ミシェル・ミュラーUNI印刷部会議長、アドリアーナ・ローゼンツヴァイクUNI印刷部会担当局長、トミー・アンダーセン・スウェーデン印刷労組(グラフィスカ)委員長を中心とするUNI印刷部会代表団が2008年11月16~19日に来日し、印刷関係労組と交流、標記セミナーで講演した。
印刷関係労組訪問
印刷労連
代表団は、印刷労連を訪問し、吉村副委員長、柿崎書記長と意見交換した。代表団は、まずUNI印刷部会の現状を報告した後、日本の印刷産業と印刷労連組織の現状について説明を受けた。日本では紙媒体からデジタル印刷へと変化する中、紙媒体部門の熾烈な競争、デジタル部門に進出可能な限られた企業による寡占化、印刷産業労働者の減少が見られ、大変厳しい状況の中にあることが説明された。代表団からは、中小企業でも技術革新を行い、発展しているイーランダー社(スウェーデン)の例が発表された。今後とも情報交換・意見交換していくことで合意した。
情報労連NTTクオリス労組
三木委員長から、NTTクオリスの現状について説明を受けた。NTTクオリスは、近代的な設備を誇り、キャパシティーは大きいが、広告の減少、電話帳の発行部数低下の中、一工場の閉鎖が通告され、組合として雇用と生活をいかに守るかの交渉に苦慮しているとの報告があった。
全印刷
11月17日に全印刷主催夕食会が開催され、全印刷からは竹井委員長、荒川副委員長、宇田川書記長以下中央執行委員会メンバーが参加し、代表団を歓迎した。竹井委員長は、ザグレブで開催されたセキュリティー印刷会議では大いに学ぶことが出来、企画に感謝していると述べ、継続を要請した。竹井委員長は、UNI-Apro印刷部会副議長の任に就いており、今後のUNI印刷部会活動の進め方についても意見交換した。
新聞労連
新聞労連では、豊委員長、木部書記長から、新聞産業をめぐる現状について説明を受けた。広告費の減少、発行部数の減少の中、どの新聞社も合理化を進めており、一部地域ではライバル社が共同して印刷会社を作り、アウトソースする例も出ている。分社、下請け会社の組織化が重要との点で一致した。フランス政府は、新しい新聞政策を発表し、12月には新聞労働者のストがあるとの情報も開示された。
広告労協
広告労協は、大手から中小まで日本を代表する広告会社を組織している。印刷、メディアと関係が深い業界だが、印刷会社は直接広告会社に事務所を置いて営業している。藤井広告労協事務局長からは、オムニコム、IPPなど多国籍企業へのアクセスを持ちたいとの希望が表明された。
この他、代表団は、加藤NTT労組委員長を表敬訪問し、UNI世界執行委員会、情報労連の役割について意見交換した。
UNI-LCJ印刷部会セミナー「欧州社会モデルを学ぶ」
ローゼンツヴァイクUNI印刷部会担当局長は開会挨拶で、昨年・今年の訪問を通じ活動への多くの示唆を得ていると日本の受入れ労組に感謝し、今後デジタル化が進行する中で旧来の労働者だけでなくホワイトカラーやIT労働者の組織化にも取組んでいくと語った。全印刷の竹井委員長は9月にザグレブで開催されたUNI印刷部会諸会議に出席し世界的な印刷産業の動向について新しい知見を得られたことに感謝し、本セミナーの成功を祈念した。
欧州社会モデルのケーススタディとして、まずミュラーUNI印刷部会議長(フランスFILPAC-CGT書記長)より、フランスの社会モデルを構成する重要な要素である労働法成立の経緯と内容、更に産別レベルの団体協約、企業レベルの企業協約について印刷産業における歴史、現状、課題が発表された。印刷産業労組の歴史は古く1881年に活版工の全国組織が結成されたのが始まりであり、1953年に印刷産業労働者全てに適用される産業レベルの団体協約が締結された。1968年以降従業員数50名以上の企業で企業委員会の結成が認められ、苦情処理や福利厚生活動を行っている。近年のEUの拡大、グローバル化に伴う国際競争の激化、新自由主義的なサルコジ政権の誕生により団体協約の影響力が低下しており、時代に合った協約策定のための交渉が求められている。理想の社会モデルはひとつではなく、国によっても異なるが、各国の経験を交換し労働者にとってより良い社会モデルを構築するべきである。
ふたつ目のケーススタディとして、アンダーソン・スウェーデン印刷労組(グラフィスカ)委員長がスウェーデンモデルの特徴である手厚い社会保障制度と労働組合が果たす積極的な役割について様々な統計を用いて発表した。同国は80%の組織率を誇るが、これは労働組合が失業保険基金を管理しているためである。基金は労使双方で負担され、それまでの所得の80%という手厚い給付金が補償される。スウェーデンモデルは法律ではなく、労使というソーシャルパートナー同士の交渉で決められ全労働者に適用される団体協約によって支えられ、これまではうまく機能してきた。しかし、2年前に労組に敵対的な保守中道政権が成立してから失業保険基金の給付や職業訓練が削減されるなど、手厚い社会保障を特徴とするスウェーデンモデルが脅威に晒されており、労働組合としては次回選挙での社会民主党政権の樹立を目指し闘っている。
ふたつの社会モデルが示された後、組織率の低下、ワーキングプア、非典型労働者の現状や両国の反組合的政権への労働組合の対応等について質疑応答が行なわれた。セミナー後は、同会場にてレセプションが開催され、参加者との更に活発な意見交換が行なわれた。
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