UNI世界大会2日目:世界中の労働者の緊急課題に取り組む

2023年8月30日、第6回UNI世界大会2日目は、松浦昭彦代議員(UAゼンセン)が司会を務める中、ルーク・トライアングルITUC書記長代行が基調講演を行い、「労働者の力を高め、ルールを変えるために共に立ち上がることによってのみ、企業権力に打ち勝つことができる。それが私たちの共同の闘いだ」と呼びかけた。

最初のセッション『公正で包摂的な経済』では、フランク・ヴェルネケ代議員(ドイツ、veri.di)が、より良い団体交渉を確保するためにストライキや産別行動が有効であることを強調し、その証に同労組の組合員数が14万人増加したことを挙げた。

また、インフレとの闘いにおける成功を引き合いに出したヘクター・デール代議員(アルゼンチン、FATSA) も、「我々は交渉の場でも街頭でも労働組合の力を高めている」と同様の見解を示した。地球の反対側では、日本の小川敬太代議員(自動車総連)が、春闘がいかにして物価上昇から労働者を守ることに成功し、過去数十年で最大の賃上げを実現したかを強調した。また、自動車総連として、大企業の動向に関わらず、それぞれの企業組合が自ら目指すべき賃金水準を実現し、中小企業の底上げを実現していきたいと発言した。

フロアから発言した松田惣佑代議員(生保労連)は、同労組では「人への投資」を重視し、賃金改善をはじめとする総合的な労働条件の改善に向けた取組みを積極的に展開しており、今後も生保産業で働くすべての組合員の経済的・社会的地位の向上、ひいては生保産業の健全な発展に努めていく、と力強く発言した。

また、セッション『不平等、人種主義、差別に対抗して立ち上がろう』では、深見正弘代議員(全労金)が、日本が現在もILO第190号条約を批准できていない経緯に触れつつ、ILO条約に基づく整備が必要であるとの認識の下、同組織が労働組合内における議論と業界団体との協議を進め、2020年4月に国内法を上回る内容で「労働金庫業態におけるあらゆるハラスメント禁止ガイドライン」を策定したことを報告した。

モーリス・ミッチェル働く家族の党代表は、セッション『不平等、人種差別、差別に反対して共に立ち上がろう』の基調講演において、「経営側は、労働者が互いに対立すれば、自分が勝利することを知っている。労働者が自身の勝利を自らのものだと考える時、我々は勝利する」と呼びかけて、UNIの参加者を鼓舞した。

この基調講演後、清掃員、警備員、全米サービス従業員労組(SEIU)32BJ 支部の組合員が、ドラムとコールを響かせながら会場に入り、清掃員の公正な契約を求めてアピールした。UNI世界大会の参加者は、この米国最大のビル管理部門の組合キャンペーンに連帯すべく、フィラデルフィアの街頭で展開された集会に参加し、路上を練り歩いた。クリスティ・ホフマンUNI書記長は、グローバルな連帯の力を強調し、「世界中の組合員が今日、フィラデルフィアで清掃員を支援できることを誇りに思う。公正な協約を求めて闘う勇気ある清掃労働者は、単に生活のために闘っているのではなく、この国のハートとソウルのために闘っている。パンデミック時の彼らの献身は、尊厳を守り、家族を守り、地域を再建する協約を得ることで、正当に評価されなければならない。この極めて重要な連帯行進は、フィラデルフィアの街をはるかに超えて響き渡り、あらゆる場所で働く人々の模範となるものだ」と呼びかけた。

しかし、この日の勢いはここで終わらなかった。ジュリー・スー米国労働長官代行は、熱気に包まれたUNI世界大会で講演し、「バイデン=ハリス政権は皆さんを支持しており、労働者を第一に考えている」と述べ、低賃金労働者や移民労働者を擁護してきた自身の経験についても語った。「労働者に対する虐待をなくし、すべての人の雇用の質を向上させる上で、皆さんとともに行うグローバルな活動が、我々の使命にとって不可欠であることを認識している」と発言し、米国政府は外交を通じて労働者の権利を促進する活動を継続するため、世界労働戦略を発表する予定であると述べた。

続いて、セッション『安全衛生のために共に立ち上がろう』において司会を務めたジェラルド・ドワイヤー代議員(オーストラリア、SDA)が、 労働者が直面するメンタルヘルスの危機、長時間労働、生産性に関するプレッシャー、第三者からの暴力について、概説した。パンデミックはケア部門の労働者に大きな打撃を与えたが、そうした労働者のメンタルヘルスの課題は、長い間見過ごされてきた。

ミゲル・ズビエタ代議員(アルゼンチン、FATSA)は、同労組によるメンタルヘルス課題への取組みと、ケアに関わる労働者への支援について語り、「労働組合は、メンタルヘルス問題を可視化する必要がある。労働者がそうした課題について語ること、そして組合がそれに共感し、理解することを促していく必要がある」と発言した。

また、スウェーデン、フィンランド、日本から、商業における暴力やハラスメントを阻止する取組みが共有された。リンダ・パルメッツホファー代議員(スウェーデン、Handels)は、暴力やハラスメントから商業労働者を守るための同国の法律について語り、「顧客を出入り禁止にする法的権利も重要だが、労働組合や使用者のためのさまざまなツールを備えた包括的なワークショップも必要」と発言した。

永島智子代議員(UAゼンセン)は、「サービスを受ける側も提供する側も共に尊重される社会を創る!」というコンセプトのもと、小売業におけるカスタマーハラスメントや第三者による暴力の根絶に向けた同労組の取組みを報告し、従業員に対するアンケート調査の実施や、国会集会の開催等に触れた。地方自治体が独自にカスタマーハラスメント対策に着手している事例などを紹介し、「カスタマーハラスメント対策が社会全体で推進されるよう必ずや対策推進法の法制定を実現させる」と力強く発言した。

菅野秀則代議員(損保労連)は、長時間労働の是正に向けた取組みについて発言した。長時間労働の要因の一つに、時間外における問い合わせや至急対応依頼などの「商慣習」があり、これらの課題を解消する必要があるとした上で、「お互いに相手の働き方に配慮する」という考えを社会全体に広げていくことも有効だと述べた。また、同労連ではこうした課題認識のもと、世論喚起を図るべく、政労使学のキーパーソンを招いてシンポジウムを開催したことを報告した。

エリカ・カハラ代議員(フィンランド、PAM)は、「顧客が常に正しいとは限らない。攻撃的な行為や侮辱的な行為を非難することは、悪いカスタマーサービスではない。脅迫や侮辱、個人的な誹謗中傷を受けることは、誰の仕事でもない。労働者は自分自身を守る力を得る必要がある」と指摘した。

エンターテイメント業界では、過重労働や長時間労働が横行している。マシュー・ローブ代議員(米国、IATSE)は、労働者の休息時間増を求めて闘い、それを実現した同労組の革新的なキャンペーンについて「この業界のプレッシャーが、エンターテイメント制作労働者の安全衛生リスクを増大させ続けるなか、労働組合はグローバルな連携と団体交渉を通じて反撃し、安全な職場を提供するという第一義的な責任を使用者に負わせなければならない」と述べた。

続くセッション『デジタル時代のディーセント・ワークのために、共に立ち上がろう』では、司会を務めたピーター・ヘルバーグ代議員(スウェーデン、Unionen)が、スウェーデンのテック企業スポティファイで働く労働者の、UNIを通じた国際的な組織化の取組みについて紹介した。

アラン・マカヴィニー代議員(米国、CWA)は、アルファベット労働者間の国際連帯の高まりに言及し、「我々は使用者がグローバル戦略を持っていることを知っている。我々もまた、グローバルに戦略を持たねばならない」とメッセージを発した。

フロアから発言した高須玲衣代議員(情報労連)は、変化の激しい環境の中、スキル向上のために求められるリスキリングへの対応について、会社と団体交渉を積み重ねてきたと述べた。そして人材育成政策を整備する事で合意したことを報告し、「再チャレンジやリカバリができるセーフティネットをつくるのが労働組合の役割であり、誰1人取り残されないために、仲間を守る私たちの役割はとても重要だ」と発言した。

中熊英樹代議員(JP労組)は、日本郵便が取組むデータ駆動型のオペレーションサービスや業務効率化などの取組み等に触れつつ、DX化の取組みは、働く環境や働き方に大きな変化を及ぼす可能性があり、雇用を守りつつ、労働生産性を高める取組みとなるよう、変化に合致した人事制度や処遇の見直しも必要であると指摘し、「先端技術を活用し、その結果を働く者の幸せに繋げていくためには、労働組合が将来を見据えて能動的に取り組むことが重要」と発言した。

クァク・チャンヨン代議員(韓国マイクロソフト労組)は、マイクロソフト労組のキャンペーンと、韓国におけるテック労働者の組織化の状況について報告した。同労組から始まった取組みは、グーグル、アマゾン・ウェブ・サービシズ、ツイッター、セールスフォース・ドットコム、メタにおける組織化も刺激している。

ローウェル・ピーターソン代議員(米国、全米東部脚本家組合)は、「我々がテクノロジーをコントロールすべきなのであり、テクノロジーが我々をコントロールしてはならない」と強調し、米国のテレビ・映画脚本家が、デジタル時代における公正な業界を求めて決行しているストライキについて報告した。UNI世界大会の参加者は、脚本家組合や俳優労組のSAG-AFTRAに連帯し、集会に参加した。