UNI Aproメディア部会、アジア太平洋放送連合と共同ウェビナー開催

UNI Aproメディア部会は、2021年1月22日、アジア太平洋放送連合(ABU)と共同で「コロナ禍における安全衛生」をテーマに、ウェビナーを開催した。
アジア太平洋放送連合(ABU)には、69か国・256の放送事業者・関連団体が加盟しており(2021年1月現在)、日本ではNHKや民放数局が会員・準会員となっている。UNIとABUは、2012年に放送産業の社会対話に関する地域協定を締結しており、UNI Aproメディア部会は、ABUとの関係強化を目標の1つに掲げている。
今回は、コロナ禍の中、取材や番組制作の最前線で、人々に正確な情報をタイムリーに提供すべく業務を遂行する放送メディア労働者の安全衛生をテーマに、労使双方の立場から報告し、専門家の知見を得るウェビナーとなった。

はじめに労働側を代表し、中村正敏UNI Aproメディア部会議長が、コロナ禍が番組の取材・製作現場に与えた影響について報告した。また、中村議長は最大の課題は、「職員やスタッフの安全を確保することと、質の高い、公共的なコンテンツを届けるというミッションのバランスをどのようにとっていくか」であると述べた。また、今回のコロナ禍においては、従業員の安全確保のために組合の介入が必要となる事態には発展していないとし、東日本大震災における原発事故の際、放射能に対する防護体制をどのように構築していくか、組合と会社側とが熾烈な交渉を行った経緯がベースとして労使で共有されているため、今回は会社側が率先して在宅勤務を進めていることに触れた。

次に、使用者側を代表し、メディアプリマ(マレーシア)のアズリン・レズワン氏が発表した。メディアプリマでは、メディア労働者の安全衛生ガイドラインを策定し、在宅勤務が可能な業務を洗い出し、出社が必要な場合は、接触を減らすローテーションを構築する等、早期にかつ率先して安全衛生の取組みを進めてきたことを強調した。また、在宅勤務となっても生産性は変わらなかったことから、収束後もコロナ以前に戻る必要はなく、柔軟な勤務体制を継続していく予定だが、在宅勤務によるメンタルヘルスの課題には継続して取組んでいきたいと述べた。

また、専門家として長く英BBCやABUで安全衛生を担当したアリステア・ホリントン氏は、「コロナ前から安全衛生手順の基本は変わっていないが、現場レベルで状況に応じた手順の見直しや再評価を行うことは重要だ」と指摘した。
労使が共通の課題を共有し、議論を深めていくことは、コロナ後を見据えた労働者の安全衛生を確保していく上で不可欠であり、UNI Aproメディア部会とABUは今後も連携強化を図っていくことを確認した。

ウェビナー後、UNI Aproメディア部会メンバーは、ABUとの共同ウェビナーについて評価を行った。参加者からはこのような情報交換は非常に有意義であるとの意見が多く出された。今後もABUとはシリーズで、在宅勤務やジェンダーに関するテーマで共同ウェビナーを開催していく。