
2022年9月27~29日、ベルギー・アントワープで開催された「コンタクトセンター組織化フォーラム」に、フランスからフィリピン、バングラデシュからブラジルまで、26か国のUNI世界ICTS部会加盟組織が結集し、コンタクトセンター産業の根本的な変革とリモートワークによる心身の健康リスクに関し、労働者のアジェンダを提示した。
カスタマー・サポート、投稿内容のフィルタリング、その他のリモートサービスの提供に携わる労働者を抱える世界のコンタクトセンター産業は、約900億ドルの規模で、年間3~5%の成長を続けている。
パンデミック以来、この業界ではリモートワークの傾向が爆発的に強まっている。コロンビアのハベリア大学で教鞭を取るジメナ・ボテロ・サラッサ准教授は、UNIが委託した調査の要旨を報告した。近々公表されるこの報告書は、29か国で労働者の調査を行い、リモートワークの影響を世界的に分析、概観したものであり、同氏は「オフィス勤務と在宅勤務の間には労働条件に大きな相違があることが分かった。リモートワーカーを保護するために、法律の整備が必要だ」と強調した。
オフィス内または遠隔地で働く人々に対する過度な監視は、コンタクトセンター業界の特徴であり、さらにはAIの利用が進むことで、賃金は低下している。
バレンシア大学のエイドリアン・トドリ・シグネス教授は、 AIによって企業は採用コストを削減し、労働者のパフォーマンスを細かに監視することで、インセンティブではなく脅しによって労働者を管理し、誰が組合に加入して賃金や労働条件の改善を求めて闘う可能性が高いかを見つけ出すことができるようになるとを指摘、「アルゴリズムは仕事を奪うのではなく、賃金を奪っていく」と述べた。
コールセンター労働者のデジタル権について講演したバーボラ・セヌサコワ氏は、コンタクトセンター企業が収集している労働者の情報について、組合側から問題提起をしていくことを助言した。例えば、それは本当に必要な情報なのか?その情報は妥当なのか?労働者の身体的特徴や外見について収集された生体認証データはどうなるのか?そして根本的な問題として、情報収集について労働者の同意は得られているか?-といった問題についてである。
会議では、コンタクトセンター労働者、特に連絡が取りにくく仲間から孤立しているリモートワーカーを組織化するために使用されている方法が共有された。
英国通信労組(CWU)で副書記長を務めるアンディ・カーUNI世界ICTS部会議長は、「今回のフォーラムで得られたツールは、在宅勤務の影響について理解する上でも、我々の運動にとって転機となるものだ。非常に規制の緩い業界において在宅勤務をしている労働者が、どのような状況に置かれ、今も置かれているのかを示す具体的な証拠だ。このフォーラムを経て、我々は組織化の取組みや使用者・政府への働きかけを積極的に進めていけるようになる」と締めくくった。
会議は、FES財団の支援の下、ベルギーの加盟組織ACV-PULSが主催した。