加速するDXに組合はどう立ち向かうのか UNI商業部会ウェビナー「デジタルトランスフォーメーションと小売業の未来」

2021年6月17日(木)日本時間14:00、UNI世界商業部会は「デジタルトランスフォーメーションと小売業の未来:部門別デジタル化に対処する労働組合の戦略」と題したウェビナーを開催した。
アジア太平洋地域のみならず、世界中の商業部門企業がデジタル化や自動化など新しいテクノロジーの導入を加速させる中、労働組合は大きな課題に直面している。この傾向は、コロナ禍により更に加速している。商業部門の仕事の未来は、大きな転換を迫られており、労働組合としてどのように対応すべきか、実態調査報告、労使関係、組織化、第三者からの暴力の防止等に関する報告が行われた。

ラジェンドラ・アチャリャUNI Apro地域書記長
コロナ禍によって脆弱だったアジア太平洋地域の労働環境が打撃を受けた。特にサプライチェーンへの打撃が大きく、加盟組織は労働安全衛生の確保に努力している。コロナ禍で商業部門の労働者は、メンタルヘルスのリスクや第三者からのハラスメントの脅威にさらされている。先日開催されたUNI Apro執行委員会では、活動計画において、より建設的な労使関係構築を進めデジタル組織化を含めた組織化を推進していくことを採択した。エッセンシャルワーカーの基本的な権利と労働安全衛生の確保に取組んでいく。
マタイアス・ボルトン UNI世界商業部会担当局長
これまでも商業部門労働者は、変化や危機に対応してきた。コロナ禍前から、デジタル化によるEコマースの台頭や第三者からの暴力の悪化を経験してきた。多国籍企業の考え方が変化し、食品小売労働者は、エッセンシャルワーカーとして社会の中で重要な位置づけと認識された。しかし、アパレル部門では危機感が高まっており、ビジネス環境の厳しさから労働者が守られなくなっている。

物流倉庫のロボット化・自動化と商業部門における従業員の追跡・監視デバイスの使用:新技術に関する最新情報と生産性及び労働条件への影響
マルセル・スパタリ氏 シンデックス・ルーマニア

コロナ禍の中、東アジアの企業では2020年の設備投資額が増加している。特に無形資産投資が増えているのは、デジタルツールやソフトウェアへの投資が増えていると分析している。世界中でデジタル化がかなり早いペースで進んでおり、無形資産への投資が増加している。アジアでは、Eコマースが激増しており、以前と比べて日用品、食料品が大きな割合を占めるようになった。また、コロナ禍で物流倉庫のロボット化、自動化に拍車がかかっている。アジア地域では完全自動化こそ最高のソリューションだと回答する企業も多い。単純作業の自動化によって、労働者はAIに監視されるリスクがある。明らかにプライバシー侵害に当たる対応も出てきている。労働組合はこうした技術についてしっかり監視しなければならない。

人間の価値、労働の質、人財力の向上によるイノベーションで未来を創る
八野 正一氏 UAゼンセン副会長、UNI世界商業部会運営委員会副議長、UNI Apro商業部会委員会副議長

グローバル化とデジタル化により経済社会構造が大きく変質する中、コロナ禍が加わり、私たちには、生産性をめぐる政策、経営、技術革新、働き方が問われている。持続的な成長のためには、付加価値を継続的に創出し、人材の価値、良質な雇用を中軸に置き、生産性を向上させていく以外に道はない。デジタル化を生産性改革の中心に置き、付加価値を高める視点からのチャレンジが必要である。今まで解決できていない構造的な課題とコロナ禍によって破壊されたものを建て直し、「生産性改革」を労働運動の視点からどう前進させていくかを考える必要がある。本講では「人間の価値、労働の質、人材力の向上によるイノベーションで未来を創る」という位置づけから、以下2つの提言を行う。提言1「企業ビジョンの再定義を図るべきである(成長経営から生産性経営へ)」提言2「持続可能なディーセント・ワークを構築し、人間の価値を高めるべきである」イノベーション創出の根幹は人材であり、人的資本に投資し、DXを動かしていく。
人材育成は、新しい価値を創造する人材と、その基盤を支える人材、両軸の育成が重要である。

オーストラリアの物流倉庫・Eコマース企業における組織化
バーニー・スミス氏 SDA、アレックス・ヴェリコビッチ氏 SDA
Eコマース企業への組織化に関し、オムニチャネル化した既存の小売企業については、既存の関係を活用し新しい事業の労働者を組織化している。生産性を増加し、労働者が公正な配分を得るためには何をすべきか。公平な税制が必要になっている。従来型の店舗のバックヤードがEコマースの倉庫として活用され融合が進んでいる。SDAでは、新しい業態における使用者、労働者が誰かを特定しなくてはならない。ギグワーカーの組織化に取組んでいるが、労働条件の向上、労働安全衛生の確保など課題は多い。物流センターの組織化には変化がみられる。組合加入には関係作りが重要であり、労働者を巻き込んでいくことが重要、信頼にこたえ、組合は事業を阻害するものではないことを理解してもらう。改善点は指摘しつつ、共通の価値を追求していくことが重要。会社と建設的な労使関係を構築し、通勤途上災害手当を勝ち取ったことで、組合員が増加し、今では入社研修時に組合加入を勧めるビデオまで流せるようになった。

「第三者からの暴力やハラスメントの防止:店舗におけるボディカメラの活用」 
ジェニファー・トラッド氏 SDA
現在、ウールワースでは一部の店舗マネジャーを対象として、顧客からの暴力防止を目的にボディカメラを活用する試みを行っている。長年、店舗における暴力撲滅キャンペーンを行っているが、撲滅には程遠い。該当する行為が発生しそうな場合、顧客に録画を開始すると伝えると、顧客の態度が変わるなど一定の効果が出ている。この取組は、あくまで顧客からの嫌がらせを減らすために使うものであり、正しく使用すれば問題ないと感じている。自分のチームメンバーが安全だと感じられるよう、話し合っておくことが重要である。ヨーロッパでは受け入れがたいかもしれないが、新しい技術であり、今後議論されることになると思う。SDAとしては、抑止力の面が大きいと考えている。コロナ禍で、顧客も不満が増えたと同時に小売労働者を見下す風潮がある中、プライバシーと人権尊重の検討が必要である。顧客を犯罪者にする前に食い止めることが重要であり、SDAは正しい一歩を踏み出したと考える。