
日本政府は、2026年10月に施行予定の新法を支援するため、使用者が顧客によるハラスメント(カスハラ)を防止・対応するための指針を発表した。この法律は、UNI加盟組織であり、日本で最大の小売・サービス業の労働組合であるUAゼンセンが主導し、10年近くにわたる粘り強い運動の末に成立したものである。
法律を実践へ
2026年2月に発表されたこの指針は、法的義務を具体的な対策へと落とし込んだものである。これに基づき、使用者には以下が求められる:
- カスハラ防止方針の従業員や顧客への明確な周知
- 苦情や問い合わせ窓口の設置、適切に対応できる体制の整備
- 事案について迅速かつ適切な対応
- 社会的に許容される規範を超えた行動の特定と対処
重要な点として、この措置では「許容できない顧客の行動」とは具体的にどのようなものかを例示しており、使用者と労働者の双方に明確な指針を提供している。
マタイアス・ボルトンUNI世界商業部会担当局長は、「UAゼンセンは、不断の取組みと継続的な提言活動を通じて達成できることを示してきた。長年にわたり根拠を積み上げ、労働者の実体験を可視化し、政府が行動せざるを得なくなるまで圧力をかけ続けた」と称賛し、「現場の第一線で働く小売業の労働者にとって、この成果は確かなもの。ハラスメントは決して仕事の一部ではないということ、そして使用者と政府には労働者を保護する責任があるという明確なメッセージを発している」と述べた。
「お客様は神様」から労働者保護へ
この新しい指針は、日本の職場文化における大きな転換の末に策定された。何十年もの間、「お客様は神様」という深く根付いた考え方が、労働者を理不尽な苦情、虐待、さらには暴力(一般にカスハラと呼ばれるもの)―にさらし続けてきた。
UAゼンセンは2017年に悪質クレーム対策運動を通じて、こうした職場文化への異議申し立てを開始し、小売業の労働者が直面するあらゆる形態の暴力やハラスメントに対処するよう、その活動を着実に拡大させてきた。労働組合の取組みとして始まったこの活動は、まもなく全国的な運動へと発展した。
初期の政治的機運
このキャンペーンは、政界でもすぐに支持を集めた。2018年、UAゼンセン政治顧問を務める田村まみ参議院議員は、カスタマーハラスメントに対する保護を強化するよう国会に働きかけた。この提言は重要な成果をもたらした。すなわち、「カスタマーハラスメントに対する企業の対策の推進」が、「70年ぶりの労働改革」とも称される「働き方改革関連法案」の付帯決議に盛り込まれたのである。
パンデミックによる圧力が行動を加速
新型コロナウイルスのパンデミックは、この問題を浮き彫りにし、さらに深刻化させた。顧客からの圧力が高まる中、現場の労働者に対する暴力やハラスメントの報告が急増した。
これを受けてUAゼンセンは2020年12月、80名以上の国会議員を含む200名以上の参加者を集める集会を開催した。このイベントは決定的な転機となり、厚生労働省はカスタマーハラスメント対策への資金拠出を約束し、2021年に1,700万円の予算を計上したほか、ガイドライン策定、研修、啓発活動のためにさらに3,000万円を割り当てた。
枠組みの構築:指針と地方条例

2022年までに厚生労働省は、カスタマーハラスメントを定義し、その実態を概説するとともに、企業に向けた8つの主要な対策を推奨する初の全国的な指針を発表した。これらは地方自治体の取り組みによって補完された。
秋田県は、多様性に満ちた社会づくり基本条例において顧客によるハラスメントを差別の一形態として認定することで、いち早く主導的な役割を果たした。だが新たな基準を打ち立てたのは東京都である。2025年4月、「カスタマーハラスメント防止条例」が施行された。これは同種の法令としては初の試みである。同条例は、行政、使用者、労働者、顧客それぞれの責任を明確に定義し、企業に対して具体的な予防措置を講じることを義務付けた。この東京都条例は波及効果をもたらし、北海道や群馬県など他の地域でも同様の規則が導入された。
そしてついに法律が制定

2025年4月に国民民主党は、立憲民主党と連携し、カスタマーハラスメント対策法案を参議院に提出した。この動きは2025年6月、国会が労働施策総合推進法の改正案を可決したことで頂点に達し、同法は2026年10月に施行されることとなった。カスタマーハラスメントは、初めて「社会的に許容される限度を超える」行為として、国の法律で正式に定義されたのである。同法は、以下の通りそれぞれに明確な責任を定めた:
- 政府は啓発活動を主導し、実施にむけた指針を策定しなければならない
- 使用者はハラスメントを防止し、研修を実施し、苦情処理体制を整備することが求められる
- 労働者は職場全体で敬意ある行動を促進しなければならない
- 顧客は責任ある行動をとり、労働者の就業環境を損なわないよう、必要な配慮をすることが期待される
UAゼンセン:キャンペーンから変革へ
継続的な提言活動による意識啓発や世論形成から、立法や政策設計への影響力行使に至るまで、この変革のあらゆる段階において中心的な役割を果たしてきたUAゼンセンは、新法とガイドラインを歓迎しつつも、その実施が鍵となると強調しており、以下を求めている:
- 企業別労組と使用者間の対話の強化
- 指針の継続的な改善
- 労働当局による監督の強化
- 警察などの機関との連携
- 顧客を対象とした啓発キャンペーンの拡大
小売業労働者にとっての新時代
日本における「カスハラ」への取り組みは、今や新たな段階に入っている。国レベルの法整備、詳細な指針、そして地方レベルでの執行体制の強化により、日本は顧客による暴力やハラスメントに対処するための、世界でも最も包括的な枠組みの一つを構築しつつある。




