コンテンツモデレーターのグローバル労組アライアンス、テック企業のサプライチェーンにおけるメンタルヘルス・プロトコルの導入を要求

2025年6月18日、グローバルなコンテンツモデレーターの労組アライアンスが、大手テック企業に対し、インターネットユーザーを暴力的、衝撃的、または有害なコンテンツから保護する労働者に対し、サプライチェーン全体でメンタルヘルス保護措置を導入するよう求めている。この要求は、UNIの支援を受ける同アライアンス初の取組みであり、同時に初の報告書が発表された。

6カ国のコンテンツモデレーターを対象とした労働者アンケートと詳細なインタビュー、危機時の報道や緊急時対応に関する知見を基に作成された『画面の向こう側の労働者:テック企業が安全なコンテンツモデレーションのための新しいプロトコルを必要とする理由』は、モデレーターが直面するトラウマになるような、そしてプレッシャーの高い労働環境を明らかにし、不要な心理的被害を軽減するための具体的な措置を提示している。これには、PTSD、うつ病、バーンアウト、さらには自殺念慮を含むモデレーターへの支援策が含まれる。

持続可能なコンテンツモデレーションのための8つのプロトコル:
• 露出制限:時間制限や画像モデレーション技術を活用し、直接的な露出を削減する。
• 現実的な生産性目標:甚だしく悪質なコンテンツに対するすべてのノルマを廃止し、他の種類のコンテンツには「人間が管理する原則」に基づく合理的な目標を設定する。
• トラウマ対応トレーニングの義務化:モデレーターと監督者に対し、定期的なトラウマ対応トレーニングを実施する。
• カウンセリングを利用できるようにすること:24時間365日、従業員に支援サービスを提供し、契約終了後も継続する。
• 安定した雇用と生活賃金:正規雇用契約、生活賃金、および完全な福利厚生を整備する。
• 合同の労働安全衛生委員会:民主的に選出された委員会が定期的に監督と監査を実施する。
• 移住労働者の保護強化:搾取防止、雇用安定、労働者虐待からの保護、脆弱な労働者支援を目的とした政策を実施する。
• 団結権と団体交渉権:労働者の団結権を尊重し、承認された労働組合との団体交渉を妨げないよう尽力する。

クリスティ・ホフマンUNI書記長は「モデレーション業務にはストレスを引き起こすコンテンツへの曝露が内在する場合もあるが、トラウマは避けられるはず。他の業界では長年、効果的なメンタルヘルス保護措置が実施されてきた。テック企業がサプライチェーンにおける労働者を同様の保護措置で守らない理由は存在しない」と指摘した。

コンテンツモデレーターは請負業者を通じて雇用されているが、TikTok、Meta、Alphabet、OpenAIなどのテック企業は、トレーニング手順、レビューポリシー、モデレーションツール、パフォーマンス指標など、コンテンツモデレーションの核心的な側面をコントロールしており、請負労働者の労働条件について最終的な責任を負っている。今回調査対象となった労働者の80%以上が、使用者はメンタルヘルス支援を強化する必要があると回答している。

トルコのコンテンツモデレーターは、「首切り、児童虐待、性行為——これらの映像を何回見れば、何も感じなくなるのか?……私たちは人間としての能力を失ってしまう。感情を失ってしまう。幸せになれない。悲しむこともできない。ロボットになっていく感覚だ」と深刻な訴えを伝えた。

そして、「トラウマは、アルゴリズムに基づく生産性目標のプレッシャーでさらに悪化する。ノルマによってモデレーターは、理不尽なスピードで衝撃的なコンテンツを処理するよう迫られている。モデレーターは、低賃金の半分近くが生産性ボーナスから支払われていると報告している。これにより、労働者は大量の悪質なコンテンツを迅速に処理するよう促され、燃え尽き症候群のリスクとトラウマへの曝露がともに高まっていまる」と続けた。

チュニジアのモデレーターは、 「たった1年で、毎日の動画処理の目標は2倍以上に増えた。倍速や3倍速で動画を再生し続けなければ追いつけない。考える時間はない。処理する時間もない。目標を達成する唯一の方法は、トイレ休憩や食事、休息を省略すること」と訴える。

自動化はコンテンツモデレーションの未来として頻繁に言及されているが、AIは依然として人間の労働に深く依存している。モデレーターがAIシステムを訓練し、その誤りを確認し、最も衝撃的なコンテンツを特定しなければならないのだ。そしてこれらは、アルゴリズム管理システムによる圧力が増大する中で行われている。AIは人間の監視を置き換えるのではなく、労働者の負担を悪化させている中、強固な労働保護措置がこれまで以上に不可欠となっている。

ニューヨーク市マウントサイナイ医科大学グローバルヘルス准教授のアニー・スパロウ博士は、「コンテンツモデレーターは、他の業界では受け入れられないようなレベルの心理的危害に毎日さらされている」と指摘し、「これらの新しい安全プロトコルはタイムリーに導入されただけでなく、不可欠なもの。実施され、徹底的に遵守されれば、労働者の命を救い、長期的なメンタルヘルス障害を防止し、デジタル経済の中で最も見えにくく、搾取されている部門の一つに対し、責任を問うことができるようになる」とプロトコルの意義を強調した。

2025年5月にUNIはケニア・ナイロビで、コンテンツモデレーター・グローバル労組アライアンスの設立を支援し、9カ国の労働組合がプロトコルを承認し、その策定に協力した。

UNIは長年、テック企業のサプライチェーンで働く労働者(コンテンツモデレーターを含む)の権利を擁護してきた。UNIは、テクノロジーやアウトソーシングを含むサービス業の労働者を150カ国で代表している。