2023年8月25~26日、歴史に彩られた街、フィラデルフィアにて第6回UNI世界女性大会が開催され、 73か国、202労組から582名が参加した。 労働組合運動のリーダー、女性の権利活動家、そして人種差別に抗する活動家など、様々な分野で権利のために闘う活動家が一堂に会する、非常に意義ある大会となった。
ミシェル・ケスラー代議員(米国、UFCW)が、「兄弟姉妹愛の街であるフィラデルフィアは、組合の街」と宣言し、2日間にわたるUNI世界女性大会が幕を開けた。この宣言が会場に響き渡り、参加者は労働運動の拠点としてのフィラデルフィアの豊かな歴史に思いを馳せた。フィラデルフィアの遺産、特に奴隷制との最初の闘いは、公正で公平な未来のための基盤を築いてきたのである。
クリスティ・ホフマンUNI書記長は、こうした運動が互いに交差し重なり合っているものであることを強調し、「組合の権利、女性の権利、人種的正義を求める闘いは、密接に結びついている。UNIの女性委員会の取組みは、こうした闘争において欠くことのできない一部だ」と述べた。
大会を通じて、多くの力強い発言が、職場におけるジェンダー平等の重要性を強調した。退任するパトリシア・ナイマンUNI世界女性委員会議長は、「今日、この組合の街、そして革命、独立、権利の歴史から『自由のゆりかご』としても知られるこの街において、世界中のすべての女性労働者に、立ち上がり、闘うことを求めたい。私たちの権利、自由、成果、声なき人々、平等、女性のために立ち上がろう!UNI万歳!」と呼びかけた。
ミラグロ・パウ代議員(ウルグアイ、AEBU)は、「現在は私たちのもの。未来は私たちのもの。世界は女性を必要としている」と述べて、ジェンダー平等に関する行動を一層強化するよう呼びかけ、ケイト・ハドソン代議員(英国、CWU)は、女性に過大な影響を及ぼしているパンデミックによる不平等の悪化に注目を促した。
工藤恵里香代議員(自動車総連)は、男女共同参画に取組む上で女性のリーダーシップを強化する必要性を強調し、「職場単位での女性の意識改革を通じ、女性組合役員数を引き上げ、自動車産業における男女格差をなくしていくことに貢献していきたい」と語った。
べロニカ・フェルナンデス・メンデスUNI機会均等局長は、会場にいた多くの人々の思いを共有し、 「女性の権利のための闘いは決して容易ではない。我々は一人ではないのだと知り、我々が持つ集団的な力から、パワーを引き出そう」と呼びかけた。
また大会では、ディーセントワークとジェンダー平等の必要性が、持続可能な未来の極めて重要な要素として浮かび上がった。ジュリア・フォックスUNI世界女性委員会副議長(オーストラリア、SDA)は、包摂的な経済成長とジェンダー平等は、持続可能性にとって不可欠であると強調した。クリスチャン・ド・ナシメント代議員(ブラジル、Sintetel)は、組合の研修にジェンダーの視点を取り入れることの重要性を強調した。
また、與那嶺裕加代議員(損保労連)は、女性活躍推進に向けた男性育休を推進する上で、「取得の申し出のしづらさや、取得後のキャリア不安などを払拭する必要があることから、業界経営側との対話の場において、必要性の理解促進や、育休取得者を支える職場の負担を解消する仕組みづくりなどを要請、課題解消に向け労使で取り組みをすすめている」と報告した。
藤井愛子代議員(情報労連)は、「ジェンダー平等に関する労使協議の場を持つ組合においては、行動計画への意見反映や、組合員からの要望をもとにハラスメント対策の強化や両立支援策の拡充を求める等の取組みが着実に行われているが、半数以上の組織では、労使協議の場が設置できていない」と述べ、待ったなしの状況を訴えた。
ジェンダー・ダイナミクスの形成におけるテクノロジーの役割についても議論がなされ、カリン・シェーネヴォルフ代議員(ドイツ、ver.di)は、デジタル化におけるジェンダーの側面を理解する必要性を強調し、情報への権利とサイバー・ハラスメントに対する取組みを提唱した。
多くの発言者が、女性に対する暴力と闘う緊急の必要性について強調した。アマル・エル・アムリ代議員(モロッコ、UMT)は、職場における暴力に終止符を打つための集団的な行動を呼びかけ、金久保茜代議員(UAゼンセン)は、飲食店における暴力やカスタマー・ハラスメントの現状および、経営者団体や、国会議員、地方議員への働きかけ、ビデオやグッズを活用した啓発活動などその対策について報告し、「暴力やハラスメントのない職場づくりに努めていく」と誓った。
テレサ・モーティマー代議員(バハマ、BSFU)は、UNIのメンタリング・プログラムを評価し、チェネル・カブレラ代議員(トリニダード・トバゴ、BIGWU)は、メンタリングと組合の支援を得て学位を取得するまでの道のりについて、共有した。
岡田香織代議員(UAゼンセン)は、「多様な働き方をする組合役員の存在は、組合員からの声を集めるためにも、労働組合の活動や方針に多角的な視点を組み込むためにも有効であり、労働組合全体の力を強化することにつながる」として、自らも女性の組合リーダーの育成に取組んでいきたいと語った。
大会1日目は、パキスタンのカリダ・マクスード代議員の「労働組合は、パキスタンの民主主義を守るために男女が協力できる場だ」との心に響くメッセージで締めくくられた。
女性大会2日目は、安全衛生と女性特有のニーズに関する議論から開始した。
ミヨン・チェ代議員(韓国、FKMTU)は、「私たちは与えられた使命を受け入れなければならない。女性には、女性組合員の利益を守ることができるという強みがある。私たちは傷つけ合うのではなく、助け合い、互いに愛情を注いでいかなければならない」と訴えた。
浅香朋子代議員(JP労組)は、同組織の「女性フォーラム」による女性が活躍できる環境づくりに関する政策提言活動を紹介し、育児休業や生理休暇、更年期障害の3つの課題について、成果を報告した。
また、保健医療分野では、労働者の7割が女性であるにもかかわらず、ケアを提供する人々のケアは見過ごされがちである。セリア・レジーナ・コスタ代議員(ブラジル、Sindsaude SP)は、「ケアを提供する人々の健康を守るために注意を払うことは、基本的な課題」と述べ、ヘレン・イェマネ代議員(イタリア、Filcams-CGIL)は、「女性が安全衛生に関する政策の策定に、より直接的に関与できるようにすべき」と主張した。
また、コン・ジヒョン代議員(韓国、KHMU)は、「なぜ私たちがセクハラや職場でのいじめ、睡眠不足に苦しまなくてはならないのか?これらの不公正と闘うため、共に立ち上がることが必要」と呼びかけた。
また、女性大会では、フアナ・オルメダ・ゴメス代議員(スペイン、FSC-CCOO)が紹介した、女子ワールドカップ決勝におけるルビアレス・スペインサッカー連盟会長の恥ずべきセクハラ行為を糾弾し、こうした行為の撲滅と責任者の解任を求める緊急連帯声明を支持した。
ヨハンナ・ヨンスドッティル代議員(アイスランド、SSF)は、労働運動に若い女性の声を取り込む必要性について熱弁をふるい、 「若者には計り知れない力がある。新鮮な洞察力とアイデア、新しい学び方やスキルをもたらし、変化に適応できる弾力性のある労働組合運動の構築を後押しできる」とし、「若者が潜在能力をフルに発揮できるよう、支援してほしい」と訴えかけた。
UNI世界女性大会は閉幕にあたり、キャロル・シェファー(アイルランド、CWU)新議長を選出した。同氏は、先達のすべての女性に感謝の意を表し、「どの国においても、先達の女性たちは、我々が連帯を築くための土台を築いてくれた。そして今度は、我々がそのレガシーを受け継ぐ時」であると語り、「女性が団結すれば、その力は誰にも止めることはできない」と強調した。
女性の権利を守り、推し進めていく活動家たちの共鳴する声は、ジェンダー平等と労働者の権利を求める現在進行中の世界的な闘いに、確固たる足跡を残した。