欧州議会の雇用・社会問題委員会(EMPL)に所属する欧州議会議員は、2024年1月23日、アマゾンの経営陣が欧州議会の公聴会への出席を拒否したことを非難した。アマゾンは2023年12月にも、ドイツとポーランドの倉庫への欧州議会代表団の視察を、急遽とりやめている。また2021年にも、アマゾンは前回の公聴会で証言を拒否しており、アマゾンのこうした一連の動きに辟易した欧州議会議員は、欧州議会からアマゾンのロビイストを追放することを要求し、UNI欧州もそれを支持している。
ドラゴシュ・ピスラルEMPL委員長は、アマゾンの欠席について、「アマゾンから、都合をつけられなくなったという趣旨の手紙を受け取った。これだけの規模と代表を抱える企業であれば、今日来られなくなった人の代わりになるような人材がいたのではないか」と苦言を呈した。
オランダのキム・ファン・スパレンタク議員もこれに同調し、「アマゾンが我々の民主的制度に敬意を示さないことに失望はしているが、驚きはしない。議会公聴会に2度も来ず、我々のミッションを取りやめた後のことだから」と語る。
オランダのアグネス・ヨンゲリウス議員は、さらに一歩踏み込み、欧州議会におけるアマゾンのロビイング活動の禁止を求めている。「私は12月にもポーランドとドイツの労働者との会合を予定に入れていたが、この会合も撤回されている。議会は、議会内でのアマゾンのロビイストの活動を禁止するよう検討すべきだ」
この提案を支持するフランスのレイラ・チャイビ議員は、アマゾンのロビイストの活動禁止を求める結束したアプローチを提唱し、「アマゾンは民主的な機関に対しても、労働者に対する姿勢と同じように無礼な態度を示している。(…中略…)我々は具体的な行動、つまりアマゾンのロビイストの欧州議会への立ち入りを禁止するという行動を起こすことができる」と述べ、政治団体の垣根を越えて連携し、欧州議会内へのアマゾンのロビイストの立ち入りを禁止するよう要求する書簡を議会議長に送ることを提案した。
ドイツのガビー・ビショフ議員はこの提案を支持し、「敬意の問題であり、国会で公聴会が開かれるのであれば、アマゾンは出席すべきだ。アマゾンのロビイストのバッジを撤回する提案を支持する」と述べている。また、同じくドイツのデニス・ラドケ議員も、アマゾンのロビー活動と、委員会への関与を拒否する姿勢について非難し、「私は、議会や委員会として取ることのできるいかなる措置も支持する。(アマゾンのやり方を)受け入れるべきではない」と語気を強める。
オリバー・レティクUNI欧州地域書記長は、公聴会について「アマゾンの経営陣が民主的機関による公的な監視を拒否することは容認できない。残念なことだが、これは労働者や労働組合にとっては驚くべきことではない。アマゾンは悪名高い組合潰しを行う企業であり、結社の自由や団結権、交渉権といった基本的権利を否定してきた。したがって、私たちは国会議員とともに、アマゾンのロビイストが我々の公的機関を尊重しない限り、欧州議会へのアクセスを拒否するよう求めていく」と述べた。
労働組合の証言
公聴会では、ドイツのUNI加盟組織ver.diと、ポーランドのSolidarnośćおよびInicjatywa Pracowniczaの代表が、各国のアマゾンにおける労働条件について、説明を行った。
ポーランドのアガタ・ウィピオール氏は、「私たちはロボットだと思われている。生産性の目標は、物理的な不可能なレベルのものであり、これを変えるよう求めた。労働者に対する圧力は大きく、監視の目も厳しい」と述べ、ドイツのコリーナ・グロース氏は、「アマゾンでは、立法府が強制しない限り、質の高い安全な労働は保証されていない。健康上の理由で解雇されたり、正当な理由もなく解雇されたりしている」と付言した。
組合代表は国境を越えた組織化の重要性を強調するとともに、組織化のための欧州ネットワークを促進するUNIアマゾン労組アライアンスの役割を指摘した。
Make Amazon Pay(アマゾンに支払わせる)
2023年秋に、UNIとプログレッシブ・インターナショナルは、20か国以上から労働組合員、市民社会組織、専門家、国会議員を英国・マンチェスターに集め、史上初の「Make Amazon Pay」サミットを開催した。
サミットに参加したオランダのキム・ファン・スパレンタク議員は、その核心的なメッセージを欧州議会に伝えた。「11月にマンチェスターで開催されたMake Amazon Payサミットに出席することができたが、このキャンペーンが世界中のいたるところで広がりを見せていることを大変嬉しく思う。労働組合、税金問題やデジタル権の活動家、先住民族、気候変動活動家、零細企業経営者、そして政策立案者が本当に力を合わせて取組んでいる。アマゾンのような巨大な搾取企業に立ち向かうには、共に協力することが必要だ。そしてこれは、我々がこの問題に取組み、労働者の状況を改善しようとする人々と団結していることを示す瞬間でもあると思う」
労働、税金、気候、データ、人種的公正に関連する問題に取組むことを目的とするMake Amazon Payキャンペーンは、2020年以来5回の世界行動デーを実施してきた。世界中の80以上の団体と数百人の国会議員から支持を集めている。