大会2日目(2021年11月23日 日本時間15:00-18:00)は、「繁栄共有のためのグリーンファイナンスとクリーンエネルギー」と題したテーマ別討議からスタートした。 境田議長の司会により、マイケル・ブドルフセンUNI欧州金融部会議長・UNEP FI PRB市民社会諮問委員は、基調講演で、持続可能な金融は重要な課題であり、金融産業は、意思決定に際し、人権、労働条件、多様性等に配慮すべきである。気候変動への対応に関しても人権、ディーセントワークは前提条件である。UNEP FIは、金融機関が地球に対してよい影響を与えることを目的に69か国260の金融機関が署名した。UNIは、国際労働組合として気候問題に取組んでいく。ミャンマー軍事政権に対して投資を止めるべく取組んでいる。アジア太平洋地域の皆さんと連帯し、引き続き取組んでいく旨述べた。
続いて、池田賢志 金融庁チーフ・サステナブルファイナンス・オフィサーが登壇し、日本政府として地球温暖化対策の推進のために①製造業の省エネなど着実に低炭素化を進めていく「移行」の取組(トランジション)、②再エネなど既に脱炭素化の水準にある取組(グリーン)、 ③人工光合成など脱炭素化に資する革新的な技術の研究開発・社会実装等の取組(革新的イノベーション)に対するファイナンスの促進が重要である。カーボンニュートラルへの取組みに積極的に投資することで、公正な移行を進めていきたい。この分野においては、今後2千万人の雇用創出が見込まれており、新しい技術に対応できるスキルを身に着ける人財育成が重要になってくる。この点において労働組合の活躍を期待する旨述べた。
サンドラ・シレア オーストラリアン・スーパーESG経営上級アナリストは、当社は豪最大の年金基金運用会社であり、投資方針としてESGと環境保護を掲げ幅広い分野に関わっている。気候変動に関し、パリ協定の目標達成に取組んでいる。市場は気候変動リスクを評価の対象としており、更に重要視されていくことになる。「気候アクション100」や「オーストラリア・トランジション・イニシアチブ」と連携し、基幹産業へのテクノロジー導入のため現実的なポートフォリオで支援していく旨述べた。
ハイディ・アールデュピュイ アジア開発銀行持続可能開発・気候変動局上級社会開発専門家(中核的労働基準担当)は、ADBは北欧諸国の基金でCOP26においてプロジェクトを発表した。公正な移行のための労働者のスキル取得支援、コロナ禍からの復興プロジェクトを実施している。ジェンダー、自然災害、SDGsの実現、社会包摂、女性の労働条件改善、ガバナンス支援。CO2ゼロエミッションに取組み、横断的なオペレーションで最大限の効果を発揮していく旨述べた。
小林知樹 代議員(全信連、日本)は、弊行は信託銀行として銀行業務に加え不動産や資産運用など多様なサービスを提供している。企業としてカーボンニュートラルを目指し、UNEPに参画しているところ、アセット・マネジメントに関してもESGの取組みを進めている。今回の講演を聞いて、人材の確保や雇用の維持が改めて重要な視点だと感じた。ESG投資推進のためにも、今後は人材育成、リカレント教育、リスキリング等を労使で取組んでいきたい旨述べた。
プリヤラル部長より、2021年~2025年のUNI Apro金融部会活動計画の枠組みとして、「①労働組合の密度を高める(組織化、 組織強化)、②社会的対話プロセスの制度化、③経済に資する金融のための政策反映、④フィンテック及び新興企業との連携強化、⑤雇用確保のための生涯学習及び能力開発、⑥労働協約におけるリモートワーク・ガイドラインのための交渉」が提案された。
安達正美 代議員(JP労組、日本)は、JPにおいては、AIを活用しバックオフィス業務を効率化している。AIの活用によって処理スピードがアップし、利用者の利便性の向上及び業務負担の軽減に繋がっていると感じている。4,500人の人員削減を行うと公表しており、労働組合として大きな課題も抱えているが、新しい働き方に見合った労働条件とは何か、「AI」と「人による強み」を活かした働き方とは何か、海外の好事例を参考にプラス思考で取組んでいく旨述べた。
末留新吾 代議員(全労金、日本)は、全労金は、ハラスメント禁止の取組みについて2019年7月、定期大会で「あらゆるハラスメントの根絶に向けた特別決議」を確認し、事業体との協議を進めた結果、3月25日、「労働金庫業態におけるあらゆるハラスメント禁止ガイドライン」の制定が確認された。事業体は、法律にないことは積極的に取り組もうとはしない。であるならば、労働者の権利を擁護し保護するためにも、労働組合が事業体と協議し、労働協約とすることで法制化することが必要である旨述べた。
大会の最後に役員選挙が行われ、鍾馥吉台湾金融労連会長(TFFU、台湾)を東アジア地区運営委員として追加選出することが提案され、承認された。本選挙により、境田道正UNI Apro金融部会議長及びジュリア・アングリサノ同副議長が再選され閉幕した。