
ケア労働者を対象とした新たな世界的調査から、医療・介護分野における人材不足の危機が深刻化していることが明らかになった。労働者の70%近くが頻繁に人員不足に陥り、3分の1以上(36.4%)が常に人手不足で働いていると回答している。WHOによるCOVID-19パンデミック宣言から5年の節目にに発表されたUNI報告書は、63カ国の1万1,233人の労働者からの回答をもとに作成されたもので、崩壊の一途にあるケアのシステムを明らかにしている。パンデミック中に英雄として歓迎されたにもかかわらず、ケア労働者は慢性的な人員不足、貧困賃金、職場の暴力の急増に直面し、多くの労働者がこの職業から撤退し、利用者や患者を危険にさらしている。組合の保護を受けていない労働者は、こうした傾向の影響をさらに強く受けている。パンデミックの際に何万人もの命を奪ったのと同じ失敗が、危険なほど無視されたままになっている。
UNIはこうした状況が労働者を介護部門から遠ざけ、政府と使用者が対処できなかった危機が悪化していると警告する。この調査は、組合加入と団体交渉が労働者の定着と満足度を大幅に向上させることを示している。
安全な人員配置は、質の高いケアとより安全な職場環境のために不可欠だが、病院や介護施設における慢性的な人員不足は患者や利用者の健康を損ない、防ぐことのできる死さえ引き起こしている。介護労働者にとって、人員不足はモラルの低下、職場での暴力や負傷率の増加、離職率の高さにつながる。
クリスティ・ホフマンUNI書記長は、「パンデミックから5年経った今でも、介護労働者は過重労働、低賃金、危険な状況にさらされている。この報告書は警鐘だ。賃金を引き上げ、人員配置を改善し、職場の暴力と闘うための早急な行動がなければ、介護システムは崩壊してしまう」と危惧する。
質の高いサービス、公正な賃金、増大する需要に対応できる労働力を確保するために、介護部門への公的資金を増額すること。
アラン・セーブルUNI世界ケア部会担当局長は「介護労働者が不足しているのではなく、低賃金、慢性的な人員不足、危険な状況を喜んで我慢する介護労働者が不足している」と指摘、「介護人材の危機は、単に新しい労働者を訓練したり、移民介護労働者を採用したりすることで解決できるものではない。低賃金、人員不足、暴力やハラスメントの蔓延といった、この部門から人を追い出す核心的な問題に取り組まない限り、労働者不足とケアの質の低下の連鎖は続くだろう」と述べた。
UNIは早急な対策を要求
UNIは政府と使用者に対し、早急に以下の緊急改革に着手することを求める:
●ケアの仕事を持続可能なものにし、労働者を確保するための賃上げと福利厚生の改善。
●燃え尽きを防止し、患者ケアを守るための安全な人員配置の義務化。
●ILO第190 号条約の批准と施行を含む、職場の暴力とハラスメントに対する保護の強化。
●大きな差別や危険な状況に直面する移民労働者に対する公正な待遇と法的保護。
●組合代表権と労働協約の支援
●労働条件と雇用の持続可能性を改善する組合代表権と団体交渉の支援。
●質の高いサービス、公正な賃金、増大する需要に対応できる労働力を確保するため、ケア部門に対する公的資金を増額する。
労働者の証言「我々は破綻しているのに、誰も気にとめない」
最前線で働く労働者の生の声は、この危機の人的被害を明らかにしている:
➡ 私の部署ではいじめや人種差別がありますが、いつも揉み消されています。これは人手不足が原因だと思います-英国、病院労働者
➡ 入居者から2度性的暴行を受けました。上司や同僚から話を聞いてもらえず、守ってもらえなませんでした。人手不足が原因で、1年前に性的暴行をしてきた人のケアをしなければならなくなりました-ニュージーランド、介護施設職員
➡ こんな状況であってはなりません。設備、資源、薬剤があまりに少ない中で、国民の大きな期待を背負って働いている。私たちはひどく破たんしています。政府も気にしていません-ケニヤ、病院看護師
➡ どの国の政府も医療を優先すると約束していたが、それは間違いなく実現していない。パンデミックで介護のひどい生活環境が露呈した後、事態が改善されることを期待していました。しかし、余計な事務作業と政治的なでたらめがあっただけで、何も改善されていない。私はただ、こうした人々がきちんとケアされるようにしてほしいのです。そのためにはスタッフとサポートが必要です-カナダ、介護施設労働者
➡ この仕事をとても楽しみにしていました。でもすぐに現実に思い知らされました。政府や国が医療制度に対してやってきたことにショックを受けています。訓練を受けた人はどんどん減っています。看護職をあきらめた同僚を8人知っていますが、彼らはこの職業に対する思い入れと情熱が強すぎたために、離職に追い込まれたのです-オーストリア、介護施設の看護師
➡「最低賃金より1ポンド高い給料をもらって、毎日暴行を受けています。スタッフの離職率が高すぎて、補充に苦労しています」-英国、医療補助
崖っぷちのシステム
COVID-19パンデミックは、介護や医療における構造的な深い失敗-防ぐことのできたはずの何万人もの死をもたらすという失敗を露呈した。5年経った今も、こうした失敗は危険なほど無視されたままである。UNIの報告書は、ひとつのことを明確にしている。それは、緊急の対策を講じなければ、高齢化によってすでに疲弊し、さらなるパンデミックの脅威にさらされている介護・医療制度は崩壊し、再び命が失われるということである。