アジア太平洋地域のセキュリティ印刷関連労組、情報交換会

2021年7月12日、UNI印刷・パッケージング部会は、UNI Aproのセキュリティ印刷労働者を代表する加盟組織や組合代表及び欧州の講師を招いて、情報交換を行った。これは、6月9日のUNI Apro印刷・パッケージング部会委員会において、インドのセキュリティ印刷労組、ジャグディシュ書記長から、デジタル化の進展及びコロナ禍に伴う紙幣製造減少に直面する中、各国における対応状況について見聞する機会を設けてほしいとの緊急要請を受けて実現した。

UNI Aproからは、キャシンUNI Apro印刷・パッケージング部会議長(オーストラリア)、講師として梅原全印刷委員長が出席した他、インド、インドネシア、マレーシア、スリランカのセキュリティ印刷労組の代表が参加した。また、欧州からも講師が参加し、欧州における取組みについて理解を深めた。

梅原全印刷委員長は、「アジア及び日本における現状と将来に向けた取組み」と題する講演を行い、世界のデジタル化の情勢(キャッシュレス化の動向、中央銀行デジタル通貨の動向)から、日本社会のデジタル化の動向、キャッシュレスの方針・ロードマップ、キャッシュレス推進に向けた政府事業、日本銀行のデジタル通貨のスタンスと取組み等について詳細に説明した。最後に、労使一体の取組みを紹介し、デジタル化した社会においても、経済活動、国民生活の安定を図ることを責務とする国立印刷局の役割は今後も変わらないとし、労使で様々な課題を見極めながら克服に向けて共に取組んでいくことを強調した。

欧州中央銀行社会対話委員会でUNI欧州印刷・パッケージング部会の代表を務める、スペインFSC CCOO労組のマリア・アントニア・アラケ・アロンソ氏は、ユーロ紙幣印刷の現状について説明した。ユーロ紙幣製造・調達システムに、2015年以降、国立印刷造幣局の他、公共契約入札による民間印刷会社での製造が導入された。この官民モデルを推進する目的は、銀行券の供給の継続性確保、ユーロシステム内のノウハウ維持、競争によるコスト削減の促進、民間と公共部門のイノベーションの活用である。しかし、コスト削減と競争力を促進するために、公共事業としての銀行券製造の観点から離れ、自由市場モデルの力学を公共の製造に採り入れようとする懸念がある。また、多くの政府が電子決済を奨励する施策を推進する中で、銀行の大規模な支店閉鎖、ATM廃止等が行われ、農村部を中心に人々が基本的な金融サービスを受けられない状況が生まれる等、デジタル化による国民間の格差拡大も懸念される。そこで、デジタル通貨が通貨システムにもたらすリスクを回避するためには、開発の主導権を民間のプレーヤーだけに委ねてはならず、公的部門と組合が関与し民主的な方法で行わなければならないと主張した。

「現金は重要(Cash Matters)」という非営利組織の議長を務めるアンドレア・ニッチェ氏は、現金の重要性を提唱する運動について説明した。現金は(銀行口座の有無を問わず)とりわけ貧困層にとって唯一の決済手段であり生計を立てる手段でもある。現金使用には手数料はかからず、使用に関する情報の守秘性も保たれる。現金の使用に関して、貧富、銀行口座の有無、社会的地位、弁済能力、国籍、年齢、人種、ジェンダーによる差別はない。アンドレア氏は、金融包摂の点からも、個人の自由や尊厳が担保される点からも、現金の重要性を強調した。

インドのセキュリティ印刷部門9労組のうち、ナシックにあるセキュリティ印刷労組がUNIに加盟している。UNI及びUNI Apro印刷・パッケージング部会は、インドのセキュリティ印刷・造幣・製紙工場等9労組の連携強化を目指しており、毎年、インドで支援セミナーを開催してきたが、2020年はコロナ禍で現地セミナーが実施できなかった。そこで、ジャグディシュ書記長の要請を受け、インドの9労組全てに参加を呼びかけ、今回のオンラインによる情報交換会が実現した。ジャグディシュ書記長からは、各国の講師からの詳細な情報提供とUNIの迅速な対応に感謝の意が述べられた。

キャシン議長は、急速に変化する情勢を踏まえ、各国の状況に合わせた適切な戦略を策定するため、今後も定期的に情報交換・経験交流を続けていこうとまとめた。