米国FedEx組織化の取り組み

「変化」を掲げてオバマ大統領が就任し、ほぼ1ヶ月が経過した。日本では、「期待は大きいが、そんなに大きな変化は出来ないだろう」との冷めた見方がしばしば聞こえた。だがオバマ大統領は、本当に変化をもたらしそうだ。その例が、「勤労者自由選択法案」である。以前このコラムでも取り上げたが、米国の労組結成手続きは極めて厳しい。まず労働者過半数の署名を集め、連邦労働関係局(NLRB)に持っていく。NLRBは、労働組合結成のため対象職場で選挙を実施し、過半数を超える労働者が賛成すれば、ようやく組合を結成することが出来る。問題は、経営側が組合結成の動きを察知してから選挙日までの間、猛烈な切り崩し工作を行うことである。組合結成の呼びかけ人ばかりか、従業員全体が脅しを受ける。少々の飴を与えられる。この切り崩しを専門とする職業まである。このためNLRB管理下の選挙で過半数を取ることは至難の業であり、事実多くの場合失敗してきた。「勤労者自由選択法案」はこの手続きを簡素化し、過半数を超える労働者の署名を集めれば、組合を結成できるとする。当然法案に対する経営側の抵抗は激しく、ブッシュ政権下では成立の望みは無かった。しかしオバマ大統領は、勤労者自由選択法案採択の運動を強く支持し、労働組合から高い評価を受けてきたヒルダ・ソリス下院議員を労働長官に任命した。彼女自身がヒスパニック系であり、移民労働者の地位向上、「清掃員に正義を」運動(UNIも協力したビル管理部門組織化)に強くコミットしてきた人物である。そして今この法案が下院で再審議されようとしている。
もう一つの試みが、急送便企業FedExを「鉄道労働法」の対象から外す動きである。FedExには組合が存在しないが、その原因の一つは同社が航空会社の区分で登録されているため、「鉄道労働法」の対象となり、組織化が困難になっていることである。鉄道労働法は、前述したNLRBによる組合組織化よりさらに厳しく、例えば対象職場は全国でなければならず、個々の職場の組織化が出来ないなどの規定がある。FedExは、ドライバーを独立自営業者として登録させること、この鉄道労働法により、巧妙に労働組合組織化を逃れてきた。FedExは急送便事業者として、米国ではUPSとの競合関係にあるが、UPSは鉄道労働法の対象ではなく、FedExだけが同法の対象となっていることには、競争政策上も批判が多かった。2007年にもこの問題が議会で取り上げられ、下院は通過したが、上院の投票の前に流れてしまった。正確には、FedExが持つ「特権」を含む連邦航空局再認可法を2年間延長することとしたのである。この延長は今年の3月末に期限切れとなる。下院運輸・インフラ委員会委員長のオベルスター議員(民主党)は、FedExの「特権」撤廃に積極的である。金融アナリストは、「もしFedExが鉄道労働法の適用外となるなら、組織化される可能性はきわめて大きくなるであろう」と語っている。FedEx側は、「急送便ビジネスは、統合的な輸送システムとして、混乱要因を出来る限り少なくするよう定める鉄道労働法の適用下にあることが適切である。上訴裁判所でもこの主張は認められている。」「部分的な労働争議といえども、航空と地上の急送便ネットワークは崩れる可能性があり、米国の経済にも悪影響を及ぼす」と反論している。創業者でありCEOのフレデリック・スミス氏は、「FedExは創業以来鉄道労働法上の事業者である。このことは企業存立の基本的な要因の一つだ。今回の修正が日の目を見ないことを心から望んでいる。」と語っている。
過去FedExの組織化の試みはことごとく失敗してきた。今回の法案が通れば、FedEx組織の画期的な突破口となることは確実である。


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