質の高い公共サービスと労働組合の役割

質の高い公共サービスは、国民の生活の質を維持・改善していくために必要不可欠な要素である。そして、質の高い公共サービスを実現するためには、公務労働者の公正な労働条件を決定する自律的労使関係が重要になるが、日本においては、国際的にも特異な例として、公務員に対する団体交渉権をはじめとする労働基本権が制約されている。

海外に目を向けると、財政上の要請、あるいは構造改革の名の下の民営化などにより、公務セクターが縮小され、その結果公務員のディーセント・ワークが脅かされる事例が少なくない。日本および諸外国の公務員に関する国際労働基準の適用状況を概観し、質の高い公共サービスと労働組合の役割について議論するため、連合は2月24日、東京で国際シンポジウムを開催し、約350人が参加した。

海外からは、カナダ公務員組合(CUPE)調査研究員のキース・レイノルズ氏、イギリス労働組合会議(TUC)シニア・ポリシーオフィサーのマット・ダイクス氏が、それぞれ公共サービスの現状と課題、及び労働組合の対応について報告した。カナダでは、80年代から右派政権が続き公共部門の締め付けや予算削減が行われてきたが、2006年に成立した保守党政権下で更にそうした政策が推進され、労働組合の結成や活動を困難にする法制度も審議中だ。組合側もキャンペーンやストライキ、政治活動を通じて対抗しており、状況を改善するには国民の理解と労働者全体の連帯が求められている。イギリスでも、保守党政権下で2010年以降の緊縮政策により、一人あたりの公共支出が23%削減され、2016年にはケアを必要とする高齢者230万人のうち100万人が公的支援を受けられなくなることが予測されている。こうした公共サービスの低下と民間へのアウトソーシングが進行するとともに、2010年以降30万人の雇用が失われ、賃上げも5年間凍結されたままである等、労働者をめぐる状況は非常に厳しい。組合としては、こうした状況が公共サービスの更なる質の低下をもたらすことを広く国民に訴えるため、ストライキやデモだけでなく、ITを駆使したデジタルキャンペーンやNGOとの連携、政治活動を積極的に行っている。

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パネルディスカッションでは、良い公共サービスとは、また、日本では公務員が人員削減等により過重労働を抱えているにも関わらず、労働基本権を公に主張しにくい社会的風潮が根強いことが指摘され、広く国民の理解を得るにはどうしたらよいか?が論点となった。これに対し、レイ ノルズ氏からは「労働組合は、労使闘争に時間を使いすぎた。これからは前向きに良い公共サービスを提供するために今何をするべきかに焦点を当て、ユーザーの視点に立つことが必要だ。カナダでは、公務員への社会的なバッシングは少ない。提供するサービスに対して一般の人からの信頼を得ることが最も大切だ」、ダイクス氏からは、「公共サービスの定義をしっかりとすることから始める必要がある。行き過ぎた準市場化はサービスの質を低下させる」とのアドバイスがあった。これを受けて、自治労の氏家常雄中央執行委員長(連合会長代行)は、「官民の隔たり無く、連合を通じた幅広い運動をしていきたい。質の高い公共サービスは国から押し付けられるものではなく、地域の住民との対話を通じて生み出されるものだ」と述べた。

UNI-LCJ事務局および加盟組合(情報労連、生保労連、UAゼンセン、全労金、自動車総連、JP労組)からも多数参加し、連帯を示した。

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