UNI Apro ICTS部会、安藤新議長の下、 IT・テック・ゲーム産業の組織化を目指す行動計画を採択

2021年9月1~2日、第6回UNI Apro ICTS部会大会がオンライン開催され、29か国15組織より、300人(代議員37人、オブ27人、ゲスト209人、スタッフ27人)が参加した。女性比率は30%だった。情報労連からは本部及び3加盟組織より計16人(代議員9人、オブザーバー7人)が出席した。

大会は、2017~2021年度UNI Apro ICTS部会活動報告を総括し、IT・テック・ゲーム部門の組織化に取り組むことを盛り込んだ野心的な2021~2025年度UNI Apro ICTS部会行動計画を採択した。最後に、2021~2025年度UNI Apro郵便・ロジスティクス部会委員会を選出し、議長に安藤情報労連委員長を選出した。

開会式の挨拶や代議員の発言では、今大会で退任した野田前議長への感謝の言葉と、安藤新議長への就任のお祝いが述べられた。

主な大会議論

セッション1:リモートワークの課題への対応

アンディ・カーUNI ICTS部会議長は、コロナ禍でリモートワークが急増する中、使用者による労働者監視の強化、労働者のプライバシー侵害や、メンタルヘルスへの悪影響が問題となっている。労組はこうした課題について団体交渉で交渉すべきだと強調した。安藤情報労連委員長は、コロナ禍においてオンラインを活用した各種機関会議やセミナー・研修の開催、組織化、平和行動を実施した経験から、今後の労働組合にとって重要なのは、①情報発信力、②「つなぐ」役割、③参加型の活動展開の強化だ、と強調した。インドネシアASPEKのハンダヤニ代議員は、政府と協議し、リモートワークに関する規制を作るとともに労働者への啓発活動も行っていくと報告した。スリランカ・メディアプロテク労組のカマラナス代議員は、リモートワークへの保障を定めた法律が整備されておらず、組合が交渉に当たることが難しい現状を共有した。

 

セッション2:組織化に関する取組み

「主要なグローバル・地域通信企業の組織化」では、バングラデシュ・テレノール労組、マレーシア・エリクソン労組より、在宅勤務が続く中での組織化に苦労しているとの報告があった。一方、ネパール・アクシアタ労組では、労使関係は比較的良好で7度目の団体協約締結を目指して交渉中であること、コロナ禍に在宅勤務者向け研修や全職員へのPPEの支給、隔離施設やオンライン診療の提供等を行ったことが報告された。

「コンタクトセンターの組織化と労働環境向上」では、パートンUNI世界ICTS部会担当局長が世界中で急増するコンタクトセンターに特化した組織化戦略を策定し活動を展開していることを報告した。特に、GAFAをクライアントとし、フィリピンやインドで11万人以上を雇用するフランスのテレパフォーマンス社については、劣悪な労働環境について苦情申し立てを行い、労働者の自由と人権を尊重するよう会社側に求めている。今後4年間は特にUNI Apro地域での活動に力を入れたいと加盟組織の協力を求めた。

「グローバルIT企業における組織化と組織強化」では、レバックUNI世界ICTS部会組織化担当から、IT労働者はあらゆる部門の企業に存在するが、決して労働環境がよいとは言えず、ストレスや長時間労働、ハラスメント、賃金交渉等の様々な問題を抱えており、組合を必要としている現状が報告された。韓国KFCLUのキム代議員は、オラクル、マイクロソフト、ヒューレットパッカード労組の組織状況や労使関係について報告した。オラクル労組は2年間ストライキ後、昨年末に初の協約を締結し、賃金を交渉中である。定期的な労使協議も行っている。ネパールUNITESのレグミ代議員は、ジェンダー、社会対話、マッピングなどの定期的な組織化や研修を実施している他、独自のモバイルウェブアプリも活用し、デジタル組織化を推進していると報告した。インドNCUのプラサド代議員は、特に中小のIT企業でコロナの影響による解雇が発生していること、組織化にはSNSやズーム等を活用していることを報告した。

 

セッション3:ミャンマー問題が通信産業に与える影響

アチャリャUNI Apro地域書記長からミャンマーの労働者や労働組合を巡る状況とITUCや他のGUFと連携したUNI Aproの取組みについて報告を受けた後、2人の来賓が講演した。石橋参議院議員は、ミャンマー民主化を支援する議員連盟事務局長として日本政府や外務省への要請行動等の取組みについて報告し、通信規制問題に関してUNI Aproと引き続き連携していきたいと述べた。国際人権NGOヒューマンライツ・ウォッチのロバートソン氏は、軍による通信規制や取り締まりの状況と多国籍企業の対応について報告した。フランス・テレノール社は、通信監視の要請に最後まで抵抗していたが7月に事業を売却・撤退を表明。売却先企業の軍事政権との関係は不透明であり、人権の尊重を担保するため、労働組合の協力を要請した。春川KDDI労組委員長は、ミャンマーにおける事業の現状と現地で働く組合員や従業員の安全確保の取組みについて報告した。

セッション4:デジタル時代のICTS労働者の組織化と代表制

鈴木NTT労組委員長は、NTT労組のオンライン組織化の取組み事例と課題について報告した。新入社員研修に合わせ対面一括で行っていた加入説明会をオンラインで1年に渡り断続的に実施した結果、100%の組織化を達成した。ズームの技術的な運用面の改善と加入拒否者への対応が課題である。台湾CTWUのリウ代議員は、競争が激化する中業績が低迷しており、コストカットの名の下に、教育研修の機会が減っていると報告した。シンガポールUTESのシン代議員は、ナショナルセンターNTUCと連携し、デジタル化による変化に対応できるよう最新の技能研修を労働者に提供していると報告した。パキスタンAPNEUのカン代議員は、2021年6月に協約を締結し、勤続3年の契約社員の正規化などに成功したものの、強制的な配置転換等の組合に対する嫌がらせが続いており、苦しい状況だと訴えた。