ポストコロナの世界において社会対話を推進し、保険部門労働者の仕事の未来を守る~UNI欧州金融部会ウェビナー

2021年6月21日(月)日本時間21:00~23:00、UNI欧州金融部会は「ポストコロナ:保険部門労働者と労働組合を取り巻く環境変化」と題するウェビナーを開催した。

「コロナ禍が欧州保険部門の労働者と労働組合に与えた影響に関する報告」 ピエール・シャルル・プラディエ パリ大学・パンテオン・ソルボンヌ校経済学部准教授
COVID-19パンデミックにより、保険部門の企業及び労働者は、特に大きな影響を受けた。社会的不安から保険に関する仕事量が増大し、労働者の負担が増した。もともと業界ではパンデミック前、ほとんどリモートワークは行われていなかったが、コロナ禍により、極めて迅速にリモートワークに切り替えた業界でもある。しかし、急激な感染拡大により、労働者に対するPCスキル研修やネットワーク環境の整備は十分でなかった。
国ごと、企業ごとに取組みにばらつきはあるものの、労働者に対する一定程度の支援は行われていると言える。しかしながら、仕事量の増加、家族的責任を有する労働者へのサポートに関しては、適切な対応できていない場合が多い。ロックダウン中でも業務目標の見直しがなかった、通勤時間が無くなり、その分労働時間が増える傾向があり、様々な不公平や問題が顕在化したことは、今後の交渉において重要な項目になる。企業にとってリモートワークがコスト削減につながっている現実を見なければならない。オフィスコストが最大60%の削減につながったという回答もあり、ある企業はリモートワークを前提としたオフィス建設すら始めている。「つながらない権利」を含めた新しい働き方に関する原則が必要になっている。労使協定は十分な内容を包含できているか、仕事量の分担のルール化、リモートワーカーに対する差別防止、ジェンダーの公平性は担保されているか等を考慮すべきである。スペインやスロバキアにおいてつながらない権利など各国で法制化の動きが早まっている。今後は各国、各企業からデータや好事例を集積し分析、研究することでより良い原則を作っていくことが重要である。更に労使の協力の下、データ保護と労働者のプライバシー、AI監視に対する対応については、法制化も含めて取組む必要がある。

「#InsuranceWORK2030 -フィンランド保険部門の新社会パートナー・プロジェクト」 リーサ・ハルメ PRO フィンランド
フィンランド保険部門においては、社会対話を通じた新しい取り組みが成果を上げている。「保険の仕事2030」と題したプロジェクトでは、3つのテーマでウェビナーを開催している。「AIと新たなテクノロジーと生涯教育(2021年5月)」、「生涯教育と新しい習慣(2021年9月)」、「多様性と包摂性について(2021年10月)」ポストコロナの時代において、社会対話と労使交渉、仕事の未来に備えるために正しい知識を手に入れることは重要である。保険部門の認知度を高め、産業としての魅力を伝え、次世代人材の育成も重要になっている。また、組合役員を対象に研修を行いAIの基礎、ロボット化、デジタルトランスフォーメーション、労働者の権利、コンプライアンス等、最新且つ正しい知識を得て使用者との交渉に臨むことが特に重要になっている。

「持続可能な欧州保険部門のための社会パートナーの関与」 ヴィック・ヴァン・ケルレブローク UNI欧州金融部会 欧州保険社会対話コーディネーター
UNIが取組んだAIプロジェクトは重要だった。欧州の労使の枠組み、社会対話の枠組みは重要であり、産業界が正しい方向に向かうように働きかけるものである。その意味からもEUのAI協定締結はとても重要だった。AIを作るのも運用するのも人間であり、人間が中心のAI活用でなければならない。EUの共同宣言は画期的であり、今後AIが保険部門労働者にとって脅威とならないように取り組まなければならない。AIがどのように影響してくるのかが重要であるので、みなさんからの情報共有をお願いしたい。また、保険業界ではまだ男女格差がある。給与、昇進などに差があるのが現実である。UNIでは、これから「多様性・包摂性・非差別に関する共同宣言」を発出する準備を行っている。あらゆる差別や排除が無い職場を作る必要がある。

「イタリア保険部門のリモートワークに関する社会パートナーとの画期的合意」 モーリーン・ヒック UNI欧州金融部会担当部長
2021年2月、イタリアの保険部門において45,000名の保険労働者をカバーする協定を締結した。本協定の主な内容は、リモートワークは任意であり、労働者が選択できなければならない。団体交渉で得た権利はリモートワーカーを含めすべての労働者に有効である。ワークライフバランスの確保、つながらない権利の保障、IT機器、通信環境整備、安全衛生、食事補助、研修の権利などUNIが発表した原則に則る協定が締結できたのは大きな意味を持つ。労使双方の参画によって策定されたプロトコルが、団体協約に読み替えられ、各企業で実践されることが合意された。
https://www.uni-europa.org/2021/02/italys-insurance-sector-unions-signs-landmark-agreement-on-remote-work/

「危機的状況下における持続可能な枠組みに関するGenerali EWC共同宣言」 キャロル・ブルナー FBA CFDT フランス
コロナ禍によるロックダウンに端を発した新たな働き方の急激な進行に関して、当初経営側は消極的だった。喫緊の危機に関する共同宣言に取り掛かったのはちょうど1年前、粘り強い交渉と社会対話により、労働安全衛生、つながらない権利、経済的負担に関する共同宣言を発出することができた。本宣言の主な内容は、メンタルヘルスを含めた労働安全衛生の保護、リモートワークの基本原則を順守し、正しく活用すること、管理職、経営職を含めた研修機会の保障と提供、包摂性と機会均等の担保、家族的責任を有する労働者への支援及びリモートワークに関する経済的負担の補償等である。今後、リモートワーク及びAI利用に関する共同文書を発出する予定である。

アンジェロ・デクリストUNI世界金融部会担当局長
コロナ禍がリモートワークを始めとする新たな働き方を急激に進めてしまった。我々は、この急激な変化がメリットばかりではないことを自覚する必要がある。使用者はリモートワークの推進がコスト削減に繋がることを知ってしまった。今後は、デジタルアウトソーシングという流れを注視すべきである。銀行では支店の閉鎖、撤退が続いており、保険部門においては、オフショア化が進む懸念がある。社会対話が更に重要になってくる。プロトコルや共同宣言は協約ではないが、はじめの一歩として重要であり、我々の好事例の集積が世界各地域の加盟組織の助けになるはずである。