
人工知能(AI)とデジタル技術によって、銀行部門やその事業展開のあり方が、急速に変化している。こうした進歩は多くの利点をもたらす一方、労働者と労働条件に大きな影響も及ぼしている。
銀行部門の労働者が直面する重要な課題の1つは、AIを含む新しいデジタルツールを使用するための新しいスキルの必要性であり、使用者は、労働者が訓練やスキルアップの機会を受けられるようにしなければならない。
また、AIやアルゴリズムの倫理的使用、データ保護、モニタリングや監視についての懸念も存在する。AIやデジタルツールは、労働者や顧客の膨大なデータの収集と分析を可能にするが、これらの個人データはどのように使用されるのだろうか?また、偏ったアルゴリズムやAIは、差別や不平等を永続させるなどの影響をもたらしうる。アルゴリズムやAIがどのように意思決定を行うかについての透明性が欠如していることで、倫理的懸念がさらに高まっているのである。
社会パートナープロジェクト
こうした問題に対応するため、欧州の銀行部門の社会パートナー(UNI欧州金融部会と、使用者団体であるEBF、EACB、ESBG)は、『Banking 2030:現在の世界的なトレンド、特に人工知能(AI)は、欧州の銀行業界とその従業員の未来をどのように形作っていくか? 』と題するプロジェクトを開始した。プロジェクトはEUが資金提供している。
プロジェクトの最初のワークショップが、2023年2月17日にパリで開催され、デジタル化、新技術、AIなど、銀行業を変革する主要なメガトレンドに焦点が当てられた。
ワークショップでは、変化を予測し対処する方法としての社会対話の意義が強調された。社会パートナーは、社会対話と団体交渉を通じて、初期段階からデジタルツールの使用を決定する上で重要な役割を担っていることを認識し、デジタルやその他の将来的動向を管理し、悪影響が及ばないよう、責任ある方法で移行していくために協力していく必要がある。
複数の講演者が、責任ある倫理的な方法でデジタル移行を管理する上での、社会対話と団体交渉の重要性を強調した。マーク・ピアソンOECD雇用労働・社会問題局副局長は、労働者の適切なスキルアップとトレーニングを確保し、新しい職場への適応を支援するためには、団体交渉が重要であると指摘した。
ビアンカ・クチニエロOECD-TUAC副会長は、AIの責任ある倫理的な使用には「人間によるコントロール」の原則が不可欠であると強調し、包摂性を促進するデジタル移行を呼びかけた。ミカエル・ブドルフソンUNI欧州金融部会議長は、社会パートナーによる積極的な関与の必要性と、労働者が職場のデジタル変革に適応するためのトレーニングと再技能教育を受けられるようにすることの重要性を強調した。
フランスのエリック・ペレスFO Cadres書記長は、職場でAIがどのように導入されるか、特に監視に関して警戒するよう、組合に呼びかけた。また、職場で使用されるツールが責任ある倫理的なものであるようにするため、実際の開発者を社会対話と団体交渉に参加させるよう、訴えた。
銀行部門におけるAIとデジタル技術の利用拡大は、労働者や労働条件に大きな影響を及ぼしている。労働者への適切なスキルアップとトレーニングの確保、包摂性の促進、監視や偏見などの悪影響の防止など、AIが銀行部門に及ぼす影響に対処するために、社会対話と団体交渉は明らかに必要である。
このプロジェクトは、まさにそのような実践を高めるものであり、次回ワークショップは、2023年6月13日にストックホルムで開催予定となっている。