米国を拠点とする民間非営利団体の全米雇用法プロジェクト(NELP)が2023年9月下旬に発表した新しい報告書によると、アマゾンの賃金は「他の倉庫の使用者に比べて不十分であり、労働者が勤務する郡の平均的な収入に近づくにも不十分である」ことが明らかになった。
『良い暮らし:アマゾンは中間所得層の暮らしを可能にすることができるし、そうしなければならない』と題されたこの調査報告は、米国国勢調査のデータを用いて、アマゾンが操業している郡の倉庫労働者の月収が、その郡の全労働者の平均月収よりも26%低いことを明らかにしている。
同社が進出していない郡の倉庫労働者と比較すると、アマゾンが進出している郡の倉庫労働者の月収は、アマゾンが存在しない郡の倉庫労働者の月収よりも約18%低く、約822米ドルも低い。
クリスティ・ホフマンUNI書記長は、「これこそ、まさに組合がずっと主張してきたことだ。アマゾンが倉庫労働者の賃金を引き下げているのだ。アマゾンは初任給を自慢したがるが、現実には、同社が事業を展開する地域のすべての倉庫労働者にとって、まともな生活が手の届かないものになっている。この状況を変えられるのは、強力な組合と団体交渉だけだ」と語気を強めた。
NELPの上級研究員で政策アナリストのアイリーン・タン氏とヤネット・ラスロップ氏は、アマゾンの存在が平均所得の低下に大きな影響を及ぼしていることを明らかにするとともに、多国籍テック企業であるアマゾンに対し、そのリソースを活用して、米国の労働者に経済的不安定から抜け出す道を提供するよう、促している。
アイリーン・タン研究員は、「アマゾンは、人々の経済的脆弱性と、国内の多くの場所で雇用機会が欠如していることを利用し、信じられないほど過酷な労働に対し、このような低賃金を支払うだけで済ませてきた。だが、莫大な資金を自由に使えるのであれば、アマゾンは米国の労働者たちに、不安定なその日暮らしの生活から抜け出すための真の命綱を提供することができるはずだ」と非難した。
アマゾンは最近、倉庫労働者の最低初任給を時給17米ドルに引き上げると発表した。これは報告書で指摘された問題に対処しているように見えるが、著者は、インフレを考慮すると、この「引き上げ」と称される賃金は、2022年のアマゾンの以前の初任給16米ドルと比較すると、実質的な価値は低いと指摘した。
さらに報告書は、アマゾンの劣悪な賃金が、米国労働者の大部分を占める黒人やラテンアメリカ系労働者に非常に大きな影響を与えていることを示している。ラスロップ氏は、「アマゾンの賃金政策は、米国全体の労働市場の不平等を強化し、永続させているのではないか」と述べた。
この調査でNELPは、アマゾンが労働者の団結権を尊重し、賃金を少なくとも25%引き上げることで、労働者の賃金を中所得水準に近づけるよう求める提言を行っている。加えて調査報告では、賃金と人種的公平性に関するデータの透明性を同社に求めている。
報告書に掲載されたアマゾン従業員の声は、同社が労働組合と労働者福祉へのアプローチを緊急に変革する必要性を訴えている。アマゾン倉庫の労働者であるウェンディ・テイラー氏は、生活費を稼ぐために現在も奮闘していると話し、「毎日が闘いです。だから私は組合を求めて闘い、同僚たちとともにアマゾンでの賃上を要求しているのだ」と強調した。