世界的な金融危機に立ち向かう労働組合の共同戦略-UNI-Apro金融部会 ジャヤスリ・プリヤラル担当部長に聞く

グローバルな金融・経済危機は、金融部門にどのような影響を与えていますか?
国際金融市場の崩壊によって、今や主要国経済は不況に陥っています。危機に対処しようと各国政府はバラバラで相反する行動をとっています。過去、保護主義を打破する自由市場理論を擁護した国は、逆に自国の利益を保護する動きをとっています。多くの人にグローバルエコノミーは存在すると思われていたものが、実は単にグローバル市場に過ぎなかったのです。グローバル化のプロセスを推進してきた規制緩和や自由化の動きは、急に止まってしまいました。労働組合はこれまでずっと、企業の押し進める非情な競争、倫理に反する利潤極大化に大いに懸念を抱いてきました。工業化の時代から始まり現在の「金融化」に至るまで、危機の際に最も打撃を受けたのは労働者です。それでも労働組合は、社会における変化の悪影響を軽減する勢力として生き残ってきました。21世紀になってもその事実は変わりません。投資を惹きつける目的の新しい金融商品は、リスクの高いデリバティブでした。プロモーターも投資家も有毒な金融デリバティブ商品に潜むリスクがどれほどかを理解していませんでした。これが、現在の混乱の原因のひとつと言えます。
銀行に加え規制当局の側のモラルハザードについても、UNIは非常に懸念しています。投資家の信頼を損なうことは、ビジネスに大きな影響を及ぼすだけでなく、北米及び欧州の金融産業に携わる従業員の雇用を危険に晒すことになり兼ねません。UNI金融部会は既に、国際金融市場における同様の不正取引を防止し二度とこうした大惨事を繰り返さないよう、有効な規制システムの導入を関係当局に働きかける取組みを実行しています。多くの商業銀行には国際的なガイドラインに基づくリスク測定システムがあるようですが、リスク管理と破綻回避の有効なシステムや手続きはないように思われます。

2008年の成果、および2009年の課題をお聞かせください。
UNI金融部会は、銀行、保険、金融機関の従業員を代表する組合を関わらせ、ボトムアップの規制システム導入に尽力する先駆者です。我々は、企業の長期的持続性を犠牲にして、ただ株価をつり上げるため短期的利益を追求する「プロフィット・エンジニアリング」はやめるべきだと主張しています。従業員全員の利益を代表する組合として経営側と協力し、顧客に最大限の利益を確保すると共に、銀行の持続的成長を透明性あるやり方で管理監督するよう、規制当局に働きかけていくべきです。
このような危機に直面し、労働組合は現場の組合員のために考え、グローバルに行動する必要があります。UNIは金融産業の持続的発展に好ましくない傾向を反転させるべく、グローバルに行動するための基盤です。金融の安定は公益であり、市場の力に任せておくことはできません。日本を含めアジア太平洋地域のUNI加盟組合は、今こそ手を携えて影響力ある役割を果たしていかなければなりません。
2008年8月に、UNI-Apro金融部会委員会が東京で開催され、石川議長(損保労連委員長)が議長を務めました。金融部会委員会は毎年会合を行い、地域の活動を計画・実施しています。委員会では、日本も含め、アジア太平洋地域各国における金融危機のインパクトについて情報を共有しました。2009年の優先課題は、インド、インドネシア、フィリピンにおける組織化です。昨年8月の時点では、アジア太平洋地域の銀行にとって、それ以前の金融危機ほどの甚大な影響はなかったようですが、市場の統合が加速する中、新たな問題が起こりつつあります。従って、UNI-Apro金融部会としては、金融産業の労働組合が油断することなく状況を監視し続けると共に、各国の規制当局に対し、金融産業において顧客及び社会に責任ある安定した金融サービスを提供するため、「監視と透明性を求めるボトムアップ・アプローチ」というUNIの呼びかけを支持するよう働きかけるべく、対話を始める必要性を繰り返し主張してきました。
日本では、ゆうちょ、労働金庫、共同組合、都市銀行、信託銀行など、貯金から投資まで様々な金融機関が存在していることに感銘を受けました。日本社会に、貯蓄と倹約という豊かな伝統があるためでしょう。金融産業における多様性は適切な監視と有効な規制をもって継続されるべきです。そのために金融労組は、良き倫理的慣行を促進するために積極的な役割を果たすことができます。一方で、何万人という市民の年金記録に関する事故が発生したことにも驚かされました。このような事故を防ぐには、労働組合が『内部告発者』としての役割を果たす必要もあるでしょう。

日本の金融部会加盟組合へメッセージをお願いします。
世界300万人の金融労働者を代表するUNI金融部会は、日本の加盟組合の皆さんと協力し、労働組合の監視の下、責任あるビジネス慣行に関する憲章を促進していきたいと思っています。
本年7月25~27日にはジャカルタで、第3回UNI-Apro金融部会大会が開催されるので、日本からも多くの皆さんの参加をお待ちしています。大会では、現下の金融危機への労働組合の対応を議論し、互いの経験を学ぶことが期待されます。そして、我々の課題を克服し、金融産業を強化するための共同戦略を立てたいと思います。今年もご支援ご協力よろしくお願いいたします。

ジャヤスリ・プリヤラル―スリランカ出身。コロンボのインド銀行に25年間勤務し、国際貿易ビジネス及び財務等を担当。1984年よりセイロン銀行労組(CBEU)の執行委員、副委員長を歴任。国際労働運動との関わりは1990年、APRO-FIETで青年コーディネータを務めたのがきっかけ。2006年より、UNI-Apro金融部会及びUNI-Apro専門職・監督職(P&MS)委員会担当部長。


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