2050年までに循環型経済とカーボンニュートラルな未来を目指す―環境に配慮した道筋

気候危機:集団的な挑戦

2021年に、国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(いわゆるCOP26)にて、約200か国がグラスゴー気候合意を採択した。COP26では、2015年の歴史的なパリ協定で行われた当初の気候に関する公約を大幅に修正し、各国政府は世界の気温上昇を1.5℃に抑え、産業革命前の水準からプラス2.0℃を「はるかに下回る」水準で保つことに同意した。しかし、世界の平均気温はすでに約1.1℃上昇しており、世界が異常気象や海面上昇の危険な影響を回避したいのであれば、断固とした行動を取らなければならない。

世界における科学的コンセンサスは、温室効果ガスの排出を2050年までに可能な限りゼロに近づける、すなわちネットゼロにする必要があるということである。そのためには、現在の社会のあらゆる側面において、急速かつ広範囲で、前例のない変化が必要である。

アジア太平洋地域は、温室効果ガス排出量で上位10か国中4か国(2020年データ)を抱えており、ネットゼロ目標の達成において極めて重要な地域である。しかし、この地域の多くの国々は、環境を犠牲にしながらも成長を最大化する「大量生産・大量消費・大量廃棄」の直線型経済モデルから速やかに脱却することはできない。また、過剰な国際債務を返済するために十分な収入を得るため、直線型モデルに縛られている国もある。  

進むべき道としての循環型経済

排出量を年々増加させている既存の直線的経済モデルから脱却することが急務である。

COP2015以降の世界的な取組みにもかかわらず、世界の温室効果ガスは、2020年のパンデミック時のロックダウンによって生じた低水準の後、さらに高く跳ね返り、2021年に過去最高を記録している。解決策としては、9Rの概念(Refuse=不要なものを断る、 Reuse=再利用する、 Reduce=環境負荷を減らす、Redesign=再設計する、Repurpose=別用途に使う、 Re-manufacture=別の製品にする、Repair=修理しながら長く使う、Refurbish=改装する、 Recycle=リサイクルする)で特徴づけられる、循環型経済モデルの採用が挙げられる。

このモデルは、環境と社会の面でさらなる成果を求めつつ、経済的機会を組み合わせる体系的アプローチを提起するものだ。各国政府は、競争力を高め、より強靭なサプライチェーンを構築すべく、循環型経済の枠組みの可能性に着目している。同時に企業は、二酸化炭素排出量を削減しつつ、コスト削減、収益増加、気候関連リスクの管理などの業務改革を行うことができるようになるだろう。また、循環型経済モデルの利点は、近年のデジタル経済の成長によって拡大した「シェアリングエコノミー」によって、さらに強化される可能性がある。

環境に優しい道を歩むための連携

COP26では、世界のネットゼロ目標を実現するため、緩和、適応、資金、協力の4つの戦略目標が掲げられた。緩和と適応の柱では、各国政府は、脱石炭の加速、森林破壊の抑制、電気自動車への切替の促進、再生可能エネルギーへの投資の増加など、国別公約の改訂を求められている。

スリランカのクラシンゲ貯水池モラガハカンダは、雨水を使ってエネルギーを生み出す、水力発電と灌漑の多目的プロジェクト

これらの野心的な計画には、具体的な資金調達が欠かせないが、少なくとも年間1,000億ドルの資金が必要と推定されている。世界中の最も脆弱なコミュニティが、気候危機の緩和に向けた行動を起こすための資金を確保するためには、民間金融機関と公的金融機関の協力が不可欠である。国際金融機関は、パンデミックから経済を再建するための刺激策をとる際、人々と気候のニーズが考慮されるようにする上で、重要な役割を担っている。

アジア太平洋地域にとって不可欠な国際金融機関は、アジア開発銀行(ADB)である。

ADBストラテジー2030」では、気候変動への取組み、気候危機・災害に対する回復力の構築、環境の持続可能性の強化、農村開発と食料安全保障の促進に対するADBのコミットメントが強調されている。さらに重要なことは、ADBが支援するプロジェクトの策定・実施において、労働組合を含む市民社会との連携強化にも取組む点だ。同時に、労働組合は、労働者が誰一人として取り残されない脱炭素経済への公正な移行を支援、促進、要求するなど、気候危機に対応する政策を政府に要求していく上で、不可欠である。

UNI Aproは、15年にわたる取組みにより、ADBとパートナーシップを結び、マルチステークホルダー社会対話を通じて、循環型経済における融資機会に関する議論を活性化し、地域の議論を推進しうる立場にある。そして、このパートナーシップを通じ、ネットゼロ目標や、豊かで包摂的、レジリエントで持続可能なアジア太平洋地域の構築というビジョンを具体的に実現するチャンスが増えていくことだろう。

注)本記事は、アジア開発銀行第55回年次総会の市民社会フォーラムのためにUNI Apro金融部会が作成したコンセプトペーパーから引用。