UNI世界大会1日目:組織化、ジェンダー平等、立ち上がるアマゾン労働者

2023年8月28日、 第6回UNI世界大会が米国・フィラデルフィアで初日を迎え、組合の力、女性の権利、Make Amazon Pay(アマゾンに支払わせる)をテーマに、盛りだくさんの議題で幕を開けた。

クリスティ・ホフマンUNI書記長は、「我々はこの大会に結集し、次の4年間を展望すると同時に、グローバルな労働組合主義の力を称え、再確認していく。労働者に敵対する勢力が大きくとも、我々の力はもっと大きい。世界最大の民主主義運動であり、さらに大きくなる可能性を秘めている。我々は団結し、戦略的でなければならない。礼儀正しくお願いしていては、これらの目標を勝ち取ることはできない。闘わなければならない。闘えば、勝利を得られる」と呼びかけ、「我々の使命は、労働者の生活を向上させ、グローバルなパワーバランスを変えるために組合を強化すること。そしてこれは、ただ単に語るだけでなく、実際に変化をもたらし、物事を成し遂げるということ。そして、我々はそれを実践している」と参加者を鼓舞した。

この日の第1部「すべての人のために組合の力を構築しよう」は、ロシオ・センツ代議員(米国、SEIU)の司会で進められ、各地域のUNI加盟組織による、組織化の成功にスポットライトが当てられた。

トニー・クラーク代議員(米国、メジャーリーグ選手会)は、組合が初めてマイナーリーグを組織化して協約を締結し、健康手当や年金、そして報酬の改善を獲得したことを報告した。

松坂武敏代議員(UAゼンセン)は、今年の春闘での部門全体の賃金交渉における、歴史的に高水準となった成果について報告するとともに、「労働組合に対する社会の注目を大いに集め、特に労働組合への関心が低いとみられる青年労働者や、組合未加入のパートタイマー労働者に、労働組合の重要性を訴えることが出来た。この賃上げの流れを来年以降も推し進めることで、労働組合の存在意義を社会に示し、組織化や組合への新規加入につなげていきたい」と意欲を語った。

グローバル協定を通じた組織化
UNIと多国籍企業の間のグローバル協定は、厳しい環境で組織化を進める労働者を支援する上で、大きな役割を果たしている。クリスティーナ・ゴゲスク代議員(ルーマニア、FSC)は、 UNIがスーパーマーケット小売業のオーシャンと締結したグローバル協定によって、今年3月にこのスーパーマーケット・チェーンで組合結成の道が拓かれたことを共有し、「我々の目標は、団体協約の交渉を開始できるよう、来年4月までに組織率を少なくとも35%にすること。今のところ、組合員数は順調に伸びており、予定通り法的承認を得られると確信している」と期待した。

同様に、リズ・パサロ代議員(ペルー、SutraH&M)も、UNIの支援を受け、スウェーデンのファストファッション大手H&Mとのグローバル協定を活かした同労組のキャンペーンについて「初の団体協約を締結し、6年以上ぶりの昇給を実現した。経営側は中立の立場を維持することを約束した」と語った。

UNI組織化センター
大会では、東欧(COZZとUNISEEOC)、コロンビア(COE)、西欧(EPOC)にあるUNIの地域組織化センターによる優れた活動についても、それぞれ参加者に共有された。

オリバー・レティクUNI欧州地域書記長は、「我々はポーランド、ハンガリー、チェコで、ケア、ICTS、印刷・パッケージングの各部門において、組合のない職場で組織化を行い、商業部会と金融部会では組織率を高めるキャンペーンを実施した。昨年だけでも、COZZはポーランドのタレス、ハンガリーのエランダース、チェコのアルツハイマーに特化した介護施設の組織化に成功しており、現在も、グーグルやオルペアを含む6つのキャンペーンを継続中だ。この戦略が目指すのは、単に少数の企業、部門、国で成功することではなく、新自由主義の新たな攻撃に耐えられる強靭な労働組合の機構を欧州全土で実現することだ」と報告した。

マルシオ・モンザネUNI米州地域書記長は、「我々のブレイキング・スルー組織化キャンペーンは、世界中の組合が設定した戦略の中でも最も重要な一つだ。このキャンペーンを実施することで、人々の生活に真の変化をもたらしうる労働者の力を構築できると期待しており、不平等や貧困と闘う上で役立つだろう。 米州で70人以上がCOEで働いており、組織化の発展、より良い団体交渉の実現、民主主義の擁護を後押しする、より広範な戦略の一部だ」と述べた。

キャロル・シェファー代議員(アイルランド、CWU)は、「EPOCの利点は、草の根の代表から上級組合役員に至るまで、組合の全レベルで能力を開発できること。このアプローチによって、労働者の力を高める最善の方法について、一貫した共通の理解を得ることができる」と説明した。

グローバル労組アライアンス
大会では、力を構築するための国際ネットワークとグローバルな連帯の重要性についても、強調された。

アフリカにおけるUNIのDHL労組アライアンスは、世界最大のロジスティクス企業であるDHLの組織化において目覚ましい成功を収め、これまでアフリカ大陸の5か国から32か国に拡大している。イブラヒム・サール代議員(セネガル、SNTPT)は、「国際的なアライアンスを持つことは重要であり、多くの国々で、団結する自由と組合を持つことで、さらに多くの人々が恩恵を受けられるようになる」と、述べた。

ロザリナ・ンガコプ代議員(ニュージーランド、Etu)は、警備労働者の公正な賃金協約の確保に向けた同労組のキャンペーンについて語った。この協約は部門全体レベルでの全国交渉の土台を築くものであり、E tūは、このキャンペーンでUNI米国加盟組織SEIUの支援を受けている。

UNIはまた、新たな資金調達イニシアチブを立ち上げ、個人がオンラインで資金を拠出することで世界的な連帯を示し、世界中の組織能力を高めることができるようにすることを発表した。

ジェンダー平等のために立ち上がろう!
午後には、テレサ・モーティマー代議員(バハマ、BFSU)が、ジェンダーの視点に立った交渉を提唱するUNI世界女性大会の動議について紹介し「協定の中に女性のニーズを盛り込むことで、女性だけでなく、家族や地域社会全体に影響を与え、女性が労働組合運動に参加する門戸を開くことになる」と述べた。

パネル・ディスカッションでは、職場で無視されがちな女性の問題が取り上げられ、パトリシア・ナイマン代議員(南アフリカ、SACCAWU)は、「不妊、流産、人工妊娠中絶、死産は、肉体的・精神的に壊滅的な影響を母親に与えうるのであり、肉体的回復には数カ月、喪失感から精神的・心理的に回復するにはさらに多くの時間を要する」と述べた。

アレハンドラ・エストゥープ代議員(アルゼンチン、ラ・バンカリア)は、「女性を支援するための条項を交渉してきた。卵子凍結治療休暇は、女性がこの治療を受けるために1労働日の休暇を全給与で取得できるものであり、代理母を通じて子どもを授かる場合の代理懐胎休暇もある」と付け加えた。

ルクサナ・パーベン代議員(バングラデシュ、GPEU)は、自身が主導した、衣料品工場における衛生設備の改善と安全性を求めるキャンペーンについて説明し、 「女性たちは、この問題がいかに重要かを理解し、闘ってきた。今は、専用のトイレがあるし、必要なときに着替えることができる。要すればトイレ休憩をとることもできる。そして最も重要なことは、脆弱であると感じることもなく、危険にさらされていると感じることもない、ということ」と語った。

世界中で労働組合が、ドメスティック・バイオレンスの被害者を支援する立場をとるようになってきている。キャロル・シェファー代議員(アイルランド、CWU)は、「アイルランドでは秋に、5日間の有給DV休暇に関する法律が導入される予定であり、被害者、使用者、そしてアイルランドの労働組合運動の勝利だ」と報告した。

また、寺嶋雪乃代議員(UAゼンセン)は、日本における生理休暇の取得率が0.9%と非常に低いことについて、有給ではないこと、名称が直接的すぎること、異性の上司には申し出にくいこと、まわりで誰も取得していないことなどを理由に挙げ、生理休暇を有給で休むことができるよう、組合として推進している、と報告した。また、更年期症状についても、セミナーやリーフレットを通して、職場における健康意識の向上に取り組んでいる他、更年期休暇制度の支援や、生理や更年期の症状で休んだ場合の有給義務化などについて、組織内議員とともに進めていると報告した。そして、性別や働き方を問わず、誰もが活躍できる社会を目指していく旨、力強く発言した。

MakeAmazonPay

大会初日の最後のセッションでは、世界的大企業アマゾンに関する熱のこもった議論が展開された。

討議の先頭に立ったのは、スチュアート・アップルバウム代議員(米国、RWDSU)で、アマゾンの慣行に対する責任を追及し続けることが急務であると強調し、「アマゾンほど21世紀経済の不正と行き過ぎを体現している企業はない。悪質な反組合主義、過酷な生産性目標、労働者の監視、不安定労働の利用、独占的なビジネス慣行、租税回避、極端なグリーン・ウォッシング等、この企業は、労働者、地域社会、地球、そして我々の未来に対する脅威だ」と訴えかけた。

アラバマ州ベッセマーのアマゾン倉庫で働くジェニファー・ベイツ代議員(米国、RWDSU)は、「これまで、組合潰しに何百万ドルも費やすことを良しとする企業で働いたことはなかった。だから組織化が始まったとき、辞めて転職するか、残って正義のために闘うか、決断しなければならなかったが、私は残って闘うことにした」と語った。

ステファイン・ヌッツェンベルガー代議員(ドイツ、ver.di)は、アマゾンの過剰な監視とアルゴリズムによる悪質な管理に反撃する必要性について、「我々は、アマゾンが労働者の行動を監視し、労働者にまともな仕事を提供しないような世界を望んでいない。アマゾンとの団体協約を求めて闘っていく」と訴えた。

地元フィラデルフィアから、ジェシー・モレノ代議員(米国、チームスターズ)は、アマゾンがそのすべての労働力に対して責任を負うよう要求し、「我々はアマゾンの荷物を配達し、アマゾンの車両を運転しているが、会社は世界に向けて、我々はアマゾンの労働者ではない、と言い続けている。我々には変革が必要であり、変革の時は、今だ」と呼びかけた。