第4回UNI Apro東アジア労組フォーラム

第4回UNI Apro東アジア労組フォーラムが、2015年10月28~29日、京都で開催された。日本、韓国、台湾、香港より約120人が参集し、「新たな頂点を極める:東アジアにおける労働組合の戦略と連帯」というメインスローガンの下、「賃金の公正な分配」、「母性の保護」、「労働安全衛生」の3つのテーマで議論した。

小俣UNI-LCJ議長は、今回の海外参加者数は過去最大数となり、東アジア地域の参加組合の連帯が回を重ねるごとに深まっているとした。賃金の公正な分配により、労働者の取り分を多くし、同時に労働安全衛生、広い意味でワークライフバランスを実現することによって、子供を安心して産み育てることができる社会につながるという点で、今回の3つのテーマの関連性を指摘し、有意義な議論を期待した。

逢見UNI Apro会長は、「東アジア経済危機の再来」と題する基調講演を行った。中国経済の実態、米国の利上げ、新興国の政治的経済的問題などが複雑に絡み合う不安定な時代にあって、金融危機は繰り返し出現する可能性は否定できない。労働組合を含めた社会パートナーが、それを阻止することはできないとしても、転換するメカニズムとルール作りが重要ではないか。労働組合はステークホルダーとして、企業行動をチェックする機能を今こそ果たすべきであり、グローバル枠組み協定や、国連の責任投資原則などをベースに対話を進めることの重要性を強調した。

第1セッション「賃金の公正な分配」

同志社大学の石田教授から、欧米の仕事基準の賃金と、日本等の人基準の賃金の比較という興味深い導入報告があった。その中で、人基準の賃金の負の側面として、働きすぎと、人基準賃金の正社員・仕事基準賃金の非正規社員の格差が指摘された。

これを受けて、各国・各組織からの事例報告では、男女間、大企業と中小企業、正規・非正規などの要素を含む賃金格差についての現状、課題、格差解消の取り組みの報告があった。情報労連・柴原氏は、KDDIが直接雇用している有期契約社員の一時金や、正社員を上回るベースアップの獲得、正社員登用制度の導入といった取組み成果を報告した。UAゼンセン・桂氏は、日本の流通産業はパートタイマー組合員に支えられていること、正社員とパートタイマーの職務内容の違いに比べ賃金格差が大きすぎることなどから、人材不足が懸念される中、モチベーションをもって働ける魅力的な産業とするためにも格差是正の必要性を強調した。自動車総連・山田氏は、業種間・企業規模間で見た賃金改善の獲得状況は、むしろ格差拡大の傾向にある点を注視し、自動車産業の持続的成長に向け、中小企業の格差是正と非正規労働者の処遇改善による、業界全体の底上げに取組む方針を示した。韓国KFCLUのイ氏は、政府による賃金ピーク制、成果主義賃金体系の導入奨励といった賃金体系改悪の動きや、労働者契約期間延長、派遣業務範囲の拡大をはじめとする非正規職拡大政策の阻止に向けた、韓国労働運動の反対闘争を紹介した。KFIUのチュン氏は、銀行における男女賃金差別是正の長年の取組みの成果と、1997年のIMF管理体制以降、急増した非正規職を組合の交渉によって減少させた点を、産別だからこそできることだと強調した。台湾CTWUのツェン氏は、賃金関連法規や民間企業の賃金構造等を説明した上で、賃金構造の低層化や、賃金上昇が物価上昇や経済成長に追いつかず、台湾の貧富の差が加速的に拡大している現況を報告した。司会を務めた八野UAゼンセン副会長は、韓国の労働市場改悪に対する反対闘争に、東アジアの仲間として支援を表明すると共に、賃金格差、貧富の格差、非正規の処遇等の問題に対する認識を持ち、取組みを進めることが重要であるとした。そのためには、組織化の推進と、労働の尊厳を守ることを、原点に戻って考えなければならないとまとめた。

2セッション「母性の保護」

韓国KFSU・カン氏の司会でパネル討論を行った。まずは、日本・全労金の深見氏から日本の育児・介護休業法、次世代育成支援対策推進法、韓国・KFIUのイ氏から金融労組が現行法を先導した育児休業制度、台湾・TFFUのリン氏から「労働基準法」、「男女職業平等法」、「職業安全衛生法」に含まれる母性保護関連法制と、女性の就業権と母性保護両者の重視について、香港のライハ氏から民間及び公的部門の母親・父親の休暇制度等、各国の母性保護関連法制について報告を受けた。

続いて、日本・生保労連・宮本氏から生保労連及び加盟組合の取組みと成果、特に男性育休100%を目指す取組みの紹介があった。韓国・KFIUのイ氏は金融労組の模範事例を挙げ、台湾PTSFEU・ワン氏は育児休職中の成績査定の扱いと女性の夜間業務における安全保護協定について、香港RCCIGUのライハ氏から職場における妊婦への差別の存在など、職場の現状や労使協約について聞いた。

最後に、日本・全信連の斉藤氏、韓国KHMUのカン氏、台湾のワン氏、香港のライハ氏が、今後の課題についてそれぞれ述べた。斉藤氏は、出産・育児関連制度の利用者は増加するも、問題点も出され、利用者本人及び周囲の意識が重要であり、制度の周知徹底と不安解消策の提言が必要だと述べた。カン氏は、看護士不足の病院で暗黙の了解となっている妊娠順番制の存在を指摘し、女性組合員が多い医療保険労組の様々な母性保護関連の取組みを紹介した。ワン氏は母性保護に関する広義の考え方や、男女平等教育の強化が課題であるとした。ライハ氏はILOの母性保護条約の批准や、違反した使用者への罰則強化が課題だと述べた。

司会のカン氏は、「良い法律や協約があっても、当事者及び労働組合の実践の意思がなければ何もならないことを再認識した。各国の状況を比較しながら、至らない点は今後補っていくのに良い教訓を得られた。それぞれが先進的に実践する模範的組織となるよう願っている」とまとめた。

3セッション「サービス産業における労働安全衛生」

UNI Aproのラジェンドラ労組強化部長と玉井組織化部長は、UNI Aproが東南アジアの小売業を中心に活用を普及させている、小売業における労働安全衛生に関するUNI Aproガイドラインの内容について、また特にインドネシアにおける活用事例を紹介した。労働大臣によって承認され、企業からも評価を受けて、政労使パートナーシップで安全衛生文化を根付かせようとしていることが強調された。更にインドネシアは最近、労働安全衛生に関するILO条約を批准するに至り、これはUNI Aproが働きかけた成果だと述べた。

台湾CPWU・チェン氏は、ハイテク及びサービス産業におけるストレス、長時間労働、ハラスメントといった問題、中高年労働者、一般女性労働者・母性保護、少年労働者の保護強化などについて報告した。韓国KFS・のカン氏は、感情労働は精神健康被害をひきおこす人権侵害だと強調し、グローバル企業で感情労働手当てや休暇を導入させた経緯や、労災認定を拡大する取組みを報告した。韓国KPWUのキム氏は、郵便配達中の事故防止や作業場環境改善、安全文化周知徹底の取組みの結果、労災が70%減少したと述べた。損保労連・辻田氏は、損保労連結成当時からの課題である長時間労働に関し、2011年頃に時短の取組み効果が表れるも、最近は業務領域の拡大に伴う業務量増加や業務の高度化により、特に女性の役割が大きく変化した上、長時間労働につながっているとし、ワークライフバランス、ダイバーシティの理解浸透、育児・介護と仕事の両立の支援、男性の働き方改革等の取組み強化が必要だと述べた。日放労・岡﨑氏は放送局における長時間労働が健康と番組の質に及ぼす深刻な影響を指摘し、意識改革と「よく休む」状況作りに取組んでいると報告した。JP労組・八木氏は、労働安全衛生の取組みは企業の責任だけでなく現場の労働者の参画が不可欠であるとし、日本郵便における交通安全管理、危険予防等の取組みにより事故率が減少したと報告した。会場からは多くの質問が出され、この問題に対する関心の高さがうかがえた。

最後に野田UNI-LCJ副議長が共同宣言(次頁)を読み上げ、満場一致で採択された。第5回フォーラムは来年10月下旬、韓国で開催する予定。

All in Kyoto

共同宣言

新たな頂点を極める : 東アジアにおける労働組合の戦略と連帯

UNI Apro東アジア労組フォーラムは、香港、日本、韓国、台湾の未加盟労組を含めたUNIに集うサービス産業労働組合間の協力の枠組みを確立する試みである。

労働組合の連帯が東アジア地域の様々な課題を打開する鍵となるように、率直な意見交換と議論を通じて、連帯、友情、相互理解を更に深めていくことは大変重要である。

2012 年、東京で第1 回フォーラムを成功裏に開催し、2013 年、ソウルでの第2 回フォーラム、2014 年、台北での第3 回フォーラムを経て、我々の結束は確実に高まり、フォーラムの継続が確認された。

今回のフォーラムは、メインスローガン「新たな頂点を極める:東アジアにおける労働組合の戦略と連帯」の下、「賃金の公正な分配」、「母性の保護」、「サービス産業における労働安全衛生」という3つのテーマを取り上げた。各国の好事例や教訓を共有することによって、非正規労働者の増大や格差の拡大、労働条件・職場環境・安全衛生面の改善、ワークライフバランス、特に女性労働者の労働環境の改善等、課題を再認識し、克服するための参考とすることができた。

また、フォーラム参加者は、経済のグローバル化によって、欧米に端を発する危機だけでなく、東アジアや新興国の経済状況によっても、我々の経済・雇用が大きなインパクトを受けるようになってきたことを認識した。現在結集する東アジア労組フォーラム参加労組の経験を活用し、対話の輪を更に広げることは、今後の東アジア地域の更なる発展に貢献するものである。

東アジアのサービス産業の労働組合は、新たな頂点を極めるために、労働組合間の戦略的パートナーシップを更に強化し、互いを尊重し、率直な意見交換をすることによって、各国の労働者とその家族の幸せのために今後も連携を深めていくことをあらためて宣誓する。

2015年10月29日

第4回UNI Apro東アジア労組フォーラム参加者一同


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