UNI-LCJ記念講演「ニューノーマル時代の労働運動」

2022年2月15日、UNI-LCJは、第23回UNI-LCJ年次総会及び記念講演を開催した。(第23回UNI-LCJ年次総会の記事は、こちらをクリック
「ニューノーマル時代の労働運動:ビジネスと人権、リモートワークとつながらない権利、デジタル化の影響、労働安全衛生、民主主義の危機への対応等」と題し、クリスティ・ホフマンUNI書記長及びラジェンドラ・アチャリャUNI Apro地域書記長から、ポストコロナを見据えたこれからの労働運動とデジタル化等の技術革新によって今後起こりうる課題などについて講演を受けた。

クリスティ・ホフマンUNI書記長(オンライン)

Q:2022年の世界の動向とサービス産業労働者の主な課題について

ホフマンUNI書記長
私たちはこの2年間で、重い代償を払ったことを認識しなければならない。2019年以降、600万人近くの方が亡くなり、1億5000万人以上の雇用が失われ、更に貧困層は1億6000万人に上っている。一方、かつてないほどの多くの億万長者が生まれている。またコロナ禍からの回復においては、先進国と貧困国との格差・不平等がこれまで以上に拡大した。事実、OECD加盟国の経済は強固な回復を遂げている。しかし強固に回復する中でも、デジタル技術は、ほとんど全ての分野で働き方を変えた。ある場合には雇用の喪失を引き起こし、またある場合には新しい形態の仕事を支え、変革を促している。Eコマース、プラットフォーム、デジタル化によるリストラと外部委託などが課題となっている。

私たちが経験しているこのような変化は、UNIにとっても、あらゆる地域の組合にとっても、課題であり機会でもある。この変革によって創出された新しい雇用は、環境に配慮した良い雇用であり、組合が将来を形作るための雇用でなくてはならないと考える。

Q: 2022年のUNI活動の主な課題と計画、日本の加盟組織への期待について

ホフマンUNI書記長
2022年の主な課題について、現在4つの重要課題を考えている。1) グローバル企業との協働、2)世界各地の組織化を支援し、雇用の状況が変化する中で新しい労働者の組合加入を促進、3)リモートワーク、テクノロジーの影響、安全衛生、人権デューデリジェンスの重要課題に関し、継続した政策と取組みを展開、4)「Rising Together~共に立ち上がろう!」をテーマとしたUNI世界大会(2023年8月、米国フィラデルフィア)の開催準備である。

日本の加盟組織の皆さんは、パンデミック下においても、時差をいとわず様々なUNIの活動に多く参加していただいている。今後もUNI活動に積極的に参画いただきたいし、次回世界大会においても、日本の代表団は重要な役割を担ってもらえることと期待している。

Q:ビジネスと人権におけるUNIの活動について(OECDガイドラインの見直しへの積極的な関与、労働者の権利保護と組合の重要性に関する投資家への啓蒙活動、新しい国際協定の合意の成功など)

ホフマンUNI書記長
企業の責任を問う人権デューデリジェンスの義務化
私たちは、労働者の団結権や交渉権を含む人権に関する義務について、企業に説明責任を持たせるツールの強化と拡大に取組んでいる。労働者は、自らの権利を守るために強制力のあるルールを適用されるべきであり、UNIは目的に適したグローバルなルールを構築するために闘っている。またUNIは、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に沿って労働者の結社の自由と団体交渉の基本的権利を実現しようとするグローバルな動きをリードしている。この原則を守るということは、その企業が労働者の人権を侵害していないことを知り、それを示す責任があることを意味している。更に私たちは、人権デューデリジェンスの法制化による義務化を強く支持している。こうした法律の対象となる企業は、世界中のどこでも、事業運営に対して責任を負うということになる。同時に法律がない場所においても、団体協約に盛り込むことで組合は、意味ある役割を果たすことができるため、人権デューデリジェンスを労働協約に設けるよう使用者と交渉を続けている。
■OECDガイドラインの強化
私たちはOECD多国籍企業行動指針の強化を支持しており、デューデリジェンス、団結権及び職場の労働安全衛生に関する指針に基づき、複数の訴訟を成功裏に導いてきた。
■新しい国際アコード
バングラデシュアコードは、今回の再交渉によって、バングラディシュ以外に新たな1か国が加わり、現在は国際協定と呼ばれることとなった。この協定により、バングラディシュにおいては、200万人の労働者が、安全な工場で雇用されることとなった。最終的には、グローバルなルールには強制力と拘束力を持たなければならない。UNIは、今回IndustriALLと共に、「国際労働仲裁和解調停のルール」と呼ばれる、国際労働訴訟のための新しい仲裁制度を策定した。
■資本戦略
UNIは、投資家と定期的に話し合い、投資家が所有する企業の人権問題に取組んでいます。アマゾンによる組合潰し、ミャンマー軍と密接な関係を持つ企業への投資、介護施設に関する共同声明など、投資家はあらゆる場所の労働者に対しても責任があるとして、この分野でも力を発揮している。

Q:企業のデューデリジェンスを確実に行うための強力なツール、グローバル枠組み協定(GFA)の成功例について

ホフマンUNI書記長
この2年間、対面の会議を持つことができなかったため、新たなグローバル枠組み協定(GFA)の締結には至っていない。新しい関係を築き交渉するためには、企業と直接会うことが非常に重要であると考えている。しかしGFAは、コロナ禍の影響に関する交渉を行う上で非常に重要なものと考えている。現在、テレフォニカ社とリモートワークの協定(リモートワークに適用される世界的なルールや条件)について交渉を行っている。また、商業部門7社と労働安全衛生についての検証についても交渉を行ったが、これらはほとんど、既にGFAを締結している企業である。また同様に協定を締結しているDHLやソシエテ・ジェネラルなど、デューデリジェンス計画についてや国際レベル並びに自国内及び世界中の拠点における組合の役割などについて交渉を行っている。

Q:「新しい仕事の世界」の分野で、労働者の権利を守るためのUNIが行っている取組みについて

ホフマンUNI書記長
リモートワークや監視、アルゴリズム管理などによる危機感の高まりが目立っており、コロナ禍において更に加速化している。組合として、UNIとして、これらの問題に取組まなければならない。
リモートワークは、多くの人がもっと増やしても良いと望んでいるが、労働時間の延長、労働者の組織化方法、使用機材の費用負担、組合が接触する機会をどうするのかといった問題があり、無視することはできない。また、現在毎週のように労働者を監視する新しいシステムが導入されており、プライバシーの侵害、不当な目標を課せられるという問題も出てきている。リモートワークは、経営者にとって単なる大きなコスト削減でなり、労働者を保護するものにならない恐れがあることを認識しなければならない。
昨年、金融部会とICTS部会は「リモートワークに関する10原則」を発表した。このテーマについて使用者と交渉する際には、この原則を参照していただきたい。今後は、団体協約の雛形となるような文書を発信する予定である。
またデジタル化による影響についても同様である。新たな監視やアルコリズム管理が急増していることも、将来、重要な問題となってくる。そして、私たちはこれに対してもガイドラインを公開しており、今後、UNI全体から好事例を集めて、皆さんと共有していきたいと考えている。私たちは交渉と規制を通じて、この新しい現実を再構築することができると考えている。

Q:労働安全衛生を基本的権利とするためのグローバルキャンペーンについて

ホフマンUNI書記長
コロナ禍においても全ての労働者に安全な職場が与えられるべきだが、多くの政府は、この労働者にとって最も重要なことができていないことが明らかになった。2019年、ILOは100周年宣言において、労働安全衛生を労働者の「基本的権利」にすることを求め、世界中の労働者に影響力を発揮することができた。昨年、グローバルユニオンがキャンペーンを展開した結果、ILO理事会は今年6月の国際労働会議での決定を見据えた計画を採択した。これが採択されることを確信しているが、各国政府を味方に付け、使用者側に反論や遅延戦術をさせないように圧力をかける取組みを行っていく。

サービス労働者にとって安全衛生は重要であり、組織化の課題としてUNIの各部会でも取組む必要がある。例えば、店舗での暴力に反対する商業部会のキャンペーンなどは、世界中で取組まれ、大きな成功を収めた。アフリカや米国のいくつかの地域では、療養時の有給休暇取得を求めるキャンペーンを実施している。
労働安全衛生委員会の重要な役割も認識すべきである。この委員会は、安全な職場づくりの中心的な機能として認識されているが、これまでサービス産業は一般的に安全だと考えられていたため、UNIの多くの部門では優先事項になっていなかった。しかしコロナ禍によって、労働安全衛生は、組合が職場で課題に取組み、組合の役割と可視性を確立できる重要なツールとなった。
この先には大きな課題があり、同時に私たちが望む未来を再構築する機会でもある。私たちの連帯とグローバル・コミュニティは、声を一つにして発言する能力を強化し、孤立した労働組合よりも大きな影響を与えることを可能にした。私たちが今直面している課題は、より公平で安全な世界を目指す闘いに新たな活力を与えてくれたと確信している。私たちは、以前よりも強く、共に立ち上がることができる。

ラジェンドラ・アチャリャUNI Apro地域書記長(オンライン)

Q:2021年のUNI Aproの活動について

アチャリャUNI Apro地域書記長
■6部会大会で次の4年間の部会別優先課題を承認/各組織とのパートナーシップの強化
2021年、UNI Aproは、8月のメディア部会大会から11月の金融部会大会まで、6つの部会大会を開催した。各部会大会において今後4年間の優先課題が承認された。組織化、組合の成長と強化、パートナーシップ労使関係の普及に取組み、政府間機関や地域組織、例えば、APPU(アジア太平洋郵便連合)、ABU(アジア太平洋放送連合)、ASETUC(ASEANサービス労働組合協議会)、AICHR(ASEAN政府間人権委員会)などと密接な協力体制が構築されている。パートナーシップを改めて強めていくことが決められた。
■組織化と組合強化
組織化と組合強化については、金融部会、郵便・ロジスティクス部会、印刷・パッケージング部会、ケア部会、ICTS部会、ビル管理などに新しい組合が加盟している。また地域およびグローバル企業(アクシアタやエリクソン等)の組合の強化を行った。また、デジタル組織化に関する取組みとして、ウェビナーを開催し、約300人が参加した。
■調査研究の実施/機会均等キャンペーン/ILO第190号条約
調査や研究に関し、商業・小売におけるデジタル化の調査研究、IFI(国際金融機関)が投資しているプロジェクトにおける中核的労働基準の実施状況や、インドを中心とした南アジアにおける労働形態の変化の調査を実施した。
11月25日(女性に対する暴力撤廃の国際デー)から16日間のILO190号条約(暴力とハラスメント)批准キャンペーンを実施した。今年は、女性と青年に向けのメンタリングプログラムを構築する予定である。

Q:アジア太平洋地域の動向と課題について

アチャリャUNI Apro地域書記長
■デジタル化-自動化
デジタル化の影響について調査したところ、アジア太平洋地域では、デジタル化、自動化の加速度が高く、経済のあらゆる分野に影響を与えていることがわかった。私たちはデジタル化を受け入れる必要があり、進化のペースが非常に速いため、政府や使用者と話し合い、スキリング(スキル取得)とリスキリング(再訓練)に力を注ぐ必要がある。
■インフォーマル経済
アジア太平洋地域において、各国約65%近くはインフォーマル経済である。ASEAN諸国、ほとんどは南アジアだが、インフォーマル経済の割合は70~80%である。私たちは正規雇用をするための戦略を立ててきたが、労働形態の変化やコロナ禍の影響でインフォーマル化が進んでおり、組織化が難しく、不安定な雇用と非正規労働が増えている。
■民主主義と労働組合のための空間が減少
民主主義と労働組合活動が日々縮小されてきており、独裁的な行動をとる政府が増えている。特にミャンマー、フィリピン、カンボジアなどがあげられる。南アジアでは、政府や使用者が労働組合がこれらの協議をすることを認めておらず、むしろエスカレートしている。
■気候変動、気候危機とその影響
気候変動に関して、人類、企業、仕事への影響は甚大である。残念ながらいくつかの労働組合では、この問題は優先課題として取り上げられていなかったが、UNIはこの課題に着手し始めている。
■人口動態の課題
LCJの講演であるので、人口動態の課題にも触れたい。日本以外でも東南アジア、東アジアは、かなり前から少子高齢化の問題に取組んできた。しかしネパールであっても最近の国政調査では、人口増加率が1%未満(0.93%)であることに驚かされた。この傾向が続けば、影響は甚大になる。労働力についてどのように管理していくのか、全て自動化で進めるのか、大きな課題である。

Q:デジタル組織化の推進について

アチャリャUNI Apro地域書記長
■ソーシャルメディアの活用
既に多くの労働組合が、組織化にSNSを活用している。オーストラリアやニュージーランドでは、かなり前からオンラインのオルグを実施している。シンガポールでは、プラットフォームを使用して組合員の管理と拡大に活用している。デジタル化は、組合員の拡大や管理を推進する重要な要因として機能してきた。ポストコロナの戦略の1つとして残り続けていくだろう。
■デジタル化の推進
労働組合は様々なキャンペーンで組合員を動員し、勧誘や加入のためにデジタルプラットフォームを利用してきた。しかし、単に組織化のために利用しているわけではない。UNIには、テレパフォーマンス社(フィリピン)の搾取行為問題等が報告されたが、いくつかの事案は、OECDに提訴している。
■UNI/UNI Aproのウェビナーとデジタル組織化研修
オンラインでの組織化は容易ではなく、やはり直接対面で話し合うことがより有効である。これからもハイブリッド(オンラインと対面の併用)が上手く活用されることになるだろう。

Q:民主主義と人権の問題について

アチャリャUNI Apro地域書記長
■ミャンマー
軍事クーデターから1年以上経過し、軍が支配権を握って以来、100人以上の子供を含む約1,500人が殺害された。多くの政治家や労働組合関係者、1万2千人近くが逮捕され、数十人の民主主義活動家が死刑を宣告されている。
UNIは、ミャンマー軍事政権に関連した投資を行っている多国籍銀行に対し、同国に保有する株式を手放すように要求している。UNI AproはUNIと共に、世界中の労働組合にミャンマーの民主主義闘争を支援する役割を果たすよう呼び掛けている。
昨年9月のUNI Apro ICTS部会大会では、ミャンマー情勢に関するセッションを設けた。UNI金融部会でもウェビナーを開催し、銀行に圧力をかけるための支援を行った。UNI Aproは、ASETUC(ASEAN労働組合協議会)と共に、NUG(国民統一政府)とミャンマー労働同盟を招いて多者間の社会対話を実施し、多くの加盟組織がストライキ基金を支援、CTUM(ミャンマー労働組合総連盟)を支援した。残念ながら、軍事政権が考えを変える兆候は見られないが、私たちはプレッシャーをかけ続けていかねばならない。
■香港
香港は、国際連帯や支援が政府には、国際的共謀と解釈されることから、深刻な問題となっている。香港国家安全維持法は、民主化運動組織に対して適用されており、HKCTU(香港労働組合連盟)をはじめとする様々組織が解散している。このような状況下においても、まだ存続し機能している組織に対して、私たちは支援を続けていく。
■フィリピン
フィリピンにおける超法規的殺害、反テロ法、メディアの封殺、放送センターの閉鎖、表現の自由、集会の自由、結社の自由への脅威は、ドゥテルテ政権によって課されている。今年5月に大統領選挙が予定されており、状況が良くなることが期待されている。2019年にILOハイレベル三者構成ミッションが開始されたが、コロナ禍のため、物理的評価は行われていない。昨年はオンラインでの討論は行われたので、今年も取組みが続くことを望んでいる。

Q:2022年、UNI Aproが取り組む重点課題について

アチャリャUNI Apro地域書記長
■組合の組織化と強化
今般、東南・南アジア組織化センターというアイデアを採用した。デジタル組織化は1つの方法であり、組織化できていない分野を開拓してきたい。コロナ禍に対応できるように、既存の組合を維持すること、悪影響を防ぐこと、同時に、多くの産業部門で新しい組合をつくるイニシアチブが開始されている。先日のUNIスタッフ会議で、各地域組織や部会での計画をまとめ、「組織化」と「組合の拡大」が重点事項であることを確認した。介護、清掃、商業、コンタクトセンター、宅急便、配達などのエッセンシャルサービスの組織化もその1つである。

■パートナーとの連携強化
デジタル化の悪影響の中で、スキリング(スキル取得)とリスキリング(再訓練)が非常に重要である。同様に、資金政策を含む様々な労働政策を強化する必要がある。多国籍企業だけでなく、各国の地元企業の組織化や労働条件を引き上げる取組みも行っていく。コロナ禍により、社会保障やセーフティネットにも影響が出ている。これも我々の優先課題である。機能的なソーシャル・パートナーシップに基づく協調的労使関係の推進である。社会対話のプラットフォームを確立し、UNI Apro加盟組織が自分たちの経験を共有できるような場をつくりたいと考えている。
女性と青年のエンパワーメントの取組みは、革新的なアプローチで実施される予定である。3月には「メンタリング・プログラム」を開始するが、特に、若手の女性組合員に重点を置いていく。今年はUNI Apro青年大会が開催されるが、状況によりオンライン開催となる可能性もある。来年は、テーマ別フォーラムの開催を検討しており、対面開催としたいと考えている。