2022年6月14日からパキスタンで未曾有の豪雨が発生し、広範囲にわたる洪水と地滑りが発生し、人命、財産、インフラに甚大な被害が発生している。
同国では、3,300万人以上が被災し、1,480人が死亡、12,800人近くが負傷している。9月中旬の1週間だけでも、パキスタンでは約1,000kmの道路、23の橋、55,300棟以上の家屋が損壊・倒壊している。合計約120万戸の家屋が被災し、約56万9000戸が倒壊した。連邦政府は、同国の地方行政160区画のうち81地区を「大規模被災」に分類している。 過去30年間の平均雨量と比較し、 8月27日時点で バロチスタン州では5.1倍、シンド州では5.7倍の雨量を記録した。
こうした被災状況にもかかわらず、パキスタン郵便は、人々にとって必要不可欠なサービスを提供し続けている。1,500人以上の郵便配達員と家族が洪水の影響を直接受け、家屋を失う等の大きな被害を受けた。
ラジェンドラ・アチャリャUNI Apro地域書記長は、「パキスタンの郵便労働者の多くが甚大な人的被害に遭い、国土の約3分の1が水没しているにもかかわらず、配達を続け、今も人々と地域社会をつなぎ続けている」述べ、「このことが示すのは、郵便が、特に危機的状況において不可欠なサービスであるということだ。我々はこの困難な時期にも、国が再建される時にも、重要な存在である郵便労働者に連帯する」と語った。
UNI世界郵便・ロジスティクス部会は、パキスタンの郵便5労組を含む世界90か国250万人を超える郵便労働者を代表している。コーネリア・ベルガーUNI世界郵便・ロジスティクス部会担当局長は、「パキスタンの49,900人の郵便労働者に、心よりお見舞い申し上げるとともに、連帯の意を表明したい」と述べると同時に、「今回の洪水は、同国の歴史上最も大きな被害をもたらしたものであり、郵便の価値だけでなく、気候変動対策の緊急性も示している」と指摘した。
著名な気候科学者で構成されるWorld Weather Attribution(WWA)がまとめた報告書によると、この壊滅的な洪水は気候変動と関係している。気候変動モデルによると、人類の行動によって産業革命前より2℃気温が上昇すると、激しい豪雨などの異常気象が発生する可能性が高くなるという。
パキスタンでの大規模な被害は、国内および国際的な意思決定者と各国政府が、オルタナティブな未来のために責任と行動を取らなければならない理由を明確に示している。
UNI世界郵便・ロジスティクス部会は、郵便労働者にとっての最大のリスクの1つに、気候変動を位置づけている。郵便労働者は通常のサービスを提供する中で異常気象や外気温に直面しており、一方で郵便労働者と郵便インフラは、災害時に被災者や支援団体をサポートするために利用されている。そこでUNI世界郵便・ロジスティクス部会は、カーボン・ニュートラルな未来に向けた、郵便のためのグリーンニューディール案を策定した。郵便労働者は日々の業務の中で気候変動を感じており、UNIは可能な限り迅速に、あらゆる場所で気候変動に取組むことを自らの任務としている。
さらに、この数年間でUNI世界郵便・ロジスティクス部会は、万国郵便連合(UPU)と協力し、郵便事業者の自然災害時リスク管理に関するUPUガイドラインに意見を提起してきた。UNI世界郵便・ロジスティクス部会の主な目標は、労働者を守り、安全を確保することであり、これには、自然災害時にサービスや支援を提供する必要がある場合に備え、労働者が訓練、装備、対策を受けることも含まれる。
ベルガー担当局長は、「災害の最前線にいる郵便労働者は、可能な限り安全に職務を遂行できるようにしなければならない」と指摘し、「だが我々は、政策立案者に対し、気候変動がもたらす存亡の危機に対処する早急な措置を要求していかなければならない。労働者、地域社会、そして各国は、このような洪水がニューノーマルとなることに、耐えることはできない」と語った。