
2023年2月、ILOでの1週間の交渉を経て、労働組合、使用者、政府は、芸術・娯楽産業において「ディーセントワークの欠如」を生み出している長時間労働、低賃金、社会的保護の欠如、不平等を認め、これらの是正に向けた一連の結論に合意した。
この成果は、2月半ばにスイス・ジュネーブで行われた、芸術・娯楽部門における仕事の未来についての5日間のILO技術会議の後に、2月23日に文書として発表されたものである。会議には、3つのGUFs(UNI、国際俳優連合(FIA)、国際音楽家連盟(FIM))の傘下で、この産業に従事する100万人以上の労働者を代表する組合指導者が集まった。
今後、政府は使用者および労働組合と協力し、労働時間を規制する法律や規制を促進・強化し、自営業者を含むこの部門すべての労働者に包括的社会保護制度への普遍的アクセスを提供し、この部門のスキル不足を解消するための公的資金を確保していくことが必要となる。
また、今回の結論は、団体交渉がディーセントワーク実現の鍵であることを認識するとともに、政府が芸術・娯楽産業における団体交渉権の実質的な承認を確保し、ILOが同部門における団体交渉実施に関する政策指針を提供するためのアクション・ポイントも含まれている。
放送、メディア、エンターテインメントの労働者を代表する英国のBECTUで委員長を務めるフィリッパ・チャイルズUNI世界メディア部会副議長は、「我々は多くの前進を遂げることができた。この結論によって、我々の主要課題、特にこの部門における長時間労働の問題に関して、使用者と政府に圧力をかけることができるようになる。パンデミックによって労働者は自らの状況を顧みることになり、長時間労働がワークライフバランスに与える影響について、真剣に考えるきっかけとなった。多くの人々がこの業界を去り、また戻ってくるかどうかもわからないため、英国だけでなく世界的でスキルが不足する状況になっている。この状況を好転させるためには、労働条件と機会を改善する必要がある」と訴えた。
オンラインストリーミングによって従来のライセンスモデルが時代遅れになる中、今回の結論は芸術・娯楽分野における著作権および関連する諸権利の重要性についても強調しており、法定報酬や団体交渉を通じて、プロデューサー、パフォーマー、著作者に実施的に報酬が与えられる形でこれらの権利が実現されるよう、政府に要求している。
また、ILOの結論は、産業全体の労働者に影響を与える新しいテクノロジーや人工知能の導入に対して、人間中心のアプローチを求めている。
今回、労働側のスポークスマンを務めたFIA執行委員のダンカン・クラブトリー氏は、「人工知能は並外れた可能性をもたらすが、現実の脅威もつきつけている。AIに対する人間中心のアプローチは、我々の業界の未来にとって極めて重要だ。こうした変革的な技術は、人間の創造性を補完するものでなければならず、それに取って代わるものではない。今こそ、ILOがこの問題に取組み、すべての労働者のためのディーセントワークと団体交渉へのアクセスを促進するためのより広い課題の一環として、公正さと持続可能性を確保する枠組みをさらに進めるのを支援する時だ」と強調した。
また政府は、ビザや労働許可証の障壁を含む労働者の国境を越えた移動における課題、また社会保障受給資格の国境を越えたポータビリティ(持ち運び)や二重課税の課題に取組むべきである。
ブノワ・マシュエルFIM事務局長は、「採択された結論は、団体交渉権の承認およびすべての労働者の社会的保護への普遍的なアクセスについて勧告しており、我々の中核的な懸念に応えるものであることを特に喜ばしく思う。国境を越えたポータビリティと職業病に関する条項も、我々が代表する職業に就く人々にとって非常に好ましいものだ」と述べた。
他の条項の中でも、今回の結論は、職場における暴力やハラスメントへの効果的な対応を含め、安全で衛生的な労働環境を推進するための強力な労働監督制度を確保することを求めている。さらに、この成果は、急激な技術革新が進む環境に優しい産業への公正な移行を可能にするための官民の投資の重要性を強調するものである。
ブラジルの組合SINDCINEで委員長を務めるソニア・サンタナUNI世界メディア部会副議長は、「今回の成果は、労働協約へのアクセスを確保する上で大きな役割を果たすと同時に、労働者の権利を擁護し、特に女性の平等、人種の平等、先住民の平等を推進し、使用者との関係を深めるための他の手段を与えてくれるものだ」と評価した。
この文書は、特に差別を受けやすい人々に対するこの部門の不平等を認め、この部門が「多様性、平等、包摂性というレンズを通して」仕事のあらゆる側面にアプローチするよう求めている。
カナダのIATSE国際副会長を務めるジョン・ルイスUNI 世界メディア部会委員は「これは前向きな成果てあり、この業界で働く世界中の人々に影響を与える、団体交渉へのアクセス改善や、著作権保護の強化、長時間労働への対処など、各国政府と他の議論を始めるための出発点を作るものだ」と強調した。