、デンマークの郵便労働者に連帯し、彼らの経験から学んだ。

世界郵便デーに開催されたこの会合の中で、デゼバド・ラミック3F郵便部門委員長は「我々の最優先事項は、労働力のスキルアップ、再教育の機会の提供、そして解雇の影響を受けた労働者が速やかに再就職できるようにすることであり、誰も取り残されることがあってはならない。金銭的補償はすでに団体協約の一部となっており、多くの労働者はかなり早い段階で新たな仕事を見つけることができた。我々は、こうした取組みを目に見える形にして広く知ってもらうために全力を尽くしている」と述べた。

同氏は、ユニバーサル・サービス義務を放棄する圧力に同じように直面している他国の組合にアドバイスを送り、「デジタル化はこれからも続いていくのであり、社会として我々はこの変化を受け入れている。今、我々が直面している真の課題は、いかにしてこの変化に立ち向かい、適応し、政治的決定に影響を与えるかだ。政治家をこの問題に関与させ、団体協約の重要性を強調することが重要だ。私はスウェーデンの仲間と我々の経験を積極的に共有し、デンマークで起きていることから学び、今後の事態に備えることができるようにしている」と語った。

ラミックは、郵便サービスの公共入札について、良好な労働条件と社会的弱者保護を保証する強力な条項を盛り込むよう求めた。また、会合に出席したデンマーク社会民主党のトーマス・モンベルグ議員も「競争は価格だけで決めるべきではなく、郵便・ロジスティクス産業が良好な雇用と労働条件を提供し続けられるようにしなければならない」と同調した。

ディミトリス・セオドラキスUNI世界郵便・ロジスティクス部会担当局長代行は、「デンマークの郵便サービスにおける変化は、世界中の郵便労働者と人々にとって憂慮すべき先例だ。UNIは、雇用を守り公正な労働条件を確保する闘いにおいて、3F郵便部門とともに断固として立ち向かう。デジタル化は我々の産業を再構築するが、質の高いサービスや良好な労働条件を犠牲にしてはならない。労働者と地域社会が取り残されないようにするためには、強力な団体協約と政治家との有意義な対話が不可欠だ」と締めくくった。


#WDDW24: ディーセント・ワークには平和と民主主義が必要

2024年10月7日は「ディーセント・ワーク世界行動デー」であり、今、世界の労働組合運動は平和と民主主義を求めている。忍び寄る権威主義と拡大する軍事衝突が世界中に暗雲を投げかける中、我々は世界行動デーに臨む。

現在、世界中で 110 件以上の武力紛争が発生している。いずれの紛争においても、働く人々が最前線に立たされ、地域社会は荒廃し、暮らしと生計、権利が奪われている。

クリスティ・ホフマンUNI書記長は「平和はディーセント・ワークの基本だ。そして、我々がフィラデルフィアでの世界大会で決定したように、普遍的かつ永続的な平和は、共通の安全保障と社会正義、搾取のない世界があり、全ての人がまっとうな生活水準を得てこそ、確立することができる」と述べた。

この1年間、UNIはミャンマー、ウクライナ、ガザで進行中の紛争において、労働者と民主主義を守る人々の支援に重点を置いてきた。

ミャンマーでは2021年のクーデター以来、軍事独裁政権が労働者とその家族を暴力的に弾圧し、基本的権利を剥奪してきた。労働組合運動は、国民統一政府の承認に始まる民主化を求めるミャンマーの人々と連帯を築き、政権を政治的・経済的に孤立させてきた。

ウクライナについては、世界の労働組合運動が、平和とウクライナの主権回復、そして労働者の権利が十分に尊重される中で復興が行われることを求め続けている。戦時中にウクライナ政府が労働組合の権利を制限したことで、深刻な懸念が生じている。 

ホフマンUNI書記長は「2024年5月に、ウクライナの人々に対する世界の労働運動の支持を示すため、国際連帯ミッションの一環としてキエフを訪れた。キエフは戦闘の最前線から遠く離れているにもかかわらず、日々爆撃の脅威があり、愛する人を失い、基本的なインフラが破壊されていた。その中でも人々の勇敢な行為を目の当たりにした。我々は彼らとともに今、平和を要求する。そして国の復興に向けた人々の歩みに、寄り添い続けていく」と語った。

中東の危機は日に日に深刻化し、世界中の労働組合が即時停戦、正当な法的手続きなしに拘束された全ての人質の解放、紛争に巻き込まれたすべての労働者の安全な帰還、人道支援の拡大、2国家による恒久的な解決を要求している。

ここ数週間で、UNIと他9つのグローバル・ユニオンも、 紛争のためにイスラエルで働けなくなったパレスチナ人労働者を支援するため、ILOに提訴し、賃金損失を回復するための行動を起こした。 

ホフマン書記長は「2024年初め、ラマラでUNI加盟組織と会談し、ガザの耐え難い状況に加え、ますます激しさを増す占領と減少する公的資源の下で彼らが直面している状況を聞いた。現地の加盟組織は、グローバルな労働運動は連帯によって変化を生み出すことができると強調した。(…中略…)これまで以上に手が届きにくくなっているが、安全なイスラエルと並んで、主権を持つパレスチナにつながる停戦を求めて、我々は声を上げ続けなければならない(…中略…)9月下旬にレバノンで生じた出来事は、この呼びかけがなぜ一層必要なのかを示している。この紛争がこれ以上拡大すれば、何百万もの人々に壊滅的な打撃を与えかねない.紛争がこれ以上エスカレートしないようにする措置が必要」と語気を強める。

ガザであれ、ウクライナであれ、ミャンマーであれ、その他の武力紛争地域であれ、労働組合運動はこの日を利用し、この無分別な暴力の終結を要求するために声を一つにして発信している。

ルーク・トライアングルITUC書記長は、「政府は外交による紛争解決に失敗しているが、労働者と労働組合は平和的交渉を続けている。永続的な平和と安定のために必要な条件を作り出そうとするならば、労働者が和平・復興プロセスに参加することが必要」と述べた。


UNIとジオポスト、グローバル枠組み協定を強化・拡大

UNIとジオポストは、2017年に締結したグローバル枠組み協定の画期的な補遺に調印し、ジオポストの人権責任を下請企業を含む業務内のより多くの労働者に拡大した。特筆すべきは、この新たな補遺には、下請を一次下請けに限定するという文言が含まれており、この分野における責任あるアウトソーシングの新たな基準を設定している点である。


*写真左から: ジェローム・モランCFDT-F3C書記長、クリスティーヌ・シモンFO-COM郵便部門責任者、イヴ・デルマ・ジオポストCEO、クリスティ・ホフマンUNI書記長、ロマン・ボワヨンCGT-FAPT全国書記

クリスティ・ホフマンUNI書記長は、「ジオポストは近年、真にグローバルな企業に成長した。UNIはこの成長に伴ういくつかの課題に対応するため、2017年に締結した協定を拡大することを歓迎する。この補遺によって、我々はグローバル協定の約束が下請け業者を通じた多くの労働者にも適用されることを明確にする。ジオポストとの交渉によって、すべての労働者の結社の自由と団体交渉の基本的権利にしっかりと焦点を当てながら、同社の事業全体を通じて人権を推進するという我々の共通目標をさらに前進させることができた」とコメントした。

イヴ・デルマスCEOジオポストは、「この協定の締結により、我々は、『Employer of Choice』および『Partner of Choice』プログラムを通じ、持続可能なデリバリーの国際的基準を打ち立てるという戦略的野心を再確認する。我々は、従業員とパートナーが最大の資産であり、最高の大使であると信じており、当社のポジショニングと戦略的差別化の中心にある継続的な社会進歩にコミットしていく。今回の初となる補遺は、継続的な改善への意欲を促進し、従業員、パートナー、顧客のために持続可能な行動を推進するものである」と語った。

UNIとジオポストが2017年に締結した先駆的な協定が基盤に
ジオポストとUNIは、労働者の人権を尊重する下請業者の義務を明確に定める2017年のグローバル協定の補遺に署名した。

50カ国のジオポスト労働者を対象とする2017年のグローバル枠組み協定は、結社の自由や団体交渉の権利、尊厳ある労働条件、透明性、持続可能性など、労働者の権利に関する世界基準を定めている。

画期的な追加事項として、この補遺は郵便・ロジスティクス部門で初めて、下請企業を一次下請のみに限定した。これは、配送を下請け業者(パートナーとも呼ばれる)に大きく依存する業界において特に重要である。また、ジオポストのデュー・ディリジェンス義務遵守に労働組合が強力に関与することで、フランス法の要件を超えた先例となる。

調印式は2024年7月22日にパリで行われ、クリスティ・ホフマンUNI書記長とイブ・デルマ・ジオポストCEOが出席した。また、UNIの郵便・ロジスティクス部会のフランス加盟組織(CGT-FAPT、CFDT-F3C、FO-COM)とそれぞれの労働組合役員も出席し、署名した。

新しい協定は、ジオポスト従業員、労働組合、パートナーに対する社会的コミットメントの重要な段階を示すものである。協定は、ジオポスト経営陣と UNIおよび加盟組織との建設的な対話と緊密な協力によって実現したものであり、ジオポストの注意義務の遵守が利害関係者の期待に応えられるようにするための明確な目標と具体的な行動を定めている。

この補遺は、ジオポストの持続可能な発展と業績に貢献することを具体的な意図として、ジオポストとそのパートナー、労働組合、労働者間の労使関係を改善するための基盤を確立することを目的としている。

実施
このコミットメント実施の一環として、UNIはジオポストのパートナーにおける労働組合と現地管理職を対象に、協定の企業レベルでの適用方法を訓練する試験的スキームを立ち上げる予定である。

さらに、自営業者や下請企業で働く労働者を含むジオポストに関わる全労働者は、労働組合と協議して構築される新たな独立した苦情処理メカニズムを利用できるようになる。

新しい協定の下で、ジオポストは企業文化に注意義務の原則を統合し、UNIおよび加盟組織と積極的に協力し、ジオポストの活動によるあらゆる悪影響の防止・特定・是正に努める。この点で、ジオポストは、従業員やパートナーに注意義務について教育し、認識を高めるためのツールやリソースを引き続き導入していく。

同時に、ジオポストはUNIの支援を受けて、状況を評価し、継続的な改善を行うための厳格なモニタリングのメカニズムを確立する。


uni logo
最近のコメント
    アーカイブ