
3月上旬、UNI加盟組織の韓国サービス労連(KFSU)傘下のCJ大韓通運宅配労組が、団体協約を締結した。韓国の物流分野で過労死を引き起こしている労働条件について、一歩前進である。
同労組は2021年12月28日、韓国最大の物流企業であるCJ大韓通運に対し、労働者への不当な扱いに抗議し、ストライキを開始していた。CJ大韓通運の代理店連合が、さらなる事業損失を抑制するために、最終的に組合に和解交渉を持ちかけたことで、2か月余りに及ぶストは2022年3月3日に終了した。組合員の9割以上が、今回の協約を承認した。
協約の主な条項は以下の通り。
1.組合員は「標準雇用契約書」に署名後、職場に復帰する。
2.CJ大韓通運を代表する代理店連合は、週6日勤務と当日配達保証という有害な条項に対処する補完的な協約について、組合と協議を行う。
3.すべての組合員は、組合員に対するいかなる法的請求についても責任を負わない。
組合声明の中で、ジン・キョンホ同労組委員長は、「我々は、過労死に至るような奴隷的な条件には戻らない。協約の締結を機に、社会の全面的な後押しを得て、過労死防止に向けた取組みを強化したい」と決意を述べている。また、カン・ギュヒョクKFSU委員長は、「配達員が尊厳のある人間らしい暮らしを営み、過労死の不安を抱えなくてすむよう、我々はこの闘いに加わる」と語った。
過労死の問題が再燃したのは、多くの企業がパンデミック時にEコマースに目を向け、当日または翌日の配達を顧客に約束したためだ。配送需要は、2021年に1983億ウォン(1億6210万米ドル)という記録的な営業利益を懐に入れたCJ大韓通運のような一部の企業を潤した。だが同時に、何千人もの物流労働者の仕事量は、指数関数的に増加した。物流企業は配達員に対し、実際の配達が行われる前に、商品の仕分けや分類といった労働を無給で行うよう、圧力をかけている。
こうした労力を要する作業は4~5時間にも及び、配達業務と合わせると、多くの配送員が法律で定められた週60時間労働(うち残業12時間)を大幅に超えて働いている。大きなプレッシャーがかかり、休息時間もほとんど取れない中、パンデミック1年目の2020年には22人の配達員が過労死に至った。
このような悲劇的で回避可能な死を防ぐために、2021年に三者構成による社会的合意が結ばれた。配達前の品目分類作業を改善する指針や、週あたり労働時間の上限を60時間とすること、配送料を1個あたり170ウォン(0.14米ドル)引き上げることなどが盛り込まれている。
だが、現場での実施は遅々として進まず、問題は続いていた。
配達員に無給で品目分類を行うよう要求し続けているターミナルもある。CJ大韓通運などの企業は、配送料を242.5ウォン(0.20米ドル)引き上げたが、同社が雇用する配達員は、1個あたり40.2ウォン(0.03米ドル)しか受け取れず、社会協定で推奨されている1個当たり170ウォン(0.14米ドル)とは、かけ離れた金額となっている。
会社が組合との対話を拒否したため、同労組は、中央労働委員会に申し立てを行った。委員会は、CJ大韓通運は元請として、組合と交渉する義務があるとの裁定を下した。しかし、同社はこの裁定を不服として行政訴訟で対抗した。配達員は下請業者として雇用され、当日配達の保証や週6日労働などの有害な条項を含むサービス基準契約を伴う個別契約を結ばされている。
ラジェンドラ・アチャリャUNI Apro地域書記長は、「組合の取組みに全面的に連帯する。パンデミックから2年が経過するが、この状況は我々が望むニューノーマルではない。エッセンシャルワーカーである配達員をタダ働きで搾取し、過労死させるようなことがあってはならない。CJ大韓通運のような大手企業は、雇用のあり方を見直し、配達員を下請業者ではなく、労働者として扱わなければならない」と述べた。