
欧州の金融部門の労使が2026年3月上旬、デンマーク・コペンハーゲンでワークショップを開催し、銀行や金融機関における生成AIの責任ある導入方法について議論した。イノベーションが質の高い雇用、信頼、持続可能な競争力を強化する形で導入されるようにするためである。
EU資金のプロジェクト『持続可能で公正なサービス経済にむけて生成AIを形づくる』の一環としてデンマーク金融労組が主催したこのワークショップには、欧州各地の労働組合代表、使用者、研究者が集結。経験の共有と、金融部門におけるAIガバナンスの優先課題の特定が行われた。
開会挨拶でモーリーン・ヒックUNI 欧州金融部会担当部長は、金融部門におけるAI議論が既に理論段階を超えていると強調し、「生成AIは金融業務の組織形態、意思決定プロセス、労働者に求められるスキルを変革している。真の課題は技術導入の是非ではなく、そのガバナンス方法と、社会パートナーが初期段階から形成に関与できるか否かにある」と述べた。
本ワークショップは、2024年に欧州銀行業界の社会パートナーが共同で発表した『人工知能の雇用面に関する共同宣言』を基盤としている。マイケル・ブドルフセンUNI欧州金融部会議長は、欧州の社会対話の真価は、共同のコミットメントを欧州の銀行業界全体で実践に移すことにあると強調し、「欧州レベルでの取組みは、各国の枠組みや産別協定、欧州各地の職場における具体的な実践に反映されて初めて真の意味を持つ」と指摘した。
UNI 欧州金融部会で欧州銀行部門社会対話コーディネータを務めるアルネ・フレドリク・ホーシュタイン・ノルウェー金融労組副委員長は、欧州は技術変革の管理において独自のアプローチを有するとした上で、「我々はシリコンバレーではない。欧州では技術変革は対話、民主的機関、社会パートナー間の協力を通じて形作られるべきだと信じている。人工知能は金融部門を急速に変革しているが、この変革が信頼・技能・質の高い雇用を強化するためには、強力な社会対話が鍵となる」と発言した。
コペンハーゲン大学のアンナ・イルソー准教授は、責任あるAIの交渉と強力な労働市場制度を通じたデジタル変革管理に関する北欧諸国の研究の知見を共有した。労働者の早期参画、能力開発、集団的対話の重要性を強調する一方、新たなデジタル格差や訓練を受ける機会が不平等であることについて、警戒を促した。
参加者は、金融部門における生成AIの影響評価プロジェクトから得られた知見について議論した。同プロジェクトは生産性向上の可能性やサービス改善の機会を特定する一方、バイアス・透明性・監視・雇用の置き換えに関連するリスクも指摘している。そしてAIが質の高い仕事を代替することなく強化するようにしていくためには、人間の監視・強固なガバナンス・研修へのアクセスが不可欠であることが強調された。
2つのパネル討議では、金融機関におけるAI導入の実践的課題を探った。職場向けAIガイドラインの策定、研修施策、ガバナンス枠組みなどが議論され、高レベルのコミットメントと現場実施の間に生じうる乖離が指摘された。社会対話と団体交渉を通じ、原則を具体的な実践へと転換していくことの重要性が強調された。
参加者からは、AI研修を受ける機会が不平等であることや、デジタルスキルにおけるジェンダー格差拡大のリスクへの懸念も表明され、全ての労働者が技術革新の恩恵を受けられるよう包摂的な研修戦略の必要性が強調された。
オリバー・レティクUNI欧州地域書記長は、金融部門で進む変革が業界を超えた広範な影響を及ぼしている点を強調した。また金融は欧州の経済・社会生活の中核に位置するため、AI導入に関する決定は大陸全体の企業、地域社会、家庭に影響を及ぼすと指摘した。
労働組合にとって優先課題は明確である:労働者がAIに関する意思決定に早期から関与すること、ガバナンス枠組みが労働者の権利を保護すること、そして団体協約が部門全体において新たなテクノロジーの責任ある導入を導くことである。