
欧州全域で使用者の賃金決定力が強まるなか、EUが推進する競争力強化策には、企業合併の規制、競業避止条項の規制、そして強固な産別協定の促進も含まれなければならない。
UNI欧州が発表した新たな報告書『No golden cage: how the labour market traps workers( 黄金の檻は要らない――労働市場が労働者を閉じ込めるしくみ )』は、企業間の競争が弱まることによって、企業が一方的に賃金を決定する力を強めている実態を検証している。
このような力は、企業合併、競業避止条項の拡大、引き抜き禁止協定など、労働市場における近年の動向を通じて、使用者が集中することによって生じている。
その結果、賃金の抑制、労働条件の悪化、転職の困難化、研修やキャリアアップの機会の減少などが引き起こされている。同報告書は、欧州委員会が競争力強化を推進するにあたっては、競争の減少が労働者の生活にどのような影響を及ぼすかも考慮しなければならないと強調している。
最近の調査によると、EU域内の労働者の約16%にあたる3,500万人が、使用者数の少ない、使用者が集中した労働市場で働いている。そのため、別の企業に転職することが著しく困難になっている。
さらに競業避止条項の広がりが、この問題に拍車をかけている。競業避止条項とは、雇用契約に盛り込まれる規定であり、一定の期間および地理的範囲において、労働者が競合企業に転職することを制限するものである。
OECDの新たな統計によれば、EU域内の民間部門の従業員の約3分の1にあたる8,000万人が、現在このような条項の対象となっている。競業避止条項は、何世紀にもわたり、企業秘密、顧客との関係、労働者の研修への投資といった正当な企業利益を保護するための限定的な仕組みとして正当化されてきた。しかし今日では、こうした条項は本来の保護という目的から逸脱し、労働者が労働市場で自由に移動することを妨げるものになっている。
例えば、機密情報にまったくアクセスできない労働者であっても、最大27%が競業避止条項の対象となっている。引き抜き禁止協定の広がりや、労働協約の仕組みの弱体化も相まって、これらの動向は、労働者の生活と労働市場における選択の自由を犠牲にしながら、使用者が一方的に賃金を決定する力を強めてきた。
そこで同報告書は、EUの政策立案者に対し、次の3つの柱からなる対策を講じるよう求めている。
① 予防:企業合併の審査に労働市場への影響を組み込むこと、データに基づく使用者の集中状況の監視を拡充すること、さらに合併後の労働者の発言力を強化するなど、労働者の利益を守るための是正措置を検討すること。
② 法執行:引き抜き禁止協定や賃金の固定といった違法行為に対処すること、競業避止条項に関する明確なルールを設けること、さらに、競争政策の強化、制裁措置、内部告発者の保護、EUレベルで調和の取れたルールの整備を通じて、こうした条項の有効性を厳格に審査すること。
③ 対抗策:使用者が一方的に賃金を決定する力に対する構造的な対抗手段として、産業別労働協約を強化すること。これには、最低賃金指令などのEUの取り組みも含まれる。
オリバー・レティクUNI欧州地域書記長は、「ある地域のある産業に、企業が3社しか存在しない状況を想像してみてほしい。そのうち2社が合併し、残るもう1社は、あなたに競業避止条項付きの雇用契約を提示したとする。すると使用者は3社から一気に1社に減ってしまいます。EUの政策立案者は、このような状況に対して、企業合併の規制、競業避止条項の規制、そして強固な産業別労働協約の促進を通じて対処できるようにすべきだ」と指摘した。
(2026年10月29日)