
人工知能やデジタル化がスリランカの通信部門を再構築する中、労働組合は、雇用を守り、労働者のスキルを向上させ、技術変革が社会対話に基づいて進められるようにするための能力を強化している。
2026年6月22~23日、UNI Apro ICTS部会代表団が首都コロンボを訪問し、労働組合の指導者と経験を共有するとともに、スリランカ・テレコムと同部門における「仕事の未来」について議論を交わした。
代表団は、情報労連委員長である北野眞一UNI Apro ICTS部会議長が率い、木村富美子UNI Apro ICTS部会担当部長が同行した。
技術変革に対する労働組合の対応強化
スリランカ・テレコムとメディア部門の労働者を組織するUNI加盟組織「Media Pro-Tech」から、30名以上の組合指導者が、セミナー『ICT産業における課題と労働組合の国際連帯』に参加した。
セミナー冒頭で北野議長は、AIやデジタル化によって引き起こされる急速な変化に対応する上で、国際的な経験の共有と労働組合間のより強固な協力の重要性を強調した。

セミナーには、テクノロジー、労働力開発、組織化の各分野に精通した講演者が一堂に会した。
ピーター・ダルメイダ氏(N-able元CEO)は、AI、データ活用、サイバーセキュリティ、クラウドコンピューティング、フィンテックを、ICT部門を再構築する主要な原動力として挙げた。同氏は、労働組合の戦略がテクノロジーの発展に歩調を合わせる必要性を強調し、雇用への影響評価や、より強力なリスキリングのイニシアチブを求めた。
ジャヤスリ・プリヤラルUNI Apro金融部会および専門職・監督職委員会担当部長は、技術革新が労働市場に及ぼす影響について論じ、変革の時期に労働者の権利と尊厳を守る上で労働組合が果たす役割を強調した。
トゥシャリ・ランブクポタ氏(SLT-Mobitel 人材開発部長)は、通信企業がますますテクノロジー企業へと変貌を遂げる中、継続的な学習と能力開発の必要性を強調した。
情報労連の入江優妃中央執行委員は、若者向け活動、国際連帯、多様性およびジェンダー平等の取組みに関する経験を共有した。同氏は、ICT産業は多様 な背景を持つ労働者なしに成り立たないこと、そして労働組合は誰もが参加し、意見を表明できる包摂的な組織を構築しなければならないことを強調した。
議論では、雇用影響評価、リスキリングおよびスキル転換の重要性に加え、若者の参加強化、ジェンダー平等、国際連帯の重要性が浮き彫りになった。
変化する労働力に対応する組織化
また、北野UNI Apro ICTS部会議長と木村担当部長は、スリランカ・テレコムの労働者を組織化している各労組と面会し、労働運動の動向や同産業における労働のあり方の変化について協議した。
各組合は、アウトソーシング、非正規雇用、リモートワーク、そして若い労働者層の期待の変化が、従来の組織化の手法をどのように変容しつつあるかを共有した。
北野議長は、若者の参加を促進し、労働組合のより広範な社会的役割を伝えるための新たな取組みを展開するよう、各労組に呼びかけた。また日本のNTTグループの経験を踏まえ、労働組合間の連携強化の重要性を強調した。
木村担当部長は、「 Media Pro-Tech 」を中心とした協力や、他国の労働組合との経験共有の価値に言及した。
会議では、雇用やテクノロジーの変化に対応する上で、より包摂的な組織化戦略、より緊密な協力、そしてより強力な国際交流が必要であることが確認された。
スリランカ・テレコムとの社会対話
スリランカ・テレコム(SLT)本社にて、代表団はモティラル・デ・シルバSLT会長およびM・リヤーズ・ラシードCEOと会談し、技術革新、雇用、人材開発、労使関係について意見交換を行った。
デ・シルバ会長は、デジタル化、AI、そしてデータの利用拡大が、テレコム産業における競争環境やビジネスモデルを変革していると述べた。また持続可能な事業運営のためには、技術開発と人材の両方への投資が不可欠であると強調した。
ラシードCEOは、AIやデジタル技術を通じて業務効率を向上させるためのSLTの取組みについて概説した。そして、この移行には労働力のスキルにおいて大幅な変化が必要となることを強調し、リスキリングや研修を通じて、雇用の維持と企業の競争力のバランスを取ることの重要性を指摘した。
またSLTの上級幹部は、従業員向けのAI教育を含む人的資本への投資を行っていることも明らかにした。議論では、急速な技術変革の時期において、安定した労使関係と継続的な対話が不可欠であること、そして組織変革には労働者の理解と信頼を確保することが極めて重要であることが認識された。
北野議長は、技術革新と雇用保護を対立する目標として扱うべきではないと強調した。また、AIが雇用に与える影響を徹底的に評価するとともに、リスキリングの措置を講じ、労働者や労働組合との継続的な対話を進めるよう求めた。
さらに、変革プロセスの初期段階から労働組合を関与させるべきであり、持続可能な事業成長と労働者保護のバランスを図るためには透明性のある対話が不可欠であると強調した。
SLTは、日本の労働組合との連携を強化し、今後の国際連携を拡大することに関心を示した。
北野UNI Apro ICTS部会議長は、「今回の訪問は、密度の濃い、非常に実り多いものとなった。ICTS部会加盟組織やスリランカ・テレコムの幹部と会談したことで、この分野で起きている変化についてより明確に理解することができた。この訪問を通じて、我々の関係が深まり、デジタル・トランスフォーメーションの形成において労働者と労働組合が有意義な役割を果たせるようにするという共通の決意がさらに強まったと確信している」と述べた。
(2026年7月14日)