第19回UNI Apro金融部会委員会の前段、2016年6月17日、UNI-LCJ金融部会としてスリランカの金融産業視察を行った。
スリランカは、北海道とほぼ同じ面積に約2,000万人が住み、農業(紅茶、ゴム、ココナツ、米)及び繊維業が主産業の国である。ポルトガル、オランダ、英国の植民地を経て、1948年、英連邦内の自治領として独立。1983年からタミル・イーラム解放の虎(LTTE)との内戦が本格化するが、2009年5月政府軍が北部LTTE支配地域を全て奪取し内戦を終結させた。内戦の終結による復興需要や経済活動の活性化等によって、2011年に過去最高となる8.2%の経済成長を達成し、1人当たりGDP(2014年)は3,625米ドルに伸びた。ラージャパクサ前大統(2005~2015年)は中国を頼りに国内インフラの復興を推進し、道路、鉄道、港等の建設が進められた。しかし2014年に中国の支援で始まったコロンボ港湾都市建設計画は、2015年に中国との密接な関係からの脱却を訴えて当選したシリセーナ大統領誕生直後に中断させられ、環境配慮を強化する条件で再開された。
一方、日本からスリランカへの直接投資は約15.2億ルピー(2014年)。欧米諸国や日本への製品輸出を目的とする製造業が多数を占めるが、最近は、みずほ銀行、三井住友海上火災保険、三菱東京UFJ銀行等、金融機関の進出も相次いでいる。
田原UNI-LCJ金融部会議長を団長とする代表団は、人民銀行(People’s Bank)のN.バサンタ・クマールCEO、セイロン銀行(Bank of Ceylon)の、ロナルド C ペレラ会長、D.M.グナセカラCEO、L.A.K.ジャヤワルデナFBOSL書記長、スリランカ投資委員会(BOI)のウプル・ジャヤスリヤ会長、レヌカ・M.ウィラコネ投資・プロモーション執行取締役、スリランカ保険庁のダマヤンティ・フェルナンド長官、スリランカ中央銀行・銀行監督部のシシラ・ラナシンゲ部長、ルクシャナ・ジャヤティラケ上級部長補佐らを訪問し、スリランカの政治経済概要と銀行、保険産業の現状を聞き、意見交換を行った。訪問先各所で、内戦後、投資環境は整っていることが繰り返され、日本からの投資に大きな期待が寄せられた。国有商業銀行経営陣からは、ITへの積極投資の必要性が強調され、仕事への影響という点ではバーゼル規制よりもデジタル化のインパクトの方が大きいとの見方が示された。
ウンUNI Apro地域書記長は、「国が安定すれば投資も増える。しかし労働基準を切り下げ、労働を犠牲にして、底辺への競争になることを懸念している。税制優遇措置だけでは持続しないことは明らかだ。労働組合は生産的な方法で企業の発展に貢献できる。デジタル化による配置転換、新たな仕事のニーズに即応できるよう、絶えず職業訓練や技能開発を行うことが重要だ」とコメントした。
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