第9回UNI Apro東アジア労組フォーラム (2022年10月13~14日、台湾(ハイブリッド開催))

第9回UNI Apro東アジア労組フォーラムは、2022年10月13~14日、台湾においてハイブリッド開催された。日本、韓国、台湾、香港、モンゴルより述べ約200人が参加した。日本からは14組織73人(うち女性26人、女性参加率38%)が参加した。前回(2019年)、デモの影響で参加できなかった香港が参加し、モンゴルも前回に続き2回目の参加となった。

「東アジアにおけるポストコロナ時代の新たな課題と労働組合の対応」というスローガンの下、「ポストコロナの労働安全衛生と組合の対応」、「ポストコロナで加速するデジタル化に対応した人材育成と組合の対応」、「ポストコロナの職場におけるハラスメントと組合の対応」というテーマで、各国が取組みを共有した。

 開会冒頭、ホスト国を代表し、ウー・ウェンフォン中華郵政労組(CPWU)委員長および、来賓としてワン・アンバン台湾労働省副大臣より歓迎挨拶を受けた。石川 幸德UNI-LCJ議長は、ウー委員長をはじめ、台湾の準備ともてなしに感謝した。そしてラジェンドラ・アチャリャUNI Apro書記長就任後、初めての開催となること、また、香港およびモンゴルから再び参加を得ることができた。3年ぶり開催となる今フォーラムの成功を祈念すると述べた。また松浦 昭彦UNI Apro会長は、特に「仕事の世界における暴力及びハラスメントの撤廃に関するILO190号条約」に関するテーマが本フォーラムで初めて取り上げられることを強調し、東アジアでは同条約の批准に至った国はなく、批准に向けた各国の取組みなどを共有したい旨述べた。この他、クリスティ・ホフマンUNI書記長、ユン・チャンヒョンUNI-KLC議長(韓国)、チェン・ライハUNI-HKLC議長(香港)、オユンバヤール・チェルテムドルチUNI-LCM議長(モンゴル)から連帯挨拶があった。

 アチャリャUNI Apro地域書記長は「アジア太平洋地域におけるポストコロナ時代の新たな課題と労働組合の対応」と題した基調講演において、ポストコロナ時代は対面接触の仕事やリモートワークと出勤との複合的な仕事形態、Eコマースの需要増加がある。雇用形態は複雑化することが予測され、労働組合の関与が不可欠である。新たな課題に対応するため、労働組合は有識者とも連携して組合の影響力を強化すべきだ」と述べ、日本のロビー活動や政策提案などの事例を挙げて強調した。また各国と連携して、青年や女性の地位を高める取組みも継続して行っていく旨述べた。

 続いて、「ポストコロナの労働安全衛生と組合の対応(サブテーマ1)」の冒頭、ホフマンUNI書記長より「労働安全衛生を「人権」に:新たな働き方に伴う新たな労働安全衛生課題に対するUNIの取組み」と題する特別報告を受けた。ILO労働安全衛生の基準の説明やサービス部門での安全衛生、ケア部門のメンタルケアの重要性など事例を挙げて説明し、「労働安全衛生は世界中どの国でも課題になっておりUNIは重要視している。来年開催するUNI世界大会でもテーマに取り上げる。我々が結束することにより、新たな問題解決方法を見つけていきたい」と述べた。

★討論のポイント

サブテーマ1:「ポストコロナの労働安全衛生と組合の対応」

(1)リモートワークにおける労働安全衛生の課題と組合の対応

  • 日本(辻 耕平 情報労連中央執行委員): 2点の課題、①「つながらない権利」は、日本において働き方をめぐる大きなテーマであり、海外での事例も参考にしながら当該企業労使の対応を強化していくことが必要である。②「AIによる労働監視の課題」は、日本でのAI活用は積極的な社会実装を進めようとしているが、データに関するルール制約などがAI利活用を阻む要因となっており、法的拘束力のある横断的な規制は不要との政府の考え方がある。労働分野におけるAI導入については、「事前の労使協議の徹底」や「従業員への同意確認」などを担保することが重要であり、論理的側面からの法整備について政策アクションを行っていきたいと報告した。
  • 韓国(キム・ジョンウ 韓国事務金融労連(KFCLU)オラクル韓国労組委員長):在宅および遠距離勤務、アルコリズム、災害保険などポストコロナの労働組合の対応を報告し、組織化や対面相談など在宅勤務での労組対応の難しさを説明した。
  • 台湾(チャン・フーチ 台湾金融労連(TFFU)委員長):コロナ禍における職場の安全や長時間労働、交代勤務などの労働安全衛生の状況を説明し、メーデーを活用した組合の対応など報告した。

(2)エッセンシャルワーカーの労働安全衛生の課題と組合の対応

  • 日本(坂根 元彦 JP労組中央執行委員):安全衛生の取組み、長時間労働および時間外労働の取組み、感染症対策について報告した。また無人搬送車・搬送ロボットAGV(Automatic Guided Vehicle)の導入を紹介し、郵便・物流の自動化進展の影響を報告した。
  • 韓国(ソン・クミ 全国保健医療産業労働組合(KHMU)書記長):感染対策、長時間労働などのストレス、交代勤務などの保険医療産業の現状と、政府や産業別交渉などの労組の対応報告をした。
  • 韓国(チュン・ハナ 韓国サービス労連(KFSU)政策局長):小売店の休業義務の現状と制度を説明し、休業義務の制度は変更せず、現行を維持しながら多様な意見をとりまとめる方針の政府に対して、政府HPや抗議の公文書などで意見表明をしている報告をした。
  • 台湾(ジャオ・リンユ 嘉義医療財団法人関連企業組合(CYCHCU)委員長):医療現場の現状を説明し、感染リスクの低減や適切な報酬など必要であり、組合は医療スタッフの感染リスクの低減を主張していると報告した。

サブテーマ2:「ポストコロナで加速するデジタル化に対応した人材育成と組合の対応

(1)各国・各産業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の現状と課題

  • 日本(村上 瑞紀 自動車総連国際局部長):オンラインによる販売および商談、顧客がHPやSNSから情報を入手し購入の意思を固めてから来店する形態のマーケティング、電子制御車両や電気自動車増加による点検・整備のデジタル化の現状を紹介し、それぞれの課題を報告した。
  • 韓国(パク・ホンベ 韓国金融労組(KFIU)委員長):非対面金融サービスの拡張による店舗閉鎖の加速化などで発生した雇用縮小、業務負担の増加、金融消費者保護の弱体化等の問題点を挙げ、労働組合の取組みを説明した。
  • 台湾(リン・イーフン 中華郵政労組(CPWU)国際局長:DXの課題を業界別に挙げ、労働組合は、新たなテクノロジーは、より価値の高い生産的で創造的な仕事に集中できる職場環境になることを望んでいると説明した。また建設中のポスタル・スマートロジスティクス・パーク(物流オペレーションセンター)の紹介とその特長を説明した。
  • 香港(チェン・ライハUNI-HKLC議長):デジタル技術が全面に押し出され社会機能が維持することが可能になった反面、課題も多い。限られた資金の中小企業やデジタル技術を持たない労働者など。教育の在り方、技術分野に進出するのはまだ困難な女性など、デジタル技術の関心を高めていく必要性を説明した。

(2)DXに求められる人材育成と組合の役割(雇用の安定、リスキリングなど)

  • 日本(須齋 弥緒 損保労連事務局次長):技術革新が進む現状で、「人」ならではの付加価値を生み出す環境整備(雇用の安定)および「人への投資」の重要性やリスキリングの更なる拡充(人材育成)が重要であるとし、その取組みを報告した。
  • 韓国(キム・オクラン 医療産業労組(FKMTU)教育担当部長):非対面診療を充実させるため、デジタル医療の技術開発を進めており、労働組合として、デジタル技術に対応する人材育成を行っている旨述べた。
  • 台湾(ハミルトン・チェン 公共テレビ労組(PRTSFEU)執行委員:公共テレビ放送の現状を説明し、労働組合としては非デジタル業務をDXの方針に合わせて従業員の教育・研修を行い、働き方改革をする。また人材開発への転換や賃金体制の構築に取組みたいと述べた。

サブテーマ3:「ポストコロナの職場におけるハラスメントと組合の対応」

(1)職場における暴力の実態とILO第190号条約批准に向けた各国の取組みについて

  • 日本(桐田 真弓 全労金書記次長):法律を上回る「禁止」を盛り込んだ「労働金庫業態におけるあらゆるハラスメントの禁止ガイドライン」の策定と取組みを報告した。ILO第190号条約をどう具現化するか、①ハラスメントは人権問題である、②業務に関わる全ての人を対象とする、③全ての場所・ツールを対象とすることを盛り込んだものである旨報告した。
  • 台湾(リー・ハンチー 中華電信労組(CTWU)国際局長):反職場暴力・ハラスメント機構の構築や男女雇用平等法、ジェンダー平等教育法、セクハラ防止法など、CTWUと中華電信の連携した取組みを報告した。
  • 香港(キャロル・チャン 小売商業被服一般労組(RCCIGU)委員長):ILO190号条約について、中国返還前はイギリス政府によりILO条約を批准していたが、現在は中国の一部であり、国連人権報告書によると中国は条約に批准しないと思うと説明した。

(2)ハラスメントや暴力の撲滅に向けた組合の取組み

  • 日本(中島 麻紀子 生保労連中央副執行委員長):「職場におけるジェンダー平等」および「ワーク・ライフ・バランスの実現」を中期取組み方針とし、ハラスメント対策の強化は、双方の取組みの柱として位置付けている。組織としての取組み紹介や、法改正の動きを踏まえたハラスメント防止に向けた対応を強化する必要性がある旨述べた。
  • 日本(佐藤 宏太 UAゼンセン流通部門執行委員):厚生労働省に働きかけた結果、2022年度に厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」が完成した。秋田県での事例やUAゼンセンの活動を紹介し、産別を超えた取組みが推進されるよう連合とも連携しながら進めたい旨報告した。
  • 韓国(オ・スジョン 韓国郵政労組(KPWU)委員長):職場内のパワハラやいじめ根絶に向けて、2022年2月、「労使合同パワハラ根絶宣言式」を開催し、毎月11日を相互尊重の日として、パワハラ改善に努力することを説明した。
  • 台湾(パトリシア・フン 公共テレビ労組(PTSFEU)):セクハラ、パワハラの事例をそれぞれ挙げ、前者は『ジェンダー平等委員会』を立ち上げて会議を行い、申立て後2か月で解決するよう対応しており、後者は現状明確なルールがないので今後は策定していきたいと説明した。

閉会では、ハン・シーフェン 台湾金融労組(TFFU)書記長より統括があり、フォーラムのまとめとして共同宣言を採択した 。次回、第10回フォーラムは、2023年、日本で開催する予定。

【司会者】

  • 開会/基調講演:(台湾)ロー・フェジュ 中華郵政労組(CPWU)書記長
  • サブテーマ1:(日本)古賀 初代 印刷労連 副中央書記長
  • サブテーマ2:(台湾)チア・パオリン 中華電信労組(CTWU)委員長
  • サブテーマ3:(韓国)カン・ヨンベ 保険医療労働組合(KHMU)情宣部長
  • 閉会:(台湾)ウー・ウェンフォン 中華郵政労組(CPWU)委員長