フィリピンからの看護・介護労働者受け入れをめぐって

2009年6月25日、「国際移住とグローバルユニオン ~フィリピン看護・介護労働者の受け入れをめぐって~ 」と題したPSI-JCとUNI-LCJの共同セミナーが行われた。


2009年6月25日、UIゼンセン会館において、「国際移住とグローバルユニオン~フィリピン看護・介護労働者の受け入れをめぐって~」と題した PSI-JCとUNI-LCJの共同セミナーが行われ、約120人が参加した。本セミナーでは、日比経済連携協定(JPEPA)によりフィリピンから 273名の看護・介護労働者が来日したことを背景に、国際移住の現状や両国労組の対応のあり方が議論された。
最初に岡部PSI-JC議長が開会の挨拶の中で、外国人労働者は受入国と送出国の双方で労働者の搾取の問題があるとし、「連合の長谷川さん、京都大学安 里先生に考え方をお聞きして、パネルディスカッションでそれぞれの国の事情や課題を共有したい。」と述べ、外国人労働者に関わる問題は労働組合として取組 む必要のある課題であると訴えた。
次に、長谷川裕子連合総合労働局長による「連合の外国人労働者に対する当面の考え方について」の講演が行なわれた。長谷川局長は外国人労働者の受入国と 送出国の双方のあり方に焦点をあて、受入国に対しては、外国人労働者の人権を尊重し日本人と同等の労働条件を確保するべきである、また送出国に対しては、 人材流出を防ぎディーセントワークを推進する出稼ぎのない政策を目指すべきであると論じた。現在、日本の介護・看護労働は、激務であり離職率が高い。日本 人が魅力を感じない職場に外国人を受け入れるべきでなく、労働条件・就業環境の改善が求められると強調した。さらに外国人労働者技能研修制度については、 国際貢献という趣旨に反し技術向上につながらない単純反復作業が中心となっている、また低賃金の温床であることで、労働者は生活のために休日出勤や深夜労 働を余儀なくされる現状がある、と厳しく指摘した。この現状を打破するためには外国人労働者に対し、労働条件や生活環境などの正しい情報を与え、労働者保 護の法律について理解可能な言語で説明することが求められると訴えた。
そして、安里和晃京都大学大学院文学研究科准教授による「看護・介護のグローバル化と日本の位置づけ~互恵的な人材の受け入れは可能か~」と題する基調 講演が行なわれた。台湾、シンガポールなどのアジア諸国では女性の就業率が高く、家事労働や在宅介護のために外国人労働者を多く受け入れている。高失業率 下においても海外移転ができない介護労働に対する需要は増大しており、送出国は、貧困対策・外貨獲得・雇用対策の点から人の移動を好意的に見ている。しか し同時に、優秀な人材の流出や高齢化などの問題も残っている。また、自国への送金のため、移民労働者の離職率は低く、受入国の期待もきわめて高い。だが、 日本の場合、外国人看護師・介護福祉士候補者士については、特に前者について地位に関する曖昧さが残っていたこともありの特定の地位が定められていないた め、賃金のトラブルや社会的地位の低下などの問題点が見受けられる。安里准教授は、この状況を分析し、「外国人看護師・介護士は基本的なスキルを持ってい るものの、日本の資格を有していないことが問題となっている。ところが、日本の看護資格を日本語で受験して取得するには基礎的日本語だけではなく、日本人 にも難解な医学用語を修得した上で、試験に臨む必要がある。そのためには継続的な学習を可能とする条件整備が必要である。現在、受入機関で研修を行ってい るが、研修のあり方は基本的に受入機関に丸投げであり、受け入れの在り方に関して熱心な施設とそうでない施設の二極化が生じている。受入機関や研修者に対 する研修が求められる」と提言した。
続いて、アリス・チャンUNI-Apro商業部会担当部長の司会の下、ノーマン・グレッシャスAFW副委員長、佐藤克彦PSIアジア太平洋地域事務所長、ジュン・ウマリUNIフィリピン加盟協事務局長によるパネルディスカッションが行なわれた。
グレッシャスAFW副委員長は、「フィリピンの現状と課題」として、看護師の海外流出対策のための人材プール創設を提案した。また、移民労働者に対するディーセントワーク順守に重点を置き、特に日本人と同じ社会的保護を与え、労働組合に加入させるべきであると主張した。
佐藤PSIアジア太平洋地域事務所長は、「PSIの政策と活動」について報告した。グローバル化により物・金・情報と労働者が国境を越えることが加速度 的に増えている昨今、途上国では貧困、ディーセントワーク不足と高失業率の問題がある。雇用ミスマッチの原因は、使用者は雇用の柔軟性や低賃金を期待し、 労働者は高賃金・均等待遇・ディーセントワーク・能力を活かせる場を求めているからである。日比政府間の協議に較べて日比労働組合間の協議と協力は極めて 不十分であり、日比労組連携協定(JPUPA)こそが重要であると強調した。
ウマリUNIフィリピン加盟協事務局長からは、日本の組合へ具体的な意見提起がなされた。フィリピンの労働組合は今後、日本で働こうとする労働者の選考 から渡航前説明会までの一連のプロセスに関わり、派遣に対する適切な情報が得られるようにモニタリングしていきたいと述べると共に、日本の労働組合にも、 労働組合への加入を促し、日本の労働法や労使関係に関する情報を提供することによって、フィリピン人労働者を支援してほしいと要請した。同時に、海外から 看護・介護労働者を受け入れたことで日本人の労働条件が悪化しないよう、日本とフィリピンは国境を越えた協力をしていくべきだと訴えた。
これら意見提起に対し、アリス・チャンUNI-Apro商業部会担当部長は、移民労働者の人権保護が第一であるという共通点を見出し、送出国・受入国がお互いに労働条件を改善する基盤づくりをするべきであるとまとめた。
最後に、桜田高明UNI-LCJ議長が閉会の挨拶をした。「日本人の看護師・介護福祉士の過酷な労働条件や外国人労働問題への対応など重い課題はあるものの、今日を出発点に、これらの問題と向き合っていかなければならない」と強い決意と共に締めくくった。

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