第19回UNI Apro金融部会委員会、持続可能な金融産業を目指して

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2016年6月18~19日、スリランカ・コロンボで第19回UNI Apro金融部会委員会が開催された。田原UNI Apro金融部会議長は、プリヤラル担当部長の母国での初めての開催となることを喜び、規制とデジタル化の影響や、仕事の付加価値をいかに向上させていくか等、積極的な議論を期待すると挨拶した。

各国報告について日本からは、福田三井住友信託銀行従組副委員長が今年の交渉結果について賃金改善や環境改善を勝ち取ったことを報告した。宮井損保ジャパン日本興亜労組委員長は、リーマンショック後、経営統合が加速したが、業務効率化と生産性向上に労使で取組み雇用を維持したと述べた。渡邊三菱UFJ信託銀行従組委員長は、信託銀行及び組合におけるCSRの取組み事例を紹介すると共に、地域経済統合の金融産業に及ぼす間接的影響と労働規制緩和について注視していく、と述べた。

国有金融機関が多く存在する南アジア諸国ではバーゼル規制はまだ本格的に導入されていないが、自己資本比率の引上げや合併は今後起こると予想され、組合としては、遠隔地への転勤命令等による特に女性従業員への影響は大きいとみている。また、オンライン取引の増加やデジタル化による仕事への影響も注視している。

ウンUNI Apro地域書記長は、「グローバル化による競争激化で新たなITの利用が加速し、従来の金融商品・サービスは変化し、伝統的な金融産業の仕事は無くなるだろう」と述べた。「だからこそ国境を越えた組合間の定期的な情報交換やリサーチ、分析が不可欠だ。組織率が低下し労働組合が少数派になっている今、いかに影響を抑え、機会を最大限生かすか、箱から出てマインドセットを変えなければならない」と鼓舞した。地域統合に関しては、ILO中核的労働条約の尊重を含む「労働の章」が盛り込まれたTPPは前向きに捉えるべきだとし、TPPより規模が大きい世界最大の経済圏RCEP(東アジア地域包括的経済連携)に欠けている社会/労働条項の議論に労働組合の関与が足りない点に苛立ちを見せた。UNI AproはASEANサービス労組協議会(ASETUC)を通じてASEANの政府及び使用者と社会/労働条項をASEANレベルで議論できる信頼関係と環境づくりに邁進してきた。組合の社会的責任とパートナーシップ労使関係の普及を掲げる労働組合とは協力する価値があると、政府及び使用者に認識させることができたからこそ、ASEAN各国の労働省から協議を受けるようになった。フィリピン銀行産業三者対話における労働組合の役割という最良事例をASEAN全体そしてSAARC(南アジア地域協力連合)にも、更にはRCEPへと拡大していかなければならないと訴えた。

今次委員会では、ラニー・ジャヤマハ氏(スリランカ中央銀行前副総裁、世界銀行・南アジア主席顧問)を特別ゲストに迎え、「規制強化の影響:金融包摂を広げるアジアの多様な金融システム」と題する基調講演を受けた。ラニー氏は、金融制度の安定化とシステミックリスク予防のために規制は必要だが、一律な規制強化が金融危機の万能薬ではなく、金融機関のビジネスと収益性とのバランスが重要だと強調した。その上で、規制当局と金融機関は技術革新による金融包摂に目を向けるべきで、組合は生産性の向上、健全な対話等を通じて交渉力を立て直し、競争力をつけガバナンス原則を順守しながら自らの企業の成長を支えていくべきだと述べた。

参加者はまた、2016~2017年度の活動のフォローアップとして、①金融産業の規制と再編、②信頼回復に向けた社会対話の取組みとCSR推進、③地域経済統合と貿易協定の3つのテーマについてグループ討論を行い、様々な意見や今後の活動に対する提案をまとめて発表した。2017年に開催予定のUNI Apro金融部会大会のテーマには、Inclusive(包括的な)とSustainable(持続的な)というキーワードを含めることも確認した。

田原議長は、「来年の部会大会方針に反映すべき課題や提案をボトムアップでまとめることができた。UNI Apro金融部会が一丸となって頑張っていこう」とまとめ、閉会した。


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