UNI世界商業部会、サプライチェーンの取組みを議論

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UNI世界商業部会運営委員会が、2016年5月30~31日、スイス・ニヨンのUNI本部で開催され、14か国24人の委員、オブザーバー及びUNI本部役員/各地域書記長、スタッフ等、計32人が参加した。

委員会は冒頭、米国UFCWのオニール氏の退任に伴い、空席となっていたUNI世界商業部会議長職に、米国UFCWのアッペルバウム氏の就任を確認した。同氏は2017年6月に開催予定の次期UNI世界商業部会大会で議長が選出されるまでの間、暫定議長を務める。また、ドイツver.diのウリ委員の退任も報告された。委員会はオニール氏、ウリ氏両氏の多大な貢献に感謝した。

ジェニングスUNI書記長は挨拶の中で、ペルーで組織化活動をしていたUNI米州地域スタッフが追放されたことやブラジル大統領の弾劾、英国や北欧における労働運動への受容度の低下を懸念した。組合組織率と富の配分を図で示し、今後ますます失業者が増え雇用創出能力も低下することが想定される中、雇用の質も問わなければならないと強調した。ILO総会でようやくサプライチェーンが議論され、条約制定が期待される。ラナプラザ崩壊事故以来、組合の介入によって倫理的なサプライチェーンとするよう、企業に責任を持たせるようルールを変えてきた。

デシアノ委員(フランス)は、現在審議されている労働法案は商業労働者の労働条件及び団体協約を脅かすもので、ソーシャルダンピングにつながる危険性が懸念されており、この数か月、ストやデモ等、抗議活動を展開してきたと報告、商業部会委員会の連帯支援を要請した。委員会は要請を受け、フランスの労働者に連帯を表明すると共に、今後の経過を注視していくこととした。

ハネット委員(英国)は、6月23日の英国のEU離脱か残留を問う国民投票について説明した。EU離脱は戦後確立した秩序を破壊することになるためUSDAWは残留を主張しているが、ボリス・ジョンソン前ロンドン市長や、反移民、反外国人、反EUを主張するUKIP(英独立党)等の極右、国粋主義者的考えがEU離脱を提唱している。

八野副議長は、AIやデジタル化の雇用に及ぼす影響について、日本では雇用喪失数と人口減がほぼ同レベルと推定されており、UNIのアドバイスを得ながら対策を取っていくとした。

主な多国籍企業の組織化、GFA締結交渉、労組同盟について近況と成果を共有した。イオン及び髙島屋について、八野副議長から報告した。イオンはアジアを中心に順調に組織化を進めている。髙島屋は毎年労使でGFA検証を行っている。カルフールとはサプライチェーン(フランチャイズ)やダイバーシティに言及した新たな協定を締結した。H&M労組同盟を結成した。強力な商業労組が存在する米国やオーストラリアでのアクセス権をめぐる取組みと、香港、インド等、商業労組不在または脆弱な国での取組み状況を共有した。イケア労組同盟を結成した。トルコで組合結成、協約締結に至ったのは労組同盟によるグローバルな支援の成果である。ウォルマートに関し、南米及びアフリカでの労組ネットワーク会議を通じて、ロビイング活動やキャンペーンの調整を図っている。メトロに関し、パキスタン、ロシア等での取組み状況を共有。同社は事業を家電と食品・卸に2分割する計画があり注視していく。この他、チャンUNI Apro商業部会担当部長がマレーシアについて報告した。UNI-MLC商業部門はスウェーデンLOTCO及びUAゼンセンの支援を受け、イケア、イオン等でパートナーシップ労使関係に基づく組織化を推進している。マレーシアのイオン労組はUNI加盟が承認された。ジェイコブスUNIアフリカ商業部会担当部長は、欧米の小売多国籍企業の多くがアフリカに進出しており、労組ネットワークを通じた情報交換と支援の重要性を訴えた。

 

バングラデシュ・アコードの最新情報とサプライチェーンの取組み

バングラデシュ・アコードは5年の期限付き協定である。現在のアコードは安全検査の実施に注力しているが、将来は労働者代表が職場で安全衛生委員会をつくりモニタリングできるよう体制を確立しなければならない。そのため団結権の保護を2018年以降のアコードIIに入れるよう交渉を進めていく。また、米国UFCWからアコード研修部長としてダッカに赴任したばかりのブライド氏がビデオ会議で現場の様子を報告した。アッペルバウム議長は、「世界が注目したラナプラザも時間が経つと忘れられてしまう。5年で期限が切れると企業は『責任は果たし終えた』と言うかもしれない。我々の活動を継続的に周知していくべきだ」と述べた。また、サプライチェーンの呼称について、サプライヤーの地位を高める視点から、「バリューチェーン」と呼んでいると説明した。

郡司委員は、サプライチェーンの取組み事例として、自動車総連が推進する「WIN-WIN最適循環運動」の目的は、これまでの個々の企業単位での生産性向上重視から、企業間の付加価値を高め着実に循環させることで、バリューチェーンの全ての労働者の生活の安心、安定と向上を図ることだと説明した。

スノッディUNI SCORE担当局長は、サプライチェーンの取組みとして、アマゾン労組同盟の活動及びアマゾン・キャンペーンについて経過を報告した。アマゾンの各種事業を図で示し、UNI(サービス産業)各部会及びインダストリオール(製造業)に関わることを強調した。中でもEコマースは年々成長を続け、従来の小売店舗へも影響を及ぼしている。昨年世界総売上1070億ドルを記録したにもかかわらず、租税回避、労働者の搾取、強力な反組合的態度等、手強い企業だが、だからこそ各国で組織化していかなければならないと述べた。

続いて、デマテオUNI郵便・ロジスティクス部会担当局長が、商業部会と郵便・ロジスティクス部会が共催する、Eコマース・フォーラム(2016年10月11~12日、アイルランド・ダブリン)の計画を説明した。新しい労働の世界が出現し、UNI内の各部会間の連携が非常に重要になっている。Eコマースの成長で、従来の郵便部門や商業部門の雇用・労働条件に影響がある一方、国営郵便局及び民間物流会社にとってビジネスチャンスでもある。アマゾンの調査から始め、その報告書を議論のベースとする。どの分野で小売業と競合しているか? 雇用モデルは? 労働者へのリスクは? 労働条件格差は? 既存の組合はどう対応すべきか?等を調査し、UNIの部会横断的な連携の機会を見極め、協力関係を築くことが目的である。

委員会はこの他、UNI世界商業部会青年会議(2016年9月、ドイツ・ベルリン)の計画について説明を受け、UNI世界商業部会大会(2017年6月、ドイツ・ベルリン)での議論についても意見交換を行った。大会スローガンについて、“Stronger Together(協力して、より強く)”の提案があった。委員会は、各地域代表を交えた大会準備委員会を設置し、大会準備を進めていくこととした。


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