UNI Apro執行委員会、「労働の未来」を議論

2017年4月4~5日、シンガポールにおいて、第30回UNI Apro運営委員会、第23回UNI Apro執行委員会が開催された。昨年11月のUNI世界執行委員会における「労働の未来」議論を踏まえ、UNI Aproにおいても「労働の未来」フォーラムが開催された。

ジェニングスUNI書記長による基調講演

ビッグ6(グーグル、アマゾン、アップル、マイクロソフト、フェイスブック、IBM)があらゆるデータを独占している。彼らは責任あるビジネス行動とはいかなるものか、わかっていないようだ。競争だけでなく税制面でも規制をみていかなければならない。4人に1人しか正式な社会的保護を受けておらず、大儲けをしている企業が税逃れをし、更に仕事が機械に置き換わったら、人間はどうやって生きていけばよいのか。最低所得保障の議論があるが、組合の中でも懐疑的な人もいる。このような状況の中、ディーセントワークを確保するためには、組合を成長させるしかない。組織化基金を活用し、下請け労働者や専門職・監督職等も組織していかねばならない。他人に任せてはいけない。

UNIのアクション

ケープタウン世界大会で、労働の未来を取り上げることを決定した。世界経済フォーラムでも訴えた。そのため、14の産業で500万人が失職するという報告が出された。UNI欧州地域組織も調査をしている。ILOも100周年記念イニシアチブとして「仕事の未来」プロジェクトを推進しており、今後、世界委員会が立ち上げられる。我々はこのような国際機関に絶えず強力なメッセージを出し続けていかなければならない。

我々は、組合がデジタル革命の中でいかに戦略を変えようとしているか、現状に適用させようとしているか、調査している。労働者の権利、社会契約のあり方、我々のデータへのアクセス、シンギュラリティ、AIの倫理等、デジタル・マニフェストを作りたい。そのための取組みとして、①新たに「労働の未来」専用ウェブサイトを立ち上げ、②「デジタル化専門家グループ」への参加を加盟組合から募っている。これらはUNIの専門知識のハブとして、リバプール世界大会までに解決策をまとめていく。

「アクションを起こすのは我々だ。解決策を提示するのは我々だ!」

パトリック・テイ氏によるシンガポールの状況報告

シンガポール加盟協(UNI-SLC)からは27人が傍聴した。代表して、パトリック・テイ商業労組書記長(シンガポール全国労働組合会議SNTUC副書記長)が、SNTUCの取組みについて報告した。シンガポールは貿易やグローバル化に依存しており、不確実性の時代に、欧米、中国、東南アジアの動向から大きな影響を受ける。3D(①Demand、②Destruction、③Demographic)という言葉があり、大きく襲い掛かっている。①グローバルなDemand(需要)が下がった。②デジタル化の影響で、以前はトップ企業といえば石油会社だったが今はハイテク企業にその座を譲り、弱肉強食ではなく、等しく食べられてしまう。シェアリング・エコノミーが増え、大手多国籍企業ばかりでなく小規模スタートアップ企業も増えている。技術革新によりシンガポールでは43%の雇用が代替可能と言われており、破壊的状況(Destruction)だ。③急速な高齢化、出生率低下(Demographic)。

これらを克服するための対応として、将来のスキル訓練と、産業別政労使三者委員会による取組みを紹介した。

将来のスキル訓練は、失業者保護だけでなく、将来の失業者防止のためである。組合だけでなく、政労使、学者、コンサルタント、専門家、フリーランス、中小企業等と共に、弾力性をもって新たな雇用に備え準備していく試みを今年1月から開始した。

23の産業別政労使三者委員会を設置した。例えば金融委員会であれば、財務省、金融機関、中央銀行、組合が委員会に入り、政策提言に関与する。それぞれの産業の変革マップをつくっている。生産性について考え、労働者がデジタル化を受け入れるにあたり、マルチスキルにする。6部門で既にマップができあがり、来年3月には17部会もできる。

パトリック氏は、三者主義で取組む重要性を強調し、ILOやUNIの取組みと足並みを揃えていると述べた。

これらの報告を受け、松浦UNI-LCJ議長からは日本の状況について簡単に報告すると共に、UNI-LCJとして8月頃「労働の未来」シンポジウムを開催し、リバプールUNI世界大会までにUNI-LCJとしての見解をまとめる予定であると述べた。

ジェニングスUNI書記長は、デジタル資本主義に関する調査を行い、リバプールまでに結果をまとめると述べた。UNI Aproでは今年の部会大会で「労働の未来」を議論することになっており、各国でUNI Aproのリーダーが取組みの中心となることに期待を寄せた。

夕食会には、退任した鈴木ITUC-AP前書記長を招き、野田UNI Apro地域会長から感謝の盾が贈られた。

 


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