UNI世界大会3日目:「民主主義と正義を求めるグローバルな闘い」に向けたコミットメントを確認し、閉幕

2023年8月30日、第6回UNI世界大会は3日間の日程を終えた。109か国の組合活動家が集い、世界の労働者に影響を与える差し迫った問題について議論した刺激的な1週間が、幕を閉じた。

世界大会3日目の最初のセッション『平和、民主主義、人権のために共に立ち上がろう』では、活動家、労働組合の指導者、政府高官等による熱のこもったスピーチと討議が展開された。コロンビアのエドウィン・パルマ・エゲア労働副大臣は、労働組合主義におけるグローバルな団結の必要性を強調し、「民主主義と正義を求める闘いをグローバルに展開することは、労働組合運動とUNIにとって重要なポイントだ」と述べた。

フロアから発言した石川幸德代議員(JP労組)は、ロシアのウクライナ侵攻に強く抗議することを表明すると共に、同組織がウクライナ支援のカンパ活動に取組んでいること、連合主催の平和集会が毎年行われていること等を報告した。

ミャンマーのカイン・ザー労働組合総連合代表は、ミャンマーにおける軍事支配との闘いにおける国際連帯の必要性について発言し、UNIの支援に感謝した。

平和と民主主義を求めるソフィア・エスピノーサ代議員の呼びかけから、コールセンター労働者の生活に関するミレーネ・カバロナ代議員の発言に至るまで、大会では、多岐にわたりつつも、相互に結びついた闘いがアピールされた。

企業の説明責任に関するパネルの中で、カバロナ代議員(フィリピン、BIEN)は、「フィリピンのコールセンターの労働は、非常に厳しい。ほとんどの労働者は深夜に働かなくてはならず、睡眠不足に陥っている。顧客が電話するのは、サービスに満足しているからではなく、問題や緊急事態があるから。顧客のフラストレーションは、何千マイルも離れた場所で睡眠不足に陥っている労働者に向けられている。多くのコールセンター労働者の月給は300米ドル以下であり、多くは家族を養うことができず、貧困にあえいでいる。これらの企業は、その気になればもっと給料を支払うことができるはず」と、訴えた。

討議の中で、コロンビアのディエゴ・ベラスコ代議員は、見過ごされがちな課題として、インターネットの安全を守るコンテンツモデレーターの精神的負担について発言した。この問題に共感を示したスペインのルシア・トレノール代議員は、労働者は国に関係なく、多くの同じ課題に直面していると強調した。

国際アコードの成果に関するセッションでは、アルケ・ベシガーUNI副書記長が、企業の人権デュー・ディリジェンスに対するUNIの取組みを概説、ルールを変えるための取組みに尽力しつつも、「我々は今あるツールも活用しなければならない。 企業の説明責任に対する我々のアプローチの重要な1つは、グローバル企業と協定を交渉することであり、協定を通じて、我々は現地の法律を超える権利、特に団結権や交渉権を確保することができる」と語った。

久重道正代議員(自動車総連)は、同組織の人権デュー・ディリジェンスに関する取組みを共有した。企業が進める人権デュー・ディリジェンスに労働組合もステークホルダーの一員として参画していけるよう、加盟する労連・単組の役員の理解を促進すべく、有識者によるセミナー開催などに力を入れていると報告し、ディーラーの組合員が、人権侵害に加担した製品を取り扱うようなことがないよう、製造、輸送、部品など、すべてのサプライチェーン、バリューチェーンで人権デュー・ディリジェンスに取組む必要があると発言した。

アミン・ハク代議員(バングラデシュ、全国縫製労連)は、火災安全のための国際アコードを労働運動の偉大な成果として称え、「衣料品・繊維産業の多国籍企業200社がこの法的拘束力のある成果に署名している。グローバル・サウスでは雇用が必要だが、必要なのは、尊厳、公正な賃金、安全な労働条件が伴った雇用だ」と述べた。

国際アコードの活動は継続中である。アトレ・ホイエ・インダストリオール書記長は、国際アコードの拡大を目指しているとし、「我々は、衣料・繊維部門の生産を行っている全ての国々で、労働者安全プログラムを策定しなければならない。我々の服を製造している人々を苦しめるわけにはいかない」と述べた。

イブラヒム・ママドゥ代議員(セネガル、SYTS)は、気候変動に対処する緊急の必要性について注意を喚起し、「気候変動に国境はなく、その影響は世界中の労働者に及んでいる」と訴えた。

アニット・シン代議員(フィジー、銀行金融部門労組)は、「フィジーの炭素排出量は0.006%に満たないが、フィジーとオセアニアへの影響は極めて大きい。たとえゼロになったとしても、それは変わらない。だからこそ、気候変動はすべての人の問題だ。ライフスタイルを変えなければならない。地球は一つしかないのだから」と呼びかけた。

ヤン・シンプソン代議員(カナダ、CUPW-STTP) は、気候変動から郵便労働者を守るための交渉と、雇用環境の保護に向けた同労組の取組みについて、共有した。また、マリン・ナイベルグ代議員(スウェーデン、Handels) は、過剰消費ではなく、リデュース、リユース、修理について話し合うことで、組合員が変化をもたらすことができると語った。

UNI世界青年委員会議長のルシマラ・マラキアス代議員は、「今後 10 年間で 10 億人の若者が労働市場に参入するが、90%は発展途上国の若者。こうした労働者は、機会、ディーセント・ワーク、生活可能な賃金が欠如した、非正規雇用、不安定雇用、非正規雇用の未来に直面するだろう」と訴え、若年労働者に影響を及ぼす問題に注意を促した。

斎藤優輔代議員(JP労組)は、「若者への投資」の重要性について発言し、金銭的な支援にとどまらず、機会、指導、資源を提供することで、永続的な変化の種が撒かれ、成長と発展の文化を育むことにつながるのであり、若者が自らの成長に主体性を持てるような取組みへの支援が必要だと述べた。

大会の最後に行われた選挙では、クリスティ・ホフマンUNI書記長が再選され、ジェラルド・ドワイヤー代議員(オーストラリア、SDA)が、新たにUNI会長に選出された。

松浦昭彦UNI Apro会長は、ジェラルド・ドワイヤーUNI新会長への激励の挨拶の中で、力強くUNIの運動を展開していくことを期待するとともに、「Apro地域としても、新たな体制を支え、連携し、UNIの活動のさらなる発展のために力を尽くしていきたい」と述べて、新会長の誕生を歓迎した。

ホフマンUNI書記長は、世界中の組合が直面する大きな課題と機会について語り、「一瞬の変化を永続的な変化につなげ、交渉の適用範囲を飛躍的に拡大するための野心と戦略が必要だ。これまで何度も言われてきたように、職場交渉は必要だが、それ以上の産別交渉も必要だ。我々には、組合が細々と生き延びるのではなく、組合が発展していくことを可能にする仕組みが必要だ。我々に必要なのは、一部の人々のためではなく、すべての人々のための組合だ」と語った。

大会は、労働者の権利、民主的価値、社会正義のための闘いが普遍的なものであること、そして集団的な行動は、世界中の人々の生活に影響を与えられるのだということを強く喚起させるものとなった。

ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァ・ブラジル大統領は、UNI世界大会にあてた書簡の中で、聴衆に呼びかけた。―「私たちは同じ言葉を持っています。それは労働者の言葉であり、抑圧された人々の闘いを表現しています。その言葉は、平等の歌を歌い、尊厳ある生活とより良い未来を夢見るのです」