
第5回UNI Apro専門職・監督職(P&M)大会は、AIがアジア太平洋地域のさまざまな産業において専門職・監督職の仕事を大きく変えつつある時期に開催された。職務上の責任、業績評価、職場での意思決定に変化が生じるなか、専門職としての判断、スキル、雇用の安定性に関する共通の懸念が高まっている。
2026年8月28~29日、スリランカのコロンボで開催された同会議には、「スキル、連帯、主体性:デジタル化するアジア太平洋地域におけるAIをめぐる団体交渉」をテーマに、115人の代議員およびオブザーバーが参加した。参加者は、団体交渉や専門職間の協力を通じて、こうした変化に対する労働者の影響力をどのように強化できるかについて議論した。
UNIにおいてP&M委員会は、産業の枠を越えて専門職・監督職の労働者を結びつける役割を担っている。これらの労働者は、専門職としての自律性、キャリア形成、業務量、職務上の責任の変化など、共通の課題を抱えている。この産業横断的なグループは、団体交渉の経験を共有し、連携を構築し、産業を越えた共通の優先課題を推進するための場となるとともに、従来、労働組合とのつながりをあまり意識してこなかった専門職の労働者にも働きかける役割を果たしている。
スリランカのナディーカ・ワタリヤッダ労働局長が来賓として出席し、ラジェンドラ・アチャリヤUNI Apro地域書記長が連帯のあいさつを述べた。
また、UNI世界P&M委員会とUNI欧州 P&M委員会からも、強力な支援と連帯が寄せられた。ダニエル・ヴァルタカリUNI世界P&M委員会議長は、大会の準備に協力するとともに、基調講演の討論の進行役を務めた。デジタル技術政策アドバイザーを務めるマッシモ・メンシUNI世界P&M委員会担当局長は、AIに関するセッションと会議文書の主要なメッセージを取りまとめる役割を担った。フェデリカ・コッキUNI 欧州P&M委員会議長は、専門職・監督職として働く女性の機会均等を推進してきた欧州の経験を共有した。
団体交渉を通じてAIのあり方を形づくる
UNI Aproが本大会のために特別に委託した背景報告書を踏まえ、ガヤン・デ・シルバ教授は、AIシステムが購入・導入される前の段階から、労働組合がその意思決定に影響を及ぼすことの重要性を訴えた。

同教授は、講演で「問題は、AIが仕事を変えるかどうかではない。誰がそのルールを定めるのかということだ」と強調し、技術が日常業務に組み込まれるにつれて、労働組合が交渉を通じて影響力を行使する余地は小さくなると説明した。
早い段階から関与することで、既存の業務プロセスが変更困難になる前に、労働者がシステムのあり方や安全策の策定に関与できる。講演では、自動化された意思決定、モニタリング、アルゴリズムによる評価が、専門職としての判断にどのような影響を及ぼすかについても検討された。AI導入前に設計された業績評価指標は、仕事の速さを重視する一方で、専門職の業務に伴う状況、責任、専門知識を十分に考慮しないおそれがある。
提言には、職場で使用されるAIシステムの情報開示、導入前の影響評価、労働組合による監査権、自動化された解雇からの保護、使用者負担による再訓練、業績評価における人間による監督などが盛り込まれた。
日本から参加した中野剛損保労連委員長は、こうした議論を実際の取組みに結びつける事例を紹介した。日本の保険業界では、AIは雇用を守るものであるべきだという原則について、労働組合と企業の経営幹部が話し合ってきた。そのうえで、AIをどこで、どのように活用するかについて、企業ごとの協議を進めている。中野委員長は、使用者がAIシステムを導入または変更する際には、必ず協議を行うべきだと強調した。また、日本の春闘も、生産性向上による成果を、賃上げ、労働時間の短縮、研修、仕事の質の改善を通じてどのように分配するかを交渉する機会となる。
職場における女性の影響力を高める
フェデリカ・コッキUNI 欧州P&M委員会議長の講演では、ジェンダー平等と、職場の意思決定に対する労働者の影響力との関係が取り上げられた。基本給以外にも、賞与、昇進基準、研修へのアクセス、ケア責任に伴うキャリア上の不利益など、不平等が存在することを指摘し、「機械が判断したからといって、偏ったキャリア上の判断が中立的なものになるわけではない」と警鐘を鳴らした。
欧州の団体交渉の事例を紹介しながら、労働組合が総報酬の透明性、公平な人事評価制度、メンタリング、平等なキャリア形成の機会について交渉できることを示した。また、採用や昇進にアルゴリズムが用いられる場合も含め、関連データを入手し、是正措置を交渉し、その実施状況を監視することの重要性を強調した。
大会では、2023年に設立された南アジア専門職女性ネットワーク(SAPWN)についても報告が行われた。代議員は、パキスタン、インド、スリランカ、ネパールにおけるリーダーシップ育成や職場の包摂性を高める取組みを確認し、ネットワークの強化と国境を越えた協力の推進で合意した。バンダナ・シャルマ氏が同ネットワークの新たなコーディネーターに任命された。

2027~2030年に向けた5つの戦略的優先課題
ジャヤスリ・プリヤラルUNI AproP&M委員会担当部長は、活動報告と今後の戦略的方向性を提示した。議論では、専門職間のネットワークづくり、女性のリーダーシップ、職場のウェルビーイングに関するこれまでの経験を、今後の課題と結びつけた。
代議員は、以下の5つの優先課題を採択した。
- AIとデジタル変革に関する団体交渉:AIの導入、データガバナンス、アルゴリズムの透明性、労働者との協議を対象とする団体交渉の枠組みを策定する。
- 女性のリーダーシップの強化: SAPWNを拡大し、加盟組織におけるリーダーシップや意思決定への女性の参画を増やす。
- 若手専門職の組織化:若手専門職、将来の職場リーダー、新たな職種を対象とした専用プログラムを開発する。
- 健康的な職場の推進:バーンアウト(燃え尽き症候群)、メンタルヘルス、業務量の管理、つながらない権利に関するキャンペーンを推進する。
- 専門職間の連携構築: エンジニア、IT・金融サービス分野の専門職、医療専門職、法律研究者との協力を拡大する。
これらの優先課題は、産業横断的な協力を、より強力な労働者代表と職場の具体的な改善につなげるための共通の行動指針となる。

リーダーシップと地域協力
代議員は、シンガポール商工業労組のジョン・デペイヴァ名誉事務局長を、UNI Apro専門職・監督職委員会議長に全会一致で再選した。また、AIBOBOAのプレム・マッカー氏が副議長に選出された。
委員会の全体的な構成については、地域間の均衡の取れた代表性を確保するため、各国加盟協と協議したうえで最終決定される。大会は、専門職・監督職の労働者が技術革新の方向性に影響を及ぼし、より公正な労働条件を実現できるようにするうえで、団体交渉と地域の連帯が重要であることを改めて確認した。