UNIの新たな研究で、Eコマース企業は、実店舗を持つ大手小売チェーンの3分の1の法人所得税しか払っていない可能性があることがわかった。
UNI商業部会が委託し、FESが助成して作成されたこの報告書は、Eコマースへの課税が、国家、労働者、労働組合に与える影響について考察している。報告書によると、COVID-19パンデミックによりオンライン小売業の売上が大幅に増加しているにもかかわらず、アマゾン等のEコマース企業は、世界中の様々なタックスヘイブンに利益を移し、公正な納税の大部分を逃れていることがわかる。
2020年代の中頃までにオンライン販売が小売全体の4分の1に達すると予想される中、調査ではEコマース拡大の一部は租税回避によるものであることが明るみになった。また各国政府は、COVID-19危機によって公共支出が大幅に増加すると同時に、Eコマース企業の肥大化した利益に課税することができていない。ビッグテックを中心とした多国籍企業による所得税回避の影響は、世界的に税収全体の約10分の1にのぼると推定されている。その割合が5分の1にまで達する国もある。
報告書によると、Eコマース企業による租税回避はさまざまな形態で行われているが、例えば、給与に基づく税金を支払わないこともその一つだ。Eコマース企業は、従業員を直接雇用する代わりに「独立した」請負業者を利用することで、給与支出を30%も節約することができるが、これにより、社会保障や医療・教育などの公共サービスの財源、そして労働者の生活がおびやかされているのである。
また報告書は、Eコマースが環境に与える影響にもさらなる注意を払う必要があると指摘している。配送に要する時間がかつてなく短縮されたことや、個々の商品の梱包資材は、環境に大きなダメージを与えかねず、Eコマースの実質的な社会的費用を議論する際には、この点も考慮されねばならない。
さらに報告書では、Eコマース企業に対し、収益や利益に応じた税金を支払わせようとする取組みが紹介されている。例えば、法人税の最低税率を15%とする国際的な合意がなされたが、これは労働組合が要求する25%よりも低い税率である。
クリスティ・ホフマンUNI書記長は、「この包括的な報告書が示すのは、貪欲なEコマース企業が法的な抜け穴を利用して公正な税負担を逃れるのを防ぐため、労働組合がグローバルな税制度の抜本的な見直しを推進していかなければならないということだ。COVID-19パンデミックと気候変動という2つの危機に直面する中、Eコマースの好況で大きな利益を得ている企業が、労働者や環境、社会全体に対して責任逃れをしている状況が、正しいはずはない」と力説した。