UNI MEI部会世界執行委員会

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UNI MEI部会世界執行委員会は、2013年10月2~3日、ブエノスアイレスで開催され、ゲリー・モリッシー議長(英BBC労組BECTU)をはじめ、14人の世界執行委員と、南米を中心とする構成組織からの参加者27人が出席した。

冒頭、アルゼンチンのカルロス・トマダ労働大臣が挨拶を行った。アルゼンチンは軍事政権時代もあり、南米の中でも最も政情や経済情勢が安定しない歴史を経てきた。かつては政府に反対する労組や市民を軍部が殺害する「汚い戦争」の時代もあったが、現在は左派政権の下、「組合は国の一部」をモットーに、組合活動が民主主義的な議論に欠かせないと述べた。特にメディア労組はダイナミックで重要な役割を果たしていると強調した。

委員会は、前回UNI MEI部会世界大会(2011年、メキシコシティ)からの2年間で、状況がいかに変化し、次の世界大会に向けて何を中心課題としていくかという議論から始まった。この間を通じて変わらないテーマは、メディア産業での労働がクリエイティブな仕事であるが故に労働量と賃金のバランスが見えにくくなること、またそのために、十分なファイナンスがなければ容易に労働条件の悪化を招き、組合としても闘争が難しいという点に絞られる。そのため、流動性も高く、また非正規雇用の問題も大きく、なかなか安定した雇用に繋げられない。そうした状況に、国を越えて連帯していくと同時に、メディアにおける「良質な雇用」をどう確保していくかを中心に議論が交わされた。

そうした課題をより喫緊のものとさせているのが「デジタル化」の進展だ。単にインターネットの普及拡大という意味ではなく、デジタル技術の発展によってメディア産業では、これまでのような熟練した技術がなくても簡単に制作ができるだけでなく、出来上がったコンテンツを簡単にコピーできるために商品価値も低下する傾向が強まっている。アルゼンチンでは2019年10月にアナログ放送が終了し、デジタル化が完了する予定だ。日本では、デジタル化後も放送の分離よりは一体性を守る方向で議論が進み、非正規雇用の増大等の問題を抱えつつも一応安定しているが、水平分離が進行するアルゼンチンでは、自由競争によって参入する会社がコストを抑えるため、雇用状況も次第に悪化するだけでなく、番組を制作するプロダクションは粗製濫造の傾向が増し、さらに視聴者が離れていくという悪循環に陥りつつある。

デジタル化によって流動性が高まる労働市場の中で、いかに良質な雇用を確保していくか。日本の経験から伝えられることは、労使関係の信頼の中で安全施策を含む労働環境の整備に努める、経営側をそうしたテーブルにつかせる努力を継続的に行うことだ。

アルゼンチンでは、左派政権下で組合が政府の一部と言ってよく、メディアに関わる法律制定等でも活躍している。右派勢力からの攻撃は常にあるが、それに対しても大規模なデモンストレーション等で対抗し、表現の自由や多様性の確保を法律にいかに盛り込むかを追求している。メディア産業労働者はメディア関連の専門課程がある学校を卒業している必要があること、また社会的にも認知されている職能的な意識・つながりも、こうした組合の連帯を強化する役割があること、こうした連帯と政治や社会への働きかけの積み重ねで現在のポジションを獲得していることが報告された。

ギリシャでは、政府が公共放送を無理矢理閉鎖する事態に陥っている。再開と再雇用を求めているが未だ応じられず、6月1日から給与未払いが続いている。

UNI Aproから参加した中村正敏UNI Apro MEI部会副議長と、カイルザマン・モハマド委員(マレーシア)は本年8月バンコクで開催されたUNI Apro MEI部会結成大会の状況を報告、ABUとの対話の下で議論を進めてきたことを説明した。

ブレイキングスルーというスローガンの下、労働組合が社会からその存在を無視されず、企業にとっても有効な枠組みとして存在しうるにはどうすればいいのか、今後の課題として向き合うことを確認して、委員会は終了した。

 


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